町でいちばんの美女/ありきたりな狂気の物語

『町でいちばんの美女／ありきたりな狂気の物語』は1981年公開のイタリア・フランス合作映画。チャールズ・ブコウスキーの短編集を基に、酔っ払いの詩人と娼婦の愛と狂気を描く。マルコ・フェレーリ監督、ベン・ギャザラ、オルネラ・ムーティ主演。

基本情報
あらすじ
解説
女優の活躍
女優の衣装・化粧・髪型
キャスト
スタッフ

基本情報

邦題：町でいちばんの美女／ありきたりな狂気の物語
原題：TALES OF ORDINARY MADNESS
公開年：1981年
製作国：イタリア、フランス
上映時間：100分
ジャンル：ドラマ

Tales Of Ordinary Madness (1981) Promo Trailer

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あらすじ

『町でいちばんの美女／ありきたりな狂気の物語』は、アメリカの作家チャールズ・ブコウスキーの短編集『町でいちばんの美女』に収録された同名短編を原作とし、彼の自伝的要素が色濃く反映された物語です。舞台はロサンゼルスの下町。主人公のチャールズ・サーキング（ベン・ギャザラ）は、酒と詩に溺れる孤独な詩人です。彼は社会の規範から外れ、酒場や安宿を転々としながら、刹那的な生活を送っています。ある日、チャールズはバーで美しい娼婦カッシア（オルネラ・ムーティ）と出会います。彼女の妖艶な魅力に惹かれたチャールズは、カッシアとの激しい恋愛関係に突入します。しかし、カッシア自身も心の闇を抱えており、自己破壊的な行動を繰り返します。二人の関係は、情熱と破滅の間を揺れ動き、互いの孤独と絶望を共有しながらも、愛を見出そうともがきます。チャールズは詩を通じて自らの感情を表現し、カッシアとの出会いを通じて一時的に人生の意味を見出すものの、彼女の不安定な精神状態と自傷行為により、関係は次第に破綻へと向かいます。最終的に、カッシアは自ら命を絶ち、チャールズは再び孤独な放浪生活に戻るのでした。本作は、愛と狂気、自由と束縛の狭間で葛藤する人間の姿を赤裸々に描き出します。

解説

『町でいちばんの美女／ありきたりな狂気の物語』（原題：Storie di ordinaria follia / Tales of Ordinary Madness）は、チャールズ・ブコウスキーの文学世界を映像化した作品として、1981年にイタリアとフランスの合作で製作されました。監督のマルコ・フェレーリは、過激で挑発的な作風で知られ、本作でもブコウスキーの荒々しくも詩的な世界観を忠実に再現しています。ブコウスキーの作品は、アルコール依存や社会の底辺での生活、性や暴力といったテーマを通じて、現代社会の疎外感や人間の脆さを描き出すことが特徴です。本作は特に、ブコウスキーの自伝的要素が強く反映されており、主人公チャールズ・サーキングは彼自身の分身とも言える存在です。フェレーリ監督は、ブコウスキーの文学に内在する破滅的なロマンティシズムと、日常の中の「ありきたりな狂気」を強調し、観客に人間の欲望と絶望の両極端を突きつけます。

映像面では、トニーノ・デリ・コリの撮影が光ります。ロサンゼルスの薄汚れた街並みや薄暗い酒場の雰囲気を捉え、物語の退廃的なムードを強調しています。フィリップ・サルドの音楽も、哀愁と緊張感を織り交ぜた旋律で、登場人物の内面的な葛藤を効果的に表現しています。また、ダンテ・フェレッティの美術は、物語の舞台となる安宿やバーの雑然とした雰囲気をリアルに再現し、ブコウスキーの世界観を視覚的に補強しています。

本作は、1984年に「イタリア映画祭in東京」で上映された後、1995年に日本で初の劇場公開を迎えました。ブコウスキー作品のファンだけでなく、ヨーロッパ映画の独特な感性や人間ドラマに興味がある観客にも訴求する作品です。しかし、その過激な描写や性表現から、一部で賛否両論を呼んだことも事実です。

女優の活躍

本作『町でいちばんの美女／ありきたりな狂気の物語』で特に注目される女優は、カッシア役を演じたオルネラ・ムーティです。ムーティはイタリア映画界のスターとして知られ、本作ではその美貌と演技力で観客を魅了しました。カッシアは、表面的な魅力と内面的な脆さを併せ持つ複雑なキャラクターで、ムーティは彼女の感情の起伏を繊細かつ大胆に表現しています。特に、カッシアが自己破壊的な行動に走るシーンでは、ムーティの全身全霊の演技が光り、観客に深い印象を残します。彼女の存在感は、チャールズとの情熱的な関係性を際立たせ、物語の中心的な推進力となっています。

もう一人の重要な女優は、スーザン・ティレルです。ティレルは、脇役ながらも印象的な演技を見せ、物語に深みを加えています。彼女の演じるキャラクターは、チャールズの周囲に現れる多くの女性の一人として、ブコウスキーの世界に欠かせない「破滅的な女性像」を体現しています。ティレルの演技は、時にコミカルでありながらも、どこか哀愁を帯びており、物語のトーンを多層的にしています。

女優の衣装・化粧・髪型

オルネラ・ムーティ演じるカッシアの衣装は、彼女の職業である娼婦としての魅力を強調するデザインが特徴です。タイトなドレスや露出度の高い衣装が多く、赤や黒といった強烈な色彩が用いられています。これらの衣装は、カッシアの妖艶さと同時に、彼女の不安定な精神状態を象徴するかのように、時に乱雑に着こなされています。化粧は、濃いアイラインと赤い口紅が中心で、彼女の顔立ちの美しさを際立たせるとともに、退廃的な雰囲気を醸し出しています。髪型は、ルーズなウェーブがかかったロングヘアで、自由奔放かつどこか儚い印象を与えます。このスタイルは、カッシアのキャラクターが持つ矛盾—強さと脆さ—を視覚的に表現する重要な要素となっています。

スーザン・ティレルの衣装は、カッシアに比べるとやや控えめですが、彼女のキャラクターの個性を反映したカジュアルで雑多なスタイルが特徴です。化粧は薄めで、ナチュラルな印象を与える一方、髪型は無造作にまとめられたスタイルが多く、彼女の生活の不安定さを示唆しています。これらの要素は、ブコウスキーの描く下層階級の女性たちのリアルな生活感を表現するのに一役買っています。