『太陽の年』(A YEAR OF THE QUIET SUN)は1984年の合作映画。第二次世界大戦後の1946年のポーランドを舞台に、ポーランド人女性エミリアとアメリカ人兵士ノーマンの恋愛を描きます。言葉の壁を超えた二人の関係が、戦後の荒廃と喪失の中で展開します。
監督はクシシュトフ・ザヌーシで、静かな感動を呼ぶラブストーリーとして評価されています。ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞とパシネッティ賞を受賞。
基本情報
- 邦題:太陽の年
- 原題:A YEAR OF THE QUIET SUN
- 公開年:1984年
- 製作国・地域:ポーランド、西ドイツ、アメリカ、ドイツ
- 上映時間:106分
太陽の年(1984年)公式予告編
女優の活躍
映画『太陽の年』の主演女優であるマヤ・コモロフスカは、エミリア役を演じています。彼女の演技は、戦争の傷跡を背負った女性の内面的な苦悩と優しさを繊細に表現しており、批評家から高い評価を受けています。ロジャー・イーバートは、彼女の演技を「偉大な女優によるもの」と称賛し、悲しみに満ちた目と官能的な唇を通じて、キャラクターの複雑な感情を伝えています。
コモロフスカの演技は、言葉を超えたコミュニケーションを重視したもので、ノーマンとの無言の交流で観客を引き込みます。彼女の存在感は、映画の静かな力強さを支えており、デニス・シュワルツは「温かさと感受性に満ちている」と評しています。また、マイケル・ウィルミントンは、感情の信ぴょう性を強調し、彼女の演技が映画の深い慈悲を体現していると述べています。
コモロフスカは、ポーランドの著名な女優として知られ、本作以前にもザヌーシ監督の作品に出演しています。彼女のキャリアでは、舞台と映画の両方で活躍し、深い人間性を描く役柄を得意としています。この映画でのパフォーマンスは、彼女の代表作の一つとして位置づけられています。
女優の衣装・化粧・髪型
マヤ・コモロフスカ演じるエミリアの衣装は、戦後の貧困を反映した質素で実用的なものが中心です。荒廃した街中で暮らす女性として、くたびれたドレスやコートを着用し、暖かさを重視したシンプルなデザインが目立ちます。全体的に地味な色調で、灰色や茶色の服が戦後の厳しい生活を象徴しています。
化粧については、自然で控えめなものが施されています。蒼白く栄養不足を思わせる肌の表現が、キャラクターの疲弊した状態を強調します。目元や唇の微妙なニュアンスが、感情の変化を表すために活用されていますが、過度なメイクは避けられ、現実的な外見を保っています。
髪型は、肩までの長さで緩やかにまとめられたスタイルが多く、日常的な生活感を出しています。戦後の設定に合わせ、整えられていない自然なウェーブが加わり、洗練されたものではなく、素朴さが際立っています。これらの要素は、映画のリアリズムを高め、キャラクターの内面を視覚的に支えています。
あらすじ
1946年のポーランド、戦争の爪痕が残る荒廃した町で、エミリアは母とともに貧しい生活を送っています。夫を戦争で失った彼女は、クッキーを焼いて売ることで生計を立て、病気の母の世話をしています。一方、アメリカ人兵士のノーマンは、連合軍の戦争犯罪調査委員会で運転手として働いており、大量虐殺の現場を発掘する任務に就いています。
二人は偶然出会い、ノーマンがエミリアをジープで送ったことをきっかけに交流が始まります。言葉の壁があるため、英語を話さないエミリアとポーランド語を話さないノーマンは、ジェスチャーや視線で心を通わせます。ノーマンはエミリアの家を訪れ、砂糖や絵の具を贈り、彼女の芸術的な才能を励まします。二人の関係は、互いの喪失感を癒すものとして深まっていきます。
しかし、周囲の環境は厳しく、秘密警察の監視や隣人の売春婦ステラの苦境が影を落とします。ノーマンはアメリカへの帰国命令を受け、エミリアと母を連れて移民することを提案します。エミリアは司祭に相談し、母の死後、密航を試みますが、ステラに席を譲り、自分は残る選択をします。ノーマンは一人で去り、数年後、エミリアは修道院の老人ホームで暮らしています。アメリカからの遺産通知を受け取り、旅立つものの、意識を失い、夢のような結末を迎えます。
解説
太陽の年は、クシシュトフ・ザヌーシ監督の代表作の一つで、戦後のポーランドを背景に、成熟した大人の恋愛を描いています。テーマは、戦争のトラウマと人間の慈悲、犠牲の意味に焦点を当てており、過度なドラマチズムを避けた静かな語り口が特徴です。言語の壁を超えた関係性は、普遍的な愛の形を象徴しています。
映画の視覚スタイルは、スワヴォミル・イジャクの撮影によるもので、手持ちカメラの使用が緊張感を生み出しています。色調は茶色、黒、深いオリーブ、青を基調とし、蒼白い顔立ちのキャラクターを際立たせ、戦後の荒涼とした雰囲気を強調します。音楽はヴォイチェフ・キラーが担当し、情感を深めています。
受賞歴として、1984年のヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞とパシネッティ賞を受賞し、1986年のゴールデングローブ賞外国語映画部門にノミネートされています。批評家からは、「小さな静かな映画の巨大な力」(ロジャー・イーバート)と評され、人間性の深い観察が称賛されています。結末の夢幻的なシーンは、ジョン・フォードの西部劇を思わせ、希望と喪失の曖昧さを残します。
ザヌーシの監督手法は、道徳的ジレンマを自然に織り交ぜ、観客に内省を促します。本作は、ポーランド映画の黄金期を代表する作品として、国際的に再評価されています。戦後の現実を背景に、個人の選択がもたらす影響を丁寧に描き、永遠のテーマを追求しています。
キャスト
- マヤ・コモロフスカ:エミリア
- スコット・ウィルソン:ノーマン
- ハンナ・スカジャンカ:エミリアの母
- エヴァ・ダウコフスカ:ステラ
- ヴァディム・グロヴナ:ヘルマン
- ダニエル・ウェブ:デイビッド
- ズビグニェフ・ザパシェヴィチ:シャリ
- ゾフィア・リシオヴナ:通訳
- ヤヌシュ・ガヨス:闇屋
- イェジー・シュトゥル:アドジオ
- グスタフ・ルトキェヴィチ:パン屋の主人
- マレク・コンドラト:マルトキ
- イェジー・ノヴァク:イギリス人医師
- リー・マイケル・ヴァルチュク:アメリカ人大尉
スタッフ
- 監督:クシシュトフ・ザヌーシ
- 脚本:クシシュトフ・ザヌーシ
- 撮影:スワヴォミル・イジャク
- 編集:マレク・デニス
- 音楽:ヴォイチェフ・キラー
- 美術:ヤヌシュ・ソスノフスキ
- 製作:フィルム・ポルスキ、SPIインターナショナル・ポーランド




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