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不滅の女

「見どころ」にPR表現を含みます。

『不滅の女』は1963年に公開されたアラン・ロブ=グリエ監督のデビュー作。イスタンブールを舞台に、フランス人教師と謎めいた女性ラーレ(フランソワーズ・ブリオン演)との出会いと妄執を描くヌーヴォー・ロマン映画。モノクロの映像美と非連続的叙述で、愛と現実の不確かさを探る。

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基本情報

  • 邦題:不滅の女
  • 原題:L’immortelle
  • 公開年:1963年
  • 製作国:イタリア、トルコ、フランス
  • 上映時間:101分

見どころ

ヌーヴォーロマンを代表する作家、アラン・ロブ=グリエが初監督を務めたドラマ。旅先の日常離れした空気感と鮮烈な印象を残す女の存在が鑑賞後もじんわり後を引く。

あらすじ

フランス人教師N(ジャック・ドニオル=ヴァルクローズ)は、休暇で訪れたトルコのイスタンブールで、陽気だが謎めいた女性ラーレ(フランソワーズ・ブリオン)と出会います。ラーレは白いコンバーチブルを運転し、フランス語、トルコ語、ギリシャ語を操る魅力的な女性です。Nは彼女に惹かれ、街を案内されるうちに親密な関係を築きます。しかし、ラーレは本名を明かさず、彼女の背景には人身売買やマフィアの影がちらつきます。

ある日、彼女は突然姿を消し、Nは彼女を探してイスタンブールの街を彷徨います。やっと再会したラーレが運転する車に同乗したNですが、車は事故を起こし、彼女は死にます。Nは彼女の死を受け入れられず、彼女の車を買い取り、同じ場所で自身も事故死。物語は現実と幻想が交錯し、ラーレが再び現れるかのような曖昧な結末で終わり、彼女の「不滅」性を示唆します。

解説

『不滅の女』(原題:L’immortelle)は、フランスのヌーヴォー・ロマン運動の旗手、アラン・ロブ=グリエの初監督作品であり、1963年に公開されました。ヌーヴォー・ロマンは、伝統的な物語構造や心理描写を否定し、客観的で断片的な記述や非連続的な時間表現を特徴とする文学運動で、本作はその映画的実践と言えます。ロブ=グリエは、以前に脚本を手掛けた『去年マリエンバートで』(1961年、アラン・レネ監督)で注目を集め、本作でさらに実験的な手法を追求しました。

本作の特徴は、時間と空間の連続性を意図的に崩した非線形な語り口にあります。物語は断片的なショットの積み重ねで構成され、シーンの繰り返しや不合理な接続を通じて、主人公Nの記憶や妄想が現実と混濁する様子を描きます。イスタンブールのエキゾチックな風景—モスク、遺跡、バザール、ボスフォラス海峡—は、単なる背景ではなく、物語の不確かさを増幅する要素として機能します。モノクロの映像美は、光と影のコントラストを強調し、特にラーレの姿を彫刻のように冷たく美しい「表象」として捉えます。この視覚的アプローチは、彼女が実在の女性ではなく、Nの視線や欲望の産物である可能性を示唆します。

テーマ的には、「不滅の女」というタイトルが示すように、死や不在を通じて永遠に記憶に残る女性への愛を探求します。ラーレはファム・ファタル(宿命の女)の原型とも言え、Nの執着を掻き立てる謎めいた存在です。しかし、彼女の正体や動機は最後まで明かされず、観客はNの視点を通じて現実と幻想の境界を彷徨います。この曖昧さは、ヌーヴォー・ロマンの核心である「真実の不確かさ」を体現し、観客に解釈の自由を与えます。物語は単なる恋愛劇ではなく、視線、記憶、欲望が交錯する心理的迷宮として機能します。

本作は1962年にルイ・デリュック賞を受賞し、1963年のベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品されました。その過激なスタイルは賛否両論を呼びましたが、映画史における前衛的な試みとして高く評価されています。日本では2018年の「アラン・ロブ=グリエ レトロスペクティブ」で初公開され、HDレストア版が注目を集めました。

女優の活躍

本作のヒロイン、ラーレを演じたフランソワーズ・ブリオンは、フランス映画界で知られる女優で、本作ではその神秘的で魅力的な存在感を存分に発揮しています。ブリオンは1960年代に『唇によだれ』(1960年)などの作品で注目を集め、本作ではロブ=グリエの意図する「非人間的」な美を体現しました。彼女の演技は、感情的な深みを抑え、まるで絵画や彫刻のような静的で客観的な印象を与えます。ラーレのキャラクターは、陽気さと冷たさ、親しみやすさと遠さを併せ持ち、ブリオンの抑制された表現がこの二面性を際立たせます。彼女の視線や仕草は、Nの妄執を誘発する鍵となり、物語の中心的な駆動力となっています。

ブリオンの演技は、ヌーヴォー・ロマンの客観性を反映し、従来の劇映画の感情過多な演技とは一線を画します。彼女はラーレの謎めいた背景—人身売買やマフィアとの関わり—を匂わせつつ、明確な説明を避け、観客の想像をかき立てます。特に、彼女の突然の消失や再登場のシーンでは、表情や動きだけで物語の断片性を強調し、観客を混乱と魅惑の渦に引き込みます。この抑制されたアプローチは、ロブ=グリエの目指す「表象としての女性」を具現化し、ブリオンの女優としての力量を示しています。

女優の衣装・化粧・髪型

フランソワーズ・ブリオンの衣装、化粧、髪型は、本作の視覚的テーマである「冷ややかなエロス」と「不滅の美」を強調する重要な要素です。ラーレの衣装は、シンプルかつ洗練されたデザインが特徴で、1960年代のモダンなファッションを反映しています。彼女はしばしば白や黒のドレスを着用し、モノクロ映像の中でそのシルエットが際立ちます。特に白いドレスは、イスタンブールの白い石造りの建築や遺跡と調和し、彼女を彫刻的で非現実的な存在に見せます。ドレスのカットは身体のラインを強調するものが多く、Nの視線を誘導する効果があります。

化粧は控えめでありながら、彼女の顔立ちを際立たせるよう計算されています。濃いアイラインと淡いリップが、彼女の神秘的な魅力を強調し、時に天使のように、時に娼婦のように見える二面性を演出します。ロブ=グリエの演出意図により、彼女のメイクは過剰な装飾を避け、冷たく完璧な美を表現。モノクロ映像では、肌の質感や光の反射が強調され、彼女の顔がまるで大理石像のように映ります。

髪型はシーンによって変化し、ラーレの不安定なイメージを強化します。ゆるやかにウェーブしたロングヘアが基本ですが、アップスタイルやまとめ髪にすることで、異なる印象を与えます。たとえば、墓地でのシーンでは髪を下ろして柔らかい印象を、夜のシーンではタイトにまとめて妖艶さを演出。髪型の変化は、彼女が実在する女性なのか、Nの記憶や妄想の産物なのかを曖昧にする効果を持ち、物語の断片性を視覚的に補強します。

キャスト

  • フランソワーズ・ブリオン(ラーレ):謎めいたヒロイン。陽気だが不可解な女性を演じる。
  • ジャック・ドニオル=ヴァルクローズ(N):フランス人教師。ラーレに執着する主人公。
  • グイド・チェラーノ:謎の男。マフィア風の存在として登場。
  • セゼル・セジン:脇役としてイスタンブールの住人を演じる。
  • ウルヴィ・ウラジー:脇役として物語の背景を補強。
  • ベルキス・マットル:脇役として登場。
  • カトリーヌ・ロブ=グリエ:監督の妻で、端役として出演。

スタッフ

  • 監督・脚本:アラン・ロブ=グリエ(初監督作。ヌーヴォー・ロマンの代表的作家)。
  • 製作:サミー・アルフォン(フランス・イタリア・トルコ合作を統括)。
  • 撮影:モーリス・バリー(モノクロ映像の美しさを構築)。
  • 音楽:ジョルジュ・ドルリュー、ミシェル・ファノ(エキゾチックで不穏な音響)。
  • 配給:ザジフィルムズ(日本では2018年に初公開)。

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