台湾は東アジアに位置する島。面積約36,000平方キロメートル、人口約2,350万人。台北を首都とし、政治・経済の中心。豊かな自然、独自の文化、歴史的背景を持ち、半導体産業で世界的に有名。多様な料理と夜市が観光の魅力。民主的な政治体制を有する。
時代別映画史
1940年代~1950年代:初期の台湾映画と戦争の影響
台湾の映画史は、日本統治時代(1895~1945年)に始まり、初期は日本映画の影響が強かった。戦後、国共内戦の影響で国民党が台湾に移り、1945年に台湾省映画製作所が設立され、国策映画が製作された。この時期は、プロパガンダ色の強い作品が主流で、商業映画は未発達だった。代表作として、1947年の『台湾省光復紀念影片』があるが、商業的成功は少なかった。女優では、戦後の混乱期ゆえに目立ったスターは少なく、名前が記録に残る女優はほぼいない。映画は主に記録映画や教育映画として機能し、娯楽性は低かった。
1960年代:国語映画の台頭と香港との交流
1960年代、台湾映画は「国語映画」(北京語映画)として発展。香港映画の影響を受け、商業映画が成長した。メロドラマや歴史劇が人気で、家族愛や道徳をテーマにした作品が多かった。代表作は、1963年の『梁山伯与祝英台』(監督:李翰祥)。このオペオレッタ映画は、台湾と香港で大ヒットし、アジア全域で愛された。女優では、凌波(リン・ポー)がこの作品でスターに。彼女の清純な魅力と歌声は観客を惹きつけ、以降多くのメロドラマで活躍。また、楽蒂(ユエ・ティ)もこの時期の代表的女優で、歴史劇での気品ある演技が評価された。台湾映画はこの時期、香港との共同製作も増え、技術や人材交流が活発化した。
- 代表作:『梁山伯与祝英台』(1963年、監督:李翰祥)
- 主な女優:凌波、楽蒂
1970年代:健康写実主義と武侠映画の全盛期
1970年代、台湾映画は「健康写実主義」と呼ばれるリアリスティックな作風が主流に。農村や労働者の生活を描いた作品が政府の支援を受け、製作された。一方で、香港との連携で武侠映画が人気を博した。代表作は、1971年の『侠女』(監督:胡金銓)。この作品は、カンヌ映画祭で高い評価を受け、台湾映画の国際的地位を高めた。また、瓊瑶(チョン・ヤオ)原作のロマンス映画も人気で、『庭院深深』(1976年)がヒット。女優では、林青霞(ブリジット・リン)が武侠映画やロマンス映画で活躍。彼女の凛とした美貌と演技力は、台湾映画の象徴となった。甄珍(チェン・チェン)もこの時期の人気女優で、情感豊かな演技が愛された。
- 代表作:『侠女』(1971年、監督:胡金銓)、『庭院深深』(1976年)
- 主な女優:林青霞、甄珍
1980年代:台湾ニューシネマの誕生
1980年代、台湾映画は「台湾ニューシネマ」と呼ばれる新時代に突入。侯孝賢(ホウ・シャオシェン)や楊德昌(エドワード・ヤン)らが、芸術性と社会性を追求した作品を発表。侯孝賢の『冬冬的假期』(1984年)は、子供の視点から家族や社会を描き、国際的に高評価。楊德昌の『恐怖分子』(1986年)は、都市生活の疎外感を鋭く描写し、カンヌで注目された。この時期、女優では楊惠姍(シルビア・チャン)が活躍。『我這樣過了一生』(1985年)での繊細な演技が評価された。また、張艾嘉(シルビア・チャン、女優兼監督)も『最も愛すべき人』(1980年)で注目を集め、監督としても才能を発揮。台湾ニューシネマは、商業性より芸術性を重視し、世界の映画祭で名を馳せた。
- 代表作:『冬冬的假期』(1984年、監督:侯孝賢)、『恐怖分子』(1986年、監督:楊德昌)
- 主な女優:楊惠姍、張艾嘉
1990年代:国際的評価と多様化
1990年代、台湾ニューシネマはさらに進化し、国際的な評価を確立。侯孝賢の『悲情城市』(1989年、公開は1990年代初頭)は、台湾の歴史を重厚に描き、ヴェネチア映画祭で金獅子賞を受賞。李安(アン・リー)の『推手』(1991年)や『飲食男女』(1994年)は、家族や文化の衝突をテーマに世界でヒット。女優では、楊貴媚(ヤン・クイメイ)が『悲情城市』での力強い演技で知られ、以降も多くの作品で存在感を示した。また、舒淇(スー・チー)は『ミレニアム・マンボ』(2001年、製作は1990年代後半)で国際的に注目され、セクシーかつ繊細な演技でスターに。この時期、商業映画と芸術映画のバランスが取れ、台湾映画の多様性が広がった。
- 代表作:『悲情城市』(1989年、監督:侯孝賢)、『飲食男女』(1994年、監督:李安)
- 主な女優:楊貴媚、舒淇
2000年代:商業映画の復活と若手監督の台頭
2000年代、台湾映画は商業映画の復活と若手監督の台頭が特徴。魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)の『海角七号』(2008年)は、恋愛と歴史を絡めた作品で国内で大ヒットし、台湾映画の人気を再燃させた。また、蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)の『天辺一朵雲』(2005年)は、実験的な作風で国際的に評価された。女優では、陳湘琪(チェン・シャンチー)が蔡明亮作品の常連として活躍し、独特の存在感で知られた。徐若瑄(ビビアン・スー)も『人魚朵朵』(2005年)などで愛らしい演技を見せ、人気を博した。この時期、若者向けのロマンスやコメディが市場を牽引し、台湾映画の観客層が広がった。
- 代表作:『海角七号』(2008年、監督:魏徳聖)、『天辺一朵雲』(2005年、監督:蔡明亮)
- 主な女優:陳湘琪、徐若瑄
2010年代~2020年代:現代台湾映画の多様性
2010年代以降、台湾映画はさらに多様化。商業映画と芸術映画の両輪で発展し、国際的な評価も高い。鍾孟宏(チョン・モンホン)の『陽光普照』(2019年)は、家族の葛藤を描き、台湾アカデミー賞を席巻。許瑋甯(アニー・シュー)がこの作品で複雑な役柄を演じ、女優としての評価を高めた。また、柯震東(クー・チェンドン)主演の『あの頃、君を追いかけた』(2011年、監督:九把刀)は青春映画としてアジア全域でヒット。女優では、陳妍希(ミシェル・チェン)が同作で清純な魅力で人気に。2020年代では、魏如萱(ウェイ・ルーシュエン)らが音楽と映画の融合で新たな魅力を発揮。LGBTQをテーマにした『刻在你心底的名字』(2020年)も話題に。台湾映画は、現代社会の課題を反映しつつ、若者文化や多様性を描き続けている。
- 代表作:『陽光普照』(2019年、監督:鍾孟宏)、『あの頃、君を追いかけた』(2011年、監督:九把刀)
- 主な女優:許瑋甯、陳妍希
まとめ
台湾映画は、初期の国策映画から健康写実主義、ニューシネマ、現代の多様化へと進化。凌波、林青霞、舒淇、許瑋甯など、時代を代表する女優が活躍し、作品に深みを加えた。国際的な評価を受けつつ、台湾独自の文化や歴史を反映した映画が今後も期待される。
レビュー 作品の感想や女優への思い