アイダホ州はアメリカ合衆国北西部のロッキー山脈に位置する内陸州で、州都はボイシ。広大な山岳地帯と豊かな自然が特徴で、農業(特にジャガイモ)、林業、鉱業が盛ん。観光業も重要な収入源。出身女優にキム・ペイラス、ラナ・ターナー、マージェリー・メインたち。
歴史
アイダホ州の歴史は、先住部族から始まり、数千年にわたりショショーニ族、バンノック族、クーテネイ族などが居住していました。19世紀初頭、ルイス・クラーク探検隊がこの地域を通過し、ヨーロッパ系アメリカ人による探検の先駆けとなりました。1805年、彼らはコロンビア川とスネーク川流域を探査し、毛皮交易の道を開きました。その後、1830年代には毛皮交易が盛んになり、交易路としてオレゴン・トレイルが重要な役割を果たしました。このトレイルを通じ、多くの開拓者がアイダホ地域に移住し、定住を始めました。
1860年代のゴールドラッシュは、アイダホの歴史において転換点となりました。1860年にルイストン近郊で金が発見されると、鉱夫や開拓者が殺到し、人口が急増しました。この時期にアイダホ準州が設立され(1863年)、鉱業ブームが地域経済を牽引しました。特に銀や鉛の採掘も盛んになり、クールダレーン地域は世界有数の銀鉱山地帯として知られるようになりました。1890年7月3日、アイダホはアメリカ合衆国の43番目の州として正式に州昇格を果たしました。
20世紀に入ると、農業が州の主要産業として発展しました。特にジャガイモ栽培がアイダホの代名詞となり、肥沃な土壌と灌漑技術の進歩により高品質なジャガイモが生産されるようになりました。また、林業も重要な産業として成長し、州内の広大な森林資源が活用されました。近年では、ハイテク産業や観光業が経済の多角化を支えています。ボイシを中心とする都市部は、技術系スタートアップやアウトドア観光の拠点として注目を集めています。アイダホの歴史は、自然と共存しながら発展してきた開拓の物語と言えるでしょう。
芸術
アイダホ州の芸術は、その壮大な自然環境と多様な文化に深く根ざしています。州内の山々、川、森林は多くの芸術家にインスピレーションを与え、風景画や写真作品に頻繁に登場します。ボイシ美術館は州最大の美術館で、地域のアーティストによる現代美術や先住部族の工芸品を展示しています。地元のアーティストは、陶芸、彫刻、ガラス工芸など多岐にわたり、自然素材を活用した作品が特徴的です。特に、ショショーニ族やバンノック族の伝統工芸は、ビーズ細工や籠織りなどで知られ、州内の文化イベントで展示されることが多いです。
音楽シーンも活発で、ボイシではジャズ、フォーク、インディーズ音楽のフェスティバルが開催されます。ツリーフォート・ミュージック・フェスティバルは、インディーズバンドや地元ミュージシャンが集まる人気イベントで、国内外から注目を集めています。文学面では、アイダホ出身の詩人エズラ・パウンドが国際的に知られています。彼のモダニズム詩は20世紀の文学に大きな影響を与えました。また、現代の作家や詩人も、アイダホの自然や歴史をテーマにした作品を発表しています。
演劇やパフォーマンスアートも州内で盛んで、ボイシ現代劇場やアイダホ・シェイクスピア・フェスティバルなど、地域の劇団が質の高い公演を提供しています。これらのイベントは、観光客だけでなく地元住民にも愛され、アイダホの芸術文化の多様性を示しています。全体として、アイダホの芸術は、自然と先住文化、現代的な表現が融合した独自の魅力を持っています。
登場する映画
アイダホ州はその独特な自然環境や歴史的背景から、数々の映画の舞台やロケ地として選ばれてきました。以下に代表的な作品をいくつか挙げます。
- アルファ・アンド・オメガ(2010年):アニメーション映画『アルファ・アンド・オメガ』は、アイダホ州の壮大な自然を背景に描かれた冒険譚です。アルファの娘ケイトとオメガのフンベリーという対照的な狼の若者たちが、狩猟の事故でカナダからアイダホのイエローストーン国立公園へ連れ去られます。異なる階級の二匹は、互いの違いを超えて協力し、故郷への帰還を目指します。この作品は、友情とロマンスの芽生えをユーモラスに織り交ぜ、家族の絆の大切さを教えてくれます。美しい風景と心温まるストーリーが魅力です。
- オーダー(2003年):ホラー映画『オーダー』は、アイダホ州の辺鄙な町を舞台に、秘密結社「オーダー」の暗い儀式を描いた緊張感あふれる作品です。主人公の警官は、連続殺人事件を追う中で、古代の宗教団体が関与していることを突き止めます。ヴァンパイア的な存在と人間の境界が曖昧になる中、信仰と狂気の狭間で苦悩する姿が鮮烈です。監督のユアン・バーク監督の独特な映像美が、神秘的な雰囲気を高めています。観る者に深い余韻を残す一作です。
- 幸せのルールはママが教えてくれた(2007年):ドラマ映画『幸せのルールはママが教えてくれた』は、アイダホ州の田舎町を舞台に、家族の再生を描いた感動的な物語です。問題を抱えた孫娘ゲージが、厳格だが愛情深い祖母ジョージアのもとに預けられます。最初は衝突を繰り返す二人ですが、次第に互いの心を通わせ、人生の教訓を共有します。ジョーン・アレン演じる祖母の温かな指導が光り、ティーンエイジャーの葛藤を優しく描いています。家族の絆と成長の喜びを感じさせる、心に染みる作品です。
- スーパーマンII(1980年):スーパーヒーロー映画『スーパーマンII』は、アイダホ州の静かな町で繰り広げられる人間ドラマが印象的な一編です。超人的な力を失ったスーパーマンが、恋人ロイス・レーンのために普通の人生を選びますが、故郷のアイダホで穏やかな日々を送る中、クリプトン人の脅威に直面します。クリストファー・リーブの繊細な演技が、英雄の内面的な葛藤を深く表現しています。アクションとロマンスのバランスが絶妙で、シリーズ屈指の名作として愛されています。
- スコーピオン(1986年):アクションスリラー『スコーピオン』は、アイダホ州の荒涼とした砂漠を舞台に、復讐の炎が燃え上がる物語です。元特殊部隊員の主人公が、過去の裏切りにより家族を失い、敵対する犯罪組織に挑みます。過酷な環境でのサバイバルと激しい銃撃戦が展開され、孤独な戦士の心理が克明に描かれます。監督のポール・マイケル・グレンジャーの手腕により、緊張感が持続します。男の生き様を体現した、力強い娯楽作です。
- ナポレオン・ダイナマイト(2004年):コメディ映画『ナポレオン・ダイナマイト』は、アイダホ州の小さな田舎町プレストンを舞台にした風刺的な青春群像劇です。風変わりな高校生ナポレオンが、友人ペドロの生徒会選挙を支援する中で、奇抜な日常が繰り広げられます。家族のユーモラスなトラブルや、個性的な住民たちとの交流が、独特の笑いを誘います。監督ジャレッド・ヘスのデビュー作としてカルト的人気を博し、アメリカの地方文化を愛らしく描いた傑作です。
- ブレックファースト・オブ・チャンピオンズ(1999年):風刺コメディ『ブレックファースト・オブ・チャンピオンズ』は、アイダホ州の架空の町を舞台に、人間性の愚かさを鋭く突く作品です。自動車ディーラーのドワイトと、作家キルゴア・トラウトの出会いが、奇妙な化学反応を起こします。カート・ヴォネガットの小説原作を基に、ブルース・ウィリスらの演技が光ります。消費社会の虚しさをユーモアで
- ブロンコ・ビリー(1980年):コメディウエスタン『ブロンコ・ビリー』は、アイダホ州の広大な平原を駆け巡る旅芸人一座の物語です。クリント・イーストウッド演じるビリーが率いるワイルドウェストショーが、経済的苦境に陥りながらも結束を強めます。新入り女性とのロマンスが加わり、夢と現実の狭間で描かれる人間模様が温かみがあります。監督イーストウッドの自伝的要素も感じられ、娯楽性と感動のバランスが秀逸です。アメリカンドリームの寓話として楽しめます。
- マイ・プライベート・アイダホ(1991年):ドラマ映画『マイ・プライベート・アイダホ』は、アイダホ州の田園風景を象徴的に用いた、青春の彷徨を描いた傑作です。ナルコレプシーを持つストリートキッドのマイクが、親友スコットと共に旅を続けます。シェイクスピアの『ヘンリー四世』をモチーフに、友情とアイデンティティの探求を詩的に表現。キアヌ・リーブスとリヴァー・フェニックスの演技が圧巻で、監督ガス・ヴァン・サントの革新的な手法が光ります。LGBTQ+テーマの先駆けとして評価されています。
これらの映画は、アイダホの多様な風景や文化を活かし、州の魅力を世界に伝えています。特に、インディーズ映画や先住文化をテーマにした作品が多く、アイダホの独自性が強調されています。
出身女優
アイダホ州出身の女優は限られていますが、以下に代表的な人物を紹介します。
- クリスティーナ・ヘンドリックス:1975年5月3日生まれ。9歳のとき、家族でポートランドからアイダホ州ツインフォールズへ移住し、小学校と中学校を卒業。父親の仕事の関係で数年後には出郷。
- キム・ペイラス(1967年〜):厳密には女優ではありませんが、アイダホ州ボイシ出身の映画監督・脚本家として知られています。『ボーイズ・ドント・クライ』(1999年)で監督として高い評価を受け、アカデミー賞受賞にもつながる作品を制作しました。彼女の作品は、アイダホの保守的な背景と対比して、社会的なテーマを強く反映しています。
- ラナ・ターナー(1921年-1995年):アイダホ州ウォーレス出身のハリウッド黄金時代の女優です。1937年に映画デビューし、『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(1946年)や『ペイトン・プレイス』(1957年)で知られています。彼女のグラマラスな美貌と演技力は、1940~50年代のハリウッドで大きな人気を博しました。アカデミー賞ノミネート経験もあり、ハリウッドのスター女優として長く活躍しました。
- マージェリー・メイン(1890年-1975年):アイダホ州アクトン出身の性格派女優です。『マー・ケトル』シリーズで知られ、1940~50年代のコメディ映画で個性的な役柄を演じました。彼女のユーモラスで親しみやすい演技は、観客に広く愛されました。アカデミー賞助演女優賞にノミネートされたこともあります。
アイダホ州出身の女優は多くはありませんが、ラナ・ターナーのようなハリウッドの伝説的スターや、マージェリー・メインのような個性派が州の名を広めました。また、キム・ペイラスのようなクリエイターも、映画業界でアイダホの存在感を示しています。
まとめ
アイダホ州は、自然の美しさと歴史的な開拓の物語が息づく州です。ゴールドラッシュや農業の発展が歴史を形成し、芸術や映画ではその自然と文化が反映されています。出身女優も、ハリウッドの黄金時代を彩ったスターたちが名を馳せました。アイダホの多面的な魅力は、今後も多くの人々を引きつけることでしょう。
レビュー 作品の感想や女優への思い