1988年の米国映画『危険な関係』は18世紀フランスの貴族社会を舞台に、策略と情欲が絡み合う心理ドラマ。マルキーズとバルモン子爵が愛と裏切りを巡り危険なゲームを繰り広げる。グレン・クローズ、ミシェル・ファイファー、ユマ・サーマンという三人の女優が際立った演技を見せる。
基本情報
- 邦題:危険な関係
- 原題:DANGEROUS LIAISONS
- 公開年:1988年
- 製作国:米国
- 上映時間:121分
- ジャンル:ドラマ
- 原作:危険な関係(小説)
- 配給:ワーナー・ブラザース映画
あらすじ
18世紀のフランス貴族社会を背景に、冷酷で計算高いマルキーズ・ド・メルテイユ(グレン・クローズ)と、魅力的なプレイボーイのバルモン子爵(ジョン・マルコヴィッチ)が、退屈な日々を打破するために危険な賭けを始める。メルテイユは、元恋人の結婚を妨げるため、純真なセシル(ユマ・サーマン)を誘惑するようバルモンに依頼。一方、バルモンは貞淑なマダム・ド・トゥールベル(ミシェル・ファイファー)への誘惑に挑む。策略と情欲が交錯する中、登場人物たちの感情は次第に制御を失い、予想外の悲劇へと突き進む。愛と裏切り、欲望と復讐が織りなす複雑な人間関係が、華やかな貴族社会の裏側を露わにする。
女優の活躍
本作では、グレン・クローズ、ミシェル・ファイファー、ユマ・サーマンという三人の女優が際立った演技を見せ、物語の感情的な深みを増している。
グレン・クローズ演じるマルキーズ・ド・メルテイユは、知性と冷酷さを兼ね備えた女性として圧倒的な存在感を放つ。彼女の演技は、計算高く人を操る策略家としての顔と、内心の脆さを垣間見せる複雑なキャラクターを見事に表現。特に、感情を抑えながらも激しい内面の葛藤を示すシーンでは、クローズの繊細な表情が光る。
ミシェル・ファイファーのマダム・ド・トゥールベルは、純粋で道徳的な女性として描かれ、バルモンの誘惑に対する心の揺れを感動的に演じている。彼女の柔らかくも強い演技は、観客に深い共感を呼ぶ。
一方、若手だったユマ・サーマンは、純真で無垢なセシルを演じ、世間知らずな少女が大人の世界に巻き込まれる過程を自然体で表現。彼女の初々しい魅力が、物語の悲劇性を一層引き立てる。
三者三様の演技が、物語の緊張感と感情の機微を高め、映画の成功に大きく貢献している。
女優の衣装・化粧・髪型
本作の衣装、化粧、髪型は、18世紀フランスのロココ様式を忠実に再現しつつ、各キャラクターの個性を強調している。
グレン・クローズのマルキーズは、豪華なシルクやベルベットのドレスに、複雑な刺繍やレースを施した衣装を着用。深紅や濃紺といった大胆な色合いが、彼女の支配的な性格を象徴する。化粧は白い粉で顔を明るくし、頬に濃いルージュを施す当時の流行を反映。髪型は高く巻き上げたウィッグに、花や宝石をあしらい、権力と優雅さを演出している。
ミシェル・ファイファーのマダム・ド・トゥールベルは、淡いパステルカラーのドレスやシンプルな白いガウンをまとい、清楚で控えめな印象を与える。彼女の化粧はナチュラルで、薄いピンクの口紅と軽いチークが純粋さを強調。髪型はゆるやかなカールで自然にまとめられ、飾り気のない美しさが際立つ。
ユマ・サーマンのセシルは、若々しさを強調する淡いピンクや白のドレスを着用し、フリルやリボンが愛らしさを添える。化粧はほとんど施さず、少女らしい無垢さを保ち、髪はシンプルなカールやリボンで飾られる。
これらのビジュアルデザインは、キャラクターの社会的地位や心理を視覚的に表現し、物語の雰囲気を高めている。
解説
『危険な関係』は、ピエール・ショデルロ・ド・ラクロの1782年の同名小説を原作とし、クリストファー・ハンプトンの戯曲を基に映画化された。監督のスティーヴン・フリアーズは、18世紀のフランス貴族社会の華やかさと退廃を巧みに描き出し、心理的な駆け引きと人間の欲望を掘り下げる。映画は、表面上の優雅さと裏に潜む残酷さを対比させ、道徳と情欲の衝突をテーマにしている。映像美も際立ち、豪華なセットや衣装が当時の雰囲気を再現。音楽はジョージ・フェントンによるバロック風のスコアで、緊張感と優雅さを両立させている。本作はアカデミー賞で3部門(脚色賞、美術賞、衣装デザイン賞)を受賞し、批評家からも高い評価を受けた。特に、クローズとミシェル・ファイファーの演技は、感情の複雑さと人間性の闇を表現する名演として称賛されている。現代でも、権力、性、裏切りといった普遍的なテーマは色褪せず、心理ドラマの傑作として語り継がれている。
キャスト
- グレン・クローズ – マルキーズ・ド・メルテイユ
- ジョン・マルコヴィッチ – バルモン子爵
- ミシェル・ファイファー – マダム・ド・トゥールベル
- ユマ・サーマン – セシル・ド・ヴォランジュ
- キアヌ・リーヴス – シュヴァリエ・ダンセニー
- スージー・カーツ – マダム・ド・ヴォランジュ
- ミルドレッド・ナトウィック – マダム・ド・ロズモンド
スタッフ
- 監督:スティーヴン・フリアーズ
- 脚本:クリストファー・ハンプトン
- 原作:ピエール・ショデルロ・ド・ラクロ
- 製作:ノーマ・ヘイマン、ハンク・ムーンジーン
- 音楽:ジョージ・フェントン
- 撮影:フィリップ・ルースロ
- 編集:ミック・オーズリー
- 美術:スチュアート・クレイグ
- 衣装デザイン:ジェームズ・アシュソン
レビュー 作品の感想や女優への思い