『ミルドレッド・ピアース 幸せの代償』（2011年）は、ジェームズ・M・ケインの小説を基にした米国のHBOミニシリーズ（全5話）。大恐慌時代のシングルマザー、ミルドレッドの奮闘と娘との葛藤を描く。ケイト・ウィンスレット主演で、エミー賞複数受賞。
基本情報
- 邦題：ミルドレッド・ピアース 幸せの代償
- 原題：Mildred Pierce
- ジャンル：TVドラマ
- 原作：ジェームズ・M・ケイン『Mildred Pierce』
- 放送国・地域：米国
- 放送期間：2011年3月27日 – 2011年4月10日
- 回数：5
見どころ
ジェームズ・M・ケインの小説をドラマ化。ケイト・ウィンスレット演じる主婦が起業家として成功していくまでの紆余曲折を娘との確執や怠惰な男たちとの恋愛を交えて描く。
女優の活躍
『ミルドレッド・ピアース 幸せの代償』は、ケイト・ウィンスレットの圧倒的な演技力によって支えられた作品です。彼女は主人公ミルドレッド・ピアースを演じ、複雑な感情と強い意志を持つ女性像を見事に体現しました。ミルドレッドは、夫の裏切りと経済的困窮に直面しながらも、娘たちを養うためにウェイトレスからレストラン経営者に這い上がる強い女性です。ウィンスレットは、ミルドレッドの内面的な葛藤や母親としての愛情、挫折と成功の間で揺れる姿を繊細かつ力強く表現し、第63回プライムタイム・エミー賞で主演女優賞を受賞しました。彼女の演技は、批評家から「感情の機微を捉えた見事なパフォーマンス」と高く評価され、Rotten Tomatoesでは81%の高評価を得ています。特に、娘ヴィーダとの緊張感ある対立シーンでは、感情の爆発と抑制のバランスが絶妙で、視聴者を物語に引き込みます。
共演のエヴァン・レイチェル・ウッドも、ミルドレッドの長女ヴィーダ役で注目を集めました。ヴィーダは自己中心的で高慢な性格のキャラクターで、母親との確執が物語の中心です。ウッドは、少女時代から大人へと成長するヴィーダの複雑な心理を巧みに演じ分け、ウィンスレットとの対峙シーンで強い存在感を発揮しました。また、メリッサ・レオはミルドレッドの親友ルーシー・ゲスラー役で、ユーモアと現実的な助言を与えるキャラクターを魅力的に演じ、エミー賞助演女優賞にノミネートされました。彼女の演技は、物語に温かみとリアリティを加えています。
女優の衣装・化粧・髪型
本作の舞台は1930年代の大恐慌時代のカリフォルニアで、衣装、化粧、髪型は当時の雰囲気を忠実に再現しつつ、キャラクターの個性や社会的地位を反映しています。ケイト・ウィンスレットの衣装は、物語の進行に合わせて変化します。物語冒頭では、平凡な主婦としてのミルドレッドは、地味で実用的なコットンのドレスやエプロンを着用。淡い色調のワンピースは、彼女のつつましい生活を象徴しています。化粧は控えめで、ナチュラルな肌色と薄い口紅が中心。髪型は、シンプルなウェーブのかかったショートボブで、1930年代の主婦らしい実用性と清潔感を表現しています。
ミルドレッドがウェイトレスとして働き始め、後にレストラン経営者として成功すると、衣装はより洗練されたものに変わります。シルクやウールのテーラードスーツ、鮮やかな色のブラウス、ハイウエストのスカートが登場し、彼女の社会的上昇を視覚的に示します。化粧も、成功した女性実業家らしく、赤い口紅やアイライナーが強調され、自信を表現。髪型は、より整ったカールやアップスタイルになり、優雅さが加わります。特に、レストラン開業時のシーンでは、エレガントなドレスとパールのアクセサリーが、彼女の新たな地位を際立たせます。
エヴァン・レイチェル・ウッド演じるヴィーダの衣装は、彼女のわがままな性格と上流階級への憧れを反映。少女時代はフリルのついたドレスやリボンで可愛らしく装いますが、成長するにつれ、豪華なシルクドレスや毛皮のコート、派手な帽子を身にまといます。化粧は、大人になるにつれて濃くなり、赤い口紅やチークが彼女の自己顕示欲を強調。髪型は、華やかなカールや凝ったアップスタイルで、ミルドレッドとの対比が明確です。メリッサ・レオのルーシーは、カジュアルなブラウスやスカートで、親しみやすいが実用的。彼女の化粧は控えめで、髪はゆるいウェーブのミディアムヘアで、飾らない性格を表現しています。
衣装デザインは、美術監督とともにトッド・ヘインズ監督が細部まで監修し、1930年代のファッションを忠実に再現。批評家は「精巧な美術と衣装が物語の時代感を高めている」と評価しています。
あらすじ
1931年、カリフォルニア州グレンデール。ミルドレッド・ピアース（ケイト・ウィンスレット）は、夫バート（ブライアン・F・オバーン）の浮気と失業により彼を家から追い出し、娘ヴィーダ（エヴァン・レイチェル・ウッド）とレイ（クイン・マッコルガン）を養うため職探しを始めます。大恐慌の影響で仕事は見つからず、彼女は大衆食堂のウェイトレスとして働き始めますが、娘ヴィーダにはその仕事を恥ずかしいと隠します。得意のパイ作りが評判となり、ミルドレッドはレストラン開業を決意。親友ルーシー（メリッサ・レオ）やビジネスパートナーのウォーリー（ジェームズ・レグロス）の支援を受け、餐厅「ミルドレッズ」を開店し成功を収めます。
一方、ミルドレッドはプレイボーイのモンティ・ベラゴン（ガイ・ピアース）と恋に落ちますが、次女レイの急病による死という悲劇に見舞われます。長女ヴィーダは、母親の愛情と経済的成功を利用し、贅沢な生活を求めるようになります。ヴィーダのわがままとモンティの怠惰な態度が、ミルドレッドの幸福を脅かします。やがて、ヴィーダが歌手として成功する中、彼女とミルドレッドの関係は修復を試みるも、ヴィーダの裏切りにより決裂。ミルドレッドは手痛い代償を払いながらも、過去を清算し新たな一歩を踏み出します。
解説
『ミルドレッド・ピアース 幸せの代償』は、ジェームズ・M・ケインの1941年の小説を忠実に映像化した作品で、1945年の映画版（ジョーン・クロフォード主演）とは異なり、殺人ミステリー要素を排除し、原作のヒューマンドラマに焦点を当てています。監督のトッド・ヘインズは、1930年代のアメリカ社会を背景に、女性の自立と母娘の複雑な関係を描き出しました。物語は、ミルドレッドの経済的・精神的成長と、ヴィーダへの過剰な愛情がもたらす悲劇を中心に展開。大恐慌という時代背景は、ミルドレッドの苦労と成功をより際立たせ、階級社会や女性の社会的役割に対する批評を織り交ぜています。
ケイト・ウィンスレットの演技は、ミルドレッドの強さと脆さを同時に表現し、視聴者に深い共感を呼びます。特に、ヴィーダとの対立は、母性愛と自己犠牲の極端な形を示し、現代の親子関係にも通じるテーマです。ガイ・ピアース演じるモンティの魅力的ながら無責任なキャラクターは、ミルドレッドの人生にさらなる試練を加えます。シリーズは、HBOの高い制作クオリティとカーター・バーウェルの情感豊かな音楽により、視覚的・聴覚的にも魅力的です。エミー賞21部門ノミネート、5部門受賞という実績は、作品の完成度を証明しています。
キャスト
- ケイト・ウィンスレット：ミルドレッド・ピアース（主演、シングルマザー、レストラン経営者）
- エヴァン・レイチェル・ウッド：ヴィーダ・ピアース（ミルドレッドの長女、歌手）
- ガイ・ピアース：モンティ・ベラゴン（ミルドレッドの恋人、プレイボーイ）
- メリッサ・レオ：ルーシー・ゲスラー（ミルドレッドの親友）
- ジェームズ・レグロス：ウォーリー・バーガン（ビジネスパートナー）
- ブライアン・F・オバーン：バート・ピアース（ミルドレッドの元夫）
- メア・ウィニンガム：アイダ・コーウィン（ウェイトレス、ミルドレッドの同僚）
- クイン・マッコルガン：レイ・ピアース（ミルドレッドの次女）
スタッフ
- 監督・脚本：トッド・ヘインズ（『キャロル』『アイム・ノット・ゼア』）
- 原作：ジェームズ・M・ケイン（『ミルドレッド・ピアース』1941年）
- 音楽：カーター・バーウェル
総括
『ミルドレッド・ピアース 幸せの代償』は、ケイト・ウィンスレットの迫真の演技と、1930年代の時代背景を丁寧に描いたHBOのミニ番組。衣装や美術の細部までこだわった制作、母娘の葛藤や女性の自立という普遍的テーマが、視聴者に深い余韻を残します。エミー賞受賞に裏打ちされた高い評価と、豪華キャストによる人間ドラマは、見る者を強く惹きつけます。
レビュー 作品の感想や女優への思い