ポーランドの海岸で唇を切り取られた女性の遺体が発見され、検察官ビルスキと被害者の母が真相を追う。15年前の類似事件との繋がりが明らかに。マヤ・オスタシェフスカとゾフィア・ヤストジェンブスカが活躍するNetflix配信のサスペンス。
基本情報
- 邦題：カラーズ・オブ・エビル：レッド
- 原題：Kolory zla. Czerwien
- 英題：Colors of Evil: Red
- 公開年：2024年
- 製作国：ポーランド
- 上映時間：111分
- ジャンル：サスペンス、ドラマ、ミステリー
あらすじ
ポーランドのトリシティの海岸で、若い女性モニカの遺体が発見される。彼女の唇は切り取られ、裸で打ち上げられた状態だった。熱血漢の新任検察官レオポルド・ビルスキ（ヤクブ・ギェルシャウ）は、事件の調査に乗り出すが、その状況が15年前に起きた未解決事件と酷似していることに気付く。
過去の事件では、被害者のザネタが同様の手口で殺害されており、犯人とされたヤクビアクは最近出所したばかりだった。ビルスキは上司の反対を押し切り、被害者の母で判事のヘレナ・ボグツカ（マヤ・オスタシェフスカ）と協力し、事件の真相を追う。
調査の過程で、モニカが働いていたナイトクラブのオーナー、カザラスキによる性的虐待や薬物取引の闇が浮かび上がる。さらに、モニカと恋愛関係にあった同僚ミラや、過去の事件との意外な繋がりが明らかに。ビルスキとヘレナは、腐敗した権力と向き合いながら、事件の背後に潜む真実を暴いていく。物語は、親子の絆や社会の闇を描きつつ、衝撃の結末へと向かう。
解説
『カラーズ・オブ・エビル：レッド』は、ポーランドの作家マウゴジャタ・オリヴィア・ソブチャクの犯罪小説を原作としたサスペンス映画で、2024年5月29日にNetflixで配信開始された。ポーランドのトリシティを舞台に、猟奇的な殺人事件を通じて社会の腐敗や家族の葛藤を描く本作は、ダークで重厚な雰囲気と緻密なストーリー展開が特徴である。
監督のアドリアン・パネックは、暴力的な描写と心理的な緊張感を巧みに織り交ぜ、観客を引き込む演出を見せる。物語は単なるミステリーにとどまらず、被害者の背景や家族の無関心、権力者の腐敗といった社会問題を浮き彫りにする。特に、モニカの死を通じて、生きている間は見過ごされていた彼女の苦しみに光を当てる展開は、観客に深い感情的インパクトを与える。
批評家からは、ストーリーの重厚さとキャストの演技が高く評価されており、Rotten Tomatoesでは80%の好評価を獲得している。ただし、暴力描写や性的虐待のシーンが強いため、16歳以上の年齢制限が設けられている。
本作は、2時間に凝縮された海外ドラマのようなテンポと、予想を裏切る展開で、サスペンスファンに満足感を与える作品に仕上がっている。
女優の活躍
本作では、女性キャストが物語の中心的な役割を担い、特にマヤ・オスタシェフスカとゾフィア・ヤストジェンブスカの演技が際立つ。マヤ・オスタシェフスカ演じるヘレナ・ボグツカは、被害者モニカの母であり、判事としての冷静さと母親としての深い悲しみを両立させる複雑な役どころを見事に演じきっている。彼女の感情の揺れ、特に娘の死を知った後の絶望と真相を追い求める決意は、観客の心を強く打つ。オスタシェフスカは、ポーランド映画界で長年活躍する実力派女優であり、『人間の境界』（2022年）などでの演技も高く評価されているが、本作では特に母親としての繊細な感情表現が光る。一方、ゾフィア・ヤストジェンブスカ演じるモニカは、物語の冒頭で犠牲者となるが、回想シーンを通じて彼女の苦悩や抵抗が描かれる。ヤストジェンブスカは、短い出演時間ながら、クラブでの過酷な環境やカザラスキからの虐待に耐える姿を力強く表現。彼女の演技は、モニカの悲劇性を強調し、物語に深みを与えている。両女優の存在感は、男性中心の捜査シーンの中で、女性の視点や感情を強く印象づける役割を果たしている。
女優の衣装・化粧・髪型
マヤ・オスタシェフスカ演じるヘレナ・ボグツカの衣装は、判事としての職業的な立場を反映し、シンプルかつ上品なものが中心である。ダークトーンのスーツやコート、落ち着いた色のブラウスが多用され、彼女の冷静で理知的な性格を表現している。化粧は控えめで、ナチュラルなベースメイクに薄いリップとアイメイクが施され、年齢相応の品格を保ちつつ、母親としての疲弊感も垣間見える。髪型は、肩までの長さのストレートヘアで、普段はきちんとまとめられているが、感情的なシーンではやや乱れることで内面の動揺を視覚的に示している。
一方、ゾフィア・ヤストジェンブスカ演じるモニカの衣装は、ナイトクラブでの仕事環境を反映した派手で露出度の高いものが特徴的。タイトなドレスやスパンコールのトップスなど、華やかな衣装が彼女の若さと職業を強調する。化粧は濃いめで、鮮やかなリップやスモーキーなアイシャドウが施され、クラブの派手な雰囲気に合わせている。髪型はショートカットで、軽くウェーブがかかったスタイルがモニカの自由奔放な性格と若さを表現。回想シーンでは、虐待を受けた後の乱れた髪やメイクが、彼女の過酷な状況を際立たせている。
これらの衣装やメイクは、キャラクターの社会的役割や感情の変化を効果的に伝える役割を果たしている。
キャスト
- ヤクブ・ギェルシャウ（レオポルド・ビルスキ役）：熱血漢の検察官。『ゆれる人魚』で知られる若手実力派。
- マヤ・オスタシェフスカ（ヘレナ・ボグツカ役）：モニカの母で判事。ポーランド映画界の重鎮。
- ゾフィア・ヤストジェンブスカ（モニカ役）：被害者の若い女性。回想シーンで強い印象を残す。
- アンジェイ・コノプカ（カザラスキ役）：ナイトクラブのオーナーで事件の鍵を握る人物。
- プシェムィスワフ・ブルシュチュ（ミラ役）：モニカの恋人でクラブの同僚。
- ヴォイチェフ・ジエリンスキー（ドゥビエラ役）：検視官でビルスキの協力者。
- アンジェイ・ジエリンスキ：脇役として事件の背景を補完。
- ヤン・ヴィエテスカ：捜査に関わる警察官役。
- ウカシュ・パヴウォフスキ：クラブ関係者として登場。
- ヴォイチェフ・カリタ：物語の展開に影響を与える役。
- ズビグニエフ・ストルイ：重要な脇役として出演。
- シモン・チャツキ：事件の周辺人物を演じる。
- ダニエル・ドボス：捜査の補助役として登場。
スタッフ
- 監督：アドリアン・パネック – 『目覚めれば』（2019年）の監督で、サスペンスの演出に定評。
- 脚本：アドリアン・パネック、ウカシュ・M・マチェイェフスキ – 原作を基に緻密なストーリーを構築。
- 原作：マウゴジャタ・オリヴィア・ソブチャク – ポーランドの人気犯罪小説家。
- 撮影：トマシュ・アウグスティネク – 暗い色調でポーランドの海岸の雰囲気を表現。
- 音楽：バルトシュ・ヒアラ – サスペンスを高める重厚なスコアを提供。
- 編集：ピオトル・クミオル – テンポの良い編集で緊張感を維持。
- 製作：Netflix、Aurum Film – ポーランド映画の国際的配信を支える。
総括
『カラーズ・オブ・エビル：レッド』は、猟奇的な殺人事件を軸に、家族の絆や社会の闇を描いた重厚なサスペンス映画である。マヤ・オスタシェフスカとゾフィア・ヤストジェンブスカの感情的な演技は、物語に深い人間ドラマを加え、衣装やメイクはキャラクターの背景を効果的に表現している。アドリアン・パネック監督の緻密な演出と、強力なキャスト陣による演技が、ポーランド映画の魅力を世界に発信する作品となっている。サスペンスファンだけでなく、深い人間ドラマを求める観客にもおすすめの一作である。
レビュー 作品の感想や女優への思い