『マイPSパートナー』（2012年）は、間違い電話から始まる男女のロマンティック・ラブコメディ。失恋中のヒョンスンとマンネリに悩むユンジョンが、フォンセックスを通じて心を通わせ、愛を育む物語。チソンとキム・アジュンの軽妙な演技が光る。監督：ビョン・ソンヒョン。
基本情報
- 邦題：マイPSパートナー
- 原題：나의 PS 파트너
- 英題：My PS Partner
- 公開年：2012年
- 製作国：韓国
- 上映時間：114分
- ジャンル：コメディ
女優の活躍
本作のヒロイン、ユンジョン役を演じたキム・アジュンは、韓国映画『カンナさん大成功です！』（2007年）で一躍スターとなり、本作で6年ぶりに映画復帰を果たしました。彼女の演技は、ユンジョンの複雑な感情を見事に表現し、観客に深い共感を呼び起こします。ユンジョンは、恋人とのマンネリ関係や結婚への焦りといった現代女性のリアルな悩みを抱えつつ、ユーモアと大胆さで新たな関係を築いていくキャラクターです。キム・アジュンは、電話越しの甘い声やコミカルなやり取りでユンジョンの魅力を引き出し、特にチソン演じるヒョンスンとの軽妙な会話劇では、彼女の声のトーンや表情が物語のテンポを加速させます。また、感情的なシーンでは、ユンジョンの内面の葛藤や成長を繊細に演じ、単なるラブコメのヒロインを超えた深みを与えています。彼女の自然体な演技は、批評家からも高く評価され、本作の成功に大きく貢献しました。キム・アジュン自身もインタビューで、「平凡な女性の役を通じて観客に身近に感じてほしい」と語っており、その意図が見事に反映されたパフォーマンスでした。
女優の衣装・化粧・髪型
キム・アジュンの衣装、化粧、髪型は、ユンジョンというキャラクターの日常性と女性らしさを強調するデザインが施されています。衣装は、30代前半の働く女性らしいカジュアルかつフェミニンなスタイルが中心。オフィスシーンでは、シンプルなブラウスやタイトスカートを着こなし、落ち着いた色合い（ベージュ、グレー、ネイビーなど）で品のある印象を与えます。一方、私生活のシーンでは、柔らかいニットやデニムを組み合わせ、親しみやすい雰囲気を演出。デートシーンでは、ワンピースやアクセサリーで女性らしさを強調し、ユンジョンの恋愛に対する期待感を視覚的に表現しています。
化粧はナチュラルメイクが基本で、薄いファンデーションにピンクやコーラル系のチークとリップを合わせ、ユンジョンの明るい性格を反映。電話越しの誘惑シーンでは、アイラインを少し強調し、セクシーさをさりげなく加えています。髪型は、セミロングのゆるやかなウェーブが特徴で、シーンに応じてハーフアップやポニーテールにアレンジ。自然な動きのあるヘアスタイルは、ユンジョンの活発さと親しみやすさを引き立て、観客に「身近な女性」としてのリアリティを与えます。これらのスタイリングは、ユンジョンの感情や状況の変化を補完し、キム・アジュンの魅力を最大限に活かしていました。
あらすじ
ヒョンスン（チソン）は、シンガーソングライターの夢を諦め、7年間付き合った恋人にフラれて意気消沈の日々を送るサラリーマン。ある日、見知らぬ番号からかかってきた電話に出ると、甘い声で誘惑する女性の声が聞こえてくる。戸惑いつつも興奮を抑えきれず、ヒョンスンは電話越しの「フォンセックス（PS）」に応じてしまう。一方、電話の主ユンジョン（キム・アジュン）は、恋人とのマンネリ関係を打破しようと大胆な行動に出たものの、恋人の番号を間違えてヒョンスンにかけてしまったことに気づく。気まずいスタートながら、顔も名前も知らない二人は、電話を通じて恋愛の悩みや不満を共有し、次第に心を通わせていく。しかし、ユンジョンにはプロポーズを期待する恋人が、ヒョンスンには未練が残る元恋人がおり、二人の関係は複雑に絡み合う。間違い電話から始まった奇妙な関係は、やがて本物の愛へと発展するのか？ コミカルかつエモーショナルな展開が観客を惹きつけます。
解説
『マイPSパートナー』は、現代の恋愛におけるコミュニケーションの多様性と、男女の本音を描いた作品です。フォンセックスという刺激的な題材を扱いつつ、単なるエロティックな描写に留まらず、恋愛における率直な対話や心のつながりを重視したストーリー展開が特徴です。監督のビョン・ソンヒョンは、リアルな恋愛観を反映するため、実際の友人との会話を基にした脚本を採用し、キャラクターにリアリティを持たせました。ヒョンスンとユンジョンの関係は、顔の見えない電話越しのやり取りから始まるため、声や言葉のニュアンスが感情の変化を伝える重要な要素となり、チソンとキム・アジュンの声の演技が作品の魅力を高めています。
本作は、伝統的なラブコメの枠組みに現代的なアプローチを加え、恋愛における「偶然」と「必然」を巧みに描きます。特に、結婚式でのヒョンスンの大胆な行動は、1960年代のハリウッド映画『卒業』を彷彿とさせる一方で、現代の観客にはやや古風に映る部分もあり、批評家の間でも賛否両論を呼びました。 しかし、こうした劇的な展開が、韓国映画特有のエモーショナルなカタルシスを提供し、観客に強い印象を残します。R-15指定（日本ではR-18）ながら、過度な露出に頼らず、ユーモアと感情のバランスを取った演出は、幅広い層に受け入れられました。Filmarksでの平均スコア3.5点や、レビュー数2251件からも、その人気と話題性が伺えます。
キャスト
- チソン（ヒョンスン役）…ドラマ『ボスを守れ』や『ロイヤルファミリー』で知られる実力派俳優。本作では、情けない一面と純粋な愛情を併せ持つヒョンスンを好演。劇中のコミカルな歌唱シーンも話題に。
- キム・アジュン（ユンジョン役）…『カンナさん大成功です！』でスターに。ユンジョンの明るさと葛藤を見事に演じ、声の演技で観客を魅了。
- シン・ソユル…ユンジョンの友人役で登場。コミカルな脇役として物語を盛り上げる。
- カン・ギョンジュン…ユンジョンの恋人役。安定感のある演技で物語にリアリティを加える。
キム・ソンオ、ムン・ジユン、キム・ボミらが、脇役として個性的なキャラクターを演じ、物語に彩りを添える。
スタッフ
- 監督：ビョン・ソンヒョン…『青春とビート、そして秘密のビデオ』で注目を集めた新鋭。本作では、リアルな恋愛観とユーモアを融合させた演出が光る。
- 脚本：ビョン・ソンヒョン、キム・ウンスク…実際の会話を基にしたリアルな対話が特徴。
- 製作：CJ Entertainment…韓国映画界の大手で、クオリティの高い作品を提供。
- 音楽：キム・ホンジュン…軽快なサウンドトラックがラブコメの雰囲気を盛り上げる。
- 撮影：チョ・ヨンギュ…電話越しのシーンや感情的な場面を効果的に捉えた映像美。
- 配給（日本）：CJ Entertainment Japan。
総括
『マイPSパートナー』は、間違い電話というユニークな設定を軸に、現代の恋愛における本音と心のつながりを描いたロマンティック・ラブコメディです。キム・アジュンの魅力的な演技と、チソンとの息の合った掛け合いが物語を牽引し、リアルで共感度の高いキャラクター造形が観客を引き込みます。衣装やスタイリングは、ユンジョンの日常性と女性らしさを絶妙に表現。ビョン・ソンヒョン監督の軽妙な演出と、実際の会話を基にした脚本が、恋愛映画として新鮮な魅力を生み出しています。刺激的な題材ながら、ユーモアと感動のバランスが取れた本作は、韓国映画のラブコメジャンルにおいて独自の地位を築いています。
レビュー 作品の感想や女優への思い