『トリエステから来た女』は1982年製作のイタリア映画。パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ監督が自身の小説を映画化。中年の漫画家と謎めいた美女の愛を描く。トリエステの海辺を舞台に、愛と狂気の物語が展開する。中心となる女優は、ニコール役を演じたオルネラ・ムーティ。113分。
基本情報
- 邦題:トリエステから来た女
- 原題:THE GIRL FROM TRIESTE
- 公開年:1983年
- 製作国:イタリア
- 上映時間:113分
- ジャンル:アクション
女優の活躍
『トリエステから来た女』の中心となる女優は、ニコール役を演じたオルネラ・ムーティです。彼女はイタリア映画界で長く活躍する女優で、本作ではその美貌と演技力が高く評価されています。オルネラ・ムーティは、ニコールの複雑な心理状態を見事に体現し、時に魅力的で時に破滅的なキャラクターを生き生きと演じました。彼女の演技は、躁鬱的な感情の揺れや、愛と自滅の間を揺れ動く女性の内面をリアルに表現しており、観客に強い印象を与えます。特に、ニコールが突然坊主頭にするシーンは、彼女の精神的な不安定さを象徴する強烈な場面として、ムーティの表現力が高く評価されています。
ミムジー・ファーマーも、ディーノの恋人ヴァレリア役として重要な役割を果たしています。彼女はアメリカ出身の女優で、1970年代から1980年代のイタリア映画で活躍しました。本作では、ディーノとニコールの情熱的な関係に対して、冷静で落ち着いた存在感を提供し、物語にバランスをもたらしています。ムーティとファーマーの対比的な演技は、物語の感情的な深みを増しています。
また、アンドレア・フェレオルやジャン=クロード・ブリアリなど、脇を固める俳優陣もイタリア映画界で知られた存在であり、彼らの自然な演技が物語のリアリティを支えています。
女優の衣装・化粧・髪型
オルネラ・ムーティ演じるニコールの衣装は、1980年代初頭のイタリアのファッションを反映しつつ、彼女のキャラクターの自由奔放さと不安定さを表現しています。物語の冒頭で海から救助された際、彼女はほとんど服を着ていない状態で登場し、その無防備さが彼女のミステリアスな魅力を強調します。その後のシーンでは、シンプルだが女性らしいドレスやカジュアルなトップスを着用し、トリエステの秋の風景に溶け込むようなナチュラルなスタイルが特徴です。ニコールの衣装は、時に挑発的で、彼女の性的な自己顕示欲を反映するデザインが選ばれています。
化粧に関しては、ムーティのメイクは控えめでありながら、彼女の自然な美しさを引き立てるよう計算されています。ニコールの感情の起伏を表現するため、シーンによってはほとんどメイクを施さないナチュラルな顔立ちで登場し、彼女の脆さや純粋さを強調しています。一方で、特定のシーンでは、赤い口紅やアイラインを強調したメイクが施され、彼女の魅惑的な側面を際立たせています。
髪型は、ニコールの精神状態を象徴する重要な要素です。物語の初期では、彼女の長い髪が女性らしさと自由さを表現していますが、物語が進むにつれて、突然坊主頭にするシーンが登場します。この変化は、彼女の精神的な混乱と自己破壊的な傾向を視覚的に表現するもので、観客に強い衝撃を与えます。この大胆な髪型の変化は、ムーティの演技と共に、ニコールのキャラクターの深みを強調する重要な要素となっています。
ミムジー・ファーマー演じるヴァレリアの衣装は、より落ち着いた大人の女性らしいスタイルです。彼女は洗練されたブラウスやスカートを着用し、ディーノとの安定した関係を反映するような上品なデザインが特徴です。メイクも控えめで、ナチュラルな美しさを強調するものが多く、ニコールの不安定な魅力とは対照的な存在感を放っています。
あらすじ
イタリア系アメリカ人の漫画家ディーノ・ロマーニ(ベン・ギャザラ)は、40代半ばでトリエステ近くのピッコラ・イストリアのリゾート村に別荘を構え、静かな生活を送っています。ある秋の朝、ほとんど人気のない海水浴場で絵を描いていたディーノは、海で溺れていた若い女性ニコール(オルネラ・ムーティ)が救助される場面を目にします。彼は彼女にタオルを貸し、翌日、ニコールはタオルを返すために現れ、突然の情熱的な愛の行為に及びます。しかし、彼女はその後すぐに姿を消します。
ニコールとの出会いはディーノの心を強く惹きつけますが、彼女は名前以外ほとんど何も明かしません。彼女の予測不可能な行動や気分の変動、そして性的な自己顕示欲にディーノは戸惑いながらも、彼女に強く惹かれていきます。一方、ディーノにはオープンな関係にある恋人ヴァレリア(ミムジー・ファーマー)がいますが、ニコールの存在が彼の心を揺さぶります。ニコールとの断続的な出会いの中で、ディーノは彼女が精神的に不安定であり、自殺願望を抱えている可能性に気づき始めます。彼女の謎めいた行動や突然の坊主頭への変貌は、ディーノをさらに困惑させ、愛と不安の間で葛藤させます。
物語は、ニコールが精神病院での過去をほのめかす場面や、ディーノの友人や周囲の人々との交流を通じて、彼女の内面の闇が徐々に明らかになります。ディーノはニコールを救おうと試みますが、彼女の心の闇は深く、物語は悲劇的な結末へと向かいます。最終的に、ニコールは再び海へと消え、ディーノは彼女との愛の記憶と喪失感を抱えて残されます。この映画は、愛の激しさと破滅的な側面を、トリエステの美しい海辺の風景と共に描き出します。
解説
『トリエステから来た女』は、パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ監督が自身の同名小説を原作に、1982年に製作したイタリアのロマンス・ドラマ映画です。この作品は、愛と狂気、理性と感情の対立をテーマにした寓話的な物語として描かれています。トリエステの海辺のロケーションは、物語の詩的で神秘的な雰囲気を高め、リズ・オルトラーニの音楽が情感豊かなスコアで作品を支えています。映画は、精神的な不安定さと愛の複雑さをリアルに描きつつ、観客に深い感情的インパクトを与える作品として評価されています。
本作の特徴は、主人公ニコールの複雑な心理描写と、ディーノの彼女に対する愛と無力感の対比にあります。ニコールの行動は予測不可能で、時に常軌を逸しており、彼女の精神的な病が物語の中心的なテーマとなっています。この映画は、1980年代のイタリア映画特有の官能的で情熱的な要素を持ちつつも、単なるロマンスを超えた深い人間ドラマを提供します。批評家からは、ニコールのキャラクター造形とオルネラ・ムーティの演技が高く評価されており、特に彼女の感情の揺れを表現する繊細な演技が注目されています。
また、トリエステの風景や海辺のシーンは、物語の情感を強調する重要な要素です。映画の視覚的スタイルは、アルフィオ・コンティーニの撮影によって、トリエステの秋の静けさと美しさが巧みに捉えられています。全体として、愛の美しさと破滅的な側面を融合させた作品であり、観客に深い余韻を残します。
キャスト
- ベン・ギャザラ – ディーノ・ロマーニ(漫画家)
- オルネラ・ムーティ – ニコール(謎の女性)
- ミムジー・ファーマー – ヴァレリア(ディーノの恋人)
- ジャン=クロード・ブリアリ – 友人
- アンドレア・フェレオル – 脇役
スタッフ
- 監督:パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ
- 原作:パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ(小説『La Ragazza di Trieste』)
- 脚本:オッタヴィオ・ジェンマ
- 製作:アキーレ・マンゾッティ
- エグゼクティブ・プロデューサー:ルチアーノ・ルナ
- 撮影:アルフィオ・コンティーニ
- 音楽:リズ・オルトラーニ
- 編集:アメデオ・サルファ
レビュー 作品の感想や女優への思い