『マスクガール』は、キム・ヨンフン脚本・監督による2023年Netflix配信の韓国ドラマ。イ・ハンビョル、ナナ、コ・ヒョンジョンが主人公キム・モミを演じ、容姿にコンプレックスを持つ会社員が夜はマスクで顔を隠しネット配信者となり、予期せぬ事件に巻き込まれる波乱の人生を描く。全7話。
基本情報
- 邦題:マスクガール
- 原題:마스크걸
- 英題:Mask Girl
- 公開年:2023年
- 製作国:韓国
- 再生時間:62分
- ジャンル:サスペンス
女優の活躍
『マスクガール』は、主人公キム・モミを3人の女優(イ・ハンビョル、ナナ、コ・ヒョンジョン)が異なる時期に演じることで、彼女の人生の変遷を鮮やかに表現しています。イ・ハンビョルは本作がデビュー作で、1000人以上のオーディションから選ばれた新人女優です。彼女は物語序盤(1~3話)のキム・モミを演じ、容姿にコンプレックスを抱く平凡な会社員としての内面的な葛藤や、マスクガールとしての大胆な姿を見事に体現。初めての主演とは思えない自然体で感情豊かな演技が評価され、特にダンスシーンでの表現力が高く称賛されています。
ナナはアイドルグループ「AFTERSCHOOL」のメンバーであり、「世界で最も美しい顔100人」に選ばれた経験を持つ女優で、4~5話の整形後のキム・モミ(アルム)を演じます。彼女の登場シーンは美貌とカリスマ性が際立ち、クラブでのショーガールとしての華やかな姿や、過酷な状況下での複雑な心情を巧みに表現。特に、モミの新たな人生を体現するダンスシーンは、視聴者を魅了する力強いパフォーマンスで話題となりました。ナナの演技は、モミの外見と内面の変化を自然につなぎ、物語に深みを加えています。
コ・ヒョンジョンは、韓国ドラマ界の重鎮として知られ、6~7話で受刑者となったキム・モミ(囚人第1047号)を演じます。彼女はモミの壮絶な人生の最終章を、深い感情表現と圧倒的な存在感で描き出しました。特に、刑務所でのシーンでは、過酷な環境下でのモミの強さと脆さを絶妙に表現し、視聴者に強い印象を残しています。コ・ヒョンジョンの演技は、モミの人生の集大成として物語を締めくくる重要な役割を果たしました。
また、ヨム・ヘランはチュ・オナムの母キム・ギョンジャ役で出演し、物語の重要な脇役として圧倒的な存在感を発揮。彼女の執念深い演技は、復讐に燃える母親像をリアルに描き出し、物語の緊張感を高めました。特に、ヨム・ヘランの鬼気迫る表情と感情の爆発は、視聴者に強烈なインパクトを与え、ドラマの評価を一層高めています。
女優の衣装・化粧・髪型
『マスクガール』の衣装、化粧、髪型は、キム・モミの人生の段階やキャラクターの心情を反映する重要な要素です。イ・ハンビョル演じる初期のモミは、平凡な会社員として地味なスーツやカジュアルな服装に、控えめなメイクとシンプルな髪型が特徴。マスクガールとしては、セクシーな衣装(タイトなドレスや露出度の高い衣装)と派手なメイク、マスクで顔を隠すことで対照的な魅力を演出。マスクはナナの顔を基に作られたものが使用され、視覚的なインパクトを強めています。
ナナ演じる整形後のモミ(アルム)は、クラブのショーガールとしてキラキラした衣装(スパンコールのドレスや派手なアクセサリー)や、華やかなメイク、洗練されたヘアスタイルが特徴。彼女の美貌が際立つスタイリングは、モミの新たな自信と社会的地位の変化を象徴しています。特に、ダンスシーンでのデカルコマニー演出は、衣装と動きの調和が美しく、視聴者を引き込みます。
コ・ヒョンジョン演じる受刑者モミは、刑務所の制服という簡素な衣装と無造作な髪型で登場。化粧はほぼなく、過酷な環境を反映した無骨な外見が、モミの内面的な変化と苦悩を表現しています。一方で、特定のシーンでは過去の華やかさを彷彿とさせるメイクや髪型が登場し、彼女の複雑な人生を視覚的に強調。ヨム・ヘラン演じるキム・ギョンジャは、地味な普段着から復讐の過程で徐々に力強い印象の衣装に変わり、執念深いキャラクター性を際立たせています。
あらすじ
『マスクガール』は、容姿にコンプレックスを抱く会社員キム・モミ(イ・ハンビョル/ナナ/コ・ヒョンジョン)の波乱に満ちた人生を描くブラックコメディ・サスペンスドラマです。幼い頃から芸能人を夢見てきたモミは、自分の外見に自信が持てず夢を諦め、平凡な会社員として働く27歳の女性。夜になるとマスクで顔を隠し、「マスクガール」としてセクシーなライブ配信を行い、承認欲求を満たしていました。しかし、ある夜、憧れの上司の不倫を目撃し泥酔したモミは、配信中に過激な行動を取り、違反行為で配信停止に。その後、彼女の正体を知る謎のメールが届き、人生は予想外の方向へ転がり始めます。
モミの同僚でマスクガールの熱烈なファンであるチュ・オナム(アン・ジェホン)は、彼女の正体を知り異常な執着心を抱きます。このことがきっかけで、モミは思わぬ事件に巻き込まれ、人生が一変。整形を経て新たなアイデンティティ「アルム」として生きるモミ(ナナ)は、クラブで働きながら新たな人間関係を築きますが、過去の事件が彼女を追い詰めます。一方、オナムの母キム・ギョンジャ(ヨム・ヘラン)は、息子を失った復讐心からモミを執拗に追い、物語はサスペンスフルな展開へ。最終的に、モミは囚人第1047号(コ・ヒョンジョン)として刑務所に収監され、過酷な環境の中で自らの人生と向き合います。全7話で、視点やジャンルが大胆に変化しながら、モミの壮絶な人生を多角的に描き出します。
解説
『マスクガール』は、韓国のウェブトゥーン(NAVER、LINEマンガで公開)を原作とし、ルッキズム(外見至上主義)やデジタル社会の闇、女性差別、母性愛といった社会問題を織り交ぜた作品です。物語は、ブラックコメディからサスペンス、ヒューマンドラマへとジャンルを変えながら、1話ごとに異なるキャラクターの視点で展開。デカルコマニー(対称性や対比)の演出が特徴で、モミと他のキャラクター(キム・チュネやキム・ギョンジャ)の関係性が巧みに描かれます。
キム・ヨンフン監督は、映画『藁にもすがる獣たち』で培ったノワール的要素を本作にも取り入れ、過激な描写や意外性のある展開で視聴者を引きつけます。3人の女優が演じるモミの変遷は、単なる外見の変化だけでなく、彼女の内面や社会との関わり方の変化を象徴。ルッキズムやインターネット文化の影響、女性が直面する抑圧や欲望が、リアルかつ極端に描かれ、視聴者に深い考察を促します。
キャスト
- キム・モミ(マスクガール/アルム/囚人第1047号):イ・ハンビョル(1~3話)、ナナ(4~5話)、コ・ヒョンジョン(6~7話)
- チュ・オナム:アン・ジェホン(モミの同僚、マスクガールのファン)
- キム・ギョンジャ:ヨム・ヘラン(オナムの母、復讐に燃える)
- キム・チュネ:ハン・ジェイ(モミの逃亡先での友人、クラブのホステス)
- チェ・プヨン:イ・ジュニョン(元アイドル、モミの関係者)
その他、チェ・ダニエル、ムン・スク、キム・ソンファ、キム・ヒョンモクなど
スタッフ
- 監督・脚本:キム・ヨンフン(『藁にもすがる獣たち』)
- 原作:ウェブトゥーン『マスクガール』(Mae-mi、Hee-se、2015~2018年)
- 音楽:ソン・ダムビ「土曜の夜に」、キム・ワンソン「リズムの中のそのダンスを」など
- 配信:Netflix(2023年8月18日公開、全7話)
総括
『マスクガール』は、キム・モミの人生を通じて現代社会の闇と個人の欲望を鋭く描いた意欲作です。3人の女優による多面的な演技、印象的な衣装と演出、緻密な脚本が織りなす物語は、視聴者を最後まで惹きつけます。ルッキズムや復讐、母性愛といったテーマは、韓国ドラマの枠を超え、普遍的な共感を呼びます。
レビュー 作品の感想や女優への思い