1999年公開の韓国映画「LIES/嘘」(거짓말)は、チャン・ジョンイルの禁断小説を原作に、38歳の彫刻家Jと18歳の高校生Yのサディスティックな性愛関係を描くエロティック・ドラマ。セミ・ドキュメンタリー形式で、過激な性描写や社会批判を織り交ぜ、韓国社会に衝撃を与えた。監督はチャン・ソンウ。
基本情報
- 邦題:LIES/嘘
- 原題:거짓말
- 英題:Lies
- 公開年:1999年
- 製作国:韓国
- 上映時間:108分
女優の活躍
「Lies」の主要な女優はキム・テヨンで、主人公Yを演じています。彼女はこの映画で大胆かつ挑戦的な役柄に挑み、韓国映画界においてタブーとされていた性的表現を体現しました。キム・テヨンは当時、プロの女優ではなく、この役のためにオーディションを通じて選ばれた新人でした。彼女の演技は、18歳の高校生Yが持つ無垢さと性的好奇心、そして徐々に深まるサディスティックな関係への没入をリアルに表現し、観客に強烈な印象を与えました。特に、YがJとの関係で感情的な揺れや肉体的な痛みを経験しながらも、自己の欲望と向き合う姿は、彼女の演技力によって説得力を持っています。キム・テヨンは、過激なシーンにもかかわらず、感情の機微を表現し、単なる性的対象ではなく、複雑な心理を持つキャラクターとしてYを立体的に演じました。この役は、彼女にとってキャリアの出発点となり、映画の物議を醸す性質とともに、彼女の勇気ある選択が注目されました。
また、脇役としてJの妻Gを演じたチェ・ヒョンジュや、Yの友人ウリを演じたチョン・ヘジンも、物語の背景を補強する重要な役割を果たしています。チェ・ヒョンジュはJの妻としての複雑な感情を控えめに表現し、物語に深みを加えました。チョン・ヘジンはYの友人として、彼女の行動に影響を与える存在感を示しました。
女優の衣装・化粧・髪型
「Lies」の衣装、化粧、髪型は、物語のテーマである日常性と異常性の対比を強調するようにデザインされています。キム・テヨン演じるYの衣装は、物語の初期では典型的な高校生の制服が中心で、清楚で無垢なイメージを強調します。制服は韓国社会における規範や純粋さの象徴として機能し、Yの内面的な葛藤や反発とのコントラストを際立たせます。物語が進むにつれて、Yの衣装はラブホテルでのシーンではシンプルな下着やカジュアルな服装に変わり、彼女の性的解放と社会からの逸脱を象徴しています。化粧はほとんど施されておらず、自然な顔立ちが強調され、Yの若さと純粋さが際立ちます。髪型も、ストレートでシンプルなロングヘアが基本で、特別な装飾はなく、日常的な高校生の雰囲気を保っています。このミニマリスティックなアプローチは、映画のセミ・ドキュメンタリー形式と調和し、リアルな雰囲気を醸し出しています。
一方、チェ・ヒョンジュ演じるGは、大人の女性としての落ち着いた衣装を選び、洗練された都会的なスタイルが特徴です。彼女の化粧は控えめながらも上品で、Jとの関係の複雑さを示唆しています。チョン・ヘジン演じるウリも、Yと同様に高校生らしいカジュアルな衣装で登場し、友人としての親しみやすさを表現しています。全体的に、衣装や化粧は派手さを避け、キャラクターの内面や社会的背景を反映するものとして慎重に選ばれています。
あらすじ
「Lies」は、18歳の高校生Y(キム・テヨン)と38歳の既婚彫刻家J(イ・サンヒョン)の禁断の関係を描いた物語です。Yは、処女を失うことを自らの意志で決め、友人のウリ(チョン・ヘジン)が連絡を取っていたJに電話をかけ、ソウルのラブホテルで会う約束をします。Yは、姉たちがレイプによって処女を失った経験から、自身の初体験を自分でコントロールしたいという強い意志を持っています。最初の出会いで、YはJと性行為に及び、彼らの関係は急速にエスカレート。Jのサディスティックな欲望とYの好奇心が交錯し、鞭やその他の道具を使った過激な性的行為に発展します。
Jが妻G(チェ・ヒョンジュ)とパリに滞在中、Yは大学に入学し統計学を学びます。Jが韓国に戻ると二人の関係は再燃し、YはJに打たれることに喜びを見出し、逆にJを打つ役割も担うようになります。しかし、Yの兄が二人の関係を知り、Jの家に火を放つ事件が起こります。YとJはホテルを転々としながら関係を続け、YはJの太ももに「私の愛」と刻むなど、執着を深めます。しかし、Yが兄の死を知り、突然関係を終わらせ、大学生活に戻ることを決意。JはパリでGと暮らす中、Yからの突然の電話で彼女がブラジルへ向かうことを知り、深い喪失感に苛まれます。映画は、セミ・ドキュメンタリー形式で進行し、キャストや原作者のインタビューが挿入され、虚実の境界を曖昧にします。
解説
「Lies」は、1996年に出版され、即座に発禁処分を受けたチャン・ジョンイルの小説「嘘をついて」を原作とした、韓国映画界における挑戦的な作品です。監督チャン・ソンウは、韓国社会の保守的な儒教的価値観や性的タブーに真っ向から挑み、個人の欲望と社会規範の衝突を描きました。映画は、セミ・ドキュメンタリー形式を採用し、実際のキャストインタビューや撮影現場の映像を挿入することで、フィクションと現実の境界を曖昧にしています。この手法は、観客に物語の背後にある真実や登場人物の動機を深く考えさせる効果を持っています。
映画のテーマは、性的欲望の探求だけでなく、個人の自由と社会の抑圧の対立です。Yの台詞「私は100万人の一人になりたくない。個性を尊重する社会に生きたい」は、韓国社会の集団主義に対する批判を象徴しています。過激な性描写やスカトロフィリアなどの要素は、観客に不快感を与えることを意図しており、単なるエロティシズムを超えた社会への挑発として機能します。しかし、批評家からは、カメラワークの不安定さや演出の不統一が指摘され、映画としての完成度には賛否両論があります。それでも、BDSMのリアルな描写や、同意に基づく関係性の丁寧な描き方は、海外の観客や批評家から一定の評価を受けました。
韓国での公開時、映画は厳しい検閲を受け、国内版は大幅にカットされましたが、国際版は無修正で公開され、海外の映画祭で話題を呼びました。監督のチャン・ソンウは、韓国の検閲制度に対する挑戦としてこの作品を制作し、映画史における重要な一歩となりました。
キャスト
- J(彫刻家):イ・サンヒョン…38歳の既婚男性で、サディスティックな欲望を持つ彫刻家。感情的な弱さと情熱を併せ持つ。
- Y(高校生):キム・テヨン…18歳の高校生で、性的好奇心と自立心が強い。物語の中心人物。
- ウリ(Yの友人):チョン・ヘジン…Jと連絡を取っていたYの友人で、物語の発端となる役割。
- G(Jの妻):チェ・ヒョンジュ…Jの妻で、パリで芸術を学ぶ。夫の裏切りに直面する。
- Yの兄:ハン・クァンテク…Yの行動に介入し、物語の転換点を作り出す。
スタッフ
- 監督・脚本:チャン・ソンウ…韓国新世代の映画監督として知られ、社会的タブーに挑む作品で評価される。
- 原作:チャン・ジョンイル(小説「嘘をついて」)…禁断小説の著者で、映画にもインタビューで登場。
- 撮影:キム・ウヒョン…セミ・ドキュメンタリー風のハンドヘルド撮影で、リアルな雰囲気を創出。
- 編集:パク・ゴクジ…ドキュメンタリーと物語の融合を支える編集。
- プロダクションデザイン:キム・ミョンギョン…シンプルなセットで、物語の心理的緊張感を強調。
- 音楽:ダル・パラ…映画の雰囲気や感情を補強するミニマルな音楽。
- プロデューサー:シン・チョル、ジョナサン・H・キム…検閲への挑戦を支えた製作陣。
総括
「Lies」は、韓国映画における表現の自由とタブーに挑戦した歴史的な作品です。キム・テヨンの大胆な演技、簡素ながら効果的な衣装と化粧、セミ・ドキュメンタリー形式の独特な演出が、観客に強烈な印象を与えます。性的描写の過激さや社会批判が物議を醸しましたが、個人の欲望と社会規範の葛藤を描く深いテーマ性は、現代でも議論の余地を残しています。
レビュー 作品の感想や女優への思い