『踊子』は、1957年に公開された日本映画です。永井荷風の同名小説を原作に、浅草を舞台とした姉妹の踊り子の人生を描きます。監督は清水宏で、主演は淡島千景と京マチ子です。情痴の世界を情緒豊かに表現し、当時のダンサー生活を反映した作品です。上映時間は96分、配給は大映。
基本情報
- 邦題:踊子
- 公開年:1957年
- 製作国・地域:日本
- 上映時間:96分
女優の活躍
映画『踊子』では、女優たちが踊り子の複雑な人間関係と情念を体現し、物語の中心を担っています。
淡島千景は花枝役を務めます。花枝は浅草のシャンソン座で踊り子として働き、夫の山野とともに暮らしますが、子供に恵まれず、妹の千代美の上京をきっかけに生活が乱れます。彼女の活躍は、妹の奔放さに振り回されながらも、妹の子を育て上げる母性的な強さを発揮する姿に表れます。淡島千景は松竹の看板女優として大映作品に客演し、全編を通じて姉の立場を貫く演技で物語を支えます。特に、鏡台に向かって髪を整える冒頭のシーンや、涙を流す感動的な場面で美しさを際立たせ、観客の共感を誘います。彼女の演技は、地味ながらも品のある踊りで、姉妹の対比を強調します。
京マチ子は千代美役を演じ、金沢から上京したバス車掌の女性として登場します。千代美は姉の家に転がり込み、踊り子となり、姉の夫と関係を持って妊娠し、子を産みますが、自由奔放な性格で芸者や妾へと転落します。京マチ子の活躍は、ヴァンプ的な魅力で男を誘惑するシーンに集中し、グラマラスな体型を活かした天女のような踊りで魅了します。本作は彼女の肉体派女優としての側面を強調し、奔放さと破滅的な生き様を力強く表現します。ただし、キャスティングのミスマッチを指摘する声もあり、32歳で17歳の役を演じる貫禄が目立ちます。
藤田佳子は踊子てる子役で、穂高のり子は踊子とし子役として、シャンソン座の仲間として活躍します。彼女たちの活躍は、ダンスシーンで姉妹をサポートし、舞台の賑わいを演出します。阿井美千子は芸者のはぎ江役で、千代美の転落を象徴する場面で存在感を発揮します。楠よし子はお妾役で、千代美の生活の乱れを強調します。町田博子はアパート管理人役、平井岐代子は置屋の女将役で、脇役ながら物語のリアリティを高めます。
新宮信子や半谷光子、西川紀久子などの踊子役の女優たちは、集団ダンスで活気を与えます。真杉美智子や白井玲子、花村泰子は芸妓役で、座敷シーンを豊かにします。藍三千子は看護婦役、香住佐代子は付添婦役で、千代美の出産や病気の場面でドラマを加えます。
本作の女優たちは、1950年代の大映映画らしい情緒的な演技を披露し、荷風文学の悲しみと美しさを体現します。淡島千景は姉の忍耐強さを、京マチ子は妹の無軌道さを、それぞれのキャリアを活かして演じ分け、姉妹の対比を鮮やかに描き出します。
全体として、女優たちの活躍は、ダンスとドラマの融合で観客を魅了し、当時の映画界の華を象徴します。レビューでは、淡島千景の美しさと涙のきれいさが特に評価され、京マチ子の奔放さが物語の悲惨さを高めています。脇役女優たちも、浅草の風俗を活気づけ、作品の深みを増しています。この共演は、松竹と大映のスターの競演として注目を集めました。
女優の衣装・化粧・髪型
本作『踊子』の女優たちの衣装は、1950年代の浅草ダンサー生活を反映したものが中心で、舞台衣装と日常着の対比が特徴です。
淡島千景演じる花枝は、シャンソン座の踊り子として、品のあるドレスやスカートを着用します。この衣装は、地味ながらも優雅さを強調し、姉の性格を表します。化粧は控えめで、自然なメイクが施され、鏡台での髪整えシーンで美しさを際立たせます。髪型は緩く巻いたロングヘアが多く、踊りシーンで優雅に揺れる様子が印象的です。
京マチ子演じる千代美は、奔放な役柄を反映した派手なドレスや芸者姿を着用します。グラマラスな体型を活かした衣装で、踊り子時代はボディラインを強調したもの、芸者時代は着物が用いられます。化粧は濃いめで、目元と唇を強調し、ヴァンプ的な魅力を演出します。髪型はアップスタイルやウェーブヘアが主流で、転落していく過程で乱れが表現されます。
藤田佳子演じるてる子と穂高のり子演じるとし子は、ダンサー衣装としてミニドレス風のものを着用し、集団ダンスで統一感を出します。化粧はステージメイクで明るく、髪型はポニーテールやボブが用いられます。
阿井美千子演じるはぎ江は芸者衣装の着物を纏い、伝統的な化粧と結い上げ髪で、千代美の転落を象徴します。楠よし子のお妾役は華やかな着物で、化粧は妖艶さを加え、髪型は華美なアップです。町田博子の管理人役は日常着のエプロン姿で、化粧は素朴、髪型はシンプルなまとめ髪です。平井岐代子の女将役は着物で、化粧は落ち着いたもの、髪型は伝統的な日本髪です。
新宮信子や半谷光子などの踊子たちは、統一されたステージ衣装で、化粧は華やか、髪型はダンスに適したスタイルです。真杉美智子や白井玲子の芸妓たちは、着物と白粉化粧、結い髪で風俗を再現します。藍三千子の看護婦役は白衣で、化粧は清潔感があり、髪型はキャップ下の短髪風です。香住佐代子の付添婦役は同様にシンプルです。
全体的に、衣装は一周回って1950年代のレトロファッションが新鮮で、化粧は役柄の情念を強調します。髪型はシーンごとに変化し、鏡台シーンが象徴的です。これらの要素は、荷風の情痴世界を視覚的に表現し、女優たちの魅力を高めています。レビューでは、淡島千景の髪整えシーンが美しく、京マチ子のグラマラスさが衣装に反映されているとされます。
あらすじ
浅草六区のシャンソン座で楽士をしている山野の妻、花枝は同じ座で踊り子をしています。
ある日、金沢から妹の千代美が上京してきます。千代美はバス車掌をしていましたが、東京での生活を望み、姉の家に転がり込みます。花枝夫婦は子供に恵まれず、千代美の同居を歓迎しますが、千代美はすぐに踊り子となり、姉の夫山野に近づきます。奔放な千代美は山野と関係を持ち、妊娠します。花枝はショックを受けますが、千代美は子を産み、姉に預けて去ります。
千代美は芸者となり、さらに妾へと転落し、無軌道な生活を送ります。一方、花枝は妹の子を自分の子のように育て、夫婦の絆を保とうとしますが、悲惨な出来事が続きます。千代美の男性遍歴は続き、姉の生活に波乱を呼びます。最終的に、千代美は寺を訪ね、姉の元に戻るような展開で締めくくられます。
このあらすじは、姉妹の対比を通じて愛情の悲しさと美しさを描き、荷風文学の情痴の世界を反映します。浅草の賑わいやダンスシーンが背景にあり、当時の風俗を活かしたストーリーです。原作から改変され、雪子の死を削除し、寺訪問を追加したアダプテーションが特徴です。悲惨さと人間ドラマが交錯し、観客に強い印象を残します。
解説
『踊子』は、1957年公開の大映映画で、永井荷風の同名小説を清水宏監督が映画化しました。脚本は田中澄江が担当し、情痴の世界を情緒的に描きます。企画・製作は永田雅一で、当時の大映の文芸路線を象徴します。撮影は秋野友宏、音楽は斎藤一郎が手がけ、モノクロ96分の作品です。
浅草を舞台に、踊り子の姉妹の人生を軸に、愛と裏切りを描き、荷風の文学性を保ちつつ、映画的な改変を加えています。興行的には中程度ですが、淡島千景と京マチ子の共演が話題となりました。淡島千景は松竹から客演し、姉役で忍耐強い女性を演じ、京マチ子は大映のスターとして奔放な妹を体現します。このキャスティングは、両社の女優の競演として注目されましたが、京マチ子の年齢と役のミスマッチを指摘する声もあります。
清水宏の演出は、斬新な映像感覚で知られ、本作では浅草の賑わいやダンスシーンを活かしますが、無難な文芸作品に終始したとの評価です。レビューでは、宝塚とOSKの対決のようなダンスの対比が楽しめ、姉妹の性格差が物語の鍵となっています。
1950年代の日本映画界では、戦後復興期の風俗を描く作品が多く、本作も浅草のエンターテイメント業界を背景に、女性の生き様を探求します。荷風の原作は情痴の悲しみを強調し、映画版はそれを視覚的に表現します。音楽の斎藤一郎は、シャンソン風の曲で雰囲気を高めます。
全体として、本作は大映の娯楽文芸映画の伝統を継承し、女優たちの演技で魅力を発揮します。現代の視点から見ると、女性の抑圧と解放のテーマが潜み、フェミニズム的な再評価が可能です。公開当時の反応は分かれましたが、現在ではクラシック映画として価値が高いです。
キャスト
- 花枝:淡島千景
- 千代美:京マチ子
- 山野:船越英二
- 田村:田中春男
- てる子:藤田佳子
- とし子:穂高のり子
- アパート管理人:町田博子
- お妾:楠よし子
- 楽屋番:酒井三郎
- 置屋の女将:平井岐代子
- はぎ江:阿井美千子
- 看護婦:藍三千子
- 付添婦:香住佐代子
- 踊子:新宮信子
- 踊子:半谷光子
- 踊子:西川紀久子
- 踊子:坪井美知子
- 踊子:明石百合子
- 踊子:千歳恵美
- 踊子:桜井喜美子
- 芸妓:真杉美智子
- 芸妓:白井玲子
- 芸妓:花村泰子
- 演出助手:津村雅弘
- 板や:伊達正羽子
スタッフ
- 監督:清水宏
- 製作:永田雅一
- 原作:永井荷風
- 脚本:田中澄江
- 撮影:秋野友宏
- 美術:柴田篤二
- 音楽:斎藤一郎
- 録音:須田武雄
- 照明:柴田恒吉




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