1958年のアメリカ郊外、12歳の少年デヴィッドは隣に越してきた少女メグに心惹かれる。両親を亡くしたメグと妹スーザンは、叔母ルースの家に身を寄せるが、ルースによる虐待がエスカレート。デヴィッドは恐怖と無力感の中で彼女を救えず、悲劇が進行する。実話ベースの衝撃のサスペンス・ホラー。
基本情報
- 邦題：隣の家の少女
- 原題：THE GIRL NEXT DOOR
- 公開年：2007年
- 製作国：米国
- 上映時間：91分
女優の活躍
本作の主要な女性キャストとして、ブライス・オーファース（メグ・ローリン役）とブランチ・ベイカー（ルース・チャンドラー役）が際立った活躍を見せています。
ブライス・オーファース
ヒロインのメグ役を演じ、過酷な虐待を受ける少女の心の動きを繊細かつ力強く表現しました。彼女の演技は、恐怖と絶望の中でも希望を失わないメグの内面的な強さを際立たせ、観客に深い共感を呼び起こします。特に、肉体的・精神的な苦痛を表現するシーンでは、抑制された感情表現でリアリティを追求。彼女の若々しい外見と無垢な魅力は、物語の悲劇性を一層強調しています。オーファースは本作以前に『僕たちのアナ・バナナ』（2004）などに出演していましたが、本作での演技が高く評価され、過酷な役柄を演じきったことで注目を集めました。彼女の感情的な演技は、物語の重苦しいテーマを支える柱となりました。
ブランチ・ベイカー
冷酷な叔母ルース役を演じ、物語の中心的な悪役として強烈な印象を残しました。ルースはアルコール依存症で精神的に不安定な女性であり、ベイカーはその複雑な心理を巧みに表現。彼女の演技は、ルースの嫉妬や憎悪が虐待へとエスカレートする過程をリアルに描き出し、観客に恐怖と嫌悪感を与えます。ベイカーのキャリアは、『侍女の物語』（1990）などでの助演で知られていましたが、本作での残虐な役柄は彼女の演技の幅を示すものとなりました。彼女の存在感は、物語の緊張感を高める重要な要素です。
また、脇役のマデリン・テイラー（スーザン役）も、身体に障害を抱える妹として感情的な演技を見せ、物語に深みを加えました。彼女の無垢で脆弱な姿は、虐待の残酷さを強調する役割を果たしています。
女優の衣装・化粧・髪型
本作の舞台が1950年代のアメリカ郊外であるため、衣装や化粧、髪型は当時の雰囲気を忠実に再現しています。
ブライス・オーファース（メグ）
衣装は、1950年代の少女らしいシンプルで清楚なスタイルが特徴です。彼女は主に淡い色のワンピースやスカートを着用し、純粋さと若さを強調。たとえば、薄いブルーや白のコットンドレスが登場し、当時のアメリカ中流階級の少女の典型的な装いを反映しています。化粧はほとんど施さず、自然な肌と軽いリップで無垢な印象を保ち、虐待の進行とともに顔に傷や汚れが目立つ演出が施されます。髪型は肩までの長さで、ゆるくカールしたボブスタイルやポニーテールが中心で、1950年代の少女らしい可愛らしさを表現。虐待が進むにつれ、髪は乱れ、彼女の苦痛を視覚的に示す要素となっています。
ブランチ・ベイカー（ルース）
衣装は、1950年代の主婦らしいエプロンドレスやカーディガンを着用しつつ、だらしない印象を与えるデザインが採用されています。彼女のアルコール依存症や精神的な不安定さを反映し、服はしばしばシワや汚れが見られる状態で登場。化粧は濃い口紅やアイライナーを使い、1950年代の女性らしいスタイルを保ちつつも、過剰なメイクでルースの不安定な性格を強調。髪型は緩いウェーブのかかったミディアムヘアで、乱雑にまとめられることが多く、彼女の内面的な崩壊を象徴しています。
マデリン・テイラー（スーザン）
身体的障害を反映した地味な衣装が中心で、動きやすいズボンやシンプルなブラウスを着用。化粧はほとんどなく、幼い外見を強調。髪型は短めのポニーテールで、子供らしい無垢さを表現しています。これらの衣装や髪型は、物語の時代背景とキャラクターの心理状態を効果的に反映しています。
##あらすじ
1958年、夏のアメリカ郊外。12歳の少年デヴィッド（ダニエル・マンチ）は、川遊びの最中に隣家に越してきた少女メグ・ローリン（ブライス・オーファース）と出会います。メグは両親を交通事故で亡くし、足に障害を持つ妹スーザン（マデリン・テイラー）と共に、叔母ルース・チャンドラー（ブランチ・ベイカー）の家に引き取られています。ルースはアルコール依存症で、近隣の子供たちに自由に家を出入りさせ、ビールを振る舞うなど一見気さくな女性ですが、メグとスーザンに対して冷たく、徐々に虐待を始めます。
デヴィッドはメグに恋心を抱き、彼女と親しくなりますが、ルースの異常な嫉妬と憎悪により、メグへの虐待がエスカレート。ルースの息子たちや近所の子供たちも加担し、メグは身体的・精神的な暴力を受けます。デヴィッドはメグを助けたいと思うものの、恐怖と無力感から行動できず、事態は悲劇的な結末へと向かいます。物語は、成人したデヴィッドが過去を回想する形で進行し、罪悪感と後悔に苛まれる彼の心情が描かれます。
解説
『隣の家の少女』は、1965年のシルヴィア・ライケンス殺害事件を基にしたジャック・ケッチャムの小説を映画化した作品で、人間の残酷さと無関心が引き起こす悲劇を描きます。原作は1989年に発表され、その過激な内容から「映画化不可能」とされていたが、グレゴリー・M・ウィルソン監督が挑戦。映画は原作の過激さを一部抑えつつも、虐待の恐怖と心理的影響をリアルに描写し、観客に強い衝撃を与えます。スティーヴン・キングは本作を「この20年で最も恐ろしく、ショッキングなアメリカ映画」と評し、ダークサイド版『スタンド・バイ・ミー』と称しました。
本作のテーマは、傍観者の罪と人間の闇。デヴィッドの無力感は、虐待を知りながら行動できない人々の心理を象徴し、観客に倫理的な問いを投げかけます。1950年代の郊外という一見平和な舞台設定は、表面上の幸福の下に潜む闇を強調。ルースのキャラクターは、嫉妬や権力欲が暴力を生む過程を示し、社会的な無関心が悲劇を増幅する様子を描いています。映像面では、暗い色調と閉鎖的な空間が恐怖感を高め、特に地下室のシーンは観客に強い不快感を与える設計です。
本作は賛否両論を呼び、Filmarksでの平均スコアは2.9点（レビュー数約2692件）と、感情的な重さが観客に影響を与えたことが伺えます。実話を基にした作品として、同じ事件を扱った『アメリカン・クライム』（2007）と比較されることも多く、こちらはより事件に忠実な描写が特徴ですが、本作はケッチャムの小説の詩情とホラー要素を強調しています。
キャスト
- メグ・ローリン：ブライス・オーファース（虐待を受ける少女）
- ルース・チャンドラー：ブランチ・ベイカー（冷酷な叔母）
- デヴィッド：ダニエル・マンチ（主人公の少年）
- スーザン・ローリン：マデリン・テイラー（メグの妹）
- ウィリー：グレアム・パトリック・マーティン（ルースの息子）
- ドニー：ベンジャミン・ロス・カプラン（ルースの息子）
- ラルフ：オースティン・ウィリアムズ（ルースの息子）
- エディ：ウィリアム・アザートン（脇役）
- Mr.モラン：グラント・ショウ
- Mrs.モラン：キャサリン・メアリー・スチュワート
スタッフ
- 監督：グレゴリー・M・ウィルソン
- 脚本：ダニエル・ファランズ、フィリップ・ナットマン
- 原作：ジャック・ケッチャム
- 製作：ウィリアム・M・ミラー、アンドリュー・ヴァン・デン・ホーテン
- 音楽：ライアン・ショア
- 撮影：ウィリアム・M・ミラー
- 編集：MJ・フィオレッティ
- 配給：キングレコード、iae（日本）
- 製作会社：Modern Girl Productions
総括
『隣の家の少女』は、過酷なテーマを扱った衝撃作であり、ブライス・オーファースとブランチ・ベイカーの演技が物語の重みを支えています。1950年代の衣装や髪型は時代感を再現し、虐待の悲劇性を強調。実話に基づくストーリーは、観客に人間の闇と倫理的責任を問いかけ、深い余韻を残します。監督グレゴリー・M・ウィルソンの演出は、原作の恐怖を効果的に映像化し、ホラー映画としてのインパクトを強めています。
レビュー 作品の感想や女優への思い