日活ロマンポルノは、1971年から1988年まで日本最大手の映画会社・日活が製作・配給した成人向けエロティック映画のブランド。ピンク映画と並び、日本映画史における独自のジャンルとして知られ、低予算ながら芸術性や商業性を追求した作品群は国内外で評価されています。以下にその歴史、特徴、代表作を簡潔にまとめます。
起源と背景
開始
1971年11月、日活が経営難を背景に「ロマンポルノ」(ロマンティック・ポルノグラフィの略)を開始。初作品は『団地妻 昼下りの情事』(西村昭五郎監督)と『色暦大奥秘話』(林功監督)。
目的
- テレビの普及で映画産業が衰退し、成人向け映画で収益を確保。
- 若手監督に自由な創作の場を提供し、新たな観客層を開拓。
社会的背景
1960年代の性的革命やピンク映画の成功を受け、性的表現への規制が緩和(ただし性器描写は禁止)。
特徴
上映形式
- 70〜80分の作品を2本立てで上映。
- 日活系列の劇場や成人映画館で公開。観客は主に成人男性だが、女性ファンもいた。
内容
- 性的シーンが必須(10分ごとに挿入が慣例)。
- 恋愛、ドラマ、サスペンス、時代劇、ホラーなどジャンルは多岐。
- 女性の欲望や社会問題(抑圧、性差別)を描く作品も多い。
予算と製作
- ピンク映画より予算が高く、500〜700万円程度。
- 撮影期間は1〜2週間。プロのスタッフと俳優・女優を起用。
検閲
- 日本映画倫理機構(映倫)の審査を受け、性器描写はモザイク処理。
- 過激な暴力やタブー(近親相姦など)は制限。
芸術性
- 若手監督に自由度を与え、実験的・前衛的な作品も多数。
- 商業性と芸術性のバランスが特徴。
歴史的展開
1971年〜1975年:確立と黄金期
- 特徴…ロマンポルノは即座にヒットし、日活の主要事業に。団地妻シリーズや大奥シリーズが人気。
- 監督…若松孝二(ピンク映画出身)、田中登、小沼勝らが活躍。
- 代表作…『団地妻 昼下りの情事』(1971年)は白川和子主演。不倫をテーマにした大ヒット作。『恋の狩人』(1972年、山口清一郎監督)は青春と性を融合。
- 女優…白川和子、宮下順子、谷ナオミらが「ロマンポルノの女王」として人気。
1976年〜1980年:多様化と過激化
- 背景…ピンク映画やAVとの競争で、より過激な内容(SM、暴力)が登場。
- 特徴…女性の主体性を描く作品や、社会派テーマが増加。フェミニズムの影響も。
- 代表作…『(秘)ハネムーン 暴行列車』(1977年、藤田敏八監督)はロードムービーとエロティシズムの融合。『天使のはらわた 赤い教室』(1979年、曾根中生監督)は女性の疎外感を描くカルト作。
- 国際的評価…一部作品がカンヌやベルリン映画祭で上映され、芸術映画として注目。
1981年〜1988年:衰退と終焉
- 背景…VHSやAVの普及で劇場観客が減少し、製作本数が縮小。
- 特徴…後期は実験作や女性監督の参入が増加。ロマンポルノの枠を超えた作品も。
- 代表作…『愛の白昼夢』(1980年、小沼勝監督)は官能と心理ドラマの融合。『美姉妹 犯す』(1982年、那須博之監督)は過激なテーマで話題。
- 終了…1988年6月、『愛の陽炎』(中原俊監督)が最終作。日活は一般映画やビデオ事業にシフト。
文化的意義
- 若手育成…ロマンポルノは若手監督の登竜門。たとえば、藤田敏八(後の『八月の濡れた砂』)、黒沢清(後の『回路』)、中原俊(後の『写楽』)。
- 女性表現…男性視点の作品が多かったが、女性の欲望や社会抑圧を描く作品も多く、フェミニスト批評の対象に。
- 国際的評価…「ジャパニーズ・エロティック・シネマ」として海外でカルト的人気。2010年代以降、欧米で回顧展が開催。
- 商業的成功…約1100本製作され、日活の経営を支えた。
代表的な監督と作品
- 藤田敏八…『濡れた週末』(1979年)はスタイリッシュな映像美。ロマンポルノの枠を超えた芸術性。
- 小沼勝…『人妻集団暴行致死事件』(1978年)は社会派テーマを融合。大島渚の『愛のコリーダ』にも影響。
- 曾根中生…『天使のはらわた』シリーズ:女性の孤独と性を描く。カルト映画の名作。
- 珠瑠美(木俣瑠美)…『女医の盗撮日記』(1983年)は女性視点の作品。後期に女性監督が増加。
現代の影響と復活
回顧と評価
- 2010年代以降、キネマ旬報や海外映画祭でロマンポルノ特集が開催。
- フェミニスト批評や映画史研究で再評価。
- ロマンポルノ・リブート(2016年)は日活45周年記念として、若手監督(塩田明彦、行定勲、白石和彌ら)が新作を製作。たとえば『牝猫たち』(白石和彌)は現代的な性と女性像を描く。オリジナルより自由度が高く、性的描写は控えめ。
- ロマンポルノ50周年記念プロジェクトとして新作3本を製作。
配信とDVD
一部作品はU-NEXTやAmazonプライムで配信。日活公式や専門レーベルがDVD/Blu-rayを販売。
ピンク映画との違い
予算と規模
- ロマンポルノ:大手日活製作で、設備やキャストが充実。
- ピンク映画:独立系で低予算、DIY精神。
上映
- ロマンポルノ:日活系列劇場で全国展開。
- ピンク映画:小規模な成人映画館。
スタイル
- ロマンポルノ:メインストリームに近く、ドラマ性や映像美を重視。
- ピンク映画:実験的で過激な作品も多い。
現代の課題
- 倫理的議論…#MeToo以降、性的描写の同意や搾取の議論が浮上。ロマンポルノの再評価にも影響。
- アクセシビリティ…配信時代に適応しつつも、過激な内容ゆえに主流プラットフォームでの扱いは限定的。
- 文化的遺産…ロマンポルノは日本映画の多様性を示す存在として、保存と研究が求められている。
ロマンポルノを観るには
- 配信…U-NEXT、Amazonプライム、DMM TVで一部作品が視聴可能。
- DVD/Blu-ray…日活公式サイト、専門店、楽天市場などで購入。
- 映画館…東京の名画座(例:ラピュタ阿佐ヶ谷)や映画祭で特集上映。
- 映画祭…東京国際映画祭や海外の回顧展で上映機会あり。
たとえばU-NEXTでは、「貴女にオススメ!日活ロマンポルノ傑作選」と大した特集を組んでいます(2025年4月26日現在)。
男性だけに独占させちゃもったいない!ドラマチックで芸術的、ロマンポルノは女性にもおすすめ!https://video.unext.jp/browse/feature/FET0009482
まとめ
日活ロマンポルノは、1970〜80年代の日本映画における大胆な実験場でした。商業性と芸術性を両立させ、若手監督や俳優を輩出し、女性の性や社会問題を独自の視点で描いた作品群は、現代でもカルト的な人気を誇ります。リブートプロジェクトや配信で新たな観客に届きつつあり、日本映画史の重要な一部として再評価されています。
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