『エクスタシー・オブ・ザ・デッド』（原題：Ibiza Undead）は2016年に公開された英国のB級ゾンビ・コメディ映画。ゾンビが蔓延するイギリスを舞台に、若者たちがパーティーアイランドのイビサ島で遭遇するゾンビの騒動を描きます。
監督はアンディ・エドワード。コメディとホラーを融合させた軽快な作風で、過激なユーモアと低予算ならではの荒々しさが特徴です。カーラ・テオボルドやエミリー・アタックらが出演し、カルト的な人気を博しています。以下、本作のあらすじ、女優の活躍、解説、評価、キャスト、スタッフを説明します。
- 邦題：エクスタシー・オブ・ザ・デッド
- 原題：Ibiza Undead
- 公開年：2016年
- 製作国：英国
- 上映時間：95分
- 視聴：U-NEXT
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見どころ
アンディ・エドワード監督が贈る、各国映画祭でも話題となった新感覚ゾンビコメディ。イビザ島の美しい風景と、ゾンビや血といったギャップのある鮮やかな映像美や美女ゾンビのストリップにも注目。
あらすじ
物語は、ゾンビ感染が日常化したイギリスを背景に展開します。主人公のアレックス（ジョーダン・コールソン）は、恋人に振られたばかりの冴えない青年で、親友のジム（エド・カー）とアジ（マット・キング）と共に、姉のリズ（エミリー・アタック）が滞在するイビサ島へバカンスに出かけます。イビサ島はパーティーの聖地として知られ、彼らは楽しい休暇を期待していますが、そこにはゾンビを利用した危険なアトラクションが存在します。
アレックス一行が島に到着すると、元恋人のエリー（カーラ・テオボルド）もリズのグループと合流しており、気まずい雰囲気が漂います。一方、島のクラブでは、ゾンビを鎖でつないでショーとして見せるビジネスが横行しています。ジムはふざけてゾンビに酒を飲ませ、薬物で抑制されていたゾンビの攻撃性が復活。たちまちクラブは大混乱に陥り、ゾンビが島中に溢れ出します。
アレックスと仲間たちは生き残るため、ゾンビの襲撃を回避しながら島を脱出しようと奮闘しますが、個性的でまとまりのないメンバーたちの行動はしばしば裏目に出ます。物語は、コミカルな掛け合いや過激なスプラッター描写を織り交ぜながら、ゾンビの脅威と若者たちの成長（あるいはその欠如）を描き出します。果たして彼らはゾンビの島から無事に脱出できるのか、物語は予測不能な展開へと突き進みます。
女優の活躍
本作では、カーラ・テオボルドとエミリー・アタックという二人の女優がとくに注目されます。
カーラ・テオボルド（エリー役）
カーラ・テオボルドは、主人公アレックスの元恋人エリーを演じ、物語に感情的な軸をもたらします。彼女はイギリスのテレビドラマ『ダウントン・アビー』（2012年）でメイドのアイビー役として知られ、本作ではコミカルかつタフな女性像を体現。エリーはアレックスとの破局後、気まずい再会を果たすキャラクターで、テオボルドの自然体な演技が光ります。特に、ゾンビとの戦闘シーンでは、怯えながらも果敢に立ち向かう姿で、ホラーコメディ特有の誇張された感情表現を巧みに演じています。彼女のチャームとユーモアは、B級映画の枠を超えて観客を引き込む要素となっています。
エミリー・アタック（リズ役）
エミリー・アタックは、アレックスの姉リズを演じ、陽気で奔放なキャラクターで物語にエネルギーを注入します。アタックはイギリスのコメディドラマ『The Inbetweeners』（2008-2010年）でシャーロット役としてブレイクし、セクシーかつコミカルな役柄を得意とします。本作でも、リズの派手な言動やパーティー好きの性格を通じて、物語の軽快なトーンを牽引。ゾンビの危機に直面してもどこか楽観的な態度を崩さないリズのキャラクターは、アタックの持ち前の明るさと表現力によって際立っています。彼女の存在感は、特に若者たちのグループダイナミクスを強調する場面で顕著です。
両女優とも、B級映画の枠組みの中で過剰な演技を求められる中、キャラクターに愛嬌と個性を与え、観客に親しみやすい印象を与えています。彼女たちの掛け合いは、コメディ要素の成功に大きく貢献しています。
マルシア・ド・ヴァレス（マリア役）
『エクスタシー・オブ・ザ・デッド』で1番のクール美女。
マルシア・ド・ヴァレスは、本作でクラブのプロモーション・ガールであるマリア役を演じています。ブラジル出身の彼女は、イギリスのホラー映画界で注目される女優であり、本作ではエネルギッシュかつ強烈なキャラクターとして際立った存在感を示しています。
役柄と演技
マリアは、物語の舞台となるイビサ島のクラブで働く、派手で攻撃的なプロモーション・ガールとして登場します。彼女のキャラクターは、観客に「安っぽい魅力」をアピールする役割を担いつつも、ゾンビの混乱の中で「キックアス（大胆で勇敢）」な一面を見せることで、単なるステレオタイプを超えた深みを与えています。レビューでは、彼女の演技が「恐ろしくも素晴らしい（terrifying and terrific）」と評され、過剰な感情表現を求められるB級映画の中で、単に大声を出すのではなく、信憑性のある演技でキャラクターに説得力を持たせています。とくに、ゾンビの襲撃が始まるクラブ・シーンでは、彼女の激しいリアクションとアクションが物語のテンションを高め、観客に強い印象を与えます。
貢献と評価
マルシアは、映画のコメディとホラーのバランスを保つ上で重要な役割を果たしています。彼女の演じるマリアは、物語の初期ではコミカルで軽薄な印象を与えますが、危機的状況では予想外のタフさを見せ、観客にサプライズを提供します。レビューでは、彼女のアクセントが一部で演技の妨げになったとの指摘もありますが、そのエネルギッシュなパフォーマンスは「映画に純粋で腐敗した活気（putrefied pizzazz）」をもたらすと高く評価されています。また、彼女は本作のプロデューサーとしてもクレジットされており、女優としてだけでなく製作面でも貢献している点が注目されます。マルシアのホラー映画への情熱（幼少期から『チャイルド・プレイ』などのホラー映画を愛好していたと語る）は、彼女の演技に熱意と真実味を加え、B級映画のカルト的な魅力の一翼を担っています。
アルジナ・リプスキス（ザラ役）
アルジナ・リプスキスは、本作でアレックスの姉リズの友人であるザラ役を演じています。リトアニア出身の女優である彼女は、本作で活気のあるキャラクターを演じ、物語に感情的な深みと共感性を与えています。
役柄と演技
ザラは、リズ（エミリー・アタック）と一緒にイビサ島のヴィラでバカンスを楽しむ、陽気で社交的な女性として描かれます。彼女は、パーティー文化に馴染みつつも、物語が進むにつれてゾンビの脅威に直面し、仲間たちと協力して生き延びる姿を見せます。アルジナは、ザラ役で「上品なイギリス人アクセント」を意識的に取り入れ（）、キャラクターに洗練された雰囲気を与えつつ、ホラーコメディ特有の軽快な演技を披露しています。レビューでは、ザラが「最も共感できるキャラクター（arguably the most sympathetic character）」と評されており（）、彼女の演技がステレオタイプ的な「パーティーガール」の枠を超えて、感情表現の機会を得たと高く評価されています。特に、ゾンビの襲撃シーンでは、恐怖とユーモアをバランスよく表現し、観客に親しみやすい印象を与えています。
貢献と評価
アルジナの演技は、映画のコメディ要素とドラマチックな要素の橋渡し役として機能しています。彼女のザラは、物語の主要な若者グループの中でも比較的落ち着いた性格を持ち、他のキャラクターの過激な行動（特にジムの軽率な振る舞い）との対比を通じて、グループダイナミクスに安定感をもたらします。レビューでは、彼女が「ハイパーセクシャルなスプリングブレイカーの型にはまらず、感情を表現する機会を得た」と称賛されており、B級映画の中で際立つ存在感を示しています。アルジナの演技は、特に女性キャラクターが単なる装飾ではなく、物語に積極的に関与する役割を果たす点で、映画の魅力を高めています。彼女の存在は、映画が単なる「下品なコメディ」に終始せず、観客に共感や笑いを提供する要素として機能しています。
後者二人のの比較と映画全体への影響
マルシア・ド・ヴァレスとアルジナ・リプスキスは、それぞれ異なるタイプのキャラクターを演じ、映画の多様なトーンを支えています。マルシアのマリアは、過激でエネルギッシュなパフォーマンスで映画のスプラッターとコメディの要素を強調し、物語の混沌とした雰囲気を牽引します。一方、アルジナのザラは、感情的な共感性と落ち着いた魅力で、観客に物語への感情的なつながりを提供します。両者のコントラストは、映画の「イビサ島のパーティー文化」と「ゾンビの危機」という二つのテーマを結びつけ、B級映画特有の荒々しさと楽しさを引き立てています。
レビューでは、両女優が映画の低予算や脚本の限界を補う形で活躍したとされており、特にマルシアの「キックアス」な演技とアルジナの「共感性の高い」演技が、映画のカルト的な人気を支える要因となっています。二人の女優は、主要キャストであるカーラ・テオボルドやエミリー・アタックと並んで、映画の女性キャラクターに多様性と魅力を与え、男性中心の「ラッド文化」を風刺する要素にも貢献しています。
マルシア・ド・ヴァレスは、マリア役としてエネルギッシュで大胆な演技で映画のホラーコメディ要素を強化し、プロデューサーとしても作品に貢献しました。アルジナ・リプスキスは、ザラ役で共感性と感情表現を重視した演技を披露し、物語に安定感と親しみやすさを加えました。両女優の活躍は、『エクスタシー・オブ・ザ・デッド』のB級映画としての独特な魅力と、カルト的な人気を支える重要な要素となっています。彼女たちのパフォーマンスは、低予算ながらも観客を楽しませるエンターテインメント性を高め、ゾンビコメディの軽快な雰囲気を効果的に演出しています。
解説
『エクスタシー・オブ・ザ・デッド』は、ゾンビ映画の伝統に敬意を払いつつ、現代的なB級ホラーコメディとして独自の立ち位置を築いています。ゾンビ映画の元祖であるジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』（1968年）や『ドーン・オブ・ザ・デッド』（1978年）に影響を受けつつ、本作はホラーの緊張感よりもコメディとスプラッターの娯楽性を重視しています。
テーマと背景
本作の舞台となるイビサ島は、世界的にも有名なパーティーアイランドであり、享楽的な若者文化とゾンビの混沌を対比させる絶好の設定です。ゾンビが「日常化」した世界観は、『ショーン・オブ・ザ・デッド』（2004年）や『ウォーム・ボディーズ』（2013年）など、ゾンビをコメディや風刺の素材として扱うイギリス映画の系譜に連なります。本作では、ゾンビをクラブのショーとして利用するアイデアが登場し、現代社会の消費文化や無責任な行動への皮肉が込められていると解釈できます。
演出とスタイル
監督のアンディ・エドワードは、低予算映画の制約を逆手に取り、荒々しい映像と過剰なスプラッター描写でカルト的な魅力を生み出しています。ゾンビのメイクや特殊効果はB級映画らしいチープさを持ちつつ、血しぶきや断裂シーンは意図的に誇張され、観客に笑いとショックを提供します。音楽はクリス・J・ネアンが担当し、パーティーシーンに合わせたアップテンポなサウンドトラックが、映画の軽快な雰囲気を後押ししています。
文化的意義
本作は、ゾンビ映画のサブジャンルである「ゾンビコメディ」の一例として、カルト映画愛好家の間で一定の支持を得ています。イビサ島という設定や、若者たちの軽薄な行動は、2010年代の若者文化を反映しており、特にイギリスのパーティーシーンや「ラッド（lad）文化」のパロディが散見されます。ただし、深遠なテーマや社会批評を追求する作品ではなく、純粋な娯楽性を重視した作りが特徴です。
評価
『エクスタシー・オブ・ザ・デッド』は、批評家や観客から賛否両論の評価を受けています。Filmarksでは平均スコア2.2点（5点満点）と低めで、レビュー数は168件とそれなりの注目を集めていますが、「予想をはるかに上回る残念な作品」「ふざけたコメディ」との声も多く、期待を下回ったとの意見が目立ちます。一方で、B級映画としての荒々しい魅力や、過激なユーモアを楽しむファンも存在し、カルト的な人気を博しています。
肯定的な評価
B級映画愛好家からは、チープな特殊効果や過剰なスプラッター描写、軽快なコメディが好評です。特に、ゾンビに酒を飲ませるという突飛な展開や、個性的なキャラクターたちの掛け合いは、ユーモアを求める観客に受け入れられています。カーラ・テオボルドとエミリー・アタックのコミカルな演技も、映画の楽しさを増す要素として評価されています。また、各国の映画祭で一定の評価を得ており、低予算ながらエンターテインメント性を追求した姿勢が認められています。
否定的な評価
一方で、ストーリーの浅さやキャラクターの行動の無責任さ、演出の雑さが批判の対象となっています。特に、主人公アレックスの「童貞すぎる発言」や、ジムの過剰なふざけぶりが「品性下劣」と感じられる場合もあり、一部の観客には不快感を与えたようです。また、ゾンビ映画としての新しさや深みが不足している点も指摘されており、名作ゾンビ映画と比較すると見劣りするとの声もあります。
総評
本作は、B級映画の枠組みを理解し、過度な期待を持たずに鑑賞すれば、気軽に楽しめる作品です。ゾンビ映画の伝統を踏襲しつつ、コメディとスプラッターを融合させたユニークな試みは、特定の観客層に訴求力があります。ただし、ストーリーや演出の粗さが目立つため、万人受けする作品とは言い難いでしょう。
キャスト
- ジョーダン・コールソン（アレックス役）：冴えない主人公で、恋愛や友情に悩む青年。コメディ色の強い演技が特徴。
- カーラ・テオボルド（エリー役）：アレックスの元恋人。タフで愛嬌のあるキャラクターを自然体で演じる。
- エミリー・アタック（リズ役）：アレックスの姉で、パーティー好きの陽気な女性。コミカルな存在感が光る。
- エド・カー（ジム役）：アレックスの親友で、過剰なふざけぶりが物語を牽引するトラブルメーカー。
- マット・キング（アジ役）：アレックスのもう一人の親友。ダース・ベイダーのTシャツを着たオタク青年として、ユーモラスな脇役を演じる。
その他：アレックス・ザーン、アルガル・トラビスなど、個性的な脇役が多数出演。
スタッフ
- 監督・脚本：アンディ・エドワード（Andy Edwards）…低予算ホラーやコメディを得意とする監督。本作では、ゾンビコメディの軽快なトーンを確立。
- 製作：エリサル・カブレラ（Elisar Cabrera）…低予算映画の製作に携わるプロデューサーで、本作のカルト的な雰囲気を支える。
- 音楽：クリス・J・ネアン（Chris J. Nairn）…パーティーシーンを盛り上げるアップテンポなサウンドトラックを提供。
- 撮影：エオイン・オキャラハン…イビサ島の風景とゾンビの混沌を、低予算ながら効果的に捉える。
- 編集：アンディ・エドワード、トミー・ブールド…スプラッターシーンやコメディのテンポを調整し、軽快な編集を実現。
- 衣装デザイン：サラ・タプスコット
まとめ
『エクスタシー・オブ・ザ・デッド』は、イビサ島を舞台にしたB級ゾンビ・コメディとして、過激なユーモアとスプラッター描写でカルト的な魅力を放つ作品です。カーラ・テオボルドとエミリー・アタックの活躍が物語に彩りを添え、低予算ながらも娯楽性を追求した姿勢が評価されています。ただし、ストーリーの浅さや演出の粗さが目立つため、B級映画の楽しみ方を理解する観客向けの作品といえます。ゾンビ映画やコメディが好きな方には、気軽な鑑賞をお勧めいたします。
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