『バットマン リターンズ』(1992年)はティム・バートン監督によるアクション映画。バットマンがゴッサムシティでペンギンやキャットウーマン(ミシェル・ファイファー演)と対決。ダークな世界観と個性的なキャラクターが魅力の128分。
基本情報
- 邦題:バットマン リターンズ
- 原題:Batman Returns
- 公開年:1992年
- 製作国:アメリカ
- 上映時間:128分
- ジャンル:アクション
- 配給:ワーナー・ブラザース映画
女優の活躍
本作で注目される女優は、キャットウーマン(セリーナ・カイル)を演じたミシェル・ファイファーです。彼女の演技は、セリーナの複雑な心理と変身後の大胆さを完璧に表現し、映画の中心的存在となっています。セリーナは最初、気弱で内向的な秘書として登場しますが、裏切りとトラウマを経てキャットウーマンとして覚醒。ファイファーはこの変化を見事に演じ分け、特にキャットウーマンとしての自信と危険な魅力が観客を引き込みます。彼女のアクションシーンでは、鞭を巧みに操る姿や、ペンギンやバットマンとの対峙で、身体能力の高さと感情の爆発を見せつけます。ファイファーの演技は批評家からも高く評価され、本作を象徴するキャラクターとして今なお語り継がれています。
また、アネット・ベニングが当初キャットウーマン役の候補でしたが、スケジュールの都合でファイファーに決定した経緯もあり、彼女の起用は運命的とも言えます。ファイファーは、ティム・バートン監督のビジョンに忠実に、かつ独自の解釈を加え、セリーナの脆さと強さを両立させた演技で、映画史に残る女性キャラクターを創り上げました。
女優の衣装・化粧・髪型
ミシェル・ファイファー演じるキャットウーマンの衣装は、本作のビジュアル面でのハイライトです。キャットウーマンのコスチュームは、黒いビニール素材のタイトなボディスーツで、縫い目が白い糸でラフに縫われたデザインが特徴です。このスーツは、セリーナの精神的な崩壊と再生を象徴し、手作り感のある粗さが彼女の混沌とした内面を表現しています。衣装は動きやすさとセクシーさを両立させ、ファイファーのアクションシーンでのしなやかな動きを際立たせます。特に、鞭をアクセサリーとして使用することで、キャットウーマンの支配的かつ挑発的な魅力を強調しています。
化粧は、セリーナの変身前と後で大きく異なります。秘書時代は控えめなメイクと眼鏡で地味な印象ですが、キャットウーマンとしては白塗りの顔に濃いアイラインと赤い口紅を施し、猫のような鋭い印象を与えます。
髪型も、秘書時代は整ったブロンドのショートヘアですが、キャットウーマンになると乱雑でワイルドなスタイルに変化し、彼女の内なる野生性を表現。
これらの要素は、ティム・バートンのゴシックな美学と相まって、キャットウーマンを視覚的に強烈なキャラクターとして確立しました。衣装デザイナーのメアリー・E・ヴォクトとボブ・リングウッドは、このアイコニックなルックを創り上げるために細部までこだわり、ミシェル・ファイファー自身もこの衣装を着ることで役に深く入り込んだと語っています。
あらすじ
ゴッサムシティはクリスマスの時期を迎え、暗い影が忍び寄る。実業家マックス・シュレック(クリストファー・ウォーケン)は、自身の利益のために市を操ろうと企む。一方、奇形の身体で生まれ育ったペンギン(ダニー・デヴィート)は、下水道から這い上がり、ゴッサムを混乱に陥れる計画を立てる。シュレックの秘書セリーナ・カイル(ミシェル・ファイファー)は、偶然彼の陰謀を知り、命を狙われるが、奇跡的に生き延び、キャットウーマンとして覚醒。復讐心に燃える彼女は、独自の目的で動き出す。
バットマン(マイケル・キートン)は、ペンギンの陰謀とキャットウーマンの予測不能な行動に立ち向かいながら、ゴッサムを守るため戦う。ペンギンは市長選を利用して権力を握ろうとし、シュレックと手を組むが、キャットウーマンの介入で計画は複雑化。バットマンは、ブルース・ウェインとしての私生活とヒーローとしての使命の間で葛藤しながら、二人を阻止しようとする。クライマックスでは、ペンギンの企みが暴かれ、キャットウーマンとシュレックの対決が展開。バットマンはセリーナとの複雑な関係に直面しつつ、ゴッサムを救うため決断を迫られる。ダークで哀愁漂う物語は、クリスマスの夜に終幕を迎える。
解説
『バットマン リターンズ』は、ティム・バートン監督の独特なゴシックスタイルとダークなユーモアが色濃く反映された作品です。1989年の『バットマン』の続編として製作され、前作以上にバートンの個性が際立つ。本作は、単なるスーパーヒーロー映画を超え、孤独や疎外、復讐といったテーマを掘り下げ、キャラクターたちの内面に焦点を当てています。特に、ペンギンとキャットウーマンは、社会から疎外された者たちの象徴として描かれ、バットマン自身もブルース・ウェインとしての人間性とヒーローとしての役割の間で葛藤します。バートンは、ゴッサムシティを雪に覆われたクリスマスの舞台に設定し、冷たくも幻想的な雰囲気を作り出しました。
美術デザインは、前作に引き続きボー・ウェルチが担当し、ゴシックとアールデコが融合した独特の世界観を構築。音楽はダニー・エルフマンが担当し、荘厳かつ不気味なスコアが物語のトーンを高めています。本作は、商業的にも成功を収め、全世界で2億6600万ドルの興行収入を記録しましたが、暴力的な描写やダークなテーマが一部で議論を呼び、ファミリー向けではないとの批判も受けました。それでも、キャットウーマンのキャラクター造形やバートンのビジョンは高く評価され、後のバットマン映画やコミックに影響を与えました。現代では、カルト的な人気を誇り、特にミシェル・ファイファーのキャットウーマンは、DCコミックスの女性キャラクターの金字塔として称賛されています。バートンの作家性が強く出た本作は、スーパーヒーロー映画の枠を超えた芸術作品としても評価されています。
キャスト
- マイケル・キートン:ブルース・ウェイン/バットマン
- ミシェル・ファイファー:セリーナ・カイル/キャットウーマン
- ダニー・デヴィート:オズワルド・コブルポット/ペンギン
- クリストファー・ウォーケン:マックス・シュレック
- マイケル・ガフ:アルフレッド・ペニーワース
- パット・ヒングル:ジェームズ・ゴードン
- ビンセント・スキャヴェリ:オルガン・グラインダー
- マイケル・マーフィー:市長
- クリスティ・コンネアウェイ:アイス・プリンセス
スタッフ
- 監督:ティム・バートン
- 脚本:ダニエル・ウォーターズ
- 原案:ダニエル・ウォーターズ、サム・ハム
- 原作:ボブ・ケイン(DCコミックス『バットマン』)
- 製作:デニス・ディ・ノヴィ、ティム・バートン
- 製作総指揮:ジョン・ピータース、ピーター・グーバー、ベンジャミン・メルニカー、マイケル・E・ウスラン
- 撮影:ステファン・チャプスキー
- 美術:ボー・ウェルチ
- 編集:クリス・レベンソン、ボブ・バダミ
- 音楽:ダニー・エルフマン
- 衣装デザイン:メアリー・E・ヴォクト、ボブ・リングウッド
レビュー 作品の感想や女優への思い