『ドゥーム・パトロール』は、DCコミックスの異色ヒーローチームを描く米国ドラマ。トラウマを抱えるはみ出し者が超能力を得て、奇妙な事件に立ち向かう。個々の葛藤と絆を軸に、ユーモアとダークな展開が融合した作品。2019年2月15日よりDC Universeで配信開始、全4シーズンで完結。
基本情報
- 邦題：ドゥーム・パトロール
- 原題：Doom Patrol
- 公開年：2019年
- 製作国：米国
- ジャンル：アクション、SF、ドラマ、クライム
見どころ
数々のDC作品を手掛けるスタッフと、ブレンダン・フレイザー、マット・ボマー、ティモシー・ダルトンら実力派キャストが集結。
あらすじ
『ドゥーム・パトロール』は、DCコミックスの同名スーパーヒーローチームを原作としたドラマで、社会から疎まれる異能者たちが織りなす物語です。科学者ナイルス・コールダー（チーフ、ティモシー・ダルトン）が率いるチームは、元レーサーのクリフ・スティール（ロボットマン、ブレンダン・フレイザー）、元パイロットのラリー・トレイナー（ネガティブマン、マット・ボマー／マシュー・ズック）、元女優のリタ・ファー（エラスティ・ウーマン、エイプリル・ボウルビー）、多重人格者のジェーン（クレイジー・ジェーン、ダイアン・ゲレーロ）で構成されています。彼らは過去の事故やトラウマにより異常な能力と特異な容姿を得て、世間から疎外された生活を送っています。
物語は、チーフの保護のもとアメリカ郊外の屋敷で暮らす彼らが、チーフの命令を破って街へ出たことで始まります。能力の暴走により街はパニックに陥り、さらにチーフが謎の敵「Mr.ノーバディ」に拉致される事件が発生。チームはチーフの救出と自分たちの汚名返上のため、渋々ながらヒーローとして団結し、奇妙な現象や敵に立ち向かいます。物語はシーズンを通じて、彼らの内面的な葛藤、トラウマの克服、互いへの信頼と絆の構築を丁寧に描きつつ、シュールでユーモラスな展開が特徴です。第4シーズンで完結し、2023年11月9日に最終話が配信されました。
女優の活躍
本作では、女性キャラクターを演じる女優たちの存在感が際立っています。特に、エイプリル・ボウルビー（リタ・ファー／エラスティ・ウーマン）とダイアン・ゲレーロ（ジェーン／クレイジー・ジェーン）の演技が物語の核心を担います。
エイプリル・ボウルビー（リタ・ファー）
エイプリル・ボウルビーは、かつてのハリウッド女優リタ・ファーを演じ、過去の栄光と現在の不安定な肉体（体がスライムのように変形する）とのギャップを見事に表現。リタは自己中心的な性格ながら、チームメイトとの交流を通じて成長し、仲間への思いやりを見せる姿が魅力的です。ボウルビーのコミカルかつ繊細な演技は、視聴者にリタの人間らしい弱さと強さを伝え、特にシーズン2以降の感情的なシーンで高く評価されています。彼女は『私はラブ・リーガル』での経験を活かし、ユーモアとドラマチックな演技のバランスを巧みに取っています。
ダイアン・ゲレーロ（ジェーン）
ゲレーロは、64の人格を持つクレイジー・ジェーンを演じ、その多重人格を個別に表現する難役に挑みました。各人格が異なる口調、仕草、感情を持つため、ゲレーロはシーンごとに異なるキャラクターを演じ分ける技術を見せ、視聴者を驚かせます。特に、攻撃的な人格「ハンマーヘッド」や幼児的な「ベイビードール」など、極端な性格の変化を自然に演じ分ける力量が際立ちます。『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』での経験が、複雑なキャラクター造形に活かされており、ジェーンの内面の混乱と葛藤を深く掘り下げる演技は批評家からも称賛されています。
ミシェル・ゴメス（マダム・ルージュ）
シーズン3から登場するミシェル・ゴメスは、謎めいたヴィラン／味方であるマダム・ルージュを演じます。ゴメスのカリスマ性と独特のユーモアセンスは、物語に新たな緊張感と魅力を加え、彼女の登場シーンは視聴者の注目を集めました。
女優の衣装・化粧・髪型
『ドゥーム・パトロール』の衣装、化粧、髪型は、各キャラクターの個性や時代背景を反映し、視覚的に強い印象を与えます。
リタ・ファー（エイプリル・ボウルビー）
リタの衣装は、1950年代のハリウッド女優を思わせるレトロなスタイルが特徴。タイトなドレスやスカーフ、ハイヒールが彼女の過去の栄光を象徴し、優雅さを保ちつつもどこか不安定な印象を与えます。化粧は濃いめの赤いリップとアイライナーで、クラシックな美しさを強調。髪型はウェーブのかかったブロンドのミディアムヘアで、時代感を演出。彼女の体が変形するシーンでは、衣装が伸びたり歪んだりする特殊効果が施され、視覚的なインパクトを加えています。シーズン後半では、リタが自己受容を進めるにつれ、カジュアルな衣装も増え、変化が表現されています。
ジェーン（ダイアン・ゲレーロ）
ジェーンの衣装は、彼女の多重人格を反映し、エキセントリックで多様。パンク風の革ジャンやTシャツ、破れたジーンズが基本で、反抗的な人格を強調します。一方、幼い人格が出る際は、明るい色のワンピースやリボンが登場。化粧は人格により異なり、濃いアイメイクやタトゥー風のメイクで攻撃的な面を表現したり、ナチュラルメイクで脆弱な人格を際立たせたりします。髪型もショートカットのウィッグやカラフルなヘアピンで変化をつけ、視聴者に人格の切り替わりを明確に伝えます。この多様性は、ゲレーロの演技と共にキャラクターの複雑さを引き立てます。
マダム・ルージュ（ミシェル・ゴメス）
マダム・ルージュの衣装は、1940年代風のミリタリージャケットやトレンチコートが中心で、ミステリアスな雰囲気を醸し出します。化粧は大胆な赤いリップとスモーキーなアイメイクで、強烈な個性を強調。髪型はタイトにまとめたアップスタイルやレトロなウェーブで、時代を超越した魅力を持たせています。彼女の衣装は、物語の展開に応じて変化し、ヴィランから味方への転換を視覚的に示します。
解説
全体
『ドゥーム・パトロール』は、単なるスーパーヒーロードラマではなく、マイノリティやトラウマを抱える人々の「生きづらさ」を描いた作品です。従来のヒーロー像とは異なり、主人公たちは完璧ではなく、自己嫌悪や過去の傷に悩みながらも前に進む姿が共感を呼びます。ユーモアとブラックコメディが織り交ぜられ、奇抜な敵（例：話すゴキブリや街を飲み込む穴）やシュールな展開が視聴者を引き込みます。批評家からは「アメコミ作品史上最も異端」と評され、Rotten Tomatoesで満足度96%を記録するなど高い評価を得ています。
物語のテーマは「家族」と「自己受容」。チームは互いを「特殊な家族」と呼び、衝突しながらも絆を深めます。特にジェーンの多重人格やリタの不安定な体など、キャラクターの内面が丁寧に描かれ、視聴者に深い感情移入を促します。また、DCユニバースの『タイタンズ』と関連しつつも独立した世界観を持ち、独自のトーンを確立しています。
シーズン
概要を丁寧に解説いたします。なお、以下にはネタバレが含まれる可能性がありますので、ご注意ください。
「Doom Patrol」は、DCコミックスの同名作品を原作としたアメリカのスーパーヒーロードラマで、独特なユーモアと深い人間ドラマが特徴です。各シーズンの概要を丁寧に解説いたします。なお、以下にはネタバレが含まれる可能性がありますので、ご注意ください。
シーズン1（全15話、2019年）
概要
シーズン1では、異色のヒーローチーム「ドゥーム・パトロール」の結成と、彼らの過去や内面的な葛藤が描かれます。チームは、事故や超常現象によって特殊な能力を得たものの、社会から疎外されたメンバーたち――クリフ・スティール（ロボットマン）、リタ・ファー（エラスティ・ウーマン）、ラリー・トレイナー（ネガティブマン）、ジェーン（クレイジー・ジェーン）、そして後に加わるヴィクター・ストーン（サイボーグ）――で構成されています。彼らは、「チーフ」ことナイルズ・コールダーの指導のもと、奇妙な敵や現象に立ち向かいます。
主要なテーマとストーリー
- キャラクターの掘り下げ…各メンバーのトラウマや過去が丁寧に描かれ、彼らが「普通の生活」を受け入れられない理由が明らかになります。例えば、クリフは脳だけがロボットに移植された元レーサーで、家族との断絶に苦しみます。
- 敵との対峙…最大の敵は、超現実的な存在であるミスター・ノーバディ。物語を操るメタ的な能力を持ち、チームを心理的・物理的に翻弄します。
- チームの結束…当初はバラバラだったメンバーたちが、互いの傷を理解し合い、家族のような絆を築いていきます。
- 奇抜な世界観…話すゴキブリや想像力が現実化する街など、シュールで奇妙な要素が随所に登場し、従来のスーパーヒーロー作品とは一線を画します。
見どころ
シーズン1は、個々のキャラクターのバックストーリーと、彼らが「ヒーロー」としてではなく「人間」として成長する過程に焦点を当てています。特に、ジェーンの多重人格やラリーの性的アイデンティティに関する描写は、深い感動を呼びます。
シーズン2（全9話、2020年）
概要
シーズン2では、チームがチーフの過去の秘密に直面し、新たな脅威に立ち向かいます。チーフの娘ドロシー・スピナーが登場し、彼女の強力かつ不安定な力が物語の中心に。シーズンは新型コロナウイルスの影響で当初の予定より短縮され、9話で終了しましたが、物語の密度は高いままです。
主要なテーマとストーリー
- チーフの過去…ナイルズの不老不死の秘密や、彼がチームメンバーの人生にどう関わったかが明らかになり、信頼の危機が生じます。
- ドロシーの葛藤…ドロシーは、自分の想像力が具現化する能力を制御できず、チームに新たな試練をもたらします。彼女の純粋さと危険性が物語に深みを加えます。
- 新たな敵…キャンドルメーカーやレッド・ジャックなど、奇妙で強力な敵が登場。心理的な戦いが強調されます。
- キャラクターの成長…ジェーンは多重人格との向き合い方を模索し、リタは自分の過去を受け入れ始めます。クリフは父親としての役割に悩み、ヴィックはサイボーグとしてのアイデンティティを再定義します。
見どころ
シーズン2は、家族や赦しのテーマをさらに掘り下げ、キャラクター同士の関係性がより複雑に描かれます。ドロシーの登場により、チームは「保護者」としての役割も担うことになり、感情的なシーンが多く含まれます。また、ビジュアル面での実験的な演出も際立っています。
シーズン3（全10話、2021年）
概要
シーズン3では、チームが新たな敵や内部の葛藤に直面しながら、過去と向き合い未来を見据える姿が描かれます。マダム・ルージュという謎めいたキャラクターが登場し、物語に新たな展開をもたらします。また、チーフの運命やチームの目的が再定義されます。
主要なテーマとストーリー
- マダム・ルージュの謎…タイムトラベルと記憶喪失を抱えるマダム・ルージュが、チームに敵か味方かわからない形で関与。彼女の存在が物語の推進力となります。
- チームの再構築…シーズン2の出来事を受け、チームは自分たちの目的や存在意義を再考します。特に、リタがリーダーシップを発揮する場面が増えます。
- 過去との決別…各メンバーが自分のトラウマや過去の選択と向き合い、成長する姿が描かれます。ラリーのネガティブ・スピリットとの関係や、ジェーンの内面的な戦いが強調されます。
- シュールな敵…ブラザーフッド・オブ・イービルや、脳だけのゴリラなど、奇抜な敵が登場し、ユーモアと緊張感が共存します。
見どころ
シーズン3は、チームが「ヒーロー」としての役割を超え、自己受容と癒しの旅を進む姿が感動的です。マダム・ルージュの複雑なキャラクター造形や、視覚的に印象的なエピソード（例：死後の世界を舞台にした話）が際立ちます。
シーズン4（全12話、2022年-2023年）
概要
シーズン4は「Doom Patrol」の最終シーズンであり、チームが究極の試練に直面し、それぞれの物語に決着をつけます。時間旅行や新たな敵、そして自分たちの運命との戦いが中心です。
主要なテーマとストーリー
- 時間のテーマ…チームは未来や過去を行き来し、自分たちの存在が世界に与える影響を学びます。タイムトラベルの要素が物語に複雑さをもたらします。
- 最終的な敵…イモータスという強大な敵が登場し、チームの団結が試されます。過去の敵や出来事が再登場し、物語に集大成的な雰囲気を与えます。
- キャラクターの完結…各メンバーが自分の旅を締めくくる形で、クリフは家族との関係を修復しようとし、ジェーンは内なる統合を目指します。リタはリーダーとしての役割を全うし、ラリーは自分自身を受け入れます。
- 感動のフィナーレ…シリーズ全体のテーマである「自分を受け入れること」が強調され、涙なしには見られない結末が用意されています。
見どころ
最終シーズンは、ユーモアと感動のバランスが絶妙で、キャラクターたちの旅の終着点が丁寧に描かれます。ファンサービス的な要素や、過去シーズンへのオマージュも多く、シリーズの集大成として満足度が高い内容です。
キャスト
- クリフ・スティール／ロボットマン：ブレンダン・フレイザー（声）／ライリー・シャナハン（スーツ）。元レーサーで、脳だけがロボットボディに移植された男。短気だが心優しい。
- ラリー・トレイナー／ネガティブマン：マット・ボマー（声）／マシュー・ズック（スーツ）。負のエネルギーを宿す元パイロット。過去の秘密と向き合う。
- リタ・ファー／エラスティ・ウーマン：エイプリル・ボウルビー。体が変形する元女優。自己中心からチームの支えに成長。
- ジェーン／クレイジー・ジェーン：ダイアン・ゲレーロ。64の人格を持つ女性。各人格が異なる能力を持つ。
- ナイルス・コールダー／チーフ：ティモシー・ダルトン。チームを率いる謎めいた科学者。過去に暗い秘密を持つ。
- ヴィク・ストーン／サイボーグ：ジョイヴァン・ウェイド。シーズン1途中から加入。技術に頼る若きヒーロー。
- マダム・ルージュ：ミシェル・ゴメス（シーズン3～）。謎多きキャラクターで、物語に新たな展開をもたらす。
ほかに、アンナ・ロア（エルスティ・ディー役）、レサ・ウィルソン（レア・ジョーンズ役）らが脇を固める。
スタッフ
製作総指揮
- グレッグ・バーランティ（『ARROW』『THE FLASH』）
- ジェレミー・カーヴァー（『SUPERNATURAL』）
- ジェフ・ジョンズ（『ワンダーウーマン』『アクアマン』）
DC作品の経験豊富なスタッフが、独特の世界観を構築。
原作
DCコミックス『ドゥーム・パトロール』（1963年初登場）。アーノルド・ドレイク、ボブ・ハニー、ブルーノ・プレミアーニによるコミックが基盤。
配信
DC Universe（シーズン1）、HBO Max（シーズン2～4）、日本ではU-NEXTで配信。
結論
「Doom Patrol」は、スーパーヒーロージャンルに新たな風を吹き込んだ作品で、奇抜なストーリーテリングと深いキャラクター描写が魅力です。各シーズンは、個々の成長、チームの絆、そして社会から疎外された者たちの居場所をテーマに、独自の世界観を展開しています。特に、トラウマやアイデンティティの探求といった心理的なテーマが、視聴者に強い共感を呼びます。シーズン1から4まで、物語は一貫して「完璧でないヒーロー」の人間らしさを讃え、視聴者に希望と癒しを与える作品です。トラウマや自己受容を扱いつつ、奇抜な展開で楽しませる本作は、DCファンやユニークなドラマを求める視聴者に強くおすすめします。
レビュー 作品の感想や女優への思い