『恍惚』は2003年のフランス・スペイン合作の官能ドラマ。夫の浮気を知った妻カトリーヌが、娼婦マルレーヌに夫を誘惑させ、情事の詳細を報告させることで性的快感を得るものの、奇妙な関係に陥ります。アンヌ・フォンテーヌ監督、エマニュエル・ベアールとファニー・アルダン主演。
基本情報
予告編はこちら。
- 邦題:恍惚
- 原題:NATHALIE…
- 製作国:フランス
- 上映時間:105分
- ジャンル:ドラマ
あらすじ
ベルナールの妻カトリーヌは、夫の誕生日のサプライズパーティに余念がありません。そんな彼女のもとにベルナールから連絡が入り、飛行機に乗り遅れたので今日は帰れないとのこと…。翌朝、カトリーヌは帰宅したベルナールの携帯電話をひそかにのぞき…。
みどころ
エマニュエル・ベアールが妖艶な娼婦を演じたエロスドラマ。妻の夫に対する愛情と憎悪が混濁していく様子が空恐ろしい。そして秘密を共有する女同士は、さらに毒々しい。
ファム・ファタル
『恍惚』のファム・ファタルは、なんといってもエマニュエル・ベアール。ちなみに、本作はのちにジュリアン・ムーアとアマンダ・セイフライドの共演作「クロエ」にリメイクされています。
本作でベアールが演じたマルレーヌ(ナタリー)は、妖艶でミステリアスな娼婦という役柄で、彼女の持ち味である魅惑的な美貌と繊細な演技が存分に発揮されています。マルレーヌは、カトリーヌに対して夫との情事を詳細に語ることで、観客とカトリーヌを同時に惑わせるキャラクターです。ベアールは、娼婦としてのプロフェッショナルな冷徹さと、どこか人間的な脆さを巧みに表現。特に、カトリーヌとの対話シーンでは、言葉遣いや視線、仕草を通じて、嘘と真実の曖昧な境界を体現しています。彼女の演技は、物語のサスペンス要素を強化し、観客に「マルレーヌの話は本当か?」と疑問を抱かせ続けます。ベアールの演技について、レビューでは「エマニュエル・ベアールの美しさにひたすら魅了される」「40歳とは思えない若々しさ」と絶賛されています。一方で、一部の批判では「薄汚い娼婦に見える」との声もあり、彼女の役柄が意図的に現実的なリアリズムを追求した結果とも解釈できます。この役は、ベアールがこれまで演じてきた清純な女性像とは異なり、複雑で多面的なキャラクターを演じる彼女の幅広さを示しています。『8人の女たち』での共演に続き、ファニー・アルダンとの化学反応も見どころで、女性監督フォンテーヌの視点が二人の女優の魅力を引き立てています。
解説
『恍惚』(原題:Nathalie…)は、2003年に公開されたアンヌ・フォンテーヌ監督によるフランス・スペイン合作の官能ドラマです。主演はエマニュエル・ベアールとファニー・アルダン、夫役にジェラール・ドパルデューを迎えた豪華キャストが話題となりました。物語は、夫ベルナール(ドパルデュー)の浮気を知った妻カトリーヌ(アルダン)が、娼婦マルレーヌ(ベアール)に夫を誘惑させ、その情事の詳細を報告させるという異色の設定で展開します。この行為を通じてカトリーヌは性的快感を得ようとしますが、次第にマルレーヌとの間に複雑で危うい関係が築かれていきます。物語は、カトリーヌが夫の携帯電話に残された見知らぬ女性からのメッセージを聞き、浮気の事実を知るところから始まります。ショックを受けた彼女は、夫の性的嗜好を探るため、娼婦マルレーヌに「ナタリー」という偽名で夫を誘惑するよう依頼。マルレーヌは、夫との情事を赤裸々に語り、カトリーヌはその詳細に引き込まれつつも、感情的な揺れを抱きます。しかし、物語が進むにつれ、マルレーヌの話が虚構である可能性が浮上し、観客は真実と嘘の境界に引き込まれます。最終的に、マルレーヌの話が作り話だったことが明らかになり、カトリーヌの行動の動機や夫婦関係の本質が問われる結末を迎えます。本作の特徴は、官能的なテーマを扱いつつ、直接的な性描写を避け、言葉と心理戦で緊張感を構築している点です。フランス語の軽快なリズムや含みのある対話が、官能性を高めると同時に、登場人物の内面を浮き彫りにします。レビューでは「ストーリーはドロドロなのに、フランス映画らしいサラッとした描写」や「オシャレでボーッと観ていられる」と評されるように、複雑な人間関係を洗練された映像美で描き出しています。平均スコア3.3点(Filmarks)と評価はまずまずですが、ベアールとアルダンの美しさや演技力に魅了された観客も多く、ラストの意外性が好評です。
作品のテーマと意義
『恍惚』は、夫婦関係の倦怠感、女性の欲望、信頼と裏切りのテーマを深く掘り下げた作品です。カトリーヌの行動は、夫への復讐心だけでなく、自身の抑圧された欲望や好奇心の表れでもあり、女性の性と主体性を描く点でフェミニンな視点が感じられます。フォンテーヌ監督は、官能的な題材を扱いつつ、心理的な探求に重点を置き、単なるエロティックサスペンスを超えた人間ドラマを構築。フランス映画らしい洗練された美学と、男女の関係性の複雑さを描き出した点で高く評価されています。
文化的背景と影響
本作は、2009年に『クロエ』としてハリウッドでリメイクされ(アトム・エゴヤン監督、ジュリアン・ムーア、アマンダ・セイフライド出演)、国際的な注目を集めました。オリジナルである『恍惚』は、フランス映画特有の心理劇と官能美を融合させた作品として、欧州映画の伝統を体現。ベアールとアルダンの演技は、フランスの格差社会や女性の生き方を映し出し、観客に人生観や信頼について考えさせる余韻を残します。
キャスト
配役 | 出演者 |
カトリーヌ | ファニー・アルダン |
ナタリー/マルレーヌ | エマニュエル・ベアール |
ベルナール | ジェラール・ドパルデュー |
フランソワ | ウラジミール・ヨルダノフ |
カトリーヌの母 | ジュディス・マグレ |
カトリーヌの息子 | ロドルフ・ポーリー |
バーのオーナー | エヴリーヌ・ダンドリー |
一夜限りの相手 | クリスチャン・パフゲン |
カトリーヌの患者 | オーロール・オートゥイユ |
ギスレーヌ | イディット・セブラ |
マリアンヌ | サーシャ・ルカヴィナ |
イングリッド | マシャ・ポリカルポワ |
医療秘書 | マリー・アダム |
別の患者 | ソフィー・セフェリアデス |
不動産屋 | セルジュ・オンテニエンテ |
マリー | マリネット・レヴィ |
マレーネの友人 | アイダ・テッチャー |
マレーネの友人 | キャロライン・フランク |
バーのホステス | ソフィー・ノエル |
バーのホステス | アンジェリーク・トーマス |
バーホステス | エヴリーヌ・マッコ |
バーホステス | プルーデンス・マイドゥ |
女性客のカップル | カリーヌ・フレヴィッチ |
男性客のカップル | マルク・リウフォル |
マリーンの客の一人 | ピエール・マンガネリ |
マーリーンの客の一人 | ハッサン・マーディ |
ゲスト(クレジットなし) | テルマ・グドマンズ |
スタッフ
担当 | スタッフ |
監督 | アンヌ・フォンテーヌ |
脚本 | アンヌ・フォンテーヌ |
脚本 | ジャック・フィエスキ |
脚本 | フランソワ=オリヴィエ・ルソー |
衣装デザイン | パスカルヌ・シャヴァンヌ |
メイクアップ主任 | セドリック・ジェラール |
ヘアスタイル主任 | アガテ・モロ |
衣装 | ヴァレリー・ル・ハロー |
衣装助手 | ネラ・ステラ |
結論
エマニュエル・ベアールは『恍惚』で、妖艶かつ知的な娼婦マルレーヌを演じ、彼女のキャリアにおける多様性と演技力を証明しました。映画自体は、官能とサスペンスを織り交ぜた心理ドラマとして、フランス映画の魅力と女性の複雑な内面を巧みに描き出しています。ベアールとアルダンの圧倒的な存在感、フォンテーヌ監督の繊細な演出が融合した本作は、観客に深い印象を与える一作です。
レビュー 作品の感想や女優への思い