『レイプ・ザ・ビースト』は2015年にカナダ、フランスで合作されたホラー映画。レイプ・アンド・リベンジのジャンルを基調とした本作は、恐怖の描写からユーモラスな復讐シーンへの急転換が特徴で、インディペンデント映画として独自の魅力を放つ。上映時間は79分。監督テリー・マイルズの脚本は、被害者から加害者への逆転劇を鮮やかに描き出し、観客にカタルシスを提供する。
二人の親友であるスローンとケイティは、ニューヨーク旅行の資金を稼ぐため、田舎の有機農場で働くことにする。バス停で出会った魅力的な青年たちに誘われ、車で農場へ向かうが、それは残虐な犯罪組織の罠だった。拉致され、性的暴行の餌食となった二人は、脱出に成功した後、加害者たちに対する残酷な復讐を決意。
基本情報
- 邦題:レイプ・ザ・ビースト
- 原題:Even Lambs Have Teeth
- 公開年:2015年
- 製作地:カナダ、フランス
- 上映時間:79分
あらすじ
物語は、二人の親友、スローン(カーステン・プラウト)とケイティ(ティエラ・スコビエ)の冒険から始まります。彼女たちはニューヨークへの旅行資金を稼ぐため、ワシントン州の小さな田舎町にある有機農場で一ヶ月の仕事を探します。バス停で出会った二人の青年、ディエゴ(エドウィン・ライト)とルーク(ベン・ガルブレイス)に声をかけられ、親切に車で農場まで送ってもらうことに。道中、軽食を共にし、魅力的な彼らに心を開く二人ですが、それは巧妙な罠の始まりでした。車内で薬を盛られ、意識を失ったスローンとケイティは、森の奥深くにある廃墟のようなコンテナ小屋に監禁されます。
目覚めた二人は、手足を縛られ、性的暴行の餌食となります。加害者たちは、地元の犯罪組織で、若い女性を拉致しては売春宿に売り飛ばす闇のネットワークを運営していました。リーダー格のジェシー(マイケル・カール・リチャーズ)をはじめ、残虐な男たちが次々と彼女たちを襲い、絶望の淵に追いやります。コンテナ内には最低限の食料と衣類が与えられ、逃亡は不可能に見えました。しかし、二人は互いの絆を頼りに、わずかな隙を突いて脱出を試みます。ケイティの叔父ジェイソン(ジェームソン・パーカー)が彼女たちの失踪を心配し、捜索を始める中、町の保安官アンドリュース(クレイグ・マーチ)も組織の一員として暗躍します。
奇跡的に鎖を外し、森を抜けて逃げ延びたスローンとケイティは、復讐の炎を燃やします。隠れ家に戻り、武器を調達した二人は、加害者たちを一人ずつ狩り始めます。釘を打ち込んだテニスボールやベースボールバット、芝刈り機などの即席の道具を使い、想像力豊かな拷問で彼らを苦しめます。ディエゴとルークは最初に標的にされ、残酷な末路を辿ります。組織のボスであるジェシーの隠れ家に迫る頃、ジェイソンの捜索が町の秘密を暴き始め、クライマックスへ。保安官との対決では、予想外の同盟が生まれ、二人は最終的に犯罪ネットワークを壊滅させます。復讐を果たしたスローンとケイティは、傷跡を残しつつ、互いの手を握り、未来へ歩み出します。このあらすじは、恐怖からエンパワーメントへの転換を軸に、79分のコンパクトな展開で描かれます。
解説
『レイプ・ザ・ビースト』は、伝統的なレイプ・アンド・リベンジ・ホラーの枠組みを借りつつ、独自のユーモアとスタイルで差別化を図った作品です。監督テリー・マイルズは、1978年の『アイ・スパット・オン・ユア・グレイヴ』を彷彿とさせる構造を採用しつつ、前半の暗く緊張感あふれる拉致・暴行描写と、後半のグロテスクでコミカルな復讐シーンとのコントラストを強調します。この急転換は、観客に初期のトラウマを忘れさせ、カタルシスを提供する巧みな手法です。批評家からは「浅薄なスリラーからコメディへ移行するが、それが魅力」と評され、インディホラーとしての新鮮さを与えています。
テーマ的には、女性の被害と復権を正面から扱い、被害者を単なる犠牲者ではなく、能動的な復讐者として描く点が注目されます。スローンとケイティの友情は、男性中心の犯罪世界に対する対抗軸となり、フェミニズム的な解釈を可能にします。しかし、低予算ゆえの粗さ、例えば編集の乱れや照明の不均一さは、リアリティを損なう場合もあります。レビューでは「復讐の甘美さが救いだが、被害描写が過激すぎる」との声もあり、センシティブなテーマの扱いが議論を呼んでいます。マイルズの脚本は、ブラックユーモアを交え、重いトピックをエンターテイメント化し、観客の多様な反応を引き出します。
視覚スタイルでは、森の暗闇を活かした撮影がホラー要素を強化し、復讐シーンのDIY的な拷問道具が創造性を発揮。音楽はサスペンスを高めつつ、ポップな挿入曲でトーンを軽くします。文化的文脈では、2010年代の#MeToo運動以前に制作された本作は、現代の視点から再評価されやすく、女性のエンパワーメントを予見的に描いています。欠点として、キャラクターの深みが不足し、加害者側の動機が薄い点が挙げられますが、全体として「子羊さえ牙を持つ」というタイトル通りの、意外性あふれるエンタメホラーです。インディ映画ファンに推奨される一作で、復讐の爽快感を求める観客に適しています。
女優の活躍
本作の中心を担う女優たちは、物語の感情的な核として見事な活躍を見せます。まず、主人公スローン役のカーステン・プラウトは、被害者としての脆弱さと復讐者としての強靭さを巧みに演じ分け、観客の共感を誘います。彼女の表現力は、拉致後の絶望的な表情から、復讐時の冷徹な視線まで幅広く、インディホラーシーンでのリアリティを高めています。プラウトはこれまで『スパイダーマン』シリーズや『アイ・ゾンビ』などの作品で知られ、本作ではその演技の幅をさらに広げ、批評家からも「被害者の心理を深く掘り下げた」と評価されています。彼女の活躍は、単なる美貌に留まらず、内面的な葛藤を体現する点にあります。
一方、ケイティ役のティエラ・スコビエは、親友スローンとのコンビネーションで物語を駆動します。スコビエは無垢で明るいキャラクターを自然に体現し、拉致後のトラウマを乗り越える過程で成長する姿を説得力を持って描きます。彼女の演技は、特に復讐シーンのダイナミックなアクションで光り、友情の絆を強調するシーンでは涙を誘う繊細さを見せます。スコビエは『ヴァンパイア・ダイアリーズ』や『アロウ』などのTVシリーズで経験を積み、本作で映画女優としてのポテンシャルを発揮。レビューでは「二人の女優が本物の友情のように見える」と絶賛され、彼女たちのケミストリーが作品の成功要因の一つです。
全体として、二人の女優の活躍は、レイプ・アンド・リベンジという過酷なテーマを支え、単なるエクスプロイテーションではなく、女性のエンパワーメントの物語に昇華させています。彼女たちは被害の描写を過度にセンセーショナルにせず、復讐の正当性を強調する演技で、観客に強い印象を残します。この活躍は、インディペンデント映画の限られたリソースの中で、最大限の効果を発揮したと言えるでしょう。
女優の衣装・化粧・髪型
本作の女優たちの衣装は、物語の進行に沿って変化し、キャラクターの心理状態を視覚的に表現しています。序盤のスローンとケイティは、旅行者らしいカジュアルなスタイルを採用。カーステン・プラウト演じるスローンは、フィットしたジーンズに軽やかなブラウスを合わせ、若々しく魅力的な印象を与えます。この衣装は、田舎町への到着時の無防備さを象徴し、観客に彼女たちの純粋さを伝えます。一方、ティエラ・スコビエのケイティは、Tシャツとショートパンツの組み合わせで、活発で親しみやすい雰囲気を醸し出します。これらの衣装は、日常的な素材を使い、低予算ながらリアリティを保っています。
拉致後のシーンでは、衣装が一転してボロボロの状態になり、被害の深刻さを強調。提供された簡素な服は、汚れや破れが加えられ、絶望感を増幅します。復讐パートでは、ダークカラーの機能的な服装にシフトし、例えば黒いレザージャケットやブーツを着用して、タフなイメージを構築。プラウトのスローンは、髪を後ろでまとめ、傷跡の残る顔で戦う姿が印象的です。スコビエのケイティも同様に、動きやすいパンツとトップスでアクションをこなし、復讐者の変貌を衣装で示します。これらの変化は、監督の意図的なデザインによるもので、視覚的なカタルシスを生み出しています。
化粧については、ナチュラルメイクが基調。序盤は軽いファンデーションとリップで健康的な美しさを演出し、プラウトとスコビエの自然な魅力が際立ちます。拉致後は、青あざや血糊を施したメイクで現実的な傷を表現し、観客の感情を揺さぶります。復讐時には、アイラインを濃く引き、唇をダークにすることで、冷酷さを加味。過度な美化を避け、ホラー要素を強調したメイクは、インディ映画らしい生々しさを与えています。
髪型も物語の鍵を握ります。両女優ともロングヘアをストレートに流し、序盤の自由奔放さを表します。プラウトの金髪は柔らかく波打ち、無垢さを象徴。スコビエのブロンドは軽やかで、友情の明るさを反映します。拉致後には乱れ、泥や血で汚れ、トラウマを視覚化。復讐シーンではポニーテールやアップスタイルに変え、行動性を高めます。この髪型の変遷は、キャラクターの成長を象徴し、女優たちのビジュアルが作品のテーマを強化しています。全体として、衣装・化粧・髪型は低予算ながら効果的で、女優の演技を補完する重要な要素です。
キャスト
- スローン:カーステン・プラウト
- ケイティ:ティエラ・スコビエ
- ジェシー:マイケル・カール・リチャーズ
- 保安官アンドリュース:クレイグ・マーチ
- ディエゴ:エドウィン・ライト
- ルーク:ベン・ガルブレイス
- ジェイソン:ジェームソン・パーカー
- ミスター・シーモア:エドワード・マイケル・バレット
- テッド:ライアン・ハンセン
- ミセス・シーモア:グレッチェン・コールマン
- 双子の姉妹の一人:ゾーイ・デシャネル(カメオ)
- 双子の姉妹のもう一人:エミリー・デシャネル(カメオ)
スタッフ
- 監督:テリー・マイルズ
- 脚本:テリー・マイルズ
- 製作:クリスチャン・スローン、ジョン・スローン
- 製作総指揮:テリー・マイルズ、マイケル・カール・リチャーズ
- 撮影:マイケル・カール・リチャーズ
- 編集:テリー・マイルズ
- 音楽:アーロン・ゼイヤー
- 美術:ジェニファー・ビショップ
- 衣装デザイン:メラニー・オリバー
- メイクアップ:タラ・ファーマー
- 特殊効果:クリス・ウォーシング
- 音響:デイビッド・キンバー
- プロデューサー会社:Oddfellows Productions
まとめ
以上が『レイプ・ザ・ビースト』の詳細情報です。本作は、ホラーとリベンジの融合により、観る者に強烈な印象を残すでしょう。



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