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桶川女子大生ストーカー殺人事件(書籍)

鳥越俊太郎『桶川女子大生ストーカー殺人事件』は、桶川ストーカー殺人事件について、鳥越俊太郎氏の報道番組が真相を暴き、警察の怠慢を追及したもの。ストーカー規制法成立の契機となった。ドラマ『ひまわり 桶川女子大生ストーカー殺人事件』の原作でもある。

桶川ストーカー殺人事件は、1999年に埼玉県桶川市で女子大生・猪野詩織さんが元交際相手のストーカー行為に苦しみ、警察に相談するも対応が遅れ、駅前で刺殺された事件。

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あらすじ

この書籍は、1999年に発生した衝撃的なストーカー殺人事件を、著者である鳥越俊太郎氏と取材班が詳細に追跡したノンフィクション作品。事件の被害者は、当時21歳の女子大学生、猪野詩織さんでした。彼女は、桶川市に住むごく普通の家庭で育ち、大学生活を送る明るい女性でした。物語は、詩織さんが1999年春頃、友人を通じて出会った27歳の男性、城野宏紘氏との交際から始まります。

出会ってわずか2カ月ほどで、詩織さんは城野氏の異常な執着心に気づきました。彼の行動は次第にエスカレートし、頻繁な電話や訪問、さらには待ち伏せといったストーカー行為が日常化しました。詩織さんは恐怖を感じ、交際を解消しようと試みますが、城野氏はそれを認めず、脅迫めいた言葉を浴びせ、時には暴力的な態度を見せました。詩織さんは、男の異常性と潜在的な殺意を察知し、早い段階で遺書まで執筆するほど追い詰められていました。

被害者である詩織さんは、家族の支えのもと、埼玉県警の上尾警察署に何度も相談に訪れました。告訴状を提出し、保護を求めましたが、警察の対応は極めて消極的でした。告訴状の内容が改ざんされたり、十分な捜査が行われなかったりという問題が発生し、詩織さんの訴えはほとんど無視されたのです。この怠慢が、事件の悲劇を招く遠因となりました。半年にわたる執拗な嫌がらせが続き、詩織さんの精神は極限まで蝕まれていきました。

事件のクライマックスは、1999年10月26日の夕暮れ時です。詩織さんがJR桶川駅前を歩いているところを、城野宏紘氏が兄の指示で雇った男に襲われ、無残にも刺殺されてしまいました。犯行は計画的で、城野氏は自らも事件に関与していましたが、殺害直後に利根川への入水自殺を図り、死亡しました。実行犯の男は逮捕されましたが、事件の全容は当初、霧の中でした。警察はストーカー行為の背景を十分に調査せず、単なる情殺として処理しようとしました。

書籍では、この事件の謎が次々と解き明かされます。城野氏の兄が関与していた事実、警察の内部文書の隠蔽工作、さらにはメディアの初期報道が被害者を中傷するような内容だった点などが詳細に記述されています。2000年3月、鳥越俊太郎氏がキャスターを務めるテレビ朝日の報道番組『ザ・スクープ』で、事件の真相が全国に放送されました。この放送がきっかけで、埼玉県警は再調査を余儀なくされ、警察官数名が告訴状改ざんなどの罪で有罪判決を受けました。詩織さんの遺族は、娘の死を悼むだけでなく、警察や社会に対する闘いを続けました。

あらすじの後半では、事件後の社会的影響が描かれます。書籍は、単なる事件の記録にとどまらず、遺族の苦悩や、鳥越氏自身のジャーナリズムへの反省を織り交ぜています。詩織さんの日記や手紙、家族の証言が交えられ、読者に事件の生々しさを伝えます。最終的に、この事件はストーカー行為の危険性を社会に喚起し、2000年にストーカー規制法の制定を後押ししました。全体として、被害者の視点から事件を追うことで、予防の重要性を訴える内容となっています。

解説

『桶川女子大生ストーカー殺人事件』は、ジャーナリスト鳥越俊太郎氏が主導した取材に基づく書籍で、2000年10月にメディアファクトリーから刊行されました。この作品は、単なる事件報道のまとめではなく、社会問題の深層を抉り出す点で、ノンフィクションの傑作として評価されています。まず、事件の背景から解説いたします。1990年代後半、日本ではストーカーという言葉が徐々に認知され始めていましたが、法的な規制は未整備でした。そんな中、猪野詩織さんの事件は、ストーカーの実態を象徴的に示す悲劇となりました。著者は、番組取材を通じて得た膨大な資料を基に、事件の時系列を丁寧に整理し、読者が全体像を把握しやすくしています。

本書の最大の価値は、警察の責任を徹底的に追及した点にあります。埼玉県警上尾署の対応は、告訴状の受理を渋り、内容を軽視するものでした。具体的に、詩織さんの告訴状が「脅迫の程度が低い」として改ざんされ、捜査が放置された事実が明らかになりました。これにより、警察官数名が文書偽造罪などで起訴され、懲戒免職となりました。この暴露は、警察の「怠慢」が「ストーカー嘱託殺人」を招いたとして、社会的な非難を浴びました。鳥越氏は、自身の経験から、権力機関の隠蔽体質を批判し、ジャーナリズムの役割を強調しています。

  • 警察の怠慢:被害者の相談を真剣に受け止めず、事件を防げなかった責任。
  • メディアの二次被害:初期報道で被害者の私生活をセンセーショナルに扱い、遺族を傷つけた点。
  • ストーカー行為の心理:加害者の執着心がエスカレートするメカニズムを分析。
  • 遺族の闘い:詩織さんの母を中心に、行政訴訟や法改正を求める活動の記録。
  • 法改正の影響:本事件がストーカー規制法(2000年施行)の成立を加速させた意義。

さらに、書籍はメディアの倫理問題にも触れています。事件直後、一部の週刊誌が詩織さんの交際歴や性格を中傷する記事を掲載し、「2度殺された」と遺族が嘆く事態を引き起こしました。鳥越氏は、自らの番組も含め、マスコミの反省を促します。この自己批判的な視点が、本書の信頼性を高めています。また、清水潔氏の取材(『遺言 – 桶川ストーカー殺人事件の深層』)との連携が、事件解明の鍵となりました。清水氏の果敢なスクープが、鳥越氏の放送を支え、日本記者クラブ賞受賞につながりました。

社会的な文脈では、この事件はDV(ドメスティック・バイオレンス)やジェンダー問題を浮き彫りにしました。女性が加害者の支配から逃れられない構造、支援体制の不備が指摘され、以降のストーカー事件対策に影響を与えました。2002年の続編『虚誕 – 警察に作られた桶川ストーカー殺人事件』では、警察の反論に対する遺族の闘いが描かれ、市民の権力監視の重要性を説いています。

全体として、本書は事件の悲劇を超え、予防のための教訓を提供します。読後、ストーカー被害の兆候に敏感になるよう促され、社会の仕組みを見直す契機となります。鳥越氏の丁寧な筆致は、被害者への敬意に満ち、ジャーナリズムの矜持を感じさせます。この作品は、事件から25年経った今も、現代のストーカー問題に通じる普遍的な価値を持っています。

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原作・実話
なむ

洋画好き(字幕派)。だいたいU-NEXTかNetflixで、妻と2匹の猫と一緒にサスペンスやスリラーを観ています。詳細は名前をクリックしてください。猫ブログ「碧眼のルル」も運営。

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