1920年代のシカゴを舞台に、殺人罪で投獄された女性歌手たちが名声と自由を求め、華やかなショービジネスの世界で繰り広げる欲望と裏切りを描いたミュージカル映画。
基本情報
- 邦題:シカゴ
- 原題:Chicago
- 公開年:2003年
- 上映時間:113分
- 製作国:米国
- ジャンル:ドラマ、ミュージカル
- 配給:ギャガ・コミュニケーションズ
見どころ
- 第75回アカデミー賞6部門受賞、“ミュージカルの神様”ボブ・フォッシーの名作をスターの共演で豪華絢爛に描写。
- レネー・ゼルウィガー、キャサリン・ゼタ=ジョーンズら主演陣の歌とダンスが圧巻。
感想
ミュージカルが苦手な私でもそこそこ楽しく見られました。
ファム・ファタル
1時間40分頃、最後の場面でロキシーとヴェルマが踊ります。白地にスパンコールをまぶしたミニドレスにハイヒールシューズ。シンプルな衣装で二人が並んで踊り、二人の確執を融和させています。
ヴェルマ・ケリー(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)
本作最高のファム・ファタルは、何といっても冒頭から慌ただしくキャバレーに駆け込み、急いで着替えてステージで踊り始めるヴェルマ・ケリー。
この売れっ子ダンサーをキャサリン・ゼタ=ジョーンズが演じます。暗がりの道をハイヒールで駆け抜け職場へ向かい、到着すると控室で黒のコルセットやタイツやグローブを着て舞台に出ます。
時代設定が1920年代なのでガーターストッキングの時代。仕事柄アウターかインナーかわからない服装ですが、その仕事着に着替えるときに、キャサリンの色気むんむんなランジェリーを拝むことができます。
込み込みの楽屋で慌ただしく着替える場面って、役者をテーマにした映画によるありますが、見るたびにいつも嗅覚を満たせたい欲望に駆られます。洗いたてじゃなく、日常的に着用してそうな衣装類に見えるからかも。
ロキシー・ハート(レネー・ゼルウィガー)
同じく冒頭登場し、舞台裏で客とエッチをするロキシー・ハートもファム・ファタル全快。レネー・ゼルウィガーが演じています。
こちらは柔らかい部屋着を着ていて、オレンジ色のローブにベージュのキャミソール。同じくベージュのガーターストッキングで、これを脱ぐ場面もちらほら。
キティ・バクスター(ルーシー・リュウ)
ダンス場面がありませんが、詐欺師風の男にブチギレて射殺するキティをルーシー・リューが演じています。
ハニャク(エカテリーナ・シェチェルカノワ)
絞首刑になった残念なダンサー、ハニャクをエカテリーナ・シェチェルカノワが演じました。ホクロがチャームポイント。
刑の執行前にやつれた表情で絞首台に上がる姿が切ない反面、同時進行で白のドレス、白の網タイツ、白のハイヒールシューズで舞台に上がる場面が挿入されます。
市井での絞首刑なので、舞台ともども人間の表現とは「ステージ」に過ぎないのだという印象をもちました。
全体的に
ダンス場面は全体的に露出度の高い衣装。なかには1920年代になさそうな、網タイツ、ニットのボディスーツ、エナメルのコルセットもあり、フェティッシュ・ファッションも楽しめます。マドンナが真似たかマドンナを真似たか、かなり被ります。
時代考証的に1920年代らしいのは、むしろオレンジのビキニと白のストッキングを着た35分頃からのダンス場面でしょうか…。
女優の活躍
本作では、レネー・ゼルウィガーとキャサリン・ゼタ=ジョーンズが主演を務め、圧倒的な存在感を示しました。
レネー・ゼルウィガーはロキシー・ハート役で、歌手になる夢を抱く無垢な女性から、計算高くメディアを操るスターへと変貌する複雑な役柄を見事に演じ切りました。彼女の歌唱シーン、特に「Funny Honey」や「Roxie」では、感情の起伏を表現しつつ、ダンスパフォーマンスでも観客を魅了。ゼルウィガーはこの役でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、女優としての幅広さを証明しました。
一方、キャサリン・ゼタ=ジョーンズはヴェルマ・ケリー役で、自信に満ちたスター歌手の魅力と脆さを体現。彼女の「All That Jazz」や「Cell Block Tango」でのパフォーマンスは、力強くセクシーで、ボブ・フォッシーの振付を完璧に再現し、アカデミー賞助演女優賞を受賞しました。
両女優は、互いに競い合うライバル役として火花を散らし、映画の緊張感と華やかさを高めました。
また、クイーン・ラティファが看守ママ・モートン役で脇を固め、「When You’re Good to Mama」での迫力ある歌唱とユーモラスな演技で印象を残しました。彼女もまた、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされ、存在感を発揮しました。
女優の衣装・化粧・髪型
『シカゴ』の衣装、化粧、髪型は、1920年代のジャズエイジの華やかさと退廃的な雰囲気を反映し、女優たちのキャラクター性を強調する重要な要素です。
レネー・ゼルウィガーのロキシーは、初期にはシンプルなドレスや囚人服で登場し、無垢で夢見がちな女性を表現。物語が進むにつれ、キラキラしたスパンコールのドレスやフェザーをあしらった衣装に変わり、スターとしての変貌を象徴します。彼女の化粧は、ピンク系のチークと赤いリップで若々しさを保ちつつ、目元の濃いアイラインでドラマチックな印象を加えました。髪型は、ボブカットにカールをつけたスタイルで、1920年代のフラッパースタイルを再現。
キャサリン・ゼタ=ジョーンズのヴェルマは、黒や赤を基調とした大胆な衣装で登場し、セクシーで自信に満ちたスター像を強調。特に「All That Jazz」のシースルーのドレスや網タイツは、彼女の妖艶さを際立たせます。化粧は、濃いスモーキーアイと深紅のリップで強い女性像を表現し、短いボブにウェーブを加えた髪型が時代感を演出。
クイーン・ラティファのママ・モートンは、豪華なコルセットドレスや羽飾りの帽子で権力者を表現し、ゴールドや赤の派手なメイクで存在感を放ちます。衣装はコリーン・アトウッドによるデザインで、アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞。細部まで計算された衣装とメイクは、キャラクターの内面と物語の進行を視覚的に支えました。
あらすじ
1920年代のシカゴ。ヴェルマ・ケリー(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)は、姉と夫の不倫をに流したかったが衝動的に二人を殺害し、監獄へ送られる。一方、歌手になる夢を抱くロキシー・ハート(レネー・ゼルウィガー)は、愛人との関係が破綻し、彼を射殺して同じ監獄に収監される。ロキシーは獄中でヴェルマと出会い、彼女の華やかなパフォーマンスと名声に憧れるが、互いにライバル意識を燃やす。敏腕弁護士ビリー・フリン(リチャード・ギア)を雇い、メディアを利用して世間の注目を集めることで、ロキシーは無罪を勝ち取ろうと画策。ヴェルマもまた、ビリーの助けで再び脚光を浴びようとする。二人の女優は、裁判とショービジネスの舞台で競い合い、裏切りや策略を繰り返しながら、名声への執着を追い求める。やがて、彼女たちは予想外の形で共演の道を選び、シカゴの夜を彩る新たなスターとして生まれ変わる。
解説
『シカゴ』は、1975年のブロードウェイミュージカルを原作とした2003年公開の映画で、監督はロブ・マーシャル。1920年代のジャズエイジを背景に、名声、欲望、裏切りをテーマにした物語は、現代にも通じるメディアの力や人間の野心を風刺的に描いています。
本作は、舞台劇の持つエネルギーと映画のビジュアル表現を見事に融合させ、ミュージカル映画の新たな金字塔となりました。特に、舞台と現実が交錯する演出や、音楽とダンスが物語を推進する構成が特徴です。映画はアカデミー賞で作品賞を含む6部門を受賞し、ミュージカル映画の復興を印象づけました。キャストの歌唱力と演技力、ボブ・フォッシーの振付を基にしたダンスシーンは、観客を引き込む力強さを持ち、豪華なセットや衣装が1920年代の雰囲気を再現。物語は、女性の自立や社会の虚飾を浮き彫りにし、エンターテインメントの裏側にある人間ドラマを巧みに描き出しています。
キャスト
- レネー・ゼルウィガー(ロキシー・ハート):歌手を目指す女性で、殺人罪で投獄される。
- キャサリン・ゼタ=ジョーンズ(ヴェルマ・ケリー):スター歌手で、ロキシーのライバル。
- リチャード・ギア(ビリー・フリン):敏腕弁護士で、メディアを操る策士。
- クイーン・ラティファ(ママ・モートン):監獄の看守で、賄賂を受け取り囚人を操る。
- ジョン・C・ライリー(エイモス・ハート):ロキシーの夫で、彼女に裏切られる哀れな男。
- ルーシー・リュー(キティ・バクスター):後半に登場する新たな殺人犯。
- クリスティーン・バランスキー(メアリー・サンシャイン):ゴシップ記者。
登場人物 | 出演者 |
---|---|
バンドリーダー | テイ・ディグス |
舞台監督 | クリフ・サンダース |
ヴェルマ・ケリー | キャサリン・ゼタ=ジョーンズ |
ロキシー・ハート | ルネ・ゼルウィガー |
フレッド・ケイスリー | ドミニク・ウェスト |
ボーセヴィッチ夫人 | ジェイン・イーストウッド |
警察カメラマン | ブルース・ビートン |
フォガティ巡査部長 | ローマン・ポドホラ |
エイモス・ハート | ジョン・C・ライリー |
ハリソン | コルム・フェオア |
新聞カメラマン | ロブ・スミス |
記者 | ショーン・ウェイン・ドイル |
刑務官 | スティーブ・ベホール |
刑務官 | ロビー・ロックス |
ニッキー | チタ・リベラ |
寮母ママ・モートン | クイーン・ラティファ |
リズ | スーザン・ミスナー |
アニー | デニス・フェイ |
ジューン | デイドレ・グッドウィン |
フニャック | エカテリーナ・チェチェルカノワ |
モナ | ミヤ(ミーヤ・ハリソン) |
バーニー | ジョーイ・ピッツィ |
エゼキアル・ヤング | スコット・ワイズ |
ウィルバー | ケン・アード |
フニャックの夫 | マーク・カラミア |
ヴェロニカ | ニキ・レイ |
チャーリー | グレゴリー・ミッチェル |
アル・リプシッツ | セバスチャン・ラ・コーズ |
ビリー・フリン | リチャード・ギア |
メアリー・サンシャイン | クリスティン・バランスキー |
ビリーのアシスタント | ブレンダン・ウォール |
ガン」レポーター1号 | クリーブ・アズベリー |
ガン」レポーター2号 | リック・ネグロン |
ガン」レポーター3号 | ショーン・エイミオット |
ビリーの秘書 | イブ・クロフォード |
ニュースリール・アナウンサー(声) | ビル・コルセア |
競売人 | ビル・ブリット |
セーラー | ジェリー・フィオリーニ |
香水レディ | エリザベス・ロー |
キティ・バクスター | ルーシー・リュー |
ハリー | ジョセフ・スコレン |
裸の女1号 | モニーク・ガンダートン |
裸の女2号 | エイプリル・モーガン |
股間レポーター | マーティ・モロー |
ドクター | コンラッド・ダン |
廷吏 | ジョナサン・ウィテカー |
陪審員長 | ロッド・キャンベル |
ハリソンの助手 | ブレット・カルーソ |
判事 | ショーン・マッキャン |
裁判所書記官 | ジェフ・クラーク |
新聞配達員 | パトリック・サルバンナ |
女射手 | ケイト・ゼナ(キャサリン・ゼナ) |
クラブ・オーナー | ジェフ・プスティル |
女性ダンサー | ロクサーヌ・バーロウ |
女性ダンサー | ジョセリン・ダウリング |
女性ダンサー | メラニー・A・ゲイジ |
女性ダンサー | ミシェル・ジョンストン |
女性ダンサー | チャーリー・キング |
女性ダンサー | メアリー・アン・ラム |
女性ダンサー | ヴィッキー・ランバート |
女性ダンサー | タラ・ニコール・ヒューズ |
女性ダンサー | シンシア・オンルビア |
女性ダンサー | カリーヌ・プランタディ・バジョー |
女性ダンサー | ジェニファー・サヴェリ |
女性ダンサー | ナタリー・ウィレス |
女性ダンサー | カレン・アンドリュー |
女性ダンサー | ケルシー・チェイス |
女性ダンサー | キャサリン・キアレッリ |
女性ダンサー | テレサ・クーム |
女性ダンサー | リサ・ファーガソン |
女性ダンサー | メリッサ・フレランジル |
女性ダンサー | ミシェル・ガラティ |
女性ダンサー | シェリー・ゴドフリー |
女性ダンサー | ブリタニー・グレイ |
女性ダンサー | カレン・ホルネス |
女性ダンサー | アンバー=ケリー・マッケレス |
女性ダンサー | ジョディ・マクファデン |
女性ダンサー | フェイ・ラウ |
女性ダンサー | ロンダ・ロバーツ |
女性ダンサー | リー・トーレッジ |
女性ダンサー | ロビン・ウォン |
男性ダンサー | テッド・バンファルビ |
男性ダンサー | ハリソン・ビール |
男性ダンサー | ポール・ベッカー |
男性ダンサー | ジャン・リュック・コテ |
男性ダンサー | スコット・ファウラー |
男性ダンサー | エドガー・ゴディノー |
男性ダンサー | ビル・ハートゥング |
男性ダンサー | ダレン・リー |
男性ダンサー | トロイ・P・リデル |
男性ダンサー | ブレイク・マクグラス |
男性ダンサー | ロバート・モンターノ |
男性ダンサー | ショーン・パーマー |
男性ダンサー | デズモンド・リチャードソン |
男性ダンサー | マーティン・サミュエル |
男性ダンサー | ジェイソン・セルモニア |
男性ダンサー | ジェフ・シーバート |
男性ダンサー | セルジオ・トルヒーヨ |
アクロバット | ステイシー・クラーク・ベイズリー |
アクロバット | ミーガン・フェールバーグ |
アクロバット | レイチェル・ジェイコブス |
アクロバット | レベッカ・レナード |
アクロバット | エリン・ミッチー |
アクロバット | ダニエル・ルエダ=ワッツ |
女性総合 | ダナ・カリトリ |
女性アンサンブル | ケイト・コフマン=ロイド |
男性アンサンブル | カーティス・キング・ジュニア |
女性アンサンブル | ローラ・ディーン |
女性アンサンブル | マーガレット・ドーン |
女性アンサンブル | キャパシア・ジェンキンス |
女性アンサンブル | オードリー・マーテルズ |
女性アンサンブル | サラ・ラミレス |
女性アンサンブル | ニッキー・リチャーズ |
男性アンサンブル | デニス・コリンズ |
男性アンサンブル | ダリウス・デ・ハース |
男性アンサンブル | ウィリー・フォーク(別名義) |
男性アンサンブル | ティモシー・シュー |
男性アンサンブル | アルフォンゾ・ソーントン(フォンジー・ソーントン) |
男性アンサンブル | エリック・トロイヤー |
スーツの男(クレジットなし) | ミキー・ダ・ポエット |
劇場関係者(クレジットなし) | マイケル・セルチ |
スタッフ
- 監督:ロブ・マーシャル
- 脚本:ビル・コンドン
- 原作:モーリン・ダラス・ワトキンス(戯曲)、ボブ・フォッシー(ミュージカル)
- 音楽:ジョン・カンダー
- 詞:フレッド・エッブ
- 振付:ロブ・マーシャル(ボブ・フォッシーのスタイルを基に)
- 衣装デザイン:コリーン・アトウッド
- 撮影:ディオン・ビーブ
- 編集:マーティン・ウォルシュ
- 製作:マーティン・リチャーズ
衣装デザイン | コリーン・アトウッド |
衣装(ギア用) | トミー・ボイヤー |
衣装監督 | コリ・バーチェル |
主任衣装 | クリスティン・L・カンテラ |
衣装バイヤー | イアン・ドラモンド |
ドレッサー ゼルウィガー | レニー・フォンタナ |
ドレッサー(キャサリン用) | ジェリ・ギラン |
衣装制作アシスタント | ヘザー・グッドチャイルド |
お針子 | リッタ・コレバ |
衣装裁断師 | ロリーン・ライトフット |
お針子 | スーザン・マクラウド |
衣装染色・分解 | トレローニー・ミード |
裁断師 | カレン・ナーザー |
お針子 | ジャニス・スキナー |
衣装・カッター部長 | デール・ウィベン |
衣装監督:セカンド・ユニット | モニカ・ウィアー |
製粉師 | ショーン・バレット |
衣装・テキスタイル・アーティスト | ゲイ・ガーディナー |
お針子 | タチアナ・フティネック |
衣装・イラストレーター | カルロス・ロサリオ |
歯科補綴 | ゲイリー・アーチャー |
ヘアスタイル:ゼルウィガー追加撮影 | デール・ブラウネル |
ヘアスタイル ゼルウィガー | コリーン・キャラハン |
ヘアスタイル助手/ヘアスタイル:追加セカンド・ユニット | ベロニカ・チャンドレ |
メイクアップ(ギア用) | ルアン・クラップス |
ヘアスタイル主任 | ジュディ・クーパー・シーリー |
ヘアスタイル助手/ヘアスタイル主任:セカンド・ユニット | ポーラ・フリート |
メイクアップ:追加撮影セカンドユニット | キャスリーン・グラハム |
メイクアップ:セカンド・ユニット | ブライアン・ホイ |
ヘアスタイル(キャサリン用) | カーリン・アレクサンダー・ヒューストン |
メイクアップ助手 | パトリシア・キーグラン |
ヘアスタイル助手 | ルーシー・M・オートン |
メイクアップ助手 | エデルガード・K・プルフルグル |
ヘアスタイル ギア | リンデル・クイユー |
メイクアップ主任/メイクアップ(ゼルウィガー用) | ジョーダン・サミュエル |
メイクアップ(キャサリン用) | シンディ・J・ウィリアムズ |
メイクアップ | ヨハンヌ・ボワヴェール |
かつら職人 | エルヴィン・H.クピッツ |
レビュー 作品の感想や女優への思い