1995年公開の香港映画『レッド・ブロンクス』は、ジャッキー・チェン主演のアクション・コメディ。香港の刑事クーンがニューヨークのブロンクスでギャングやマフィアと戦う。製作費約14億円を投じた大作で、全米興行収入1位を獲得。スタントなしの迫力あるアクションが魅力。
基本情報
- 邦題:レッド・ブロンクス
- 原題:紅蕃區
- 英題:Rumble in The Bronx
- 公開年:1995年
- 製作国:香港
- 上映時間:105分
- ジャンル:アクション
- 配給:ワーナー・ブラザース映画
見どころ
叔父の結婚式に出席するため、休暇を利用してニューヨークを訪れた香港の刑事クーン。彼は叔父の経営する店を買い取った女性イレインと出会う。
あらすじ
香港警察の刑事クーン(ジャッキー・チェン)は、叔父ビルの結婚式に出席するため、ニューヨークのブロンクスを訪れます。叔父は地元のスーパーマーケットを経営していましたが、それを若い女性イレイン(アニタ・ムイ)に売却し、新生活を始める準備を進めていました。しかし、ブロンクスはダイヤ密売シンジケートによって荒廃しており、地元のチンピラ集団がスーパーを脅かし、用心棒代を要求するなど無法地帯と化していました。
クーンは、叔父の店を引き継いだイレインを助けるため、チンピラたちと対峙しますが、事態はさらに複雑化。チンピラがギャングからダイヤを盗んだことで、クーンはマフィアのボス「ホワイトタイガー」との抗争に巻き込まれます。ホバークラフトでの追跡やビル間での危険なジャンプなど、ジャッキーならではの命がけのスタントが展開。クーンは持ち前の正義感とカンフーの技術を駆使し、街の平和を取り戻すため奮闘します。物語は、ギャングとチンピラの抗争を背景に、クーンの超人的な活躍で悪を倒す痛快なアクションで締めくくられます。
解説
『レッド・ブロンクス』は、ジャッキー・チェンがハリウッド進出を目指した3度目の挑戦作であり、アジア映画として初めて全米興行収入初登場1位を記録した記念碑的作品です。製作費1億香港ドル(約14億円)は当時の香港映画として最高額で、ニューヨークのブロンクスを舞台にしつつ、実際の撮影は治安や安全面を考慮してカナダのバンクーバーで行われました。この作品は、ジャッキーのトレードマークであるユーモアと危険なスタントを融合させたアクションが特徴で、特にホバークラフトを使った追跡シーンやビルからビルへのダイビング、冷蔵庫などの日常的な道具を使った戦闘シーンが観客を魅了しました。
物語は勧善懲悪のシンプルな構造ながら、ジャッキー映画特有のコミカルな要素とシリアスなバイオレンスが混在。チンピラやマフィアの描写にはやや誇張が見られ、ストーリーの展開が唐突に感じられる部分もありますが、アクションの迫力とジャッキーの魅力がそれを補います。全編英語セリフのアメリカ公開版(90分)も存在し、国際的な市場を意識した作りとなっています。エンディングのNGシーンもジャッキー映画の定番で、彼のスタントの過酷さを垣間見ることができます。この作品は、ジャッキーが『ラッシュアワー』(1998年)で本格的なハリウッド進出を果たす布石となり、世界的スターとしての地位を確立しました。
女優の活躍
『レッド・ブロンクス』には、アニタ・ムイとフランソワーズ・イップという2人の女優が主要な役割で出演し、物語に彩りを加えています。
アニタ・ムイ(イレイン役)
香港の歌姫として知られるアニタ・ムイは、スーパーマーケットの新オーナー、イレインを演じました。彼女は本作で、気丈で自立した女性像を体現。チンピラに脅される中、クーンの助けを借りつつも、自身の店を守るために奮闘する姿が印象的です。アニタの演技は、アクション映画の中で感情的な深みを加え、ジャッキーのコミカルなキャラクターとのバランスを取っています。彼女の登場シーンでは、日常的なトラブルに対処する現実的な女性として描かれつつ、物語が進むにつれてクーンと協力し、ギャングとの対決に関与する勇敢さを見せます。『酔拳2』(1994年)でもジャッキーと共演した経験があり、本作でも息の合った掛け合いが光ります。
フランソワーズ・イップ(ナンシー役)
国際的なモデルとして活躍していたフランソワーズ・イップは、本作が映画初出演。ナンシー役として、チンピラ集団と関わりを持ちながらも、クーンと交流を通じて変化していく女性を演じました。彼女の役は物語の鍵を握るダイヤに関連し、アクションシーンにも一部参加。モデル出身らしい華やかな存在感で、ジャッキーのアクションを際立たせる脇役として貢献しています。彼女の演技は、初出演ながら自然体で、クールでミステリアスな雰囲気が物語の緊張感を高めました。
女優の衣装・化粧・髪型
アニタ・ムイ
アニタ・ムイ演じるイレインは、スーパーマーケットの経営者という設定を反映し、実用的な衣装が中心です。カジュアルなシャツやジーンズ、エプロン姿が多く、働く女性らしい親しみやすさが強調されています。彼女の衣装は、ブロンクスの庶民的な雰囲気とマッチし、派手さよりも機能性を重視したデザインです。化粧はナチュラルで、日常的なシーンにふさわしい控えめなスタイル。髪型は、ショートカットまたはシンプルにまとめられたスタイルで、動きやすさと現実感を演出。アクションシーンでは、彼女の衣装が汚れたり乱れたりする場面もあり、物語の緊迫感を視覚的に表現しています。
フランソワーズ・イップ
フランソワーズ・イップのナンシーは、チンピラ集団と関わるキャラクターらしく、都会的でやや大胆な衣装が特徴です。レザージャケットやタイトなトップス、ダークカラーのパンツなど、90年代のストリートファッションを反映したスタイルが目立ちます。化粧は、アイラインやリップを強調したグラマラスなメイクで、モデル出身の彼女の美貌を引き立てています。髪型はロングヘアを下ろしたスタイルや、ルーズに束ねたポニーテールで、クールでミステリアスな印象を強調。彼女のビジュアルは、ブロンクスの荒々しい世界観の中で異彩を放ち、観客の目を引く存在感がありました。
キャスト
- ジャッキー・チェン(クーン役):香港警察の刑事で、アクションの中心人物。命がけのスタントで観客を魅了。
- アニタ・ムイ(イレイン役):スーパーマーケットの新オーナー。気丈で現実的な女性を演じる。
- フランソワーズ・イップ(ナンシー役):チンピラ集団と関わる女性。モデル出身の華やかな存在感。
- トン・ピョウ(ビル叔父役):クーンの叔父で、スーパーマーケットの元オーナー。ジャッキー映画の常連。
ほかに、マーク・エイカーストリーム、ガーヴィン・クロス、モーガン・ラム、クリス・ロードらがチンピラやギャング役で登場。
スタッフ
- 監督:スタンリー・トン(『ポリス・ストーリー3』でジャッキーとタッグを組んだ実績を持つ)
- 脚本:エドワード・タン、ファイブ・マー
- 製作:バービー・タン
- 製作総指揮:レナード・ホウ
- 撮影:マー・コーシン
- 音楽:ネイザン・ウォン
- 美術:ウォン・ユイマン
- スタント指導:ジャッキー・チェン、スタンリー・トン(共同)
総括
『レッド・ブロンクス』は、ジャッキー・チェンのアクションとユーモアが全開の作品で、アニタ・ムイとフランソワーズ・イップの女優陣が物語に深みと魅力を加えています。衣装や髪型は、90年代の香港映画らしい実用性とトレンドを反映。豪華な製作陣とキャストによるアクションの迫力は、現代でも色褪せません。
レビュー 作品の感想や女優への思い