フランカ・ヴィオラは、1960年代にイタリアで有名になったシチリア出身の女性。誘拐され、1週間以上人質にとられ、頻繁にレイプされた挙句、レイプ犯との「更生結婚」（イタリア語でmatrimonio riparatore／誘拐婚とも）を拒否。彼女は、レイプされたイタリア人女性として初めて公に結婚を拒否したと考えられています。彼女と家族は、レイプ犯を起訴することに成功。フランカの行動は、処女を失った相手との結婚を拒否すれば名誉を失うという南イタリアの伝統的な社会通念と衝突したため、この裁判はイタリアで広く反響を呼びました。フランカ・ヴィオラは、戦後イタリアにおける女性の文化的進歩と解放の象徴となりました。
フランカ・ヴィオラ
- イタリア語：Franca Viola
- 生年月日：1948年1月9日（77歳）
- 出生地：イタリア、シチリア州アルカモ
- 両親：ベルナルド・ヴィオラ（父）、ヴィタ・セッロ（母）
誘拐とレイプ
フランカ・ヴィオラは1948年1月9日にイタリアのシチリアの田舎町アルカモで、農夫ベルナルド・ヴィオラとその妻ヴィタ・フェッラの長女として生まれました。1963年、15歳のとき、マフィア、ヴィンチェンツォ・リミの甥で当時23歳のフィリッポ・メロディアと婚約。メロディアはその後窃盗で逮捕され、フランカの父親は婚約破棄を主張し、彼女はそれを実行。メロディアはその後ドイツへ移りました。1965年までにフランカは別の男性と婚約し、メロディアはアルカモへ戻り、ヴィオラの人生に再び入り込もうとして失敗し、ストーカーとなり、ヴィオラの父親とボーイフレンドを脅しました。
1965年12月26日未明、メロディアと12人の武装した仲間がフランカの家へ押し入り、フランカを車に引きずり込んで誘拐し、その過程でヴィオラの母親を殴り、妹を離そうとしなかったフランカの8歳の弟マリアーノも連れ去りました。マリアーノは数時間後に解放されましたが、フランカはメロディアの妹夫婦の家（町はずれの農家）に8日間監禁され、そこで繰り返しレイプされました。メロディアは彼女に、「不名誉な」女にならないためには自分と結婚せざるを得なくなると告げましたが、フランカは結婚するつもりはないと答え、さらに誘拐と強姦で彼を訴えると答えたそうです。12月31日、メロディアはフランカの父ベルナルドに連絡し、パシアータ（シチリア語で「宥め」の意）しました。ベルナルドは誘拐犯と交渉するふりをしながら、結婚に同意して承諾したと伝え、他方でカラビニエリ警察と協力して捜査網を準備し、成功させました。フランカは18歳の誕生日を7日後に控えた1966年1月2日に解放され、誘拐犯は逮捕。フランカによると、父親はメロディアと本当に結婚したいのかと自分に尋ね、結婚したくないと答えると、彼女を助けるためなら何でもすると話しました。
“復縁”の拒否
メロディアはフランカにいわゆる”更生結婚”を申し込んだのですが、フランカはそれを拒否。伝統的な社会規範によれば、この選択は、処女を失ったが未婚のままである彼女を、donna svergognata、すなわち「名誉なき女」（文字通り「恥知らずの女」）にすることになります。このような概念は、シチリアや農村部だけのものではなく、当時のイタリア刑法、すなわち強姦を個人的な犯罪ではなく「公序良俗」に反する犯罪と同一視し、被害者と結婚した強姦犯は自動的に罪が帳消しになるとする「回復結婚」（matrimonio riparatore）の考えを正式に定めた第544条にも、ある程度は暗黙のうちに含まれていました。
裁判
フランカがレイプ犯との結婚を拒否した後、彼女の家族はほとんどの町の人々から脅迫され、追放され、迫害されたと伝えられています。それだけ、これらの出来事と最終的な裁判は、イタリアのメディアと大衆に強烈に響いたのです。既存の法規範の一部が世論と対立していることが明白になったため、議会そのものが直接関与することにもなりました。メロディアの弁護団は、フランカはいわゆるフイティーナ（駆け落ち）に同意したのであって、誘拐されたのではなく、密かに結婚するために自発的に逃亡したと主張しましたが、裁判（1966年）はメロディアを有罪としました。彼は懲役11年の判決を受け、後に10年に減刑され、2年間のモデナでの強制居住期間が設けられました。5人の仲間は無罪となり、他の仲間は比較的軽い判決を受けました。メロディアは1976年に出所し、1978年4月13日にマフィア式の処刑でシチリアに戻る前に殺されました。
レイプ犯が被害者と結婚することで罪を帳消しにできるという法律の条文は1981年まで廃止されませんでした。性的暴力が（「公序良俗」に対する罪ではなく）個人に対する罪となったのは1996年のことです。
選択結婚
フランカ・ヴィオラはジュゼッペ・ルイシと1968年12月に結婚しました。会計士であったルイジは、脅迫や噂があっても長年愛していた彼女と結婚するつもりだったと主張しましたが、結婚許可証を取得した後、自分と花嫁となる女性を守るために銃器使用許可証を申請しなければなりませんでした。イタリアのジュゼッペ・サラガット大統領とローマ教皇パウロ6世は、フランカ・ヴィオラの勇気と二人への連帯感を公に表明。サラガット大統領は二人に結婚祝いを贈り、ローマ教皇は結婚式の直後に二人を私的に謁見させました。フランカとルイジはその後、2人の息子と1人の娘の3人の子供をもうけました。
遺産
1970年、ダミアーノ・ダミアーニ監督はフランカ・ヴィオラの事件を基にオルネラ・ムーティ主演の映画『シシリアの恋人』を製作。 2012年、シチリアの作家ベアトリーチェ・モンロイはフランカの物語を『Niente ci fu（何もなかった）』というタイトルで出版。また、2017年にはフランカの物語を基にした『Viola, Franca』というタイトルの15分の映画がマンハッタン短編映画祭の最終選考に残りました。マルタ・サヴィーナ監督による2022年の映画『明日から来た少女（La ragazza del futuro）』は、名前やいくつかの詳細は変更されているものの、フランカの物語を描いています。
レビュー 作品の感想や女優への思い