『ソルト』(2010年)は、アンジェリーナ・ジョリー主演のスパイ・アクション映画。CIAエージェントのイヴリン・ソルトがロシアの二重スパイ容疑をかけられ、真相を追う逃亡劇。二転三転する展開と迫力のアクションが見どころ。監督はフィリップ・ノイス。
- 邦題:ソルト
- 原題:Salt
- 公開年:2010年
- 製作国:米国
- 上映時間:100分
- ジャンル:アクション
- 公式サイト:sonypictures.jp
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女優陣の活躍
『ソルト』はアンジェリーナ・ジョリーが主演を務め、彼女のアクション女優としての地位を確固たるものにした作品です。ジョリーはイヴリン・ソルト役で、肉体的なアクションから感情表現まで幅広い演技を披露。とくに注目すべきは、彼女が多くのアクション場面をスタントマンに頼らず自ら演じた点です。例えば、高速道路でのカーチェイスやビルの外壁を登るシーンなど、無謀ともいえるアクションに挑戦し、その迫力とリアリティが高く評価されています。彼女の細身ながらもタフな姿は、観客に強い印象を与え、女性アクションスターとしての独自性を確立しました。レビューでも「アンジェリーナ・ジョリーのアクションは圧巻」「表情だけで感情を伝える演技力が素晴らしい」と絶賛されています。
本作には他の女優の主要な出演はありませんが、ジョリーの存在感が圧倒的で、物語の中心を一手に担っています。彼女の変装シーン(金髪から黒髪、男装など)も話題となり、役柄の多面性を視覚的に表現。観客は「七変化するジョリーの魅力」を楽しめると評されています。
あらすじ
CIAエージェントのイヴリン・ソルト(アンジェリーナ・ジョリー)は、優秀な分析官としてアメリカCIA本部で働いています。ある日、ロシアからの亡命者オルロフ(ダニエル・オルブリフスキー)が訪れ、衝撃的な告白をします。彼は、ソ連時代のスパイ養成機関「KAプログラム」により訓練されたロシアのスパイがアメリカに潜伏し、訪米中のロシア大統領暗殺を計画していると明かし、そのスパイの名を「イヴリン・ソルト」と告げます。
突然の二重スパイ容疑に、ソルトは身の潔白を主張しますが、CIAの同僚たちから追われる身に。夫マイケル・クラウス(アウグスト・ディール)の安全を案じ、彼女はCIA本部から逃走。夫の行方を追う中、彼女は髪を黒く染め、変装してアメリカ副大統領の葬儀会場に潜入します。そこでロシア大統領を暗殺する行動に出ますが、実は蜘蛛の毒を使って仮死状態にさせ、暗殺を装ったことが判明。逮捕されるも、パトカーから脱出し、さらなる真相を追い求めます。
ソルトはかつてソ連で訓練を受けたスパイだった過去を思い出し、KAプログラムの仲間と再会。しかし、夫が目の前で殺害され、彼女の忠誠心は揺らぎます。物語は、ソルトがロシアのスパイ仲間やCIAの上司テッド・ウィンター(リーヴ・シュレイバー)と対峙し、ホワイトハウスでの大規模な陰謀を阻止する展開へ。彼女の真の目的と正体が明らかになる中、壮絶なアクションと裏切りの連続が観客を引き込みます。最終的に、ソルトは自らの意思でKAプログラムの破壊を決意し、逃亡しながら新たな戦いへと向かう姿で幕を閉じます。
解説
『ソルト』は、冷戦時代のスパイ映画のテイストを現代に蘇らせたサスペンス・アクションです。物語の鍵は「二重スパイ」のテーマで、ソルトの正体や忠誠心が二転三転する展開が最大の見どころ。観客は「誰が味方で誰が敵か」を最後まで見極められず、緊張感が持続します。この複雑なストーリー構成は、脚本家カート・ウィマーの巧みな仕掛けによるもので、レビューでは「観客を騙すトラップが秀逸」と評価されています。
本作は、当初トム・クルーズ主演の男性主人公(エドウィン・A・ソルト)として企画されていましたが、クルーズの降板後、ジョリーの起用に伴い脚本が女性主人公にリライトされました。この変更が功を奏し、ジョリーのアクションと感情表現が物語に深みを加え、女性主人公ならではのドラマ性が際立っています。特に、夫マイケルとの関係性は、ソルトの人間的な側面を描く重要な要素。彼女の悲しみや怒りが、単なるスパイ映画を超えた感情的な厚みを生み出しています。
アクション面では、フィリップ・ノイス監督の演出が光ります。実写主体のスタントと最小限のCGIを活用し、リアルで緊張感のある映像を実現。高速道路での追跡シーンやホワイトハウスでの戦闘は、スリリングかつダイナミックです。レビューでは「100分という短い尺で密度の濃い娯楽作品」と称賛され、テンポの良さが強調されています。
一方で、プロットのリアリティには賛否両論があります。「ロシアのスパイが世界征服を目論む」という設定は、冷戦時代の古さを感じさせ、「90年代のセンス」と批判されることも。ただし、ジョリーのアクションとストーリーのテンポがそれを補い、娯楽映画として高い評価を受けています。続編の可能性も示唆するエンディングですが、ジョリーが脚本に不満を示したため、2025年現在、続編は実現していません。
キャスト
- イヴリン・ソルト:アンジェリーナ・ジョリー(日本語吹き替え:湯屋敦子)…CIAエージェントであり、物語の中心人物。ロシアのスパイ疑惑をかけられ、逃亡しながら真相を追う。ジョリーのアクションと表情演技が際立つ。
- -テッド・ウィンター:リーヴ・シュレイバー(東地宏樹)…ソルトの上司でCIA職員。物語の後半で意外な正体が明らかになり、重要な役割を果たす。
- ウィリアム・ピーボディ:キウェテル・イジョフォー(竹田雅則)…CIAの捜査官で、ソルトを追う。冷静沈着な演技が物語の緊張感を支える。
- オレグ・ワシリエヴィッチ・オルロフ:ダニエル・オルブリフスキー(浦山迅)…ロシアの亡命者で、ソルトにスパイ疑惑をかけるきっかけを作る。
- マイケル・クラウス:アウグスト・ディール…ソルトの夫で、クモの研究者。ソルトの心の支えとなるが、物語の鍵を握る。
- 国防長官:アンドレ・ブラウアー(中村浩太郎)…政治的な場面で登場し、物語の緊迫感を高める。
その他、脇役としてダニエル・ピアース、ハント・ブロック、オレック・クルーパなどが出演。
スタッフ
- 監督:フィリップ・ノイス…『ボーン・コレクター』や『パトリオット・ゲーム』で知られるアクション・サスペンスの名手。ソルトの逃亡劇をテンポよく演出。
- 脚本:カート・ウィマー…『トータル・リコール』(2012年版)などを手掛けた脚本家。二重スパイの複雑な展開を構築。
- 製作:ロレンツォ・ディボナヴェンチュラ、サニル・パーカシュ…大規模なアクション映画の製作に定評あり。
- 撮影:ロバート・エルスウィット…アカデミー賞受賞歴のある撮影監督。リアルなアクション場面を鮮やかに捉える。
- 音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード…緊迫感とドラマ性を高めるスコアを提供。
総括
『ソルト』は、アンジェリーナ・ジョリーのアクションと演技力を最大限に引き出したスパイアクションの傑作です。二転三転するストーリーとリアルなアクション場面が、100分というコンパクトな尺で濃密な娯楽を提供。ジョリーの変装や感情表現、ノイスのテンポ良い演出が光り、観客を最後まで引き込みます。一部プロットの古さは指摘されるものの、アクション映画としての完成度とジョリーの魅力がそれを補い、レビュー平均3.4点(Filmarks)と高い評価を得ています。続編の可能性も期待されたが未実現で、単独作品としての完成度が際立つ一作です。
レビュー 作品の感想や女優への思い