「ニーナ」(原題:Nina)は伝説の黒人女性歌手ニーナ・シモンの波乱に満ちた人生を描く2016年製作の米国映画。公民権運動や音楽活動を通じ、彼女の情熱と苦悩を浮き彫りにする感動の伝記ドラマ。主演のゾーイ・サルダナは演技力で注目を集め、ニーナの独特な声やステージ上でのカリスマ性を再現するため、歌唱シーンに力を入れた。
基本情報
- 邦題:ニーナ
- 原題:Nina
- 公開年:2016年
- 製作国:米国
- 上映時間:90分
あらすじ
映画「ニーナ」は、ジャズ、ソウル、クラシックなど多様な音楽で知られ、公民権運動にも深く関わった伝説の黒人女性歌手、ニーナ・シモンの人生を追った伝記ドラマです。物語は、ニーナ・シモン(ゾーイ・サルダナ)が1960年代のアメリカで音楽家として成功を収めながらも、人種差別や私生活の困難に直面する姿を中心に展開します。幼少期からクラシックピアニストを目指していた彼女ですが、人種差別により音楽学校への入学を拒否され、ジャズやポップスの世界で独自のスタイルを築きます。公民権運動に参加し、メッセージ性の強い楽曲を発表することで社会に影響を与える一方、夫からの暴力や精神的な不安定さ、そして娘との関係に悩まされます。映画は、彼女の音楽的才能と闘争心、そして人間としての葛藤を、アーカイブ映像や演奏シーンを交えて描き出します。晩年のニーナが新たなマネージャーとの出会いを通じて再起を図る姿も感動的に描かれ、彼女の魂の歌が現代に響く様子を伝えています。
解説
「ニーナ」は、ニーナ・シモンの音楽と人生を通じて、20世紀のアメリカにおける人種差別や女性としての苦闘を浮き彫りにする作品です。監督シンシア・モートは、シモンの多面的な人物像—音楽家、活動家、母親、妻—を丁寧に描き、彼女の情熱と傷つきやすさをバランスよく表現しています。映画は、シモンの代表曲「Feeling Good」や「Mississippi Goddam」などの演奏シーンを通じて、彼女の音楽が持つ力強さと感情の深さを伝え、観客に強い印象を与えます。しかし、ゾーイ・サルダナのキャスティングについては、肌の色や外見に関する議論が起こり、一部で物議を醸しました。それでも、サルダナの演技はシモンの複雑な内面を表現し、彼女の音楽と人生に対する情熱を体現しています。本作は、シモンの音楽的遺産を再評価し、彼女が公民権運動に与えた影響を現代の観客に伝える意義深い作品です。第88回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門にノミネートされた同名のドキュメンタリー「What Happened, Miss Simone?」とも関連し、シモンの人生を異なる視点から補完する役割も果たしています。
女優の活躍
本作でニーナ・シモンを演じたゾーイ・サルダナは、その演技力で注目を集めました。サルダナは、シモンの独特な声やステージ上でのカリスマ性を再現するため、歌唱シーンに特に力を入れ、彼女の感情的なパフォーマンスを体現しました。特に、シモンが公民権運動の場で歌うシーンでは、力強い歌声と繊細な表情で、キャラクターの情熱と苦悩を見事に表現しています。サルダナは、シモンの精神的な不安定さや私生活の葛藤も丁寧に演じ、観客に彼女の人間性を深く感じさせました。
一方で、キャスティングに対する批判もありましたが、サルダナの献身的な演技は多くの批評家から称賛されました。また、助演としてメアリー・J・ブライジがニーナの友人役で出演し、短い登場時間ながらも印象的な演技を見せています。ブライジの自然体な演技は、シモンの人生における人間関係の温かさを強調し、物語に深みを加えました。
女優の衣装・化粧・髪型
「ニーナ」の衣装、化粧、髪型は、ニーナ・シモンの個性的なスタイルと時代背景を反映し、作品のリアリティを高めています。ゾーイ・サルダナ演じるニーナの衣装は、1960年代のファッションを基調とし、ステージ衣装では大胆なドレスやカラフルなターバンが特徴的です。これらはシモンのアフリカ系ルーツと誇りを表現し、彼女のステージパフォーマンスの華やかさを強調します。普段のシーンでは、シンプルながらもエレガントなワンピースやスカートが用いられ、当時の黒人女性の日常的なスタイルを再現。
化粧は、シモンの特徴的な濃いアイラインと鮮やかなリップカラーを再現し、特にステージシーンでは彼女の強烈な個性を際立たせています。髪型は、シモンのシグネチャーであるアフロやターバンスタイルが中心で、時代ごとの変化を丁寧に描写。特に公民権運動に関わるシーンでは、アフリカンテイストのヘッドラップが彼女の文化的アイデンティティを象徴しています。これらの要素は、シモンの外見だけでなく、彼女の内面的な闘争や誇りを視覚的に表現する重要な役割を果たしました。
キャスト
- ゾーイ・サルダナ:ニーナ・シモン
- デヴィッド・オイェロウォ:クリフトン・ヘンダーソン(ニーナのマネージャー)
- メアリー・J・ブライジ:ニーナの友人
- マイク・エップス:リチャード・プライアー
- エラ・トーマス:ロレイン・ハンサベリー
スタッフ
- 監督:シンシア・モート
- 脚本:シンシア・モート
- 製作:ベン・ルーリー、マーク・バーナム、シンシア・モート
- 撮影:ミカエル・ネグレル
- 音楽:リサ・コールマン、ウェンディ・メルボイン
- 編集:ジョシュア・L・ピアソン
補足
本作は、ニーナ・シモンの音楽と人生を称えるとともに、彼女が直面した社会的な課題を現代に伝える作品です。衣装や音楽、演技を通じて、シモンの魂の深さが観客に響くでしょう。ただし、キャスティングや史実の描写に関する議論も存在し、視聴者はその背景を理解することで、より深く作品を鑑賞できます。
レビュー 作品の感想や女優への思い