《七月的舞步》は曹岸が自ら脚本と監督を務めた2021年の中国の奇幻青春喜劇映画です。主演は張予曦と黄小蕾で、母娘の身体交換を通じて親子関係や夢の追求を描きます。2021年7月24日に中国で公開され、青春の葛藤と和解をテーマに、街舞とバレエの融合が魅力です。
基本情報
- 原題：七月的舞步
- 英題：Crazy Chinese Mother
- 公開年：2021年
- 製作国：中国
- 上映時間：90分
女優の活躍
本作の主演である張予曦と黄小蕾は、母娘役として見事な演技を披露し、物語の感情的な核を担っています。
張予曦（顧悠悠役）
張予曦は、自由奔放で街舞を愛する若者、顧悠悠を演じます。彼女の演技は、青春の情熱と反抗心を自然に表現し、観客に強い印象を与えます。特に、母との身体交換後のコミカルな場面では、戸惑いながらも母の立場を理解しようとする繊細な感情を巧みに演じています。張予曦は本作で、若者らしいエネルギーと内面的な成長を見事に体現し、視覚的にも美しいダンスシーンでその魅力を最大限に発揮しています。彼女のこれまでの出演作には『智取威虎山』や『如懿伝』などがあり、本作でもその演技力が光ります。
黄小蕾（呂小梅役）
黄小蕾は、厳格でバレエに情熱を注ぐ母親、呂小梅を演じます。彼女は元ダンサーとしての過去と、娘への強い期待を背景に、複雑な感情を表現します。身体交換後、娘の視点で街舞に触れるシーンでは、コミカルでありながらも次第に娘の夢を理解する母親の成長を見事に描き出しています。黄小蕾は『人在囧途』や『武林外伝』など、コメディからシリアスな役まで幅広くこなす実力派で、本作でもその多才さが発揮されています。彼女のダンス経験が、劇中のバレエシーンに説得力を持たせています。
女優の衣装・化粧・髪型
本作では、張予曦と黄小蕾の衣装、化粧、髪型が、キャラクターの個性や物語のテーマを強調する重要な要素となっています。
張予曦（顧悠悠）
顧悠悠の衣装は、街舞を愛する若者らしいカジュアルでエネルギッシュなスタイルが特徴です。ルーズなTシャツ、ダンス用のスニーカー、カラフルなキャップなど、ストリートカルチャーを反映したコーディネートが目立ちます。化粧はナチュラルで、若々しい肌の輝きを強調し、活動的な印象を与えます。髪型はポニーテールや無造作なダウンスタイルが多く、自由で動きやすいデザインが採用されています。身体交換後のシーンでは、母親らしい落ち着いた服装に戸惑う姿がコミカルに描かれ、彼女の普段のスタイルとの対比が際立ちます。
黄小蕾（呂小梅）
呂小梅の衣装は、大学講師としての品格とバレエダンサーとしての優雅さを反映しています。シンプルで上品なブラウスやスカート、落ち着いた色合いのスーツが多用され、彼女の厳格な性格を表現しています。化粧は控えめで、ナチュラルメイクに淡いリップカラーを組み合わせ、大人の女性らしい落ち着きを強調。髪型はきちんとまとめたアップスタイルやエレガントなシニョンが多く、プロフェッショナルな印象を与えます。身体交換後は、娘の派手なストリートファッションに挑戦する姿がユーモラスで、彼女の新たな一面を引き出しています。
あらすじ
物語は、大学卒業を控えた七月の夏に始まります。顧悠悠（張予曦）は街舞を愛する自由奔放な若者ですが、母親の呂小梅（黄小蕾）は彼女にバレエダンサーとしての未来を期待し、中央バレエ団への進路を強く勧めます。母娘は将来の進路を巡って衝突し、互いの価値観の違いから溝が深まります。ある日、奇妙な出来事により二人の身体が入れ替わってしまいます。顧悠悠は母親の身体で大学講師としての生活を、呂小梅は娘の身体で街舞の世界に直面することになります。最初はお互いの生活を混乱させる二人ですが、互いの立場を経験することで、次第に相手の夢や苦悩を理解していきます。顧悠悠は母親のバレエへの情熱を知り、呂小梅は娘の街舞への愛を感じ取ります。
物語のクライマックスでは、母娘が協力してそれぞれの夢を追いかけ、家族としての絆を深めながら、互いの人生をより輝かせる選択をします。しかし、顧悠悠が街舞のコンテストに参加する理由が、母親から離れるためだったと知った呂小梅は、深い葛藤を抱えます。最終的に、母娘は心を通わせ、互いの夢を尊重し合うことで新たな一歩を踏み出します。
解説
《七月的舞步》は、青春、親子関係、夢の追求という普遍的なテーマを、奇幻的な身体交換というユニークな設定で描いた作品です。本作は、単なるコメディや青春映画にとどまらず、現代中国の家族教育や世代間の価値観の違いに焦点を当てています。特に、80年代生まれの親世代と00年代生まれの若者世代の対立と和解を、街舞とバレエという対照的なダンスを通じて象徴的に表現しています。街舞は自由と個性を、バレエは規律と伝統を象徴し、二つのダンスが融合する場面は、母娘の相互理解を視覚的に示す重要なシーンです。
映画の魅力は、ユーモラスな展開と心温まるメッセージのバランスにあります。身体交換という非現実的な設定は、観客に笑いを提供しつつ、母娘が互いの立場を経験することで生まれる感情の変化を効果的に描いています。物語は、親が子に押し付ける期待と、子が求める自由の間の葛藤を丁寧に掘り下げ、双方の視点から共感を誘います。また、ダンスシーンは視覚的な見せ場として機能し、特に張予曦と黄景行の街舞パフォーマンスは、若者の情熱とエネルギーを鮮やかに表現しています。黄小蕾のバレエシーンも、彼女の過去の夢と現在の葛藤を象徴する重要な要素です。
しかし、批評家からは脚本の展開や演出に一部批判もあります。物語の後半で、母娘の和解に至る過程がやや性急に感じられたり、ダンスシーンが期待ほど多くないとの指摘もあります。それでも、家族愛と自己実現のテーマは多くの観客に共感を呼び、卒業シーズンの若者の心情を捉えた作品として一定の評価を得ています。本作は、2020年の上海国際映画節で映画チャンネルメディア部門にノミネートされるなど、注目を集めました。
キャスト
- 張予曦：顧悠悠役 – 街舞を愛する自由奔放な大学生。
- 黄小蕾：呂小梅役 – バレエに情熱を注ぐ大学英語講師で顧悠悠の母。
- 黄景行：毛雪山役 – 顧悠悠の恋人で、街舞の第一人者。
- 姜超：顧立成役 – 顧悠悠の父で、家族を支える優しい父親。
- 都金翰：卞天役 – 物語の脇役で、顧悠悠の友人。
スタッフ
- 監督：曹岸
- 脚本：曹岸、譚雅之
- 製作：劉玮
- 監製：陳梁、葛建軍、蒋光明
- 撮影監督：金秉日
- 美術監督：馬立軍
- 音楽：姚烨、欧陽尹路、姜皓中（テーマ曲「妈妈」など）
レビュー 作品の感想や女優への思い