ベイビーティース

『ベイビーティース』（2019年）は、オーストラリアの青春コメディ・ドラマ映画。末期疾患の少女ミラが、ドラッグディーラーのモーゼスと恋に落ち、家族と共に人生の喜びと混乱を見つける物語。シャノン・マーフィの監督デビュー作で、ヴェネチア映画祭で高評価。

基本情報
女優の活躍
女優の衣装・化粧・髪型
あらすじ
解説
キャスト
スタッフ
総括

基本情報

邦題：ベイビーティース
原題：Babyteeth
公開年：2019年
製作国：オーストラリア
上映時間：117分
ジャンル：ドラマ、音楽

BABYTEETH - Official UK Trailer - On DVD, Blu-ray & Digital Now

On DVD, Blu-ray & Digital now - get your copy at an outstanding cast that includes Eliza Scanlen, Toby Wallace, Essie Da...

女優の活躍

『ベイビーティース』（原題：Babyteeth）は、オーストラリアの新進気鋭の監督シャノン・マーフィ（Shannon Murphy）が手掛けた初の長編映画で、主演を務めるエリザ・スカンレン（Eliza Scanlen）の演技が特に注目されました。スカンレンは、16歳の末期疾患を抱える少女ミラ・フィンレイを演じ、初主演映画ながら圧倒的な存在感を示しました。彼女は、HBOの『シャープ・オブジェクツ』（2018年）や『ストーリー・オブ・マイライフ／わたしの若草物語』（2019年）で脇役として注目されていましたが、本作で主役としてその才能を存分に発揮。ミラの複雑な感情—病と向き合う恐怖、初恋の喜び、家族への愛—を繊細かつ力強く表現し、観客を引き込みます。特に、モーゼスとの恋愛シーンでは、若さゆえの衝動と死を意識した成熟さを同時に体現し、批評家から絶賛されました。彼女は役作りのために頭を剃り、ヴァイオリンの演奏を学ぶなど、献身的な姿勢も高く評価されています。

共演のエッシー・デイヴィス（Essie Davis）は、ミラの母アンナ役で出演。デイヴィスは『ババドック暗闇の魔物』（2014年）や『探偵ミス・フィッシャー～華麗なる事件簿』で知られる実力派女優で、本作では薬物依存と娘の病に苦しむ母親を演じます。彼女の演技は、感情の爆発と抑圧のバランスが絶妙で、特にミラとの親子関係のシーンでは心を揺さぶる深みを見せます。デイヴィスは、家族の崩壊と再生を体現し、物語の感情的な軸を支えました。批評家は、彼女の「複雑で層のある演技」を称賛し、ベン・メンデルスーンとの共演で家族のリアルな化学反応を生み出しています。

エミリー・バークレイ（Emily Barclay）は、妊娠中の隣人トビー役で脇役ながら印象的な演技を見せます。彼女の自然体で率直な演技は、物語にユーモアと温かみを加えています。

女優の衣装・化粧・髪型

『ベイビーティース』の衣装、化粧、髪型は、キャラクターの個性と物語のテーマを反映し、視覚的に強い印象を与えます。衣装デザインはアメリア・ギアリー（Amelia Geary）が担当し、ミラの青春と病の両方を表現する工夫が施されています。ミラ（エリザ・スカンレン）の衣装は、物語の進行に応じて変化します。序盤では、制服やカジュアルなトップスに長い赤褐色の髪が特徴で、10代の少女らしい無垢さを強調。彼女がモーゼスと出会い、恋に落ちるにつれ、色鮮やかなドレスやカジュアルなニットが登場し、彼女の内面的な解放を象徴します。化学療法による脱毛後は、柔らかいフェルト帽やウィッグを着用し、病の影響と自己表現の葛藤を表現。特に、ウィッグを外すシーンは、ミラの脆弱さと強さを視覚的に示す重要な瞬間です。

化粧は控えめで、ミラの若さと病弱さを強調。薄いファンデーションと淡いリップが主で、彼女の自然な美しさを引き立てます。病状が進むにつれ、顔色の変化や目の下のクマがわずかに強調され、リアルな病の描写が施されています。一方、アンナ（エッシー・デイヴィス）の衣装は、上流階級の母親らしい洗練されたワンピースやカーディガンですが、薬物依存による乱れを反映し、時折シワや乱雑さが意図的に加えられています。彼女の化粧は、疲れた表情を隠すための濃いアイメイクとリップが特徴で、精神的な不安定さを暗示。髪型は、緩いウェーブのロングヘアで、かつての美しさと現在の苦悩が共存するデザインです。

トビー（エミリー・バークレイ）の衣装は、妊娠中のカジュアルなマタニティウェアで、明るい色調が彼女の楽観的な性格を反映。化粧はほとんどなく、ナチュラルな美しさが際立ちます。全体的に、衣装と化粧は物語の感情的なトーンを補完し、キャラクターの内面を視覚化しています。

あらすじ

『ベイビーティース』は、16歳の少女ミラ・フィンレイ（エリザ・スカンレン）を中心に展開する青春ドラマです。ミラは裕福な家庭で育ち、最近ガンの診断を受けた高校生。ある日、駅のホームで23歳のドラッグディーラー、モーゼス（トビー・ウォレス）と出会い、彼に一目ぼれします。モーゼスの粗野な魅力と自由奔放な生き方に惹かれたミラは、彼との関係を深めていきますが、両親のヘンリー（ベン・メンデルスーン）とアンナ（エッシー・デイヴィス）はその関係に猛反対。しかし、ミラの病が再発し、余命が短いことを知る両親は、彼女の幸せを優先し、モーゼスを受け入れることを選びます。ミラの初恋は、家族や周囲の人々—音楽教師、隣人の妊娠中の女性、若いヴァイオリニスト—に影響を与え、人生の喜びと無秩序な美しさを見出させます。物語は、ミラの視点を通じて、愛と喪失、家族の絆を描き、ビーチでの感動的なシーンで締めくくられます。

解説

『ベイビーティース』は、リタ・カルネジャイス（Rita Kalnejais）の同名舞台劇を基にしたシャノン・マーフィの監督デビュー作で、2019年のヴェネチア映画祭でプレミア上映され、ゴールデンライオン賞にノミネートされました。青春ロマンスと末期疾患を扱うジャンルは『君の名は。』や『フォルト・イン・アワー・スターズ』などと比較されますが、本作は陳腐な感傷を避け、ユーモアと現実的な感情で独自性を打ち出します。マーフィの演出は、暗いテーマを扱いつつも、音楽や色彩を通じて活力を注入。オーストラリアのバンド（The Cat Empire、Mallrat）やクラシック音楽（バッハ）が織り交ぜられたサウンドトラックは、ミラの感情の起伏を強調します。

映画は、家族のディスファンクションと愛の変革力を探求し、ミラの病を単なる悲劇ではなく、人生を肯定する契機として描きます。批評家は「予測不能で生々しい」（IndieWire）、「感情的に破壊的」（The Guardian）と評し、94%のRotten Tomatoesスコアを獲得。オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー賞（AACTA）で最優秀作品賞を含む9部門を受賞しました。グリーンウッドの『ミス・フィッシャー』とは異なり、現代設定でコージーミステリーの軽快さはないものの、女性の視点とオーストラリアの文化的背景（シドニーの郊外生活）が共通しています。

キャスト

ミラ・フィンレイ：エリザ・スカンレン（Eliza Scanlen）。末期疾患の16歳の少女。初恋を通じて人生の喜びを見出す。
モーゼス：トビー・ウォレス（Toby Wallace）。23歳のドラッグディーラー。ミラの初恋相手で、家族に変化をもたらす。ヴェネチア映画祭で最優秀若手俳優賞受賞。
アンナ・フィンレイ：エッシー・デイヴィス（Essie Davis）。ミラの母。薬物依存と娘の病に苦しむ複雑なキャラクター。
ヘンリー・フィンレイ：ベン・メンデルスーン（Ben Mendelsohn）。ミラの父で精神科医。家族の危機に直面し、葛藤する。
トビー：エミリー・バークレイ（Emily Barclay）。妊娠中の隣人。物語にユーモアと温かみを加える。
アイザック：ザック・グレッチ（Zack Grech）。モーゼスの弟。脇役ながら家族の背景を補完。
音楽教師：ユージン・ギルフェダー（Eugene Gilfedder）。アンナとの過去を持つ脇役。

スタッフ

監督：シャノン・マーフィ（Shannon Murphy）。初の長編映画で、ヴェネチアやBFIロンドン映画祭で高評価。後に『キリング・イヴ』シーズン3を監督。
脚本：リタ・カルネジャイス（Rita Kalnejais）。自身の舞台劇を脚色。キャラクターの個性的な語り口を活かした。
製作：アレックス・ホワイト（Alex White）、ジャン・チャップマン（Jan Chapman）。オーストラリア映画界の著名プロデューサー。
撮影：アンドリュー・コンミス（Andrew Commis）。シドニーの郊外を色彩豊かに捉え、感情的なトーンを強化。
音楽：アマンダ・ブラウン（Amanda Brown）。クラシックと現代オーストラリア音楽を融合。
衣装デザイン：アメリア・ギアリー（Amelia Geary）。ミラの青春と病を反映した衣装で、物語のテーマを視覚化。

総括

『ベイビーティース』は、末期疾患を抱える少女ミラの初恋と家族の絆を描く、感動的かつユーモラスな青春ドラマです。エリザ・スカンレンとエッシー・デイヴィスの卓越した演技、シャノン・マーフィの繊細な演出、鮮やかな衣装と音楽が織りなす本作は、グリーンウッドの『ミス・フィッシャー』とは異なる現代的な視点で、オーストラリア映画の新たな魅力を示します。日本では2020年10月に公開され、Amazonプライムで配信中です。