アーカンソー州はアメリカ合衆国南部の州で、人口約300万人、州都はリトルロック。オザーク高原やミシシッピ川沿いのデルタ地帯など多様な地形が特徴。「自然の州」と呼ばれる。出身女優にメアリー・スティーンバージェン、ジンジャー・ロジャース、デビー・ターナー、メアリー・ランバートたち。
歴史
アーカンソー州の歴史は、先住インディアン部族から始まります。クアポー族、カド族、オーセージ族などがこの地に住んでいました。1541年、スペイン人探検家エルナンド・デ・ソトが初めてヨーロッパ人としてこの地域を訪れ、ミシシッピ川沿いを探索しました。彼は金と中国への道を求めて旅しましたが、1542年に現在のレイクビレッジ近くで亡くなりました。州の名前「アーカンソー」は、クアポー族を指すイリノイ族の言葉に由来します。
その後、フランス領ルイジアナの一部となり、1803年のルイジアナ購入によってアメリカ合衆国の領土となりました。1836年6月15日、アーカンソー準州から合衆国25番目の州として昇格しました。19世紀初頭、インディアン部族は西方への強制移住を強いられ、代わりに文明化五部族がこの地に入りました。
アーカンソーは、1835年から1836年のテキサス革命で重要な役割を果たしました。州内のワシントン市はテキサス国境に近く、サミュエル・ヒューストンらが革命の計画を練った場所として知られています。1846年の米墨戦争では、州知事トマス・S・ドルーが騎兵連隊を組織し、アメリカ陸軍を支援しました。
南北戦争では、1861年5月6日、リンカーン大統領の軍隊招集をきっかけに合衆国から脱退し、南軍に加入しました。州内では大規模な戦闘は少なく、ケインヒルの戦いやプレーリーグローブの戦いなど小規模な戦闘が主でした。南軍の将軍パトリック・クリバーンは「西のストーンウォール」と称され、州の歴史に名を刻みました。
20世紀には、公民権運動が州の歴史に大きな影響を与えました。特にリトルロックのセントラル高校では、1957年にアフリカ系アメリカ人学生の受け入れを巡る「リトルロック危機」が発生し、連邦政府の介入を必要としました。この出来事は、公民権運動の重要な転換点となりました。
芸術
アーカンソー州の芸術は、その自然環境や歴史的背景に深く根ざしています。音楽は特に顕著で、ブルース、カントリー、フォーク、ブルーグラスが州の文化を彩ります。マウンテンビューは「アメリカのフォーク音楽の首都」として知られ、伝統的なカントリーミュージックが盛んに演奏されます。春には、ワカルサ音楽フェスティバルやトードサックデイズ、リバーフェストなど、音楽を中心としたイベントが開催され、州内外から多くの観光客が訪れます。
視覚芸術では、ベントンビルのクリスタル・ブリッジズ・アメリカンアート美術館が注目されます。この美術館は、ウォルマート創業者のアリス・ウォルトンによって設立され、アメリカの芸術作品を幅広く展示しています。植民地時代から現代までの絵画や彫刻が収蔵されており、特にアメリカの風景画や肖像画が人気です。
また、州内の大学やカレッジも芸術教育に力を入れています。ライオンカレッジでは、スコットランドの伝統に影響を受けた芸術プログラムが提供され、学生が音楽や演劇を通じて地域の文化を学びます。こうした取り組みは、州の芸術シーンをさらに豊かにしています。
登場する映画
アーカンソー州を舞台とした映画や、州内で撮影された作品は数多く存在します。以下は代表的な作品のリストです。
- ミナリ(2020年):アーカンソー州の農村に韓国系移民家族が移り住み、新生活を始める物語です。貧困と夢の間で葛藤する家族の姿を丁寧に描き、文化的アイデンティティや家族愛をテーマにしています。主人公の苦労と希望が、アーカンソーの広大な風景を背景に感動的に表現されています。
- バリー・シール/アメリカをはめた男(2017年):実在の麻薬密輸パイロット、バリー・シールの半生を描いたクライムドラマです。アーカンソー州を拠点にCIAや麻薬カルテルと関わり、危険な二重生活を送ります。スリリングな展開とトム・クルーズの演技が光る作品です。
- MUD -マッド-(2012年):アーカンソー州の川辺で暮らす少年が、逃亡中の男マッドと出会い友情を築く物語です。愛と裏切りをテーマに、少年の成長と大人たちの複雑な関係を描きます。自然豊かなアーカンソーの風景が物語に深みを与えています。
- デビルズ・ノット(2013年):1990年代のアーカンソー州で起きた「ウェスト・メンフィス3事件」を基にしたサスペンスです。3人の少年が殺害され、冤罪で裁かれた事件を追います。実際の裁判記録を元に、正義と真実の曖昧さを描いた重厚な作品です。
- ウォーク・ザ・ライン/君につづく道(2005年):カントリー歌手ジョニー・キャッシュの伝記映画で、アーカンソー州の農場で育った彼の若年期が描かれます。貧困からの成功、愛と苦悩を軸に、音楽を通じた人生の軌跡を情感豊かに表現しています。
- アーカンソー物語(1992年):アーカンソー州を舞台にした架空の大恐慌時代の物語です。家族やコミュニティの絆を軸に、困難な時代を生き抜く人々の姿を描きます。地元の文化や風土が色濃く反映された心温まる作品です。
- テルマ&ルイーズ(1991年):アーカンソー州から始まる二人の女性の逃避行を描いたロードムービーです。自由を求めて旅立つテルマとルイーズの友情と闘いが感動を呼びます。アーカンソーの風景が物語の冒頭に鮮やかに登場します。
- トレスパス(1991年):アーカンソー州の廃墟で宝物を探す二人の消防士が、ギャングと対峙するアクションスリラーです。緊張感あふれる展開と、州の工業地帯の荒廃した雰囲気が物語に独特の魅力を与えています。
- 明日に処刑を…(1978年):アーカンソー州の刑務所を舞台に、冤罪で死刑を宣告された男の脱獄劇を描きます。社会の不条理と人間の尊厳をテーマに、緊迫感あるストーリーが展開します。州の厳しい環境が物語を際立たせます。
- トランザム7000(1977年):アーカンソー州を横断するカーチェイスが中心のアクションコメディです。ビールの密輸を巡る陽気な冒険が描かれ、州の田舎道や文化がユーモラスに表現されています。バート・レイノルズの魅力が光ります。
- 怒りの山河(1976年):アーカンソー州の大恐慌時代を背景に、労働者たちの闘争を描いたドラマです。鉱山労働者の過酷な生活と団結がテーマで、州の山岳地帯の風景が物語に力強さを加えています。社会派の視点が印象的です。
- 血まみれギャングママ(1970年):実在の犯罪者マ・バーカーとその家族の物語で、アーカンソー州を舞台に展開します。家族による犯罪行為とその崩壊を描き、荒々しい暴力と家族の絆が交錯する過激な作品です。
- 群衆の中の一つの顔(1966年):アーカンソー州の小さな町で起きた殺人事件を巡る法廷ドラマです。無実の罪で裁かれる若者の物語を通じて、正義と偏見の葛藤を描きます。州の保守的な雰囲気が物語に深みを与えています。
- トゥルー・グリット(1969年):アーカンソー州の少女が父の仇を討つため、荒々しい保安官と旅に出る西部劇です。勇気と復讐をテーマに、州の荒野が舞台として活き活きと描かれています。ジョン・ウェインの名演が光る名作です。
- 勇気ある追跡(1969年):アーカンソー州を舞台にした「トゥルー・グリット」と同じ原作の別バージョンです。少女の復讐劇と成長が描かれ、州の広大な風景が物語の壮大さを引き立てます。古典的な西部劇の魅力が詰まっています。
出身女優
アーカンソー州出身の女優には、才能豊かな人物が数多くいます。以下は代表的な女優のリストです。
- シャニ・リグスビー:1967年5月1日、ホットスプリングス生まれ。シンガーソングライター、プロデューサー、女優。
- メアリー・スティーンバージェン:1953年2月8日生まれ、アーカンソー州ニューポート出身。1978年の「ゴーイング・サウス」で映画デビューし、「メルビンとハワード」(1980年)でアカデミー賞助演女優賞を受賞。「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3」や「ギルバート・グレイプ」など多くの話題作に出演し、その温かみのある演技が評価されています。
- ジンジャー・ロジャース:アーカンソー州にルーツを持つ女優(一部資料ではミズーリ州生まれとも)。1940年の「恋愛手帖」でアカデミー賞主演女優賞を受賞。フレッド・アステアとのダンス映画で知られ、1930年代から1940年代のハリウッド黄金期を代表するスターです。
- デビー・ターナー:ジョーンズボロ出身で、1990年のミス・アメリカに選ばれた女優・モデル。テレビや舞台での活躍が知られています。
- メアリー・ランバート:ヘレナ出身の映画監督兼女優。「ペット・セメタリー」(1989年)の監督として知られ、マドンナのMVも手がけました。映像作家としての才能も高く評価されています。
まとめ
アーカンソー州は、自然の美しさと豊かな歴史、独自の芸術文化を持つ魅力的な州です。オザーク高原やミシシッピ川デルタの風景、音楽や映画を通じた文化の発信、そして才能ある女優たちの活躍は、州の多面性を象徴しています。リトルロックやフェイエットヴィルを訪れることで、その魅力をさらに深く感じることができるでしょう。
レビュー 作品の感想や女優への思い