2007年公開の映画『奇術師フーディーニ 〜妖しき幻想〜』は、実在の奇術師ハリー・フーディーニと詐欺師の霊能者メアリーの駆け引きを描くロマンティック・サスペンス。ガイ・ピアースとキャサリン・ゼタ=ジョーンズが共演し、愛と欺瞞が交錯する物語が展開します。
基本情報
- 邦題:奇術師フーディーニ 〜妖しき幻想〜
- 原題:DEATH DEFYING ACTS
- 公開年:2007年
- 製作国:英国、オーストラリア
- 上映時間:96分
- ジャンル:恋愛
- 配給:松竹
見どころ
愛が絡んだために一筋縄ではいかない駆け引きが、美しく切ない。奇術師を演じるのはガイ・ピアース。監督は『シャーロット・グレイ』のジリアン・アームストロング。
あらすじ
1926年、伝説の奇術師ハリー・フーディーニ(ガイ・ピアース)は、亡魂と交信できると主張する霊能者を暴くため、亡母の最期の言葉を言い当てた者に1万ドルの賞金を出すと宣言します。この挑戦に目をつけた詐欺師の霊能者メアリー・マクガーヴィー(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)とその娘ベンジー(シアーシャ・ローナン)は、貧しい生活から抜け出すため、フーディーニに接近。ベンジーは観客の情報をこっそり集め、メアリーはその情報を使って霊能者のふりをして賞金を狙います。しかし、フーディーニのマネージャー、シュガーマン(ティモシー・スポール)の妨害や、フーディーニ自身との親密な交流により、メアリーは賞金への欲望と彼への恋心の間で揺れ動きます。やがて、メアリーの詐欺が露見する危機が迫り、愛と欺瞞の危険な駆け引きがクライマックスへと向かいます。物語は、フーディーニの超人的な脱出芸とメアリーの心の葛藤を軸に、ロマンスとサスペンスが織り交ぜられた展開で観客を引き込みます。
解説
『奇術師フーディーニ 〜妖しき幻想〜』(原題:Death Defying Acts)は、20世紀初頭のエディンバラを舞台に、実在したハリー・フーディーニの人生の一エピソードをフィクションとして描いた作品です。監督は『シャーロット・グレイ』で知られるジリアン・アームストロングが務め、ロマンス、サスペンス、超自然的な要素を巧みに融合させています。この映画は、フーディーニの「脱出王」としての名声や、彼が超能力や心霊術の詐欺を暴くことに情熱を注いでいた史実を背景に、架空の霊能者メアリーとの関係を通じて、彼の人間的な側面と心の傷を描きます。物語の中心は、フーディーニの亡母への強い愛着と、メアリーの貧困からの脱却への渇望が交錯する心理劇であり、両者の駆け引きは観客に緊張感と感情的な共鳴を与えます。
映画のトーンは、華やかなマジックの舞台と、1920年代のエディンバラの薄暗い街並みを対比させることで、幻想的かつ現実的な雰囲気を醸し出しています。しかし、一部のレビューでは、物語の焦点がフーディーニの奇術、マジックと霊能者の対決、メアリーとベンジーの母娘の物語、そしてロマンスの間で揺れ動くため、軸が定まりにくいとの指摘もあります。 また、フーディーニの奇術シーンは控えめで、彼の派手な脱出芸よりも心理的な駆け引きに重きが置かれており、マジックを期待した観客にはやや物足りない印象を与える場合もあるようです。 それでも、キャストの演技力と時代背景の再現度は高く評価されており、特にキャサリン・ゼタ=ジョーンズの魅力的な演技が作品の中心を担っています。
女優の活躍
本作の主要な女優は、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ演じるメアリー・マクガーヴィーと、シアーシャ・ローナン演じるベンジーです。
キャサリン・ゼタ=ジョーンズ(メアリー・マクガーヴィー)
キャサリン・ゼタ=ジョーンズは、『シカゴ』(2002年)でアカデミー賞助演女優賞を受賞した実績を持つ女優で、本作では詐欺師の霊能者メアリーを魅力的に演じています。メアリーは、貧困の中で娘を養うため詐欺を働くしたたかな女性でありながら、フーディーニとの出会いを通じて心の脆さや恋心を見せる複雑なキャラクターです。ゼタ=ジョーンズは、メアリーの妖艶さと脆さを絶妙に表現し、特にフーディーニとのロマンティックなシーンでは、彼女のトレードマークである強い眼差しと優雅な仕草で観客を惹きつけます。彼女の演技は、物語のサスペンスとロマンスのバランスを保つ重要な要素であり、批評家からも「作品の華」として高く評価されています。
シアーシャ・ローナン(ベンジー・マクガーヴィー)
当時まだ10代だったシアーシャ・ローナンは『つぐない』(2007年)で注目を集めた若手女優として、本作でメアリーの娘ベンジーを演じています。ベンジーは母の詐欺を助ける賢い少女でありながら、子どもらしい無垢さとフーディーニへの憧れを抱くキャラクターです。ローナンは、ベンジーの純粋さと狡猾さを自然に演じ分け、物語に情感を加えています。彼女の演技は、後の『ラブリーボーン』(2009年)や『ブルックリン』(2015年)での活躍を予感させるもので、若手ながら存在感を発揮しています。
女優の衣装・メイクアップ・ヘアスタイル
キャサリン・ゼタ=ジョーンズ(メアリー)
メアリーの衣装は、1920年代のエディンバラの貧しい生活を反映しつつ、彼女の霊能者としての舞台パフォーマンスを強調するデザインが特徴です。舞台では、神秘的な雰囲気を出すため、深紅や濃紺のドレスにレースやビーズの装飾が施された衣装が登場します。これらの衣装は、彼女の妖艶な魅力を引き立て、霊能者としての「偽りのカリスマ」を表現しています。一方、日常シーンでは、くすんだ色調のシンプルなスカートやブラウスが使われ、貧困層の生活感を強調。メイクアップは、舞台では濃いアイラインと赤いリップで劇的な印象を与え、日常では薄化粧で疲れた表情を見せることで、キャラクターの二面性を表現しています。ヘアスタイルは、舞台ではゆるやかなウェーブのかかったアップスタイルで優雅さを演出し、普段は簡素なまとめ髪で現実的な生活感を強調しています。
シアーシャ・ローナン(ベンジー)
ベンジーの衣装は、1920年代の少女らしいシンプルなワンピースやスカートが中心で、くすんだグレーやベージュの色調が貧困を象徴しています。舞台では、母の助手として小さなドレスやヘッドバンドを着用し、愛らしい雰囲気を醸し出します。メイクアップはほとんど施さず、子どもらしい素朴さを保ちつつ、時折汚れた顔や乱れた髪で街の生活の厳しさを表現。ヘアスタイルは、肩までの長さのストレートヘアにリボンや小さな帽子を合わせ、時代感と少女らしさを両立させています。
キャスト
- ハリー・フーディーニ:ガイ・ピアース
- メアリー・マクガーヴィー:キャサリン・ゼタ=ジョーンズ
- ベンジー・マクガーヴィー:シアーシャ・ローナン
- シュガーマン(マネージャー):ティモシー・スポール
ほかに、ラルフ・ライアックなど。
スタッフ
- 監督:ジリアン・アームストロング。『シャーロット・グレイ』や『若草物語』(1994年)で知られるオーストラリア出身の監督。女性の視点から情感豊かな物語を描くことに定評あり。
- 脚本:トニー・グリゾーニ、ブライアン・ウォード
- 製作:クリス・カーリン、マリアン・マクゴワン
- 撮影:ハリス・ザンバーラウコス
- 音楽:セザール・シャルローヌ
- 編集:ニコラス・ボーシャー
補足
本作は日本では劇場未公開で、DVDや動画配信サービスで視聴可能です。平均評価はFilmarksで3.0点とやや低めですが、キャサリン・ゼタ=ジョーンズの魅力と1920年代の雰囲気は高く評価されています。 フーディーニの史実とフィクションが交錯する本作は、奇術やロマンスに興味がある方におすすめの作品です。
レビュー 作品の感想や女優への思い