『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019年)は富豪の殺人事件を巡るミステリー。名探偵ブノワ・ブランが、家族の嘘と秘密を暴く。巧みなプロットとユーモア、豪華キャストが織りなす現代版アガサ・クリスティー。
基本情報
- 邦題:ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密
- 原題:Knives Out
- 公開年:2019年
- 製作国:米国
- 上映時間:130分
- ジャンル:クライム
- 配給:ロングライド
見どころ
「石の拳」と呼ばれた伝説のボクサー、ロベルト・デュランをエドガー・ラミレスが好演。伝説のトレーナー、レイ・アーセルを名優、ロバート・デ・ニーロが演じる。
あらすじ
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』は、富豪の作家ハーラン・スロンビー(クリストファー・プラマー)の85歳の誕生日パーティーの翌朝、彼が自殺と見られる状況で遺体となって発見されることから物語が始まります。しかし、名探偵ブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)は、匿名の依頼を受け、この死に疑問を抱き調査を開始します。ハーランの家族——娘リンダ(ジェイミー・リー・カーティス)、息子ウォルト(マイケル・シャノン)、義理の娘ジョニ(トニ・コレット)、孫ランサム(クリス・エヴァンス)ら——はそれぞれ金銭や遺産を巡る動機を抱えており、互いに疑心暗鬼に陥ります。ハーランの看護師マルタ(アナ・デ・アルマス)は、嘘をつくと吐いてしまう特異体質を持ち、ブランにとって重要な手がかりを提供します。物語は、家族間の対立や秘密が次々と明らかになる中、巧妙なトリックと意外な展開で観客を翻弄します。最終的に、ブランは鋭い観察力と推理で真実を解き明かし、事件の背後に隠された驚くべき事実を暴きます。
解説
『ナイブズ・アウト』は、ライアン・ジョンソン監督がアガサ・クリスティーの古典的ミステリーにオマージュを捧げつつ、現代的なユーモアと社会風刺を織り交ぜた作品です。伝統的な「フーダニット(誰が犯人か)」形式を採用しつつ、家族間の権力闘争や階級差、移民問題といったテーマを巧みに取り入れ、単なる謎解きを超えた深みを与えています。特に、物語の中心に据えられたマルタのキャラクターは、善良さと正直さを象徴し、貪欲な家族との対比が際立ちます。ジョンソンの脚本は、伏線とサプライズが見事に調和し、観客を最後まで引き込む展開が特徴です。映像美も特筆すべき点で、ゴシック調のスロンビー邸は物語の雰囲気を高め、衣装やセットデザインもキャラクターの個性を際立たせています。批評家からも高く評価され、ゴールデングローブ賞やアカデミー賞の脚本賞にノミネートされるなど、賞レースでも注目を集めました。
女優の活躍
本作では、アナ・デ・アルマス、ジェイミー・リー・カーティス、トニ・コレットの3人の女優が特に際立った活躍を見せています。
アナ・デ・アルマス(マルタ・カブレラ役)
アナ・デ・アルマスは、本作でハーランの看護師マルタを演じ、物語の中心人物として圧倒的な存在感を発揮しました。マルタは善良で誠実なキャラクターでありながら、家族の策略に巻き込まれる複雑な役どころです。デ・アルマスは、マルタの純粋さと葛藤を見事に表現し、特に嘘をつくと吐いてしまうという特異体質をコミカルかつ自然に演じきりました。彼女の繊細な表情と感情の揺れは、観客にマルタへの共感を強く呼び起こし、物語の鍵を握るキャラクターとしての説得力を与えました。この役でデ・アルマスは一躍注目を集め、ゴールデングローブ賞の主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)にノミネートされるなど、キャリアの飛躍を遂げました。
ジェイミー・リー・カーティス(リンダ・ドライスデール役)
ジェイミー・リー・カーティスは、ハーランの娘リンダを演じ、家族の中心的存在として強い印象を残します。リンダは自立した実業家でありながら、父親の財産に依存する一面を持ち、複雑な人間性をカーティスが見事に体現しました。彼女の鋭い眼差しと威厳ある演技は、リンダのプライドと家族への愛情、そして裏に隠れた不安を浮き彫りにします。特に、家族会議のシーンでの堂々とした振る舞いと、感情が爆発する瞬間の対比が、彼女の演技力の高さを示しています。
トニ・コレット(ジョニ・スロンビー役)
トニ・コレットは、ハーランの義理の娘ジョニを演じ、独特の個性で観客を引き込みます。ジョニはスピリチュアルなライフスタイルを装いつつ、実際には金銭に執着する偽善的なキャラクターです。コレットは、ジョニの滑稽さと狡猾さを絶妙にバランスさせ、コミカルでありながらどこか不気味な雰囲気を醸し出しました。彼女の演技は、家族の欲深さを象徴する存在として物語に深みを加えています。
女優の衣装・化粧・髪型
各女優の衣装、化粧、髪型は、キャラクターの個性や社会的地位を反映する重要な要素として、映画の視覚的魅力に大きく貢献しています。
アナ・デ・アルマス(マルタ)
マルタの衣装は、彼女の控えめで誠実な性格を反映し、シンプルかつ実用的なデザインが特徴です。主にカジュアルなセーターやコート、ジーンズを着用し、落ち着いた色合い(ベージュ、グレー、ブルー)が中心です。これにより、華やかなスロンビー家の中で彼女が「部外者」であることが強調されます。化粧はナチュラルで、ほとんどメイクをしていないような素朴な印象を与え、彼女の純粋さを引き立てます。髪型は、ゆるくまとめたポニーテールや自然なウェーブで、飾り気のないスタイルがマルタの親しみやすさを表現しています。
ジェイミー・リー・カーティス(リンダ)
リンダの衣装は、成功した実業家としての自信と威厳を表現する洗練されたスタイルです。テーラードジャケットや高級感のあるブラウス、ダークトーンのパンツスーツを着用し、赤や深緑といった力強い色が多用されます。化粧は、シャープなアイラインと控えめなリップで、彼女の強い意志を強調。髪型は、ショートカットのブロンドヘアで、きちんと整えられたスタイルがリンダの完璧主義的な性格を反映しています。
トニ・コレット(ジョニ)
ジョニの衣装は、彼女のエキセントリックな性格を反映した派手でボヘミアン風のデザインが特徴です。ゆったりとしたマキシドレスやカラフルなスカーフ、ビーズのアクセサリーを多用し、スピリチュアルな雰囲気を演出。化粧は、濃いアイシャドウと大胆なリップカラーで、彼女の派手さを強調します。髪型は、ゆるやかなウェーブのロングヘアで、時にヘアアクセサリーを加えることで、ジョニの自己顕示欲を視覚的に表現しています。
キャスト
- ダニエル・クレイグ:ブノワ・ブラン(名探偵)
- アナ・デ・アルマス:マルタ・カブレラ(看護師)
- クリス・エヴァンス:ランサム・ドライスデール(ハーランの孫)
- ジェイミー・リー・カーティス:リンダ・ドライスデール(ハーランの娘)
- マイケル・シャノン:ウォルト・スロンビー(ハーランの息子)
- トニ・コレット:ジョニ・スロンビー(ハーランの義理の娘)
- クリストファー・プラマー:ハーラン・スロンビー(富豪の作家)
ほかに、ドン・ジョンソン、ケイティ・マッキノン、レイキース・スタンフィールドら。
スタッフ
- 監督・脚本:ライアン・ジョンソン
- 製作:ライアン・ジョンソン、ラム・バーグマン
- 撮影:スティーヴ・イェドリン
- 音楽:ネイサン・ジョンソン
- 編集:ボブ・ダクセイ
- 衣装デザイン:ジェニー・イーガン
- 美術監督:デヴィッド・クランク
まとめ
『ナイブズ・アウト』は、緻密な脚本、魅力的なキャラクター造形、豪華キャストによる演技が見事に融合したミステリー映画です。アナ・デ・アルマスをはじめとする女優陣の活躍は、物語に感情的な深みと魅力を加え、衣装や髪型は各キャラクターの個性を際立たせます。ライアン・ジョンソンの巧みな演出と現代的なテーマの融合により、本作は単なる娯楽作品を超え、批評的にも成功を収めた傑作です。
レビュー 作品の感想や女優への思い