ケンタッキー州は米国中東部に位置する州で、州都はフランクフォート、最大都市はルイビルです。ブルーグラスと呼ばれる牧草地で知られ、競馬とバーボン産業が盛んです。面積は全米37位、人口は約460万人です。出身女優にジェニファー・ローレンス、メリッサ・ジョーン・ハート、アシュリー・ジャッドら。
歴史
ケンタッキー州の歴史は、先住民族の狩猟地から始まり、1700年代にヨーロッパ人探検家が訪れました。1750年にトマス・ウォーカー博士による探検が記録され、1768年と1775年の条約で土地が購入されました。元々バージニア州の一部でしたが、1792年に15番目の州として合衆国に加盟しました。州名は先住イロコイ族の言葉で「平原」を意味するとされ、チェロキー族の「暗い血まみれの大地」という説もあります。
独立戦争ではブルーリックスの戦いなど重要な戦闘が行われ、ケンタッキーは戦略的要衝でした。南北戦争では中立を宣言しましたが、北軍支持者が多く、1861年に南軍の侵入後、北軍の支配下に入りました。奴隷州であったため、戦後はレコンストラクションの対象となり、クー・クラックス・クランの活動が活発化しました。1865年の選挙で憲法修正第13条(奴隷制度廃止)の批准を拒否するなど、南部寄りの姿勢も見られました。
20世紀初頭には、ブラックパッチ・タバコ戦争が起こり、タバコ農家が独占企業に対抗して結束しました。1900年には州知事選挙を巡る紛争で内戦状態に陥り、候補者ウィリアム・ゴーベルが暗殺される事件も発生しました。近年では、自動車産業やテクノロジー分野で多くの企業が進出し、経済が多様化しています。特に日本企業190社以上が拠点を置き、約45,000人を雇用しています。
芸術
ケンタッキー州の芸術は、その歴史と文化を反映しています。パデューカはユネスコ創造都市に指定され、国立キルト博物館を中心にファイバーアートが盛んです。ベレアでは現代アートと伝統手工芸が融合し、シェーカー教徒の遺産が残るハロッズバーグでは歴史的な工芸が今も息づいています。
音楽では、ブルーグラス音楽が州の象徴であり、ビル・モンローによるこのジャンルは、州の牧草地にちなんで名付けられました。ルイビルやレキシントンでは、現代音楽やジャズのフェスティバルも開催され、多様なアートシーンが広がっています。また、ケンタッキー州の壁画は、歴史や地域の物語を視覚的に伝え、パデューカの現代壁画は観光名所となっています。
文学では、ケンタッキー出身の作家ハンター・S・トンプソンが「ゴンゾージャーナリズム」を確立し、独自の文体で知られています。州内では毎年、ケンタッキー・ブック・フェスティバルが開催され、地元作家の作品が展示されます。これらの芸術活動は、ケンタッキー州の豊かな文化遺産を現代に伝えています。
登場する映画
ケンタッキー州を舞台または関連する映画はいくつか存在します。以下に代表的な作品を紹介します。
- クイーン&スリム(2019年):アフリカ系アメリカ人のカップルが、警察官とのトラブルをきっかけに逃亡生活を強いられるロードムービー。ケンタッキー州の田園風景を背景に、愛と自由、正義を巡る深いテーマを描きます。鮮やかな映像美と社会的なメッセージが融合し、現代アメリカの分断を鋭く映し出しています。
- エージェント・スミス(2019年):ウィル・スミス主演のSFアクション。クローン技術と戦うエージェントの物語で、ケンタッキー州の都市や郊外が舞台の一部。緊張感あふれる戦闘シーンと、倫理的な問いを投げかけるストーリーが特徴で、映像技術の進化も見どころです。
- アメリカン・アニマルズ(2018年):ケンタッキー州の大学生たちが、図書館から高価な本を盗む実話を基にしたクライムドラマ。計画の稚拙さと若者たちの葛藤をリアルに描き、ケンタッキーの静かな町並みが物語の雰囲気を高めます。ドキュメンタリー風の演出が独特です。
- キングスマン:ゴールデン・サークル(2017年):スパイアクションの続編。ケンタッキー州のバーボン蒸留所が舞台となり、英国のスパイ組織とアメリカの協力者が活躍。派手なアクションとユーモア、ケンタッキーの文化が織り交ぜられたエンターテインメント作品です。
- クローブヒッチ・キラー(2016年):ケンタッキー州の小さな町で、少年が父親の過去と連続殺人事件の関連に疑念を抱くサスペンス。静かな田舎町の風景が、不穏な雰囲気を増幅。家族の絆と疑念の間で揺れる心理描写が緊張感を高めます。
- タミー/Tammy(2014年):メリッサ・マッカーシー主演のコメディ。ケンタッキー州を舞台に、人生のどん底に落ちた女性が祖母と旅に出る物語。ユーモアと心温まる展開が魅力で、ケンタッキーの素朴な風景が物語に彩りを添えます。
- セクレタリアト/奇跡のサラブレッド(2010年):実在の競走馬セクレタリアトの物語。ケンタッキー州の競馬文化と美しい牧場が舞台。馬とオーナーの絆、逆境を乗り越える姿が感動を呼び、競馬ファンのみならず幅広い観客に訴求します。
- エリザベスタウン(2005年):オーランド・ブルーム主演のロマンティックコメディ。ケンタッキー州の小さな町で、主人公が家族の死と新たな愛に直面。温かみのある地元文化と風景が、人生の再発見をテーマにした物語を優しく包み込みます。
- 夢駆ける馬ドリーマー(2005年):ケンタッキー州の競馬を背景にした家族向けドラマ。怪我を負った馬と少女の絆が描かれ、逆境を乗り越える姿が感動を誘います。ケンタッキーの牧場や競馬場の映像が、物語にリアルな魅力を加えます。
- シービスケット物語(2003年):実在の競走馬シービスケットの伝記映画。ケンタッキー州の競馬場が舞台の一部となり、経済大恐慌時代の人々の希望を象徴。馬と人間の絆、逆転劇が感動を呼び、壮大な映像が魅力です。
- インサイダー(1999年):ケンタッキー州のタバコ産業を背景に、内部告発者の戦いを描いた社会派ドラマ。アル・パチーノとラッセル・クロウの演技が光り、企業倫理と個人の正義を巡る緊張感あるストーリーが展開します。
- 追跡者(1998年):トミー・リー・ジョーンズ主演のアクションスリラー。ケンタッキー州の田舎町を舞台に、逃亡犯と追跡者の息詰まる追跡劇が展開。地元の自然や町並みが、緊張感を高める背景として効果的に使われています。
- ラリー・フリント(1996年):実在の雑誌発行人ラリー・フリントの伝記映画。ケンタッキー州出身の彼の出自が描かれ、自由と表現を巡る法廷闘争が中心。ケンタッキーの文化が、主人公の背景として物語に深みを加えます。
- マーズ・アタック!(1996年):ティム・バートン監督のSFコメディ。ケンタッキー州の農村がエイリアン侵攻の舞台の一つに。ユーモラスな展開と奇抜なビジュアルが特徴で、ケンタッキーの田舎町が独特な雰囲気を作り出します。
- 沈黙のジェラシー(1994年):ケンタッキー州の田舎町を舞台にしたサスペンス。家族の秘密と嫉妬が引き起こす悲劇を描き、静かな町の風景が不穏な雰囲気を強調。人間関係の複雑さと心理的な緊張感が見どころです。
- 沈黙の断崖(1993年):ケンタッキー州の山間部を舞台にしたサスペンススリラー。犯罪と復讐が交錯する物語で、険しい自然環境が登場人物の孤立感を強調。緊迫した展開と心理戦が観客を引き込みます。
- ブルース・ウィリス/イン・カントリー(1989年):ベトナム戦争帰還兵の心の傷を描くドラマ。ケンタッキー州の小さな町が舞台で、戦争の影響と家族の再生を丁寧に描きます。ブルース・ウィリスの情感豊かな演技が光ります。
- バタリアン(1985年):ケンタッキー州の倉庫を舞台にしたホラーコメディ。ゾンビが蘇る恐怖とユーモアが交錯し、カルト的な人気を誇ります。ケンタッキーの工業地帯の雰囲気が、独特な不気味さを醸し出します。
- 歌え!ロレッタ愛のために(1980年):カントリー歌手ロレッタ・リンの伝記映画。ケンタッキー州の炭鉱町で育った彼女の苦労と成功を描きます。地元の文化と音楽がストーリーに深みを与え、感動的な物語が展開します。
- ケンタッキー・フライド・ムービー(1977年):パロディとスケッチのオムニバス映画。ケンタッキー州を舞台にしたユーモラスなエピソードが含まれ、70年代のアメリカ文化を風刺。軽快な笑いと奇抜なアイデアが魅力です。
- 007/ゴールドフィンガー(1964年):ジェームズ・ボンドシリーズの名作。ケンタッキー州のフォートノックスが舞台で、金塊を巡る陰謀が展開。ケンタッキーの象徴的な場所が、スパイアクションの緊張感を高める背景として登場します。
- ケンタッキー人(1955年):ケンタッキー州の開拓時代を描いた歴史ドラマ。家族の絆と新しい土地での挑戦がテーマ。広大な自然と開拓者たちの生活が、ケンタッキーの歴史的背景を生き生きと描き出します。
- 南部の反逆者(1955年):南北戦争後のケンタッキー州を舞台にしたドラマ。復讐と正義を求める主人公の葛藤が描かれ、ケンタッキーの田園風景が物語に深い情感を与えます。時代背景が色濃く反映されています。
- 小聯隊長(1949年):ケンタッキー州の軍事学校を舞台にした青春ドラマ。規律と友情、成長を描き、ケンタッキーの伝統的な価値観が背景に。クラシックな映像と若者の情熱が魅力の作品です。
- ブレイキング・ニュース・イン・ユバ・カウンティ(2021年):ケンタッキー州の小さな町で、女性が夫の不倫を水(見ず)に流そうと奮闘するコメディドラマ。地元のコミュニティとメディアの騒動が交錯し、ケンタッキーの日常風景がユーモラスに描かれます。
- キングスマン(2014年):ケンタッキー州のバーボン文化が登場するスパイアクション。英国のスパイ組織が新たなメンバーを育成し、ケンタッキーの蒸留所が物語の鍵に。スタイリッシュなアクションとユーモアが魅力です。
- レーシング・ストライプス(2005年):ケンタッキー州の農場を舞台にした家族向けコメディ。シマウマが競走馬を目指すユーモラスな物語で、ケンタッキーの競馬文化が背景に。子供から大人まで楽しめる心温まる作品です。
これらの映画は、ケンタッキー州の自然や歴史、競馬文化を背景に、州の魅力を多角的に表現しています。なお、ベトナムのホラー映画『Kfc』(2017年)は、ケンタッキー州とは無関係で、タイトルはケンタッキー・フライド・チキンをモチーフにした風刺です。
出身女優
ケンタッキー州出身の著名な女優を以下に紹介します。ただし、ケンタッキー州出身の女優は限られており、州内で育ったか一時居住した人物も含め、代表的な人物を挙げます。
- ジェニファー・ローレンス(Jennifer Lawrence、1990年8月15日生まれ):ルイビル出身。『ハンガー・ゲーム』シリーズや『世界にひとつのプレイブック』でアカデミー主演女優賞を受賞。彼女の自然体な演技は、ケンタッキーの素朴な文化に影響を受けたとも言われます。
- メリッサ・ジョーン・ハート(Melissa Joan Hart、1976年4月18日生まれ):ケンタッキー州で育ち、『サブリナ 魔女のティーンエイジャー』で知られる女優。コメディからドラマまで幅広い役柄を演じ、テレビ界で長く活躍しています。
- アシュリー・ジャッド(Ashley Judd、1968年4月19日生まれ):レキシントンで育ち、『ダブル・ジョパディー』や『キス・ザ・ガールズ』で知られる女優。政治活動家としても活動し、ケンタッキー大学で学び直した経歴も持つ。
なお、ダイアン・キートンやケイト・マッキノン、ケイト・ベッキンセイルはケンタッキー州出身ではありませんが、誤って関連付けられることがあります。キートンはカリフォルニア州、マッキノンはニューヨーク州、ベッキンセイルはイギリス出身です。
ケンタッキー州出身の女優は少ないものの、ジェニファー・ローレンスのように国際的に活躍するスターを輩出しており、州の文化や教育環境が彼女たちのキャリアに影響を与えた可能性があります。
レビュー 作品の感想や女優への思い