ナターシャ・リオン

ナターシャ・リオンで知られるナターシャ・ビアンカ・リヨンヌ・ブラウンシュタインは米国の女優、脚本家、TVディレクター、プロデューサー。独特のしわがれた声とタフな人柄で知られ、これまでに映画俳優組合賞2回、プライムタイム・エミー賞5回、ゴールデングローブ賞2回、批評家チョイス・テレビジョン賞1回にノミネートされるなど、高い評価を得ています。

子役として活躍したナターシャは、1990年代後半に『世界中がアイ・ラヴ・ユー』（1996年）、『Fカップの憂うつ』（1998年）、『Go!Go!チアーズ』（1999年）、『アメリカン・パイ』（1999年）に出演して脚光を浴びました。

2000年代を通じてさまざまな自主映画に出演した後、Netflixの『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』（2013～19年）でニッキー・ニコルズを演じ、広く知られるようになりました。その後のTV出演作には、ストリーミング・サービスPeacockの『ポーカー・フェイス』（2023年～）、Netflixの『ロシアン・ドール 謎のタイムループ』（2019年～22年）などがあります。

ナターシャは『ロシアン・ドール』の主演に加え、同シリーズの共同制作、脚本、監督、エグゼクティブ・プロデューサーを務めました。彼女は2023年にタイム誌の「世界で最も影響力のある100人」ランクイン。

ナターシャ・リオン

• 名前：ナターシャ・リオン（Natasha Lyonne）
• 本名：ナターシャ・ビアンカ・リオン・ブラウンシュタイン（Natasha Bianca Lyonne Braunstein）
  生年月日：1979年4月4日（45歳）
• 出身地：米国ニューヨーク市
• 学歴：ティッシュ・スクール・オブ・アーツ
• 職業：女優、脚本家、テレビディレクター、テレビプロデューサー
• 活動期間：1986年から現在
• パートナー：フレッド・アーミセン（2014年～2022年）
• SNSサイト：Instagram・TikTok・Facebook・X

生い立ち

ナターシャ・リオンは1979年4月4日に米国ニューヨークに生まれました。母はボクシングのプロモーターであり、レースカーのドライバー、ラジオ司会者でもあるイベット・ブヒンガーで、父はアーロン・ブラウンシュタイン。

ナターシャの両親はユダヤ教正統派の家系で、彼女も正統派で育っています。母親はホロコーストを生き延びたハンガリー系ユダヤ人の両親のもと、パリに生まれました。祖母のエラは大家族の出身ででしたが、大戦で生き残ったのは彼女と2人の姉と2人の弟だけ。戦争中、彼女は皮革工場で働く非ユダヤ人としてブダペストに身を隠しました。

イスラエル滞在中、ナターシャは1989年のイスラエルの子供向け映画『エイプリル・フール』に参加し、演技に興味をもちはじめます。ニューヨークへ戻った後、彼女はユダヤ教の私立学校であるラマズ・スクールに通い、タルムードの授業を受けてアラム語を読む奨学生でありました。

ナターシャはアッパー・イースト・サイドで育ち、自分は部外者だと感じていました。母親は一家をマイアミへ移し、ナターシャはマイアミ・カントリー・デイ・スクールに短期間だけ通学。高校を卒業せずにニューヨーク大学ティッシュ芸術大学院の映画プログラムに通うために3年生になる前に退学し、短期間通って映画と哲学を学びました。高校卒業はティッシュ芸術大学院の1年目を修了することが条件だったので、学費が払えず退学。

リオナターシャは、2013年にマンハッタン第6区のニューヨーク市議会の民主党候補だった父親とは疎遠で、2014年10月に亡くなるまでアッパー・ウエスト・サイドに住んでいました。2013年に亡くなった母親と彼女は仲が良くなかったと語っており、16歳以降は基本的に家族から独立して暮らしています。

経歴

1986～1999年：映画の始まりとブレイク

幼いころ、ナターシャ・リオンはフォード・モデル・エージェンシーと契約しました。7歳のときに『ピーウィーのプレイハウス』のレギュラー・キャラクター、オパール役に抜擢され、1986年9月から12月にかけて出演。同年、マイク・ニコルズのコメディ・ドラマ『心みだれて』に小さな役で出演し、映画デビューを果たしました。子役時代について、ナターシャは後にこう語っています。「6歳で首尾一貫したビジネスウーマンにならなければならなかった。10歳までに、私は色あせたプロフェッショナルになっていた…。（両親は）よく分かっていなかったと思う。希望に満ちた無知の上に築かれた両親の決断だった」と。

『わんぱくデニス』（1993年）でポリー役の脇役を演じた後、ナターシャは16歳でウディ・アレン監督のミュージカル・コメディ『世界中がアイ・ラヴ・ユー』（1996年）に出演し、アレン演じる主人公ジョーの娘D.J.役で出演しました。これがきっかけとなり、自主青春コメディ『Fカップの憂うつ』（1998年）の主役に抜擢され、ビビアン・アブロモウィッツを演じて好評を博しました。ナターシャのビビアン役についてワシントン・ポスト紙のマイケル・オサリバンは次のようにコメントしました。

リオンは、ビビアンの戸惑い、好奇心、嫌悪感、そして身体と精神が経験することへの欲望を見事に表現。人の小娘を演じ続けてきた（『Everyone Says I Love You』『Dr.ジャガバンドー』ほか）リオンは、この作品で女優として本領を発揮し、単に誰かの小さな女子としてではなく、一人の人間として登録できました。https://www.washingtonpost.com/wp-srv/style/movies/reviews/slumsofbeverlyhillsosullivan.htm

1999年、ナターシャは風刺的なロマンティック・コメディ『Go!Go!チアーズ』で、性に戸惑うティーンエイジャーのミーガン・ブルームフィールド役を演じました。公開時の批評家の評判は散々だったまのの、この映画は改心セラピーの害に対する認識を高めるのに役立ち、それ以来カルト的な人気を博してきました。同年、ナターシャは『アメリカン・パイ』（1999年）で、小さいながらも重要な役であるジェシカを演じ、興行収入は2億3,000万米ドルを超えました。

1999年のほかの映画出演作には、『デトロイト・ロック・シティ』のクリスティン、『トリック・ベイビー』の主役などがあります。後者は1996年のオリジナルの続編で、暴力と下品な描写のため評判は悪かったのですが、ナターシャが演じた10代の娼婦クリスタル・ヴァン・ムーサーは土臭くてハードボイルドだと称賛されました。

2000～2010年：メインストリームと自主映画

その後、ナターシャ・リオンは、高く評価された2000年のTV映画『ウーマン ラブ ウーマン』で、レズビアンの平等のために戦う大学活動家ジャンヌ役を演じました。好評だったホロコースト・ドラマ『灰の記憶』（2001年）にも出演し、『最’新’絶叫計画』、『ニューヨークの恋人』（ともに2001年）、『ブレイド3』（2004年）などのメインストリームから、『Zig Zag』（2002年）、『ダイ・マミー・ダイ』『パーティ・モンスター』（ともに2003年）、『マッド・カンニバル』（2004年）、『My Suicidal Sweetheart』（2005年）などの小作品まで出演。次に、2009年の実験的ダークコメディ『The Immaculate Conception of Little Dizzle』の主演を務め、オースティン・クロニクル紙に「容赦なく奇妙で、勇気があって多動的」と評されました。2010年のホラー・パロディ映画『ホラー・シネマ・パラダイス』で彼女が演じたサイコな連続殺人鬼デビー・テニスはとくに好評で、Film Threatはナターシャの演技を次のように分析しながら高く評価しました。

ナターシャ・リオンは、深夜放送の古いモノクロ映画に登場する女優たちから、古いドラッグのインスピレーションを得ています。リオンはドラッグ版ダンテのサタンを作り上げたのです。グラネル監督はリオンをスーパースターとして扱い、『トリック・ベイビー』を20世紀最後のカルト的傑作にした女優としての闇の部分を垣間見せてくれます。獰猛な炎を放つ彼女の能力は、ここでも存分に発揮され、『映画界の有名な怪物』の表紙を飾るような顔をしています。これは、リオンがウェンディ・O・ウィリアムズを演じるのに完璧な女優であることの証拠です。https://filmthreat.com/reviews/all-about-evil-2022/2/

2011年～現在 キャリアの復活と受賞

ナターシャ・リオンはアベル・フェラーラ監督のポスト黙示録ドラマ『4:44 地球最期の日』（2011年）で脇役を演じ、Movielineは「奇妙な説得力」と評しました。その2年後、彼女はNetflixのコメディドラマ番組『オレンジ・イズ・ザ・ニュー・ブラック』に出演しはじめ、番組レギュラーとして初のTV出演を果たしました。批評家たちは、彼女が演じた受刑者ニッキー・ニコルズを絶賛し、2014年度プライムタイム・エミー賞のコメディシリーズ部門優秀ゲスト女優賞にノミネートされました。

デヴィッド・クローネンバーグの映画にインスパイアされたサイケデリックなホラー長編『Antibirth』（2016年）で、パーティ三昧のルーを演じたナターシャの作品は特別な注目を集めました。

この頃のほかの映画出演作は次のとおりです。

• Sleeping with Other People
• ドリスの恋愛妄想適齢期
• Addicted to Fresno
• Hashtag Horror（以上、2015年）
• コンビニ・ウォーズ バイトJK VS ミニナチ軍団
• インターベンション（ともに2016年）
• 刑事ハンサム: Netflixオリジナルミステリー（2017年）
• Show Dogs（2018年）
• ハニーボーイ（2019年）
• アド・アストラ（2019年、ジェームズ・グレイ監督のSFスリラー）

『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』の最終シーズン終了後、ナターシャ・リオンはレスリー・ヘッドランド、エイミー・ポーラーとともに制作・製作したコメディドラマ番組『ロシアン・ドール 謎のタイムループ』で、36歳の誕生日パーティーでタイムループに陥った女性ナディア・ヴルボコフ役で出演しはじめます。2019年2月にNetflixでデビューしたこの番組は絶賛されました。

『ロシアン・ドール』は2季まで放送され、ナターシャはプライムタイム・エミー賞に3度ノミネートされました。①優秀コメディ・シリーズ、②優秀コメディ・シリーズ脚本賞、③優秀コメディ・シリーズ主演女優賞です。

ナターシャは2021年、ジャズ歌手ビリー・ホリデイの人生とキャリアに基づく伝記ドラマ、リー・ダニエルズ監督の『ザ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ』でアメリカ人女優タルーラ・バンクヘッドを演じました。翌2022年にはリアン・ジョンソン監督のミステリー・スリラー『ナイブズ・アウト: グラス・オニオン』に本人役でカメオ出演し、『サタデー・ナイト・ライブ』第47季のフィナーレでは司会を務め、自身のキャリアと個人的な悩みについて5分間の独白を披露。『刑事コロンボ』のようなTVの殺人ミステリーにインスパイアされたこの番組は好意的に評価されました。

2024年5月、ナターシャがMCUのスーパーヒーロー映画『ファンタスティック・フォー ファースト・ステップ』の主演を務めることが発表されました。2025年7月公開予定。

演劇作品

ナターシャ・リオンは、2008年にエイコーン・シアターで上演されたマイク・リーの『Two Thousand Years』でニューヨークの舞台にデビューしました。2009年10月から2010年3月にかけて、イレーン・ベッカーマンの原作によるノーラ・エフロンとデリア・エフロンのオフ・ブロードウェイ作品『Love, Loss, and What I Wore』のオリジナル・キャストとして出演。

2010年、ナターシャはラウンドアバウト・シアター・カンパニーで上演されたキム・ローゼンストックのコメディ『Tigers Be Still』で好評を博しました。

ついで、2011年にエイコーン・シアターで上演されたトミー・ノヒリーの『Blood from a Stone』に出演し、翌年には『Women Behind Bars』の慈善公演に参加しました。

監督とプロデュース

ナターシャ・リオンは2017年秋、ファッションブランドKENZOのためのシュールレアリスム短編映画『Cabiria, Charity, Chastity』で監督デビュー。撮影監督のチョン・ジョンフンが撮影したこの映画は、ボードビル芸人のChastityが自分の過去と折り合いをつける様子を描いています。『ロシアン・ドール』と『ポーカー・フェイス』の脚本とエピソードの監督に加え、ナターシャは『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』の最終シーズンのエピソードを監督し、Huluの番組『Shrill』と『High Fidelity』の各1話を監督しました。

また、ナターシャはマヤ・ルドルフと共同で製作会社Animal Picturesを設立。2023年10月、ルドルフがアニマル・ピクチャーズと決別したことが発表され、ナターシャはアニマル・ピクチャーズのもとで一人で活動することになりました。2024年5月、彼女は製作会社シスターと契約を結び、シスター社は今後のアニマル・ピクチャーズのプロジェクトでナターシャと協力することになりました。

シスター社の演出スタイルについて、ナターシャは現代の映画製作の「シンプルさ」への不満を表明しており、「フレームを豊富な情報で満たす」ことでこれに対抗するのが好きだと語っています。彼女はまた、物語を成功させるにはリサーチが重要だと考えています。

私は、（自分の作品を）ある種の系譜に結びつけることに大賛成です。私は、とにかくリサーチすることに夢中。できるだけ多くの本を読み、できるだけ多くの映画を観て、できるだけ多くの音楽を聴いて、自分が語っている物語を実際に理解できるようにしています。https://www.backstage.com/magazine/article/natasha-lyonne-poker-face-interview-76300/

パブリック・イメージ

ナターシャ・リオンは次の雑誌の表紙を飾っています。

• Backstage
• Bust
• Diva
• Glamour
• Harper’s Bazaar
• The Hollywood Reporter
• Interview
• Nylon
• Out
• Paper
• Variety
• Venus
• TheWrap

など。

彼女は、『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』や『Go!Go!チアーズ』などの作品でレズビアンのキャラクターを演じていることや、LGBTコミュニティへの擁護活動から、「レズビアンのアイコン」と評されています。

2015年、ナターシャはヒューマン・ライツ・キャンペーンの「平等のためのアライ賞」を受賞しました。

私生活

1997年、ナターシャ・リオンは『世界中がアイ・ラヴ・ユー』のギャラでグラマシーパーク近くのアパートを購入しました。2023年現在、ニューヨークのイースト・ヴィレッジに住み、ロサンゼルスに住居を所有しています。

人間関係

生物学的な家族とは疎遠であるナターシャ・リオンは、友人や協力者を通じて築いた選ばれた家族の重要性を語っています。 彼女はエイミー・ポーラー、マヤ・ルドルフ、ジャニクザ・ブラボーを個人的な友人に数えており、メラニー・リンスキーとクレア・デュヴァルとはとくに親しい間柄。クロエ・セヴィニーとの友情については、親友以上の存在で、実際に（妹に）変身したかもしれないと語っていませ。

ナターシャはストレートであることを自認していますが、自身のセクシュアリティとジェンダーについて、どちらかというと3番目のカテゴリーに入り、陽気ないたずら者だと述べています。

ナターシャは1990年代後半にエドワード・ファーロングと、2010年代前半にアンドリュー・ジパーンと交際しました。2014年にコメディアンで俳優のフレッド・アーミセンと交際をはじめましたが、2022年4月に関係が終わったことを確認。2人は親しい友人のままです。

健康と法的トラブル

2000年代初頭、ナターシャ・リオンは法的な問題を経験し、飲酒運転で逮捕され、隣人を脅迫した事件でも逮捕されました。2005年、彼女の行動に対する他のテナントからの苦情により、大家である俳優のマイケル・ラパポートによって立ち退きを命じられました。

2005年、ナターシャはC型肝炎、心内膜炎、肺虚脱を患い、マンハッタンのベス・イスラエル・メディカル・センターに仮名で入院。彼女の弁護士は緊急事態が発生したと述べましたが、詳細は明かしませんでした。同年末、ナターシャは薬物・アルコール治療センターに入所し、その後出廷し、裁判官は条件付き退院を言い渡しました。2006年12月以降、彼女は薬物を使用しておらず、中毒と回復についてオープンにしています。

ナターシャは2012年、以前の心臓感染による心臓弁の損傷を修正するために開心術を受けました。2023年には禁煙。

影響と関心

ナターシャは、ジョン・カサヴェテス、ピーター・フォーク、ルー・リード、ノーラ・エフロン、デリア・エフロンを仕事上のインスピレーション源として挙げています。彼女の好きな映画出演者には『カビリアの夜』（1957年）のジュリエッタ・マシーナ、『影響下の女』（1974年）のジェナ・ローランズ、『ネイキッド』（1993年）のデヴィッド・セウリス、『オール・ザット・ジャズ』（1979年）のロイ・シャイダーが含まれます。

クロスワードパズルのファンであるナターシャは、2019年にニューヨーク・タイムズ紙のクロスワードをデザインしたことがあります。

2023年のWGAストライキのとき、彼女は組合連帯連合の資金集めのために、ファンが彼女と一緒にニューヨーク・タイムズのクロスワードを解く機会をオークションで競り落としました。その他の趣味は哲学とクラシック映画。

ナターシャはルートビアという名のペットのマルチプーの犬を飼っており、彼女のソーシャルメディアやインタビューに定期的に登場します。

出演作品

映画

TV