『くノ一化粧』は1964年に公開された日本映画で監督は中島貞夫。山田風太郎の原作『外道忍法帖』を基に、豊臣家の隠し財宝の鍵となる六つの鈴を巡るくノ一と忍者の激しい戦いを描きます。コメディタッチの演出が特徴で、超自然的な忍法と情愛の要素が交錯します。出演は露口茂、弓恵子、春川ますみらで、上映時間は90分。
基本情報
- 原題:くノ一化粧
- 公開年:1964年
- 製作国・地域:日本
- 上映時間:90分
女優の活躍
『くノ一化粧』では、数多くの女優がくノ一として活躍します。
まず、弓恵子が演じる天姫は、くノ一の首領として鈴の死守を誓い、物語の中心を担います。彼女は髪縫いの術を使って敵の天草扇千代を盲目にするなど、強力な忍法を駆使します。また、奪われた鈴を取り戻すために遊女伽羅の肉体を借りて扇千代に近づき、女の本能とくノ一の宿命の間で葛藤します。最終的に、初めての喜びに触れながらも、扇千代の本心に気づき、鈴を投げ捨てて去る姿が印象的です。弓恵子はこの役で、忍者の冷徹さと女性の繊細さを巧みに表現し、物語の情感を深めています。
緑魔子が演じるお志乃は、くノ一の一人で、夢幻琴の音と密霞の術を武器に篝火兵部を倒します。しかし、扇千代の忍法山彦によって術を破られ、自ら命を絶つという悲劇的な末路を迎えます。彼女の活躍は、戦闘シーンの緊張感を高め、くノ一たちの忠誠心を象徴します。緑魔子は、この役を通じて忍法の神秘性と自己犠牲の精神を体現し、観客に強い印象を残します。
三島ゆり子が演じるお貞は、鍔隠れ忍者の逗留する丸山遊廓を襲撃しますが、逆に十六夜鞭馬のおとこ化粧の術で殺され、鈴を奪われます。彼女の活躍は、潜入と戦闘のスリルを描き、くノ一の勇敢さを示します。三島ゆり子はこの短い登場ながら、激しいアクションと忍者の誇りを表現します。
松井康子が演じるお珠は、先祖返りの術で鞭馬を赤ん坊に変えるというユニークな忍法を使います。しかし、水阿弥の油断を突かれて殺されます。彼女の活躍は、忍法の多様性を強調し、コメディ要素を加えます。松井康子は、この役で忍者の機知と悲哀を演じ分けます。
岬瑛子が演じる夕心尼は、くノ一の一員として鈴の死守を誓いますが、具体的な戦闘描写は少ないものの、グループの結束を支えます。岬瑛子はこの役で、静かな存在感を発揮します。
西岡慶子が演じるもみじも、くノ一として天姫を中心に活躍します。鈴を守る誓いを立て、物語の基盤を形成します。西岡慶子は、集団の中での調和を表現します。
春川ますみが演じる伽羅は、遊女として扇千代と相思相愛の関係にあります。天姫が彼女の肉体を借りて扇千代に近づくため、物語の後半で重要な役割を果たします。伽羅の存在は、情事のシーンを通じて人間的な喜びを描き、くノ一の宿命との対比を強調します。春川ますみはこの役で、妖艶さと純粋さを併せ持ち、情感豊かな演技を見せます。
これらの女優たちは、忍法の戦いを通じて女性の強さと脆さを描き、映画の魅力の中心となります。全体として、彼女たちの活躍はアクションとドラマのバランスを保ち、観客を引き込みます。
女優の衣装・化粧・髪型
『くノ一化粧』の女優たちは、時代劇らしい衣装を着用します。くノ一役の弓恵子、緑魔子、三島ゆり子、松井康子、岬瑛子、西岡慶子は、黒や暗色の忍者装束を基調とし、動きやすいデザインです。これらの衣装は、戦闘シーンで機敏さを強調し、身体のラインを際立たせます。忍法を使う場面では、衣装が破れたり変化したりする描写があり、ドラマチックです。化粧は、忍者らしい控えめなもので、顔を白く塗り、目元を強調します。これにより、神秘的な雰囲気を醸します。特に、天姫の髪縫いの術では、髪型が絡む描写があり、長く黒い髪を活かします。髪型は主に日本髪風で、戦闘時は束ねて実用的です。
お貞のシーンでは、おとこ化粧の術が絡み、化粧の変装要素が登場します。これは、鞭馬が女性の化粧を逆手に取る忍法で、女優の化粧が物語の鍵となります。三島ゆり子の化粧は、遊廓の襲撃シーンで妖艶さを加え、髪型は乱れ髪で緊張感を表します。お珠の先祖返りの術では、衣装の変化が暗示され、化粧が幼児化の効果を支えます。松井康子の髪型は、術発動時に広がる描写があります。
春川ますみの伽羅は、遊女らしい華やかな衣装を着用します。絢爛な着物で、赤や金色を基調とし、情事のシーンで脱ぎ捨てられる描写があります。化粧は濃く、唇を赤く塗り、目元を強調します。これにより、扇千代との関係が妖艶に描かれます。髪型は結い上げで、遊女の優雅さを表します。天姫が伽羅の肉体を借りるため、弓恵子の演技が化粧と衣装の変化を伴い、髪型も遊女風にシフトします。これらの要素は、忍法のエロティックさを高め、視覚的に魅力的にします。全体として、衣装・化粧・髪型は、くノ一の宿命と女性らしさを視覚化し、映画のテーマを深めます。
あらすじ
慶安四年、由井正雪や丸橋忠弥を中心とした幕府転覆計画は失敗に終わります。老中松平伊豆守は、由井正雪の動きを察知し、資金源を老忍者服部半助に探らせます。その結果、豊臣家が遺した巨額の財宝が隠されており、その在り処を解く鍵は、豊臣家の恩恵を受けた大友忍者六人のくノ一が胎内に秘めた六つの鈴であることが判明します。伊豆守の命で、天草扇千代を首領とする道忍、狂念、兵部、鞭馬、水阿弥ら六人の鍔隠れ忍者が、くノ一の住む長崎に向かいます。一方、この動きはくノ一の首領天姫の耳にも入り、天姫を中心に、もみじ、お志乃、お珠、夕心尼、お貞の六人が鈴の死守を誓います。
お志乃は夢幻琴の音と密霞の術で篝火兵部を倒しますが、扇千代の忍法山彦で術を破られ、自ら命を絶ちます。しかし、扇千代は天姫の髪縫いの術で盲目になります。鍔隠れ忍者の逗留する丸山遊廓を襲ったお貞は、鞭馬のおとこ化粧の術で殺され、鈴を奪われます。鞭馬はお貞に扮してくノ一の本拠持仏堂に潜入しますが、正体を見破られ、お珠の先祖返りの術で赤ん坊になってしまいます。お珠も水阿弥に油断を突かれ殺されますが、水阿弥には天姫の術がかかり、扇千代の姿が幻覚で裸身のくノ一に見えます。抜討ちに切りかかる水阿弥を扇千代が斬り、良心の苛責に悩む扇千代は、惚れた遊女伽羅との情事に没頭します。
争いは苛烈を極め、天姫と扇千代を残して次々と倒れていきます。残った天姫は鈴を取り返すため、伽羅の肉体を借りて扇千代に近づきます。抱かれた扇千代の胸で初めての喜びにふるえますが、くノ一の宿命と女の喜びが交錯します。突然、扇千代が求めているのは伽羅であることに気づき、取り返した鈴を投げ捨て、扇千代の叫ぶ声を後に悄然と去っていきます。このあらすじは、忍法の戦いと人間の情愛を織り交ぜ、ドラマチックに展開します。
解説
『くノ一化粧』は、山田風太郎の原作『外道忍法帖』を大幅にアレンジした作品です。前作『くノ一忍法』とは異なり、コメディタッチの演出が取り入れられ、軽快な音楽とともに楽しめます。監督の中島貞夫は、今村昌平の『赤い殺意』に影響を受け、同作のキャストを起用しました。これにより、忍者映画に独自の深みを加えています。物語は、豊臣家の財宝を巡る争いを軸に、くノ一の胎内鈴という独創的な設定を活かします。忍法は超自然的なものが多く、髪縫いの術やおとこ化粧の術、先祖返りの術などが登場し、視覚的な面白さを生みます。これらの術は、エロティックな要素を交え、時代劇の枠を超えた娯楽性を高めます。
キャストの選択も秀逸で、露口茂の扇千代は忍者の冷徹さと人間味を、弓恵子の天姫は女性の葛藤を表現します。音楽の山本直純は、リズミカルな曲でコメディを支え、撮影の赤塚滋は戦闘シーンのダイナミズムを捉えます。本作は、東映のくノ一シリーズ第2弾としてヒットし、第3弾『忍法忠臣蔵』につながりました。1964年の公開当時、忍者ブームの中で、女性忍者の活躍を強調した点が新鮮でした。全体として、アクション、ユーモア、ドラマのバランスが良く、現代でも楽しめるクラシックです。この解説は、映画の背景と魅力を詳述します。
キャスト
- 天草扇千代:露口茂
- 鴬道忍:西村晃
- 真昼狂念:小沢昭一
- 篝火兵部:脇中昭夫
- 十六夜鞭馬:芦屋雁之助
- 百済水阿弥:加藤武
- 伽羅:春川ますみ
- 天姫:弓恵子
- もみじ:西岡慶子
- お志乃:緑魔子
- お珠:松井康子
- 夕心尼:岬瑛子
- お貞:三島ゆり子
- 松平伊豆守:原田甲子郎
- 服部半助:多々良純
- 由井正雪:原健策
- その他:堀田眞三
スタッフ
- 監督:中島貞夫
- 脚本:倉本聰、中島貞夫、金子武郎
- 原作:山田風太郎
- 企画:小倉浩一郎、折茂武雅
- 撮影:赤塚滋
- 美術:吉村晟
- 音楽:山本直純
- 録音:藤本尚武
- 照明:和多田弘
- 編集:神田忠男
- スチル:深野たかし



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