2012年製作の韓国映画『ウンギョ 青い蜜』(原題:은교)は、チョン・ジウ監督によるエロティックなラブストーリー。70歳の詩人イ・ジョギョと17歳の女子高生ウンギョ、そして彼の弟子ソ・ジウの間で繰り広げられる愛と嫉妬、欲望の物語。キム・ゴウンの大胆なデビュー作として話題に。
基本情報
- 邦題:ウンギョ 青い蜜
- 原題:은교
- 英題:Eungyo
- 公開年:2012年
- 製作国:韓国
- 上映時間:129分
- ジャンル:ドラマ、恋愛
見どころ
無垢な少女を巡って、老詩人と若い弟子の欲望と嫉妬が交錯するエロティックなラブストーリー。妖しい魅力を放つ少女を演じたキム・ゴウンが、濡れ場も厭わぬ熱演を披露。
女優の活躍
『ウンギョ 青い蜜』で最も注目を集めたのは、主人公ハン・ウンギョ役を演じたキム・ゴウンである。本作が彼女の映画デビュー作であり、公開当時まだ21歳だった彼女は、17歳の女子高生という役柄を見事に演じ切った。その演技力は新人とは思えないほどで、純粋さと妖艶さを併せ持つウンギョの複雑なキャラクターを体現。特に、感情の揺れや無垢な少女から大人の女性へと移行する微妙なニュアンスを表現し、観客を魅了した。キム・ゴウンは本作で大胆な濡れ場にも挑戦し、その勇気と女優魂が高く評価された。彼女はこの作品で第49回大鐘賞新人女優賞や青龍映画賞新人女優賞など、複数の新人賞を受賞し、一躍韓国映画界の注目株となった。
その後もキム・ゴウンは『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』(2016年)や『ザ・キング:永遠の君主』(2020年)などのドラマ、映画『ユ・ヨルの音楽アルバム』(2019年)などで活躍を続け、演技力と独特の雰囲気でファンを増やしている。本作での彼女の演技は、後のキャリアの礎となったと言えるだろう。彼女の天真爛漫さと、時に垣間見える色気は、ウンギョというキャラクターを単なる「誘惑する少女」ではなく、深みのある存在として描き出した。
女優の衣装・化粧・髪型
キム・ゴウン演じるウンギョの衣装は、彼女の若さと無垢さを強調するデザインが中心である。劇中では、韓国で一般的な女子高生の制服(セーラー服)が頻繁に登場するが、ウンギョの制服は意図的に丈が短めに設定されており、スカートが膝上ギリギリ、ブラウスも動きによってお腹が覗くようなスタイルになっている。この衣装は、彼女の天真爛漫さと同時に、男性キャラクターにとっての「誘惑」の象徴として機能している。特に、制服の採寸シーンでは、ウンギョが自分の魅力を意識的にアピールするような描写があり、衣装が物語のテーマである「若さ」と「欲望」を視覚的に表現する重要な要素となっている。
普段着としては、シンプルなTシャツやカジュアルなズボン、動きやすいスニーカーなどが多く、都会的というよりは素朴な印象を与える。これにより、ウンギョの純粋で飾らない性格が強調されている。化粧はほぼナチュラルメイクで、すっぴんに近い状態が多め。彼女の若々しい肌と自然な表情が、キャラクターの無防備さと親しみやすさを引き立てている。時折、薄いリップや軽いアイメイクが施されるが、過度な装飾は避けられている。
髪型は、肩より少し長いミディアムヘアを基本とし、普段はゆるく下ろしたストレートヘアや、動きやすいように軽く結んだポニーテールが中心。彼女の髪は自然な黒髪で、陽光を浴びると柔らかく輝く質感が、ウンギョの「生き生きとした若さ」を象徴している。劇中でウンギョがジョギョの家で寝起きするシーンでは、髪が少し乱れた状態で登場し、彼女の無防備な魅力が強調される。全体的に、衣装・化粧・髪型はウンギョの「自然体の美しさ」を最大限に引き出すよう計算されている。
あらすじ
70歳の国民的詩人イ・ジョギョ(パク・ヘイル)は、弟子のソ・ジウ(キム・ムヨル)に身の回りの世話を任せていたが、ジウが小説家として多忙になったため、17歳の女子高生ハン・ウンギョ(キム・ゴウン)を新たな世話係として雇う。ウンギョの無垢で生き生きとした姿に、ジョギョは次第に魅了され、彼女を題材にした小説「ウンギョ」を執筆し始める。その若さと無防備な色気は、ジョギョの創作意欲を掻き立てる一方で、彼の心に欲望と葛藤を生む。
一方、ジョギョを師と仰ぎつつもその才能に嫉妬するジウは、ウンギョとジョギョの親密な関係に苛立ちを覚える。ウンギョ自身も、ジョギョの詩の世界に憧れを抱きながら、ジウとの関係に複雑な感情を抱くようになる。やがて、ジョギョが書いた「ウンギョ」の原稿をジウが発見し、それを自分の作品として発表しようと画策。師弟関係は崩壊し、三者の欲望と嫉妬が交錯する中、物語は悲劇的な結末へと向かう。
解説
『ウンギョ 青い蜜』は、パク・ポムシンの小説「ウンギョ」を原案に、チョン・ジウ監督が映画化した作品で、文学とエロティシズム、老いと若さ、嫉妬と欲望といったテーマを繊細かつ大胆に描いている。映画は、70歳の詩人と17歳の少女という年齢差を軸に、純粋な憧れと肉体的な欲望の境界を探る。ジョギョがウンギョに抱く感情は、単なる性欲を超えた「若さへの渇望」や「失われた時間への郷愁」であり、彼の小説執筆を通じてその葛藤が昇華される。一方で、ジウの嫉妬は、師の才能への劣等感とウンギョへの欲望が混ざり合い、破壊的な行動へと繋がる。
キム・ゴウンの演技は、ウンギョを単なる「小悪魔」や「被害者」ではなく、複雑な内面を持つ少女として描き、物語に深みを与えている。彼女の無垢さと色気は、男性キャラクターの心を乱すと同時に、観客にも「ウンギョとは何か」を問いかける。映画はエロティックな描写で注目されがちだが、実際には文学的な美しさや人間の感情の脆さを描くことに重点を置いており、単なる官能映画とは一線を画す。
しかし、後半のサスペンス的な展開や、ジョギョの行動がやや非現実的に感じられる部分については、賛否両論がある。一部の観客は、ウンギョとジョギョの「美しい関係」をもっと掘り下げるべきだったと指摘するが、監督は意図的に「理想化された少女像」の崩壊を描き、観客に現実の複雑さを突きつけたのかもしれない。
キャスト
- イ・ジョギョ:パク・ヘイル…70歳の国民的詩人。特殊メイクで老人を演じ、若さへの憧れと葛藤を繊細に表現。パク・ヘイルの演技は、老いの悲哀と情熱の両方を体現し、作品の核となる。
- ソ・ジウ:キム・ムヨル…ジョギョの弟子で小説家。師への尊敬と嫉妬、ウンギョへの欲望が交錯する複雑な役どころ。キム・ムヨルの感情的な演技が光る。
- ハン・ウンギョ:キム・ゴウン…17歳の女子高生。無垢さと色気を併せ持ち、物語の中心となる。キム・ゴウンのデビュー作での熱演が話題に。
- その他:チョン・マンシク、パク・チョルヒョン、チャン・ユンシルなど。
スタッフ
- 監督・脚本:チョン・ジウ…『ハッピーエンド』(1999年)などで知られる監督。文学的で官能的な演出が本作でも健在。
- 原案:パク・ポムシン(小説「ウンギョ」)
- 撮影:キム・テギョン…ウンギョの若さを光と色彩で美しく捉えた映像が印象的。
- 照明:ホン・スンチョル
- 音楽:ヨンリモク…情感を高める繊細なスコアが物語を支える。
レビュー 作品の感想や女優への思い