『ブルージャスミン』（2013年、米国）はウディ・アレン監督によるコメディ・ドラマ映画。裕福な生活から一転、困窮したヒロインが精神的な葛藤を抱えながら再起を目指す姿を描きます。ケイト・ブランシェットの圧倒的な演技が光り、アカデミー賞主演女優賞を受賞。サンフランシスコを舞台に、過去と現実の間で揺れる人間ドラマが展開します。
基本情報
- 邦題：ブルージャスミン
- 原題：Blue Jasmine
- 公開年：2013年
- 製作国：米国
- 上映時間：98分
- ジャンル：ドラマ、コメディ
- 配給：ロングライド
女優の活躍
本作の主演を務めるケイト・ブランシェットは、主人公ジャスミン役で圧巻の演技を見せ、批評家から絶賛されました。彼女はニューヨークのセレブ生活から転落し、精神的に不安定になる女性を繊細かつ力強く演じ、第86回アカデミー賞主演女優賞、ゴールデングローブ賞、BAFTA賞など数々の賞を受賞しました。ブランシェットは、ジャスミンの華やかな過去と破滅的な現在を行き来する複雑な心理を、表情や仕草、話し方の変化で巧みに表現。特に独白シーンでは、彼女の感情の揺れや内面の崩壊が見事に描かれ、観客を引き込みます。サリー・ホーキンスも妹ジンジャー役で好演し、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされました。彼女の自然体で庶民的な演技は、ジャスミンの不安定さと対比され、物語に深みを加えています。ブランシェットとホーキンスの姉妹の掛け合いは、映画の感情的な核となり、両者のケミストリーが高く評価されました。
女優の衣装・化粧・髪型
ジャスミンの衣装は、彼女のセレブ時代と転落後の生活を象徴しています。ニューヨークでの回想シーンでは、シャネルやエルメスなどの高級ブランドのドレスやバッグが登場し、洗練されたエレガンスを演出。白やクリーム色のシックな衣装は、彼女の社会的地位とプライドを強調します。一方、サンフランシスコでの現在では、質素な服や使い古されたバッグが登場し、過去の栄光とのギャップを表現。衣装デザイナーのスージー・ベンジンガーは、ジャスミンの心理状態を反映した衣装選びで、視覚的に物語を補強しました。化粧は、セレブ時代では完璧に整ったメイクが施され、ゴージャスな印象を与えますが、転落後は薄く、疲れた表情を際立たせるメイクに変化。髪型も同様で、過去では整ったブロンドのアップスタイルが特徴的ですが、現在では乱れがちなルーズなスタイルが、彼女の精神的な不安定さを示唆します。サリー・ホーキンス演じるジンジャーは、カジュアルなTシャツやジーンズ、ナチュラルなメイクで庶民的な魅力を表現し、姉妹の対比を際立たせています。
あらすじ
ジャスミン（ケイト・ブランシェット）は、ニューヨークの社交界で裕福な実業家ハル（アレック・ボールドウィン）と結婚し、豪華な生活を送っていました。しかし、ハルの不倫と詐欺行為が発覚し、結婚生活は破綻。資産も名誉も失ったジャスミンは、サンフランシスコに住む妹ジンジャー（サリー・ホーキンス）の質素なアパートに身を寄せます。過去の栄光にしがみつき、抗うつ剤と酒に頼るジャスミンは、受付の仕事やパソコン教室に通いながら再起を図りますが、慣れない環境に精神は不安定に。ある日、パーティーで外交官ドワイト（ピーター・サースガード）と出会い、上流階級への復帰を夢見ます。しかし、虚栄心と現実逃避から嘘を重ね、彼女の人生はさらに混迷を深めます。過去と現在の時間軸が交錯しながら、ジャスミンの心の闇と葛藤が描かれます。
解説
『ブルージャスミン』は、テネシー・ウィリアムズの戯曲『欲望という名の電車』を現代的に再解釈した作品として、批評家から高い評価を受けました。ウディ・アレン監督は、シリアスな人間ドラマとシニカルなユーモアを融合させ、虚栄心や社会階級、精神的な脆さをテーマに掘り下げます。ジャスミンは、物質的な成功に依存し、自己欺瞞に陥る現代人の象徴として描かれ、ブランシェットの鬼気迫る演技がその悲劇性を際立たせます。映画は、過去の回想と現在の苦悩を交互に描く構成で、ジャスミンの心理的崩壊を丁寧に追います。サンフランシスコとニューヨークの対比も効果的で、都市の雰囲気や音楽（特に「ブルームーン」）が物語の感情を増幅。興行的にも成功し、全世界で約9910万ドルの興行収入を記録（予算1800万ドル）。アレンのキャリアでも傑作の一つとされ、社会的地位や自己認識について深く考えさせる作品です。
キャスト
- ジャスミン・フレンチ：ケイト・ブランシェット（元セレブ、精神的に不安定なヒロイン）
- ジンジャー：サリー・ホーキンス（ジャスミンの妹、庶民的なシングルマザー）
- ハル：アレック・ボールドウィン（ジャスミンの元夫、実業家）
- ドワイト：ピーター・サースガード（外交官、ジャスミンの再起の希望）
- チリ：ボビー・カナヴェイル（ジンジャーの恋人、労働者階級）
- オーギー：アンドリュー・ダイス・クレイ（ジンジャーの元夫）
- アル：ルイス・C・K（ジンジャーの新しい恋人）
- ダニー：マックス・カセラ（ハルの息子）
- レイレット：オールデン・エアエンライク（若者役）
スタッフ
- 監督・脚本：ウディ・アレン
- 製作：レッティ・アロンソン、スティーヴン・テネンバウム、エドワード・ウォルソン
- 製作総指揮：レロイ・シェクター、アダム・B・スターン
- 撮影：ハビエル・アギーレサロベ
- 編集：アリサ・レプセルター
- 衣装デザイン：スージー・ベンジンガー
- 製作会社：グラビエ・プロダクションズ
- 配給：ソニー・ピクチャーズ・クラシックス（米国）、ロングライド（日本）
まとめ
『ブルージャスミン』は、ケイト・ブランシェットの圧倒的な演技とウディ・アレンの鋭い脚本が融合した傑作です。衣装やメイク、髪型はキャラクターの心理を映し出し、物語に深みを与えます。社会的地位の喪失と自己欺瞞を描く本作は、現代社会における人間の脆さを浮き彫りにし、観る者に強い印象を残します。
レビュー 作品の感想や女優への思い