『ラブ・エクスペリメント』（原題：Hippopotamus）は、2018年製作のイギリス製スリラー。記憶を失い地下室に監禁された女性ルビーが、謎の男に愛を強要される。過去と関係が明らかになり、衝撃の展開を迎えるワンシチュエーション作品。主演はイングヴィルド・デイラ。
基本情報
- 邦題：ラブ・エクスペリメント
- 原題：Hippopotamus
- 公開年：2018年
- 製作国：英国
- 上映時間：80分
- ジャンル：スリラー
見どころ
記憶喪失の女と、彼女を監禁した男。男は彼女を支配しようとしているのか、それとも導こうとしているのか、謎めいた展開に引き付けられる。驚がくのラストが待っている。
女優の活躍
『ラブ・エクスペリメント』の主演を務めるイングヴィルド・デイラ（Ingvild Deila）は、本作で主人公ルビー役として圧倒的な存在感を発揮しています。ノルウェー出身の彼女は、『ローグ・ワン／スター・ウォーズ・ストーリー』（2016年）でのレイア姫のデジタル再現役で注目を集めましたが、本作では身体的・心理的制約の中で感情の機微を表現する難しい役どころに挑戦。記憶喪失の女性として、混乱、恐怖、葛藤、そして微妙な心の変化を繊細に演じ分け、観客を引き込みます。特に、限られた空間での演技は、表情や仕草を通じてルビーの内面を巧みに伝え、観客に彼女の苦悩と抵抗を共感させます。デイラの演技は、批評家や映画祭で高く評価され、新進女優としての実力を証明しました。彼女の身体を張った演技、特に膝の靭帯を損傷した状態での動きや感情表現は、本作の緊張感を一層高めています。
女優の衣装・化粧・髪型
イングヴィルド・デイラ演じるルビーの衣装は、物語の設定を反映して非常にシンプルでミニマルです。劇中で彼女は主に白いタンクトップと下着姿で登場し、監禁された過酷な環境を強調。この簡素な衣装は、ルビーの脆弱さと無力感を視覚的に表現し、物語の閉塞感を強めます。白いタンクトップは清潔感と同時に無垢さを象徴し、監禁者との心理戦の中で彼女の精神的な変化を際立たせます。化粧はほぼ施されておらず、すっぴんに近いナチュラルな状態で、ルビーの混乱と絶望を強調。髪型は無造作にまとめられたポニーテールや、時に乱れた状態で登場し、監禁の過酷さと時間の経過を示唆します。このような衣装と外見の選択は、ワンシチュエーションスリラーの緊張感を高め、ルビーの置かれた極限状態を視覚的に補強する役割を果たしています。
あらすじ
ルビー（イングヴィルド・デイラ）はある日、目を覚ますと真っ白な地下室に閉じ込められていることに気づきます。彼女は膝の靭帯を損傷しており、歩くことができません。さらに、自分が誰なのか、なぜここにいるのか、一切の記憶がありません。そんな中、彼女の前に謎の男トム（スチュアート・モーティマー）が現れ、ルビーを誘拐したことを告げます。トムは、ルビーが自分を愛するようになるまで監禁を続けると宣言。ルビーは食事と痛み止めを与えられながら、監禁生活の中でトムの意図を探り、自身の過去を少しずつ思い出し始めます。テニスボール、椅子の絵、本の文字など、断片的な手がかりが彼女の記憶を刺激するものの、真実は曖昧で混乱を深めます。やがて、ルビーとトムの関係が過去に深い結びつきを持っていたことが明らかになり、物語は衝撃的な結末へと向かいます。愛と実験の境界が曖昧なまま、ルビーの運命は観客に解釈を委ねる形で幕を閉じます。
解説
『ラブ・エクスペリメント』は、ワンシチュエーションスリラーとして、限られた空間と最小限の登場人物で心理的な緊張感を構築する作品です。原題「Hippopotamus（カバ）」は、脳の記憶を司る「hippocampus（海馬）」との言葉遊びを含んでおり、記憶喪失や心理操作をテーマにした作品の核心を暗示します。監督エドワード・A・パーマーは、本作が長編デビュー作ながら、ルイス・キャロルの言葉遊びやイギリスの文学的伝統を背景に、観客に解釈の余地を残す複層的な物語を構築。ルビーの記憶喪失や監禁状況は、単なるサスペンスを超えて、愛、執着、アイデンティティの探求といった哲学的テーマを掘り下げます。
物語は、古典的な「美女監禁」モチーフを基盤にしつつ、単純なサスペンスに留まらない仕掛けが施されています。例えば、劇中の手がかり（テニスボールや本）は、ルビーの過去やトムの動機を解く鍵として機能しますが、完全な解答は提示されず、観客はルビーの視点で混乱と謎に直面します。レビューでは「前半は動きが少なく退屈」との声もある一方、後半の畳み掛ける展開やルビーとトムの関係性の暴露が「衝撃的」と評価されています。批評家は、本作が『コレクター』（1965）や『盲獣』（1969）といった監禁テーマの系譜に連なりつつ、独自の心理的迷宮を描いた点で新鮮だと指摘。また、ルビーの逆行性健忘症や断片的な記憶の描写は、観客に「何が本当か」を問うメタ的な構造を持ち、深読みの余地を提供します。結末は賛否両論を呼び、単なる監禁劇として見るか、ルビーの脳内での出来事として解釈するかで評価が分かれます。
キャスト
- ルビー：イングヴィルド・デイラ（Ingvild Deila）。記憶喪失の主人公。混乱と恐怖の中で過去を探る女性を繊細に演じる。
- トム：スチュアート・モーティマー（Stuart Mortimer）。ルビーを監禁する謎の男。執着と愛の境界を曖昧に演じ、物語の不気味さを牽引。
- ニック：トム・リンカーン（Tom Lincoln）。物語の鍵を握る脇役。過去の出来事に関与。
- ロブ：ジョナサン・コブ（Jonathan Cobb）。ルビーの過去に登場する人物として、断片的な記憶の中で現れる。
スタッフ
- 監督・脚本：エドワード・A・パーマー（Edward A. Palmer）。本作が長編デビュー。ミニマルな設定で心理スリラーを構築し、言葉遊びや象徴性を駆使。
総括
『ラブ・エクスペリメント』は、イングヴィルド・デイラの迫真の演技とエドワード・パーマーの緻密な演出により、観客を心理的な迷宮へと誘う作品です。シンプルな衣装とミニマルな設定が、ルビーの孤立感と物語の緊張感を強調。記憶と愛を巡る謎は、観客に多様な解釈を促し、賛否を呼ぶ結末は本作の魅力を一層深めます。ワンシチュエーションスリラーの枠を超えた、知的な挑戦に満ちた一作です。
レビュー 作品の感想や女優への思い