『エラゴン 遺志を継ぐ者』(英題:Eragon)は、クリストファー・パオリーニが2002年に発表した同名小説を原作に、ステフェン・ファングマイヤー(監督デビュー作)が監督、ピーター・ブッフマンが脚本を手がけた2006年のファンタジー・アドベンチャー映画。タイトルロールのエド・スペリアーズをはじめ、ジェレミー・アイアンズ、シエンナ・ギロリー、ロバート・カーライル、ジモン・フンスー、ギャレット・ヘドランド、ジョス・ストーン、ジョン・マルコヴィッチらが出演。また、スペリアーズとストーンは本作で映画デビューを果たしました。
2005年8月1日より、ハンガリーのマフィルム・フォト・スタジオで撮影が行なわれました。視覚効果とアニメーションは、インダストリアル・ライト&マジック、ウェタ・デジタル、シネサイトが担当。
映画『エラゴン 遺志を継ぐ者』は20世紀フォックスにより2006年12月13日から12月15日にかけて全世界で公開されました。批評家や原作ファンからは、演技、脚本、映像、原作への不誠実さなどを批判する否定的な評価が多かったのですが、CGIやスペリアーズとアイアンズの演技は一部の批評家から賞賛されました。ロッテン・トマトでは2006年ワースト10位でしたが、全米では2006年31位の興行収入を記録。当初、本作はパオリーニの『インヘリタンス・サイクル』シリーズを基にしたフランチャイズの第1弾となるはずで、『エルデスト』と『ブライジンガー』の2作をファングメイヤーが連続撮影する予定でしたが、公開時の批評家の評判と興行成績が悪かったため、予定されていた続編は製作されず。
以下、映画『エラゴン 遺志を継ぐ者』のあらすじ、女優の活躍、感想、解説、キャスト、スタッフについて詳しくお伝えします。
基本情報
- 邦題:エラゴン 遺志を継ぐ者
 - 原題:ERAGON
 - 公開年:2006年
 - 製作国:米国
 - 上映時間:104分
 - ジャンル:アクション、ドラマ、SF
 - 公式サイト:20thcenturystudios.jp
 
あらすじ
『エラゴン 遺志を継ぐ者』は、邪悪な王ガルバトリックス(ジョン・マルコヴィッチ)が支配する帝国アラゲイジアを舞台にした壮大なファンタジー冒険譚です。かつてはエルフやドワーフ、人間が共存する平和な土地だったアラゲイジアですが、ガルバトリックスの裏切りにより、ドラゴンライダーという伝説の守護者たちは滅ぼされ、帝国は暗黒の時代に突入していました。
物語の主人公は、農村カーヴァホールで叔父ギャロウ(アラン・アームストロング)と従兄ローラン(クリストファー・イーガン)と暮らす17歳の少年エラゴン(エド・スペリーアス)。貧しいながらも平穏な生活を送っていたエラゴンは、ある日、狩りの最中にスパイン山脈で青く光る不思議な石を見つけます。この石は実はドラゴンの卵であり、やがて雌ドラゴンのサフィラ(声:レイチェル・ワイズ)が誕生します。サフィラとエラゴンは心を通わせ、強い絆で結ばれます。
しかし、卵の存在を知ったガルバトリックスは、配下の魔物ラーザックをエラゴンの村に送り込みます。叔父ギャロウが殺され、村を追われたエラゴンは、村の語り部ブロム(ジェレミー・アイアンズ)からドラゴンライダーの歴史と自らの使命を学びます。かつてドラゴンライダーは、ドラゴンと共に帝国を守る存在でしたが、ガルバトリックスの裏切りにより壊滅。エラゴンは最後のドラゴンライダーとして、ガルバトリックスを倒し、平和を取り戻す運命を背負います。
エラゴンとサフィラは、反乱軍ヴァーデンの本拠地を目指し、ブロムと共に旅に出ます。旅の途中で、エラゴンは剣術や魔法を学び、ドラゴンライダーとしての力を磨きます。また、ヴァーデンの戦士アーリア姫(シエンナ・ギロリー)と出会い、彼女の勇敢な姿に心を動かされます。ガルバトリックスの配下である魔術師ダーザ(ロバート・カーライル)との戦いや、帝国軍との激しい戦闘を経て、エラゴンはサフィラと共に成長。物語は、ガルバトリックスとの最終決戦を予感させつつ、続編への伏線を残して幕を閉じます。
女優の活躍
本作における主要な女性キャラクターは、アーリア姫を演じたシエンナ・ギロリーと、サフィラの声を担当したレイチェル・ワイズです。以下に、両女優の活躍を詳述します。
シエンナ・ギロリー(アーリア姫)
シエンナ・ギロリー演じるアーリアは、ヴァーデンのリーダーであり、エルフの血を引く勇敢な戦士です。彼女はガルバトリックスからドラゴンの卵を盗み出し、エラゴンの手に渡るきっかけを作った重要人物。物語の中盤でエラゴンと出会い、彼をヴァーデンの本拠地へ導きます。ギロリーの演技は、アーリアの気高さと戦士としての強さを強調しており、特に剣を振るうアクション場面では、しなやかで力強い動きを見せています。
ギロリーの美貌も注目され、レビューでは「クソ可愛い」「美しくて印象的」と高評価を受けています。アーリアのキャラクターは、原作ではさらに複雑な背景や感情が描かれていますが、映画では時間の制約からその一部しか描かれませんでした。それでも、ギロリーは限られた出番の中で、アーリアの意志の強さとエラゴンへの信頼を表現し、物語に深みを加えました。彼女の存在は、エラゴンの成長を促す触媒としても機能し、女性キャラクターの活躍として際立っています。
レイチェル・ワイズ(サフィラの声)
レイチェル・ワイズは、ドラゴン・サフィラの声を担当し、映画の情感を大きく高めています。サフィラはエラゴンの相棒であり、知性と力強さを兼ね備えた雌ドラゴン。ワイズの声は、サフィラの気高さ、優しさ、時にユーモラスな一面を巧みに表現し、CGで描かれたドラゴンに魂を吹き込みました。特に、エラゴンとの心の対話シーンでは、ワイズの温かみのある声が二人の絆を強調し、観客に感動を与えます。
ワイズの声の演技は、批評家からも高く評価され、サフィラのキャラクターが「親友であり姉のような存在」として際立つ要因となりました。彼女の声は、戦闘シーンでの力強さと、静かな場面での優しさを両立させ、映画のファンタジー要素を強化。ワイズの参加は、豪華キャストの一人として、本作のクオリティを高める重要な要素でした。
感想
『エラゴン 遺志を継ぐ者』は、公開当時、ファンタジー映画ブームの波に乗って期待された作品でしたが、賛否両論の評価を受けました。以下に、一般的な感想と個人的な視点を含めた感想をまとめます。
肯定的な感想
- ビジュアルとVFXの魅力:ILM(インダストリアル・ライト&マジック)が手掛けたVFXは、特にサフィラの飛行シーンや戦闘シーンで圧倒的な迫力を誇ります。ドラゴンの造形や動きはリアルで、観客をアラゲイジアの幻想的な世界に引き込みます。
 - キャストの魅力:エド・スペリーアスの初々しい演技や、ジェレミー・アイアンズの重厚な存在感、シエンナ・ギロリーの美しさ、レイチェル・ワイズの声の演技など、豪華キャストが物語に深みを加えました。特に、若手とベテランのバランスが良いと評価されています。
 - 原作のエッセンス:原作の壮大な世界観や、少年とドラゴンの絆というテーマは、映画でもしっかりと描かれており、ファンタジー愛好者には楽しめる要素が詰まっています。公開当時、若い観客を中心に「スター・ウォーズ」や「ロード・オブ・ザ・リング」を思わせる冒険譚として支持されました。
 
否定的な感想
- ストーリーの簡略化:原作の複雑なプロットやキャラクターの深みが、104分の映画に収めるために大幅に省略された点が批判されました。特に、アーリアやガルバトリックスの背景が薄く、物語の展開が急ぎ足に感じられます。
 - 続編の不在:本作は三部作の第一章として製作されましたが、興行収入の不振や批評の低評価により続編が製作されず、物語が未完に終わったことが多くのファンの不満となっています。「続編を観たかった」という声が多数見られます。
 - 類似作品との比較:『ロード・オブ・ザ・リング』や『スター・ウォーズ』との類似性が指摘され、独自性が不足しているとの批判も。物語の展開や世界観が「ありきたり」と感じる観客もいました。
 
個人的視点
個人的には、サフィラとエラゴンの絆が本作の最大の魅力だと感じます。ドラゴンとライダーの心の交流は、ファンタジーの王道ながらも感動的で、特に若い観客には夢と冒険の象徴として響くでしょう。一方で、原作ファンとしては、物語の省略やキャラクターの掘り下げ不足は残念な点です。それでも、VFXの美しさとキャストの熱演は観る価値があり、ファンタジー入門作として気軽に楽しめる作品です。
解説
『エラゴン 遺志を継ぐ者』は、2000年代初頭のファンタジー映画ブーム(『ハリー・ポッター』や『ロード・オブ・ザ・リング』の成功)に乗って企画された作品です。原作は、クリストファー・パオリーニが15歳で書き始め、17歳で自費出版した小説『エラゴン』(2003年刊行)。その後、大手出版社から再出版され、世界40カ国でベストセラーとなりました。映画化は、原作の人気と若年層への訴求力を背景に、20世紀フォックスが迅速に進めたプロジェクトです。
製作背景
監督のシュテフェン・ファンマイアーは、ILMで『ジュラシック・パーク』などのVFXを手掛けたベテランで、本作が初監督作品。ILMの技術力を活かし、特にサフィラのビジュアルや飛行シーンに注力しました。しかし、脚本のピーター・バックマンは、原作の複雑な物語を簡略化しすぎたため、原作ファンの不満を招きました。また、予算(約1億ドル)に対して興行収入(約2.5億ドル)はまずまずだったものの、批評の低評価が続編中止の要因となりました。
テーマと影響
本作のテーマは、少年の成長と運命への覚醒、友情と勇気です。エラゴンとサフィラの絆は、古典的な「ヒーローズ・ジャーニー」を踏襲し、スター・ウォーズのルーク・スカイウォーカーやロード・オブ・ザ・リングのフロドに通じる普遍性を持ちます。原作は、J.R.R.トールキンやジョージ・ルーカスの影響を強く受けており、映画もそのテイストを継承。ただし、独自のアイデンティティを確立できなかった点が、批評での弱点となりました。
文化的意義
本作は、若者向けファンタジーの一環として、ドラゴンや魔法の魅力を再評価するきっかけとなりました。また、原作者パオリーニの若さと成功は、若い作家へのインスピレーションとなり、出版業界に新たな風を吹き込みました。2022年には、Disney+での実写ドラマ化が発表され、現代の技術で再構築される可能性が注目されています。
キャスト
以下は主要キャストとその役割です(日本語吹き替え声優も併記)。
- エラゴン:エド・スペリーアス(山田孝之) – ドラゴンライダーに選ばれた少年。18万人から選ばれた新人俳優。
 - ブロム:ジェレミー・アイアンズ(有本欽隆) – エラゴンの師であり、元ドラゴンライダーの語り部。
 - アーリア:シエンナ・ギロリー(小雪) – ヴァーデンの戦士でエルフの血を引く姫。
 - サフィラ(声):レイチェル・ワイズ – エラゴンの相棒である雌ドラゴン。
 - ガルバトリックス:ジョン・マルコヴィッチ – 邪悪な王で元ドラゴンライダー。
 - ダーザ:ロバート・カーライル(家中宏) – ガルバトリックスの魔術師。
 - ギャロウ:アラン・アームストロング – エラゴンの叔父。
 - ローラン:クリストファー・イーガン – エラゴンの従兄。
 
その他、ジャイモン・フンスー(ヴァーデンのリーダー、アジハド役)、ギャレット・ヘドランド(謎の剣士マータグ役)、タムシン・エガートン(カトリーナ役)など、脇を固める俳優陣も豪華です。
スタッフ
以下は主要スタッフです。
- 監督:シュテフェン・ファンマイアー – ILM出身のVFX専門家で、本作が初監督。
 - 脚本:ピーター・バックマン – 原作の簡略化が議論を呼んだ。
 - 製作:ジョン・デイビス、ウィック・ゴッドフリー
 - 製作総指揮:ギル・ネッター、クリス・シムズ
 - 原作:クリストファー・パオリーニ – 『ドラゴンライダー』シリーズ第1作。
 - 音楽:パトリック・ドイル – 壮大なオーケストラスコアでファンタジー感を強化。
 - 視覚効果:ILM – サフィラのCGや戦闘シーンのクオリティを支えた。
主題歌:「Keep Holding On」アヴリル・ラヴィーン – エンディングに感動を添えた。 
結論
『エラゴン 遺志を継ぐ者』は、少年とドラゴンの絆を軸にした王道のファンタジー映画です。シエンナ・ギロリーとレイチェル・ワイズの活躍は、物語に女性の強さと魅力を加え、VFXの美しさや豪華キャストも見どころです。しかし、原作の深みを十分に反映できず、続編不在による未完感は否めません。それでも、ファンタジー初心者や若い観客には楽しめる冒険譚であり、原作の壮大な世界観を垣間見るきっかけとなる作品です。Disney+でのリブートに期待しつつ、本作は2000年代ファンタジー映画の一つの里程標として評価されるべきでしょう。

 





レビュー 作品の感想や女優への思い