DCEU(DC Extended Universe)は、DCコミックスのキャラクターを基にしたスーパーヒーロー映画の共有ユニバースであり、ワーナー・ブラザースが製作・配給を担当しています。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の成功に触発され、DCの象徴的なキャラクターであるスーパーマン、バットマン、ワンダーウーマンなどを中心に、クロスオーバーや連続性を持たせた映画シリーズとして2013年に始まりました。この回答では、DCEUの歴史、主要作品、特徴、影響、課題、そして今後の展望について詳しく解説します。
DCEUの誕生と背景
DCEUの起源は、2013年に公開された『マン・オブ・スティール』(監督:ザック・スナイダー)に遡ります。この映画は、スーパーマン(クラーク・ケント)の新たな起源物語を描き、クリストファー・ノーランの『ダークナイト』三部作のダークでリアリスティックなトーンを部分的に引き継ぎつつ、DCのヒーローを現代的な視点で再構築しました。ノーランがプロデューサーとして参加し、脚本家デビッド・S・ゴイヤーが物語を構築したことで、DCEUは高い期待を集めました。
DCEUの目的は、DCコミックスの広範なキャラクターを一つの映画ユニバースに統合し、単独映画とチームアップ映画(例:ジャスティス・リーグ)を組み合わせて、ストーリーやキャラクターの連続性を保つことでした。マーベルの成功を参考にしつつ、DCEUは独自のダークで哲学的なトーンを追求しました。しかし、このアプローチは賛否両論を呼び、シリーズ全体の方向性に影響を与えることになります。
主要作品とその概要
以下は、DCEUの主要な映画作品(2023年までの主要リリース)を時系列順に紹介し、それぞれの特徴や役割を簡潔にまとめます。
マン・オブ・スティール(2013年)
- 監督…ザック・スナイダー
- 主演…ヘンリー・カビル(スーパーマン)
- 概要…クリプトン出身のカル・エルが地球で育ち、スーパーマンとして人類を守る物語。ゾッド将軍との戦いを通じて、スーパーマンの力と責任が描かれる。
- 意義…DCEUの起点。重厚なビジュアルと哲学的なテーマが特徴だが、破壊的なアクションシーンが一部で批判された。
バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生(2016年)
- 監督…ザック・スナイダー
- 主演…ベン・アフレック(バットマン)、ヘンリー・カビル
- 概要…スーパーマンの力を恐れるバットマン(ブルース・ウェイン)が対立し、レックス・ルーサーの陰謀に巻き込まれる。ワンダーウーマン(ガル・ガドット)が初登場。
- 意義…DCEUのユニバース拡大を試み、ジャスティス・リーグの布石を打った。しかし、ストーリーの複雑さと暗いトーンが賛否を分けた。
スーサイド・スクワッド(2016年)
- 監督…デビッド・エアー
- 主演…ウィル・スミス(デッドショット)、マーゴット・ロビー(ハーレイ・クイン)
- 概要…政府がヴィランを集めて危険なミッションに送り込む物語。ジョーカー(ジャレッド・レト)も登場。
- 意義…ユニバースのダークサイドを描く意欲作だったが、編集の混乱やトーンの不一致が批判された。
ワンダーウーマン(2017年)
- 監督…パティ・ジェンキンス
- 主演…ガル・ガドット
- 概要…アマゾン族のプリンセス、ダイアナが第一次世界大戦中に人類を救うために戦う。
- 意義…DCEU初の批評的・商業的大成功。女性ヒーローの活躍とポジティブなメッセージが広く称賛された。
ジャスティス・リーグ(2017年)
- 監督…ザック・スナイダー(ジョス・ウェドンによる追加撮影)
- 主演…ベン・アフレック、ヘンリー・カビル、ガル・ガドットほか
- 概要…バットマンがスーパーマン、ワンダーウーマン、フラッシュ、アクアマン、サイボーグを結集させ、ステッペンウルフの侵略を阻止する。
- 意義…DCEUの集大成を目指したが、監督交代やスタジオの介入により中途半端な仕上がりに。2021年の『ザック・スナイダーのジャスティス・リーグ』でスナイダーのビジョンが補完された。
アクアマン(2018年)
- 監督…ジェームズ・ワン
- 主演…ジェイソン・モモア
- 概要…アトランティスの王位継承者アーサー・カリーが海底王国を救う冒険。
- 意義…カラフルで冒険的なトーンが成功し、DCEU最高の興行収入(約11億ドル)を記録。
シャザム!(2019年)
- 監督…デビッド・F・サンドバーグ
- 主演…ザッカリー・リーヴァイ
- 概要…少年ビリー・バットソンが魔法の力でヒーロー・シャザムに変身し、悪と戦う。
- 意義…軽快でユーモラスな作風が好評。DCEUの多様性を示した。
ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY(2020年)
- 監督…キャシー・ヤン
- 主演…マーゴット・ロビー
- 概要…ハーレイ・クインが新たな仲間と共にゴッサムで活躍。
- 意義…女性主導の物語として評価されたが、興行的には振るわず。
ワンダーウーマン1984(2020年)
- 監督…パティ・ジェンキンス
- 主演…ガル・ガドット
- 概要…1980年代を舞台に、ダイアナが新たな敵と対峙。
- 意義…前作の成功を再現できず、ストーリーやCGが批判された。
ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結(2021年)
- 監督…ジェームズ・ガン
- 主演…マーゴット・ロビー、イドリス・エルバ
- 概要…新たなスーサイド・スクワッドが過激なミッションに挑む。
- 意義…ガンのユーモアとアクションが好評。リブート的な位置付け。
ブラックアダム(2022年)
- 監督…ジャウマ・コレット=セラ
- 主演…ドウェイン・ジョンソン
- 概要…反ヒーロー、ブラックアダムが現代に蘇り、ジャスティス・ソサエティと対峙。
- 意義…新キャラクターの導入を試みたが、期待ほどの成功を収めず。
シャザム!神々の怒り(2023年)
- 監督…デビッド・F・サンドバーグ
- 主演…ザッカリー・リーヴァイ
- 概要…シャザムが新たな脅威に立ち向かう。
- 意義…前作のユーモアを維持したが、興行的に苦戦。
ザ・フラッシュ(2023年)
- 監督…アンディ・ムスキエティ
- 主演…エズラ・ミラー
- 概要…フラッシュがタイムトラベルを通じてマルチバースを探索。
- 意義…マルチバースを活用し、DCEUの再構築を試みたが、賛否両論。
ブルービートル(2023年)
- 監督…アンヘル・マヌエル・ソト
- 主演…ショロ・マリデュエナ
- 概要…少年ハイメがエイリアンのスカラベと結びつき、ヒーローに。
- 意義…新世代のヒーローとして評価されたが、興行的には控えめ。
アクアマン/失われた王国(2023年)
- 監督…ジェームズ・ワン
- 主演…ジェイソン・モモア
- 概要…アーサーが新たな脅威に立ち向かう続編。
- 意義…DCEUの最終作とされ、ユニバースの終焉を示唆。
DCEUの特徴とトーン
DCEUは、以下の特徴で知られています。
- ダークで哲学的なトーン…ザック・スナイダーの影響により、初期のDCEUは神話的で重厚なテーマを追求。スーパーマンやバットマンの葛藤を通じて、ヒーローの存在意義や道徳的ジレンマが描かれた。
- 視覚的スペクタクル…スナイダーのビジュアルスタイルやジェームズ・ワンの水中アクションなど、視覚的なインパクトが強み。ただし、過度なCGが批判される場合も。
- キャラクターの多様性…ワンダーウーマン、アクアマン、ブルービートルなど、異なる文化的背景を持つヒーローを積極的に導入。
- クロスオーバーの試み…『ジャスティス・リーグ』や『ザ・フラッシュ』では、マルチバースやチームアップを活用し、ユニバースの拡大を試みた。
しかし、MCUのような一貫したトーンや計画性が欠けていたため、作品ごとの品質や方向性がバラバラになる傾向がありました。
成功と課題
成功
- 興行的成果…『アクアマン』や『ワンダーウーマン』は10億ドル超の興行収入を記録し、DCのブランド力を証明。
- 文化的影響…ワンダーウーマンは女性ヒーローの象徴として、フェミニズムや多様性の議論に貢献。
- ファンベースの熱狂…「スナイダーカット」のリリース運動(#ReleaseTheSnyderCut)は、ファン主導のキャンペーンとして成功。
課題
- 批評の分断…『バットマン vs スーパーマン』や『ジャスティス・リーグ』(劇場版)は、批評家から低い評価を受けた。
- スタジオの介入…ワーナー・ブラザースの頻繁な介入や監督交代が、作品の完成度に悪影響を及ぼした。
- 計画性の欠如…MCUのような長期的なロードマップが不足し、ユニバースの連続性が希薄に。
DCEUの終焉と新生DCUへの移行
2022年、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの体制下で、ジェームズ・ガンとピーター・サフランがDCスタジオの共同CEOに就任。DCEUは2023年の『アクアマン/失われた王国』を最後に終了し、新たな「DCU(DC Universe)」が始動しました。新DCUは、より一貫した計画性とクロスメディア展開(映画、ドラマ、ゲーム)を重視し、2025年の『スーパーマン』(監督:ジェームズ・ガン)から本格始動します。
DCEUの一部のキャラクター(例:ブルービートル、アクアマン)は新DCUに引き継がれる可能性がありますが、キャストやストーリーの大幅なリセットが予想されます。
DCEUの遺産と影響
DCEUは、DCコミックスの映画化における実験的な試みとして、成功と失敗の両方を残しました。以下はその主要な遺産です。
- ヒーローの再定義…スーパーマンやバットマンの現代的な解釈は、今後のDC映画に影響を与える。
- ファンダムの力…スナイダーカット運動は、ファンの声が映画産業に影響を与え得ることを証明。
- 多様性の推進…女性やマイノリティのヒーローを積極的に描いた点は、新DCUにも引き継がれる。
結論
DCEUは、DCコミックスの豊かな世界を映画で再現しようとした野心的なプロジェクトでした。『ワンダーウーマン』や『アクアマン』のような成功作を生み出しつつ、計画性の欠如やスタジオの介入により、一貫したユニバース構築には課題が残りました。それでも、DCEUはスーパーヒーロー映画の多様性や視覚的表現の可能性を広げ、ファンに多くの記憶に残る瞬間を提供しました。新生DCUがDCEUの教訓を活かし、より強固なユニバースを築くことが期待されます。
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