『飯島直子 今のための今まで』は元祖癒し系女優として社会現象を巻き起こした飯島直子さんが、56歳の今を振り返り綴ったライフスタイル本。2023年のインスタグラム開設で再び注目を集め、地味ごはんやすっぴん姿が話題に。
本書では、美容とセルフケアの秘訣を初公開し、メイクテクニックや日常ルーティンを詳細に紹介。更年期の向き合い方、結婚・離婚の真実、生い立ちから家族の記憶までをエッセイで明かし、これからの人生観を等身大で語る。変わらぬ美貌の裏側に迫る、心温まる一冊。
［PR］Amazonで『飯島直子 今のための今まで』をチェックする
体裁
『飯島直子 今のための今まで』は、世界文化社より2024年2月29日に刊行された単行本です。四六判のコンパクトなサイズで、全192ページを数え、税込定価は1,760円。ISBNは978-4418245024。カラー写真を豊富に挿入した美しい造りで、電子書籍版も同時発売されています。ライフスタイル本らしい視覚的な魅力が際立ち、読者が実践しやすいよう、イラストやリストを交えたレイアウトが施されています。
この体裁は、飯島直子さんの親しみやすいイメージを反映し、日常的に手元に置きたくなる一冊となっています。ページをめくるごとに、彼女の穏やかな世界観が広がるように工夫されており、美容関連の章ではアイテムの写真が詳細に掲載され、セルフケアの章では図解が入っています。
全体として、女性読者を中心に幅広い年齢層が楽しめる、洗練された装丁です。
構成
- PART1：飯島直子の８ルール【マイルーティン】 日常のルーティンを8つのルールとして紹介。起床後のぬるま湯、体重管理、食事の工夫など、健康的な一日の基盤を築く習慣を丁寧に解説。
- PART2：飯島直子のつくり方【ビューティ編】 シンプルなスキンケアからメイクテクニックまで。ロングセラー商品の選定理由や、飯島直子顔を再現するアイテムを具体的に公開。
- PART3：飯島直子のつくり方【セルフケア編】 美脚のためのマッサージ、オリジナル筋トレの方法。更年期の不調緩和や疲労回復に焦点を当て、家庭で実践可能なケアを提案。
- PART4：今の私を動かす大切な記憶【マイストーリー】 生い立ち、家族のエピソード、結婚・離婚の真実をエッセイ形式で振り返り。仕事の裏側や両親との別れの悲しみを赤裸々に語る。
- PART5：そして、これからの私【マイライフ】 50代の老いと向き合う心境、インスタグラム開始の理由、今後の展望。自由な生き方を肯定するポジティブなメッセージで締めくくる。
あらすじ
『飯島直子 今のための今まで』は、女優・飯島直子さんが56歳を迎えた2024年、自身の人生を「今のための今まで」と題して振り返る内容で幕を開けます。PART1では、彼女の日常を支える8つのルールが明かされます。例えば、起床直後に飲むグラス一杯のぬるま湯が体を目覚めさせ、一日のスイッチを入れるという習慣から始まり、体重を健康のバロメーターとして細かな変化を見逃さない姿勢、野菜中心の地味ごはん、散歩や入浴などのリラクゼーションまでが紹介されます。これらは、インスタグラムで話題となったすっぴんや食卓の写真の裏側を垣間見せるもので、読者は彼女の自然体な生活リズムに親近感を覚えるでしょう。
PART2のビューティ編に移ると、変わらぬ美貌の秘密が核心的に語られます。シンプルスキンケアを重視し、長年愛用するロングセラー商品の理由を説明。クレンジングオイルや化粧水の選び方、朝晩のルーチンをステップバイステップで解説します。特に、メイクの章では、眉毛の描き方やチークの入れ方など、飯島直子らしい柔らかな表情を再現するためのテクニックが満載。使用アイテムのリストが添えられ、ドラッグストアで手に入る手頃なものを中心に選定されている点が実用的です。更年期による肌の変化への対処法も織り交ぜられ、年齢を重ねる女性への励ましとなります。
PART3のセルフケア編では、体を大切にする具体的な方法が展開されます。美脚マッサージの順序をイラスト付きで示し、むくみや疲れをその日のうちに解消する重要性を説きます。また、「直子ジム」と呼ぶ自宅の鏡張りスペースで週2回行うオリジナル筋トレが紹介され、スクワットやストレッチのバリエーションが提案されます。これらは、忙しい日常の中で無理なく続けられるよう、ゆるやかなペースを推奨。ヨガやアロマの活用も触れられ、精神的なリフレッシュ法として瞑想のヒントが加わります。このパートを通じて、飯島さんの「美は内側から」という哲学が伝わってきます。
後半のPART4、マイストーリーでは、人生の深層に迫ります。神奈川の自然豊かな郊外で育った幼少期を、まるでトトロの森のような温かな情景で描き、大家族の賑わいの中で育まれた優しさを回想。母親の働き者ぶりや、父親の優しい人柄が、彼女の癒し系イメージの原点として位置づけられます。芸能界デビューから缶コーヒーCMでのブレイク、ドラマやバラエティでの活躍を振り返りつつ、結婚・離婚のエピソードを初めて詳細に語ります。パートナーとの出会い、幸せな日々、そして別れの痛みを通じて学んだ「自分らしさ」の大切さ。更に、両親の相次ぐ死去による喪失感と、そこから立ち直る過程が、涙を誘う筆致で綴られます。仕事のプレッシャーや孤独な夜の告白は、華やかな表舞台の裏側をリアルに浮かび上がらせます。
最終PART5、マイライフでは、現在と未来への視線が向けられます。50代に入り、「こうあるべき」という呪縛から解放された心地よさを表現。インスタグラムを始めた本当の理由―内向きだった心を外に向け、ファンとのつながりを求める気持ち―が明かされます。更年期の身体的・精神的変動を率直に語り、老いを恐れず受け入れる姿勢が印象的です。読者へのメッセージとして、「今を大切に生きる」ことの価値を強調し、本書は希望に満ちた余韻を残して終わります。このあらすじからわかるように、本書は単なる美容本ではなく、人生の伴走者として読者を励ます一冊です。
［PR］Amazonで『飯島直子 今のための今まで』をチェックする
解説
飯島直子さんの『今のための今まで』は、単なるセレブリティのライフスタイル本を超え、現代女性の内面的な葛藤を映し出す鏡のような作品です。
まず、美容とセルフケアの前半部は、表層的な美の追求ではなく、持続可能な習慣の構築を促します。彼女の8ルールは、派手さのない日常の積み重ねを強調し、インスタグラムの「地味ごはん」投稿が象徴するように、完璧主義を排したリアルさを体現。ビューティ編のメイクテクニックは、年齢を重ねた肌の悩みに寄り添い、更年期のホルモンバランスの乱れに対する具体策が、科学的な根拠を交えつつ優しく提案されます。これにより、読者は「自分ごと」として取り入れやすく、美容の民主化を進める役割を果たしています。セルフケア編の筋トレやマッサージは、身体の声に耳を傾けるマインドフルネスを基調とし、精神衛生の重要性を説く点で、現代のウェルネスブームに呼応します。
後半のエッセイ部は、本書の真髄であり、飯島さんの人間性を深く掘り下げるパートです。マイストーリーでの家族回想は、幼少期の原風景が癒し系キャラクターの源泉であることを示し、母親の自立心が自身のキャリア観に与えた影響を分析的に描きます。結婚・離婚の告白は、センセーショナルにせず、成長の糧として位置づけ、ジェンダー規範からの脱却を象徴。両親の死という喪失体験は、悲嘆のプロセスを詳細に追跡し、グリーフワークの普遍性を訴えます。この部分は、芸能界の華やかさとは対照的な脆弱さを露呈し、読者に共感を呼び起こします。心理学的には、過去のトラウマをナラティブセラピー的に再構築する試みとして興味深く、飯島さんのレジリエンス（回復力）を際立たせます。
全体のテーマとして、「今のための今まで」というタイトルが示すように、過去を未来への糧とする時間の流れが貫かれます。マイライフでのインスタ開始の動機―孤独からの脱出とつながりの渇望―は、デジタル時代の人間関係を問いかけ、50代女性のエンパワーメントを促します。更年期の描写は、社会的スティグマを払拭し、加齢をポジティブに転換する視点を提供。
文化的文脈では、1990年代の「癒し系」ブームを再解釈し、ポストコロナのメンタルヘルス需要に応じる点でタイムリーです。批評的に見れば、ファン向けの親しみやすさがやや表層性を生むものの、その等身大さが逆に説得力を増します。
本書は、読者が自身の「今まで」を振り返るきっかけとなり、自己肯定感を高めるツールとして機能します。結果として、飯島直子さんのキャリアを総括するだけでなく、普遍的な人生の智慧を伝える、温かく力強い一冊です。
レビュー 作品の感想や女優への思い