『エヴァ』（2018年）は、フランス・ベルギー合作の官能ドラマ。ジェームズ・ハドリー・チェイスの小説「悪女イヴ」を原作に、若き作家と娼婦エヴァの出会いと破滅を描く。イザベル・ユペール主演、ブノワ・ジャコー監督、102分、東宝東和配給。
基本情報
- 邦題：エヴァ
- 原題：EVA
- 公開年：2018年
- 製作国：フランス、ベルギー
- 上映時間：102分
- ジャンル：ドラマ、恋愛
- 配給：東宝東和
見どころ
魔性の娼婦・エヴァを貫禄の演技で魅せるのは、フランスの至宝、イザベル・ユペール。落ちていく作家を繊細に演じたギャスパー・ウリエルの美男ぶりにも注目。
あらすじ
『エヴァ』（原題：Eva）は、ジェームズ・ハドリー・チェイスの小説「悪女イヴ」を原作としたフランス・ベルギー合作のドラマ映画。
物語は、成功を夢見て他人の戯曲を盗作し、華々しく作家デビューを果たした若き劇作家ベルトランを中心に展開します。彼はパリで名声を得るものの、次作の執筆に苦しみ、周囲からの期待とプレッシャーに苛まれます。ある日、創作のインスピレーションを求めてアルプスの別荘に赴いたベルトランは、吹雪で立ち往生した謎めいた娼婦エヴァと出会います。彼女の魅力に取り憑かれたベルトランは、次第にエヴァとの関係に溺れ、自身のキャリアと精神を危険にさらしていきます。エヴァのミステリアスな存在感と、彼女を取り巻く人間関係が織りなす心理劇は、欲望と破滅の果てに何が待つのかを観客に問いかけます。102分にわたる本作は、官能的でありながらも深い人間ドラマを描き、観る者に強烈な印象を残します。
解説
本作は、1962年にジャンヌ・モロー主演で映画化された『エヴァの匂い』のリメイクであり、原作の持つ暗い情熱と人間の脆さを現代的な視点で再構築しています。監督のブノワ・ジャコーは、フランス映画界で長年活躍する巨匠であり、『マリー・アントワネットに別れをつげて』などで知られる繊細な演出が本作でも発揮されています。
物語は、成功と挫折、欲望と倫理の狭間で揺れる人間の心理を掘り下げ、現代社会における自己実現の難しさや、他人との関係性の中で生じる葛藤を浮き彫りにします。特に、エヴァというキャラクターは、単なる「悪女」ではなく、複雑な過去と感情を持つ女性として描かれており、観客に彼女の行動の背景を想像させる余地を与えています。
2018年の第68回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に出品された本作は、批評家からも高い評価を受け、特に主演のイザベル・ユペールの演技が称賛されました。フランス映画らしい美学と、心理的な緊張感が融合した作品として、恋愛ドラマの枠を超えた深いテーマ性を提示しています。
女優の活躍
本作の中心を担うのは、フランス映画界の至宝と称されるイザベル・ユペールです。彼女が演じるエヴァは、謎めいた魅力と冷徹な知性を併せ持つ娼婦で、物語の鍵を握るキャラクターです。ユペールは、エヴァの複雑な内面を見事に表現し、観客をその魅力に引き込みます。彼女の演技は、時に挑発的で、時に繊細であり、ベルトランとの関係性の中で変化するエヴァの感情を巧みに描き出しています。ユペールは本作について、「ハドリー・チェイスは私のためにこの役を書いたかのようだった」と語り、役にのめり込んだことを明かしています。彼女のキャリアの中でも際立つ演技は、観客にエヴァの行動の裏にある深い動機を考えさせ、単なる悪女ではない多面性を見せつけます。また、若手俳優ギャスパー・ウリエルとの化学反応も見どころの一つで、ユペールの圧倒的な存在感が彼の繊細な演技を引き立て、緊張感あふれるドラマを構築しています。ユペールは、本作での演技により、改めて国際的な評価を確固たるものとしました。
ベルトランの恋人キャロラインを演じたのはジュリア・ロイ。なかなか美女。
女優の衣装・化粧・髪型
イザベル・ユペール演じるエヴァの衣装、化粧、髪型は、彼女のキャラクター性を強調する重要な要素です。衣装は、エヴァの職業である娼婦としての魅惑的な側面と、ミステリアスな内面を反映するデザインが採用されています。劇中では、シンプルながらも洗練されたドレスや、身体のラインを強調するタイトな衣装が登場し、彼女の官能的な魅力を引き立てます。特に、アルプスの別荘でのシーンでは、ダークトーンのコートやニットが登場し、寒々しい環境とエヴァの冷ややかな雰囲気をリンクさせています。化粧は、ナチュラルでありながらも、赤い口紅や強調されたアイラインで、エヴァの自信と誘惑的な性格を表現。髪型は、ルーズなウェーブやタイトにまとめたスタイルで、シーンごとにエヴァの心情の変化をさりげなく示しています。これらのビジュアル要素は、ユペールの演技と相まって、エヴァというキャラクターに深みを与え、観客に彼女の複雑な魅力を強く印象づけます。その他の女性キャラクターは登場が限定的であり、衣装や化粧の描写はエヴァに比べ控えめです。
キャスト
- イザベル・ユペール（エヴァ役）：ミステリアスな娼婦。フランス映画界の重鎮で、本作では圧倒的な存在感を発揮。
- ギャスパー・ウリエル（ベルトラン役）：盗作で成功した若き劇作家。繊細な演技で破滅への道程を体現。
- ジュリア・ロイ（キャロライン役）：ベルトランの恋人役で、物語に微妙な緊張感を加える。
- マルク・バルベ（ジョルジュ役）：エヴァの顧客の一人で、物語の背景に深みを加える。
- リシャール・ベリ（レジス役）：ベルトランの出資者。物語のプレッシャーの一因を担う。
スタッフ
- 監督：ブノワ・ジャコー。フランス映画界の巨匠で、心理ドラマの名手。
- 脚本：ブノワ・ジャコー、ジル・トーラン。原作の現代的解釈を巧みに構築。
- 原作：ジェームズ・ハドリー・チェイス（「悪女イヴ」）。1945年の小説が基盤。
- 撮影：ジュリアン・ヒルシュ。暗く美しい映像でアルプスの情景を表現。
- 編集：ジュリア・グレゴリー。緊張感あるシーンのつながりを演出。
- 音楽：ブリュノ・クーレ。官能的かつ不穏な雰囲気を醸し出すスコア。
- 製作：シャルル・ジラン、クリストフ・ブリオン。安定した製作基盤を提供。
総括
『エヴァ』（2018年）は、イザベル・ユペールの圧倒的な演技とブノワ・ジャコーの繊細な演出が光る、心理的かつ官能的なドラマです。原作の持つ暗い情熱を現代的に再解釈し、欲望と破滅のテーマを深く掘り下げます。エヴァの衣装や化粧は、彼女の複雑なキャラクター性を視覚的に表現し、物語に深みを加えています。フランス映画らしい美学と緊張感が融合した本作は、恋愛ドラマや心理劇の愛好者に強くおすすめできる作品です。
レビュー 作品の感想や女優への思い