『デス・プルーフ in グラインドハウス』は、クエンティン・タランティーノ監督による2007年のアメリカ製カーアクション・ホラー映画です。B級映画へのオマージュとして製作され、殺人鬼スタントマンと女性たちの壮絶なカーチェイスが描かれます。女性キャラクターのガールズトークとリアルなアクションが特徴で、カート・ラッセルが主演を務めます。
基本情報
- 邦題：デスプルーフ in グラインドハウス
- 原題：Quentin Tarantino’s Death Proof
- 公開年：2007年
- 製作国：米国
- 上映時間：113分
- ジャンル：アクション
- 配給：ブロードメディア・スタジオ
概要
『デス・プルーフ in グラインドハウス』は、2007年のアメリカ映画で、クエンティン・タランティーノ監督が1970～80年代のB級映画にオマージュを捧げたカーアクション・ホラー。殺人鬼スタントマン・マイクと女性たちの壮絶なカーチェイスが展開。女性のガールズトークとCGなしのアクションが魅力。
見どころ
その設定や物語、荒い粒子の映像など、Q・タランティーノが愛してやまない、場末の劇場で上映されていた低予算映画へのオマージュが満載。壮絶なカースタントも必見だ。
あらすじ
テキサス州の田舎町。人気DJのジャングル・ジュリア（シドニー・タミーア・ポワチエ）は、女友達のシャナ（ジョーダン・ラッド）、アーリーン（ヴァネッサ・フェルリト）とバーで楽しい夜を過ごします。しかし、彼女たちの背後には、改造した「デス・プルーフ」仕様のシボレーを駆る殺人鬼スタントマン・マイク（カート・ラッセル）が忍び寄っていました。マイクは美女をナンパしては車で殺害する異常者です。この夜、ジュリアたちを標的にしたマイクは、彼女たちを恐怖のドライブに誘いますが、計画は思わぬ展開に。
14か月後、テネシー州。スタントウーマンのゾーイ・ベル（本人役）、キム（トレイシー・トムズ）、アバナシー（ロザリオ・ドーソン）、リー（メアリー・エリザベス・ウィンステッド）の一行が映画撮影の合間にドライブを楽しんでいます。彼女たちもマイクの新たな標的となりますが、ゾーイたちの反撃により、追う者と追われる者の立場が逆転。壮絶なカーチェイスが繰り広げられ、マイクは予想外の結末を迎えます。
解説
『デス・プルーフ in グラインドハウス』は、クエンティン・タランティーノとロバート・ロドリゲスによる「グラインドハウス」プロジェクトの一編です。「グラインドハウス」とは、1970～80年代のアメリカで低予算のB級映画を2～3本立てで上映する映画館を指し、本作は当時のチープで過激な映画の雰囲気を再現しています。フィルムの傷やリールのダブり、音割れといったB級映画特有の要素を意図的に取り入れ、懐かしさと新しさを融合させました。
物語は、前半のテキサス編と後半のテネシー編に分かれ、2つの女性グループとマイクの対決を描きます。タランティーノの特徴である「無駄話」が本作の大きな魅力で、ストーリーの半分を占めるガールズトークは、登場人物の個性や関係性を深く掘り下げます。これにより、観客はキャラクターに感情移入し、後半のアクションの緊張感が一層高まります。CGを一切使用しないリアルなカーチェイスは、1970年代の名作『バニシング・ポイント』や『ダーティ・メリー クレイジー・ラリー』へのオマージュが感じられ、特にゾーイ・ベルのスタントシーンは圧巻です。
本作はタランティーノの映画愛とクルマ愛が詰まっており、車両の細部や音楽にもこだわりが散りばめられています。例えば、マイクのシボレーは『コンボイ』のラバーダックエンブレムを、テネシー編のダッジ・チャレンジャーは『バニシング・ポイント』を意識したデザインです。 また、ウィリー・デヴィルの「It’s So Easy」など、選曲も当時のB級映画の雰囲気を再現しています。
批評では、カーチェイスやスタントの迫力が絶賛される一方、冗長な会話劇が好みを分ける点として挙げられます。タランティーノ自身は2012年に本作を自身の最低作と評しましたが、ファンからはそのユニークなスタイルが愛されています。
女優の活躍
本作では、女性キャラクターが物語の中心を担い、個性豊かな女優陣が活躍します。
- シドニー・タミーア・ポワチエ（ジャングル・ジュリア）：テキサス編の中心人物で、自信に満ちた人気DJを演じます。彼女の陽気でリーダーシップ溢れる演技は、グループのムードメーカーとしての魅力を引き立てます。特にバーでのガールズトークでは、ポワチエの自然体な演技が光り、観客に親しみやすさを与えます。
- ゾーイ・ベル（本人役）：スタントウーマンとして実名で出演し、後半のテネシー編で圧倒的な存在感を示します。『キル・ビル』でのスタント経験を活かし、車の上での危険なスタントを自ら演じ、アクションシーンにリアルな迫力をもたらしました。彼女の勇敢でユーモラスなキャラクターは、物語の逆転劇を牽引します。
- ロザリオ・ドーソン（アバナシー）：テネシー編の冷静なリーダー役。ドーソンの落ち着いた演技は、グループの知的な一面を強調し、マイクへの反撃を戦略的に導く姿が印象的です。
- トレイシー・トムズ（キム）：運転技術に優れたスタントウーマンを演じ、カーチェイスでの大胆なドライビングが際立ちます。トムズのタフでユーモラスな演技は、ゾーイとの掛け合いで化学反応を生み出します。
- メアリー・エリザベス・ウィンステッド（リー）：テネシー編の愛らしい女優役で、グループに柔らかい雰囲気をもたらします。彼女の無垢な魅力は、観客に感情移入を促します。
ほかに、ヴァネッサ・フェルリト（アーリーン）、ジョーダン・ラッド（シャナ）、ローズ・マッゴーワン（パム）らがテキサス編で個性的な脇役を演じ、ガールズトークに彩りを加えます。特にマッゴーワンのパムは、マイクとの緊迫したやりとりが注目されます。
女性たちの団結と反撃は、本作のフェミニズム的なテーマを強調し、観客に爽快感を与えます。
女優の衣装・化粧・髪型
本作の女優たちの衣装、化粧、髪型は、1970年代のB級映画や当時のポップカルチャーを反映しつつ、キャラクターの個性を際立たせます。
- ジャングル・ジュリア（シドニー・タミーア・ポワチエ）：タイトなタンクトップとデニムのショートパンツで、セクシーで自信満々なDJの雰囲気を演出。ロングヘアを無造作に下ろし、濃いアイラインとグロスで都会的な魅力。化粧はナチュラルだが、赤いリップがアクセント。
- ゾーイ・ベル：カジュアルなTシャツとジーンズで、スタントウーマンのタフさを表現。ショートカットの髪型は動きやすさを重視し、ノーメイクに近い自然な顔立ちが彼女のアクションシーンでのリアルさを引き立てます。
- アバナシー（ロザリオ・ドーソン）：洗練されたカジュアルスタイルで、シャツとパンツを着こなし、知的な印象。ミディアムヘアをポニーテールにまとめ、控えめなメイクで落ち着いた美しさを強調。
- キム（トレイシー・トムズ）：レザージャケットとタイトなパンツで、ワイルドなドライバーのイメージ。ショートヘアに派手なアイメイクが、彼女の攻撃的な性格を反映。
- リー（メアリー・エリザベス・ウィンステッド）：チアリーダー風のミニスカートとポップなトップスで、愛らしい女優のイメージ。ロングヘアにカールをつけ、ピンクのチークとグロスで若々しい魅力を演出。
ほかに、アーリーン、シャナ、パムたち、テキサス編の女性キャラクターは、ミニスカートやホットパンツ、派手なアクセサリーでB級映画のセクシーなヒロインを意識。化粧は濃いめで、カラフルなアイシャドウや長いまつ毛が特徴。髪型はルーズなウェーブやアップスタイルで、自由奔放な雰囲気を醸し出します。
衣装やメイクは、タランティーノのB級映画愛を反映しつつ、各キャラクターの個性と時代感を巧みに表現しています。
キャスト
- カート・ラッセル：スタントマン・マイク（殺人鬼）
- ゾーイ・ベル：ゾーイ（スタントウーマン、本人役）
- ロザリオ・ドーソン：アバナシー
- トレイシー・トムズ：キム
- メアリー・エリザベス・ウィンステッド：リー
- シドニー・タミーア・ポワチエ：ジャングル・ジュリア
- ヴァネッサ・フェルリト：アーリーン
- ジョーダン・ラッド：シャナ
- ローズ・マッゴーワン：パム
- マイケル・パークス：アール・マックグロー
- イーライ・ロス、クエンティン・タランティーノ：カメオ出演
- ジェームズ・パークス、マーシー・ハリエル：その他
スタッフ
- 監督・脚本：クエンティン・タランティーノ
- 製作：シャノン・マッキントッシュ、ハーヴェイ・ワインスタイン、ボブ・ワインスタイン
- 編集：サリー・メンケ
- 撮影：クエンティン・タランティーノ
- 音楽：（サウンドトラックにウィリー・デヴィルなど）
- 製作会社：The Weinstein Company
- 配給：ブロードメディア・スタジオ（日本）
まとめ
『デス・プルーフ in グラインドハウス』は、タランティーノのB級映画への愛と女性キャラクターの活躍が融合したユニークな作品です。ガールズトークとカーチェイスのコントラスト、CGなしのリアルなアクション、時代感を反映した衣装やメイクが魅力。ゾーイ・ベルらの迫真の演技と、タランティーノのこだわりが詰まった一作です。
レビュー 作品の感想や女優への思い