『嘆きのピエタ』は、2012年に公開された韓国映画。借金取り立て屋の男と、彼の母親を名乗る謎の女性の関係を描写。孤独で残忍な男が、女性の登場により人間性を取り戻す過程が、バイオレンスとスリラー要素を交えて展開されます。キム・ギドク監督の自費製作作品で、ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞作。
基本情報
- 邦題:嘆きのピエタ
- 原題:피에타
- 英題:PIETA
- 公開年:2012年
- 製作国・地域:韓国
- 上映時間:104分
- ジャンル:バイオレンス、スリラー
女優の活躍
『嘆きのピエタ』の主な女優は、チョ・ミンスが演じるミソン役です。彼女は謎の女性として登場し、主人公のガンドに母親を名乗り、物語の核心を担います。チョ・ミンスの演技は、復讐心と母性愛の複雑な感情を繊細に表現しており、高い評価を受けています。特に、感情の揺らぎを体現するシーンでは、観客を強く引き込む力があります。
チョ・ミンスは本作で数多くの賞を受賞しました。例えば、韓国映画批評家協会賞の最優秀女優賞や、大鐘賞の最優秀女優賞を獲得しています。また、アジア太平洋映画賞やアジアン・フィルム・アワードでもノミネートされ、国際的に注目を集めました。彼女の演技は、映画のテーマである人間の贖罪と復讐を深く掘り下げる上で欠かせない要素となっています。
他の女優として、カン・ウンジンがミョンジャ役を演じています。彼女は障害者にされた負債者の妻として、苦しむ女性の姿を力強く描き、大鐘賞の助演女優賞にノミネートされました。カン・ウンジンの活躍は、物語の周辺人物を通じて社会の暗部を強調する役割を果たしています。全体として、本作の女優陣は、キム・ギドク監督の厳しい演出の下で、リアリティのある演技を披露しています。
チョ・ミンスの活躍は、本作以降のキャリアにも影響を与えました。彼女は韓国映画界でベテラン女優として知られ、さまざまなジャンルの作品に出演していますが、本作でのインパクトが特に強いです。復讐の母として、静かな強さと内面的な葛藤を表現した点が、批評家から絶賛されています。また、共演者のイ・ジョンジンとの化学反応が、映画の緊張感を高めています。
さらに、チョ・ミンスは本作で文化勲章を受章するなど、国家的な評価も得ました。彼女の演技スタイルは、感情の爆発を抑えつつ、内側から滲み出るような表現が特徴です。これにより、観客はミソンの真意を徐々に理解し、物語の深みに引き込まれます。カン・ウンジンも、短い出演シーンながら、絶望と怒りを体現し、映画のバイオレンス要素を支えています。
女優の衣装・化粧・髪型
『嘆きのピエタ』の女優陣の衣装は、物語の舞台であるソウルの貧困層の町工場周辺を反映した、質素で現実的なものが中心です。
チョ・ミンス演じるミソンは、中年女性らしいシンプルなワンピースやスカートを着用し、日常的な服装が目立ちます。これにより、謎めいた母親像を強調しています。化粧は控えめで、自然な肌色を基調とし、疲れた表情を際立たせる薄化粧が施されています。髪型は肩にかかる程度のストレートヘアが多く、乱れやすいスタイルで、キャラクターの内面的な苦しみを表現しています。
カン・ウンジン演じるミョンジャは、労働者階級の妻らしいエプロン付きの服やブラウスを着ており、汚れやほつれが加えられています。化粧はほとんどなく、素顔に近い状態で、苦境を表しています。髪型はポニーテールやまとめ髪が多く、機能性を重視したものです。これらの要素は、映画のリアリズムを高め、女優たちの演技を支えています。
全体として、衣装・化粧・髪型は派手さを避け、物語の暗く重いトーンに合わせています。チョ・ミンスのミソンは、復讐の過程で服装が次第に乱れ、心理状態を視覚的に示します。こうした細部が、女優の活躍をより際立たせています。
あらすじ
ソウルの清渓川周辺の町工場で、借金取り立て屋のイ・ガンドは、天涯孤独の男として残忍な生活を送っています。彼は債務者を暴行して障害者にし、保険金で借金を回収する冷徹な方法を取っています。ある日、謎の女性ミソンが現れ、自分がガンドの母親だと名乗り、幼い頃に捨てたことを謝罪します。ガンドは最初、彼女を信じず冷たくあしらいますが、ミソンの執拗なアプローチに次第に心を開いていきます。
ミソンはガンドの住む部屋を掃除し、食事を作り、子守唄を歌うなど、母親らしい行動を取ります。ガンドは母の愛に触れ、幼い頃のトラウマを癒され始めます。しかし、二人の関係は異常な方向へ進み、ガンドはミソンを性的に虐待するような行為をします。それでもミソンは耐え、ガンドを人間らしく変えていきます。ガンドは借金取りの仕事を辞めようと決意しますが、ミソンが突然姿を消します。
実はミソンは、ガンドの被害で自殺した青年の母親でした。復讐のために近づき、ガンドに母親の愛を与えてから、それを奪う計画でした。ミソンはガンドを呼び出し、ビルから飛び降り自殺します。ガンドは真実を知り、絶望します。彼は自分が傷つけた債務者たちの元を訪ね、贖罪の道を選びます。最後に、トラックの下に体を括り付け、引きずられて死んでいきます。血の跡が残る中、物語は終わりを迎えます。
このあらすじは、バイオレンスと心理描写が交錯するスリラー要素を強調しています。ガンドの変貌とミソンの復讐が、観客に強い衝撃を与えます。キム・ギドク監督のスタイルが色濃く出た作品です。
解説
映画『嘆きのピエタ』は、キム・ギドク監督の18作目で、自費製作という異例の条件で作られました。低予算ながら、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、韓国映画史上初の三大映画祭最高賞獲得となりました。これは、監督の独自のビジョンと、キャストの献身的な演技によるものです。テーマは、資本主義社会の闇と人間の贖罪、母性愛の複雑さを描いています。タイトル「ピエタ」は、ミケランジェロの彫刻を連想させ、母子像の象徴として使われています。
物語の舞台は、ソウルの清渓川周辺の貧困地域です。ここでは、伝統的な町工場が並び、借金に苦しむ人々が描かれます。監督は、社会の底辺で生きる人々の苦痛を、バイオレンスシーンを通じて強調します。例えば、債務者を障害者にする描写は、資本主義の残酷さを象徴しています。一方、ミソンの登場により、ガンドの内面的な変化が描かれ、人間性の回復をテーマにしています。しかし、それは復讐の手段として使われ、観客に道徳的な問いを投げかけます。
映画のスタイルは、デジタル撮影を活用したシンプルな構成です。Canon EOS 5D Mark IIカメラを使い、監督自身がカメラを回す場面もあります。これにより、リアルで緊張感のある映像が生まれました。音楽は朴仁永が担当し、ミニマルなスコアが物語の暗さを増幅します。批評では、暴力の描写が過激だと指摘される一方、演技の質が高く評価されています。特に、チョ・ミンスとイ・ジョンジンの化学反応が、映画の成功要因です。
受賞歴は豊富で、ヴェネツィアの金獅子賞以外に、東京フィルメックス観客賞、韓国映画批評家協会賞ベストフィルム、ブルードラゴン賞ベストフィルムなどがあります。国際的に20カ国で配給され、興行収入は約360万ドルを記録しました。ただし、一部の批評家からは、復讐の展開が陳腐だと指摘されました。それでも、心理的な深みと視覚的なインパクトが、映画の価値を高めています。
本作は、キム・ギドクのフィルモグラフィーの中で、転機となった作品です。監督はこれまで、芸術性重視の作品が多く、商業的に苦戦していましたが、本作で国際的な名声を得ました。テーマの重さから、R指定を受けましたが、観客に強い印象を残します。社会批判の観点から、韓国社会の格差問題を反映している点も注目されます。全体として、バイオレンスとスリラーのジャンルを超えた、人間ドラマとして成立しています。
さらに、映画の象徴性について触れます。ピエタのモチーフは、母が子を抱く姿を連想させ、物語のクライマックスでその逆転が起こります。これは、贖罪と慈悲のテーマを強調します。監督のインタビューでは、資本主義が人々を壊す様子を描きたかったと語っています。これにより、本作は単なる復讐劇ではなく、社会的な寓話として機能します。女優たちの演技が、これを支えています。
最後に、本作の影響についてです。韓国映画の国際的な地位を高め、後続の監督たちに刺激を与えました。チョ・ミンスの活躍は、女性俳優の可能性を示し、以降の作品でさらに活躍の場を広げました。全体として、暗く重い内容ですが、人間性の本質を問う力強い作品です。
キャスト
- イ・ガンド:イ・ジョンジン
- ミソン:チョ・ミンス
- フンチョル:ウ・ギホン
- ミョンジャ:カン・ウンジン
- ギターの男:クォン・セイン
- テスン:チョ・ジェリョン
- 自殺した男:ホ・ジュンソク
- コンテナの男:ユ・ハボク
- 僧侶:キム・ジェロク
- サング:イ・ウォンジャン
- 社長:ソン・ジョンハク
- 車椅子の男:ジン・ヨンオク
- 老女:キム・ソヒョン
- 近所の男:キム・スンモ
- 近所の店主:カン・スンヒョン
- 老女:ファン・スンフィ
スタッフ
- 監督・脚本・編集・製作総指揮:キム・ギドク
- 製作:キム・スンモ
- 撮影:チョ・ヨンジク
- 美術:イ・ヒョンジュ
- 照明:チュ・ギョンヨプ
- 音楽:朴仁永
- 配給:ネクスト・エンターテインメント・ワールド、クレストインターナショナル




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