『Catwoman: Hunted』は、ビル・フィンガーとボブ・ケインによるDCコミックのキャラクター、キャットウーマンを原作とし、ワーナー・ブラザース・アニメーションがDCエンターテインメントのために製作した2022年のアメリカのスーパーヒーロー・アニメ映画。ワーナー・ブラザース・ホームエンターテインメントにより2022年2月8日に公開されました。DCユニバースアニメーションオリジナルムービーの第47弾。
グレッグ・ワイズマンの脚本を寺沢伸介が監督しました。主演はエリザベス・ギリーズとステファニー・ベアトリス。アニメ「ポケットモンスター」シリーズを手がける日本のスタジオ、OLMは、チーム井上とともに本作にアニメーション・サービスを提供しました。この映画は、キャットウーマンが高価な宝石を盗もうとするが、犯罪者と悪党の強力な連合体、インターポール、そしてバットウーマンの矢面に立たされる姿を描いています。
Catwoman: Hunted
- 原題:Catwoman: Hunted
- 公開年:2022年
- 製作国:米国
- 上映時間:78分
- ジャンル:アニメ
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感想
2022年に公開されたアニメ映画『Catwoman: Hunted』は、DCコミックスの人気キャラクター、キャットウーマンことセリーナ・カイルを主人公にしたアクション満載の作品です。本作は、従来のDCアニメーション作品とは一線を画す、アニメスタイルとノワール的な雰囲気を取り入れたユニークな一作として注目されました。以下、感想を述べます。
まず、ビジュアル面での印象が非常に強い作品です。日本のアニメスタジオであるOLMが製作を担当しており、鮮やかな色彩と流れるようなアニメーションが特徴的です。特に、キャットウーマンの動きはしなやかで、彼女の猫のような敏捷性や優雅さがアニメスタイルによって強調されています。戦闘シーンはスピーディで、振り付けが緻密に計算されているため、観ていて純粋に楽しい。背景美術もゴッサムシティの暗い雰囲気と、国際的な犯罪組織の豪華な拠点が見事に融合しており、視覚的な没入感を高めています。
ストーリーについては、キャットウーマンが高価なエメラルドを盗もうとするところから始まり、インターポールやバットウーマン、そして犯罪組織ブラックマスクやレヴィアサンに追われる展開が描かれます。プロット自体はシンプルで、典型的な「盗賊が追われる」物語の枠組みに収まっていますが、セリーナの機知とユーモアが物語に軽快なリズムを与えています。彼女のキャラクターは、自己中心的でありながらもどこか憎めない魅力に溢れており、エリザベス・ギリーズの声の演技がその個性をさらに引き立てています。セリーナが窮地に立たされても、決して慌てず、むしろ状況を楽しむような態度が、キャットウーマンらしい「自由な魂」を体現していました。
一方で、物語の深みに欠ける点は否めません。セリーナ以外のキャラクター、特にバットウーマンやインターポールの捜査官たちは、彼女の引き立て役に徹している印象を受けました。バットウーマンとの掛け合いはコミカルで楽しいものの、彼女自身の背景や動機がほとんど掘り下げられず、表面的な関係性に終始しています。また、敵役であるブラックマスクやレヴィアサンのリーダー、タリア・アル・グールの描写もややステレオタイプで、単なる「悪の組織」の枠を超える魅力が不足していました。この点で、セリーナのキャラクターに頼りすぎている脚本の限界を感じました。
テーマとしては、キャットウーマンの「自由」と「独立」が強調されています。彼女はどの陣営にも属さず、自分のルールで生きる姿勢を貫きます。この点は、DCコミックスの原作ファンにとっても納得のいく描き方でしょう。しかし、彼女の行動原理や内面の葛藤にもう少し踏み込んでいれば、物語に深みが増し、単なるアクション映画を超える作品になれたかもしれません。例えば、セリーナがなぜ盗みを続けるのか、彼女の過去やゴッサムでの生活がどう彼女を形成したのかといった背景がほのめかされる程度で、明確な掘り下げがないのは残念でした。
音楽も本作の大きな魅力の一つです。作曲家のヤマ・ヤマが手掛けたサウンドトラックは、ジャズとエレクトロニカが融合したスタイリッシュな雰囲気で、キャットウーマンのクールなキャラクター性を引き立てています。特に、アクション場面でのビート感や、セリーナが夜の街を駆け抜けるシーンのBGMは、作品のトーンに完璧にマッチしていました。
全体として、『Catwoman: Hunted』はキャットウーマンの魅力を最大限に活かした、スタイリッシュで楽しいアニメ映画です。アニメーションのクオリティ、アクションの爽快感、セリーナのキャラクター描写は素晴らしく、DCファンやアニメファンにとって見応えのある作品に仕上がっています。ただし、ストーリーの深みやサブキャラクターの掘り下げが不足しているため、傑作と呼ぶには一歩及ばない印象です。それでも、キャットウーマンの軽快な冒険を気軽に楽しみたいという視聴者には十分満足できる内容でしょう。個人的には、セリーナの次なるアニメでの活躍にも期待が高まる一作でした。
解説
2022年2月8日に公開されたアニメ映画『Catwoman: Hunted』は、DCコミックスの人気キャラクター、キャットウーマン(セリーナ・カイル)を主人公にしたアクションアドベンチャー作品です。本作は、日本のアニメスタジオOLMが製作し、DCアニメーション映画としては初めて日本のアニメスタイルを全面的に採用した点で注目を集めました。監督は寺沢晋吾、脚本はグレッグ・ワイズマンが担当し、ノワールとスリラーの要素を織り交ぜた物語が展開します。以下、本作の概要、特徴、テーマ、キャスト、製作背景を解説します。
概要とストーリー
『Catwoman: Hunted』は、キャットウーマンが高価な「キャッツ・アイ・エメラルド」を盗もうとするところから物語が始まります。しかし、この盗みが国際的な犯罪組織レヴィアサンとそのリーダー、タリア・アル・グール、そしてブラックマスクの陰謀に繋がり、セリーナはインターポールやバットウーマン(ケイト・ケイン)に追われる身となります。物語は、セリーナが機知と身体能力を駆使して敵や味方との駆け引きを繰り広げ、自身の自由を守るために戦う姿を描きます。舞台はゴッサムシティから国際的な犯罪の拠点まで広がり、アクションとユーモアが織り交ぜられた展開が特徴です。
プロットは、典型的な「怪盗もの」の枠組みを持ち、セリーナの軽快なキャラクター性が物語の中心。彼女はどの陣営にも属さず、独自のルールで生きる姿勢を貫きます。しかし、ストーリーは深みよりもアクションとテンポを重視しており、サブキャラクターの背景や動機はあまり掘り下げられません。特に、敵役のブラックマスクやタリアは典型的な悪役として機能し、複雑な内面は描かれません。
ビジュアルとアニメーション
本作の最大の特徴は、日本のアニメスタイルを採用したビジュアルです。OLMのアニメーションは、流れるような動きとしなやかな戦闘シーンでキャットウーマンの猫らしい敏捷性を強調。色彩は鮮やかで、ゴッサムの暗い街並みと犯罪組織の豪華な拠点が対比的に描かれます。戦闘の振り付けは緻密で、特にセリーナとバットウーマンのアクション場面は見どころ。背景美術も細かく、ノワール的な雰囲気とアニメの軽快さが融合した独特のトーンを生み出しています。
キャストと演技
声優陣は豪華で、セリーナ・カイル役のエリザベス・ギリーズがキャラクターのクールさとユーモアを見事に表現。彼女の声は、セリーナの自信と狡猾さを体現し、物語の軽快なリズムを支えます。バットウーマン役のステファニー・ベアトリスは、セリーナとのコミカルな掛け合いで好演を見せるが、キャラクターの掘り下げが少なく、脇役に留まる印象。ブラックマスク(ジョナサン・バンクス)やタリア(ローレン・コーハン)も存在感はあるが、脚本の限界からステレオタイプな悪役に終始します。
音楽と雰囲気
音楽はヤマ・ヤマが担当し、ジャズとエレクトロニカを融合させたサウンドトラックが作品のスタイリッシュな雰囲気を強化。アクション場面でのビート感や、セリーナが夜の街を駆け抜ける場面のBGMは、キャットウーマンのクールなキャラクター性とマッチしています。音響効果も戦闘の緊張感を高め、視覚と聴覚の両方で観客を引き込みます。
テーマと意義
本作のテーマは、キャットウーマンの「自由」と「独立」です。セリーナは権力や組織に縛られず、自分の道を切り開く姿勢を貫きます。この点は、原作コミックでの彼女の魅力を忠実に反映しており、ファンにとって納得のいく描き方です。しかし、彼女の内面や動機の掘り下げが浅く、単なるアクション映画の枠を超える深みに欠ける点は惜しまれます。DCアニメーションとしては、キャットウーマンを単独主人公にした初の長編作品であり、女性キャラクターの活躍を描く意義は大きいものの、物語の革新性では他のDC作品に及ばない印象です。
製作背景と評価
『Catwoman: Hunted』は、DCがアニメ市場での新たな試みとして日本のアニメスタイルを取り入れた実験的な作品です。OLMの参加により、従来のDCアニメとは異なる視覚的アプローチが実現しました。公開後は、ビジュアルとアクションが高く評価された一方、ストーリーの単純さやキャラクターの深み不足を指摘する声も。ファン層では、キャットウーマンの魅力が存分に楽しめる作品として好意的に受け止められましたが、批評家からは「軽快だが忘れられやすい」との意見も見られました。
結論
『Catwoman: Hunted』は、キャットウーマンの魅力をアニメスタイルで活かした、スタイリッシュで楽しいアクション映画です。ビジュアル、音楽、セリーナのキャラクター描写は優れており、DCやアニメファンを楽しませる要素が揃っています。ただし、ストーリーの深みやサブキャラクターの掘り下げが不足し、傑作には一歩及ばない。キャットウーマンの単独冒険を気軽に楽しみたい視聴者におすすめの一作です。
声のキャスト
- エリザベス・ギリーズ(キャットウーマン/セリーナ・カイル役)
- ステファニー・ベアトリス(バットウーマン/ケイト・ケイン役)
- カービー・ハウエル=バティスト(チーター/バーバラ・ミネルバ役)
- ゼーラ・ファザル(タリア・アル・グール、ノスフェラータ、インターポール・コマンドー1役)
- スティーヴ・ブラム(ソロモン・グランディ、アバドン、パイロット役)
- ローレン・コーハン(ジュリア・ペニーワース役)
- ジョナサン・バンクス(ブラックマスク/ローマン・シオニス役)
- キース・デイヴィッド(トビアス・ホエール、モラックス役)
- ジョナサン・フレイクス/ファラデー王、モクシー・ボス役)
- ケリー・フー(チェシャ/ジェイド・グエン役)
- アンドリュー・キシノ(ミスター・ヤクザ、リヴァイアサン・ガード、ドミノ役)
- エリック・ロペス(ドミノ、リヴァイアサン・ガード、バレット役)
- ジャクリーン・オブラドールス(アンパロ・カルデナス/ラ・ダマ役)
- ロン・ユアン/ドクター・ツィン・ツィン、インターポール・コマンドー役)
スタッフ
以下は、2022年に公開されたアニメ映画『Catwoman: Hunted』の主要スタッフを箇条書きでまとめたリストです。情報は、映画のクレジットおよび公開資料に基づいています。
- 監督…寺沢伸介
- 脚本…グレッグ・ワイズマン
- 製作総指揮…サム・レジスター、マイケル・E・ウスラン
- プロデューサー…イーサン・スパウディング、コリン・A・B・V・ルイス
- 音楽…ヤマ・ヤマ
- 編集…ロバート・エーレンライク
- アニメーション製作…OLM, Inc.
- アートディレクション…マシュー・ギリエ
- キャラクターデザイン…寺沢伸介、山本美佳
- 音響監督…ウェス・グリーソン
レビュー 作品の感想や女優への思い