2020年に公開されたミュージカル映画『プロム』は、ブロードウェイの落ちぶれたスターたちが、小さな田舎町でレズビアンの高校生のプロム参加権を巡る闘いを支援する物語。監督ライアン・マーフィーが手がけ、メアリー・ストリープがナルシストな女優ディー・ディー・アレンを演じています。LGBTQ+の権利と自己中心的なセレブリティの成長を描き、華やかな歌とダンスが魅力です。
基本情報
- 邦題:ザ・プロム
- 原題:The Prom
- 公開年:2020年
- 製作地:アメリカ合衆国
- 上映時間:132分
- ジャンル:ドラマ、コメディ、ミュージカル
女優の活躍
本作でメアリー・ストリープは、ディー・ディー・アレンというキャラクターを熱演し、観客を魅了しました。ディー・ディーは、トニー賞を二度受賞したナルシストのブロードウェイ女優で、キャリアの低迷期に直面しています。ストリープは、この役を通じて、自己中心的なディーバのコミカルな面を強調しつつ、徐々に他者への共感を学ぶ内面的な成長を繊細に表現しています。例えば、プロムの支援活動で失敗を繰り返すシーンでは、彼女の誇張されたジェスチャーと歌唱力が光り、観客に笑いと感動を与えます。ストリープの歌声は、ミュージカルらしい力強さを発揮し、
特に「Zazz」や「Double Standards」などのナンバーで、ディー・ディーのエゴイズムをユーモラスに歌い上げます。批評家からも「デリシャスなパフォーマンス」と絶賛され、彼女の多才さが存分に発揮された一作となりました。
また、ニコール・キッドマン演じるアンジェとのデュエットでは、友情の深みを加え、女性同士の絆を美しく描いています。ストリープの演技は、単なるコメディにとどまらず、社会問題への洞察を加え、作品全体のメッセージを強化しています。この役柄は、ストリープのキャリアに新たな輝きを添え、Netflixでの配信後、多くの視聴者を引きつけました。
女優の衣装・化粧・髪型
ディー・ディー・アレンの衣装は、ブロードウェイの華やかさを象徴する大胆でカラフルなデザインが特徴です。衣装デザイナーのルー・エイリックは、シーケンスやビーズを多用したドレスを多数用意し、シャーリー・マクレーン、ミッツィ・ゲイナー、レディー・ガガなどのアイコンから着想を得ました。例えば、モンスター・トラック・ラリーのシーンでは、紫色の光沢あるガウンを着用し、自信満々のディー・ディーを体現しています。このガウンは、髪色と調和するよう選ばれ、ダンスシーンで映える動きやすさを考慮した仕上がりです。また、プロムのシーンでは、赤いポンチョにファー・トリムを施した派手なアウターを羽織り、スターらしい存在感を放ちます。全体的に、ビビッドな赤、紫、金色を基調とし、彼女のナルシスティックな性格を視覚的に強調しています。
化粧は、劇場女優らしいドラマチックなスタイルで、ボールドなアイラインと鮮やかなリップが際立ちます。ディー・ディーのシグネチャーであるブライト・レッドのリップスティックは、衣装の赤いアクセントとマッチし、彼女の情熱とエゴを象徴します。チークはピンクを基調に高く入れ、頰骨を強調して成熟した美しさを演出。アイシャドウはスモーキーなグレーとゴールドを組み合わせ、ステージ映えする輝きを加えています。このメイクアップは、ストリープの自然な表情を引き立てつつ、キャラクターの派手さを増幅させ、観客に強い印象を残します。
髪型は、ディープ・レッドのピクシー・カットが最大の特徴で、ストリープの変身ぶりを象徴します。短くカットされたヘアは、鮮やかな赤色に染められ、動きのあるウェーブを加えてボリュームを出しています。このスタイルは、ディー・ディーの大胆な性格を反映し、プロモーション写真でも注目を集めました。ヘアスタイリストのクリス・フィッシャーは、ウィッグを使わずストリープの髪を染め、ナチュラルな質感を保ちました。シーンごとにスタイリングを変え、例えばディナーシーンではサイドパートでエレガントに、ダンスシーンでは乱れを加えてダイナミックさを表現しています。この髪型は、ストリープの年齢を感じさせず、若々しくエネルギッシュな印象を与え、役の魅力を高めています。
あらすじ
ニューヨークのブロードウェイで、ディー・ディー・アレンとバリー・グリックマンの新作ミュージカル『エレノア!エレノア・ルーズベルト・ストーリー』が酷評され、初日で閉幕します。二人はキャリアの危機に直面し、公衆の面前で謝罪会見を開きます。一方、インディアナ州エッジウォーターのジェームズ・マディソン高校では、レズビアンの生徒エマ・ノーランが、恋人のアリッサ・グリーンとプロムに参列したいと望みます。しかし、PTA会長でアリッサの母であるミセス・グリーンがこれを拒否し、プロム自体を中止に追い込みます。校長のトム・ホーキンスはエマを支持しますが、力及ばず。
ディー・ディーとバリーは、Twitterでエマのニュースを知り、イメージ回復のチャンスと見てインディアナへ向かいます。彼らに加わり、落ち目のコーラスガールのアンジー・ディッキンソンと、元シットコム俳優のトレント・オリバーが同行。非エクイティの『ゴッドスペル』キャストも連れ、PTA集会でエマ支援を訴えますが、失敗に終わります。モンスター・トラック・ラリーでパフォーマンスを試みますが、ブーイングを浴びます。ホーキンスはディー・ディーのファンで、夕食を共にし、互いの過去を語り合います。
バリーはエマの祖母ビアの家を訪れ、自分のゲイとしての苦難を共有。PTAは抜け道を使い、アリッサだけの別プロムを計画します。アリッサは母のプレッシャーに屈し、エマを裏切ります。ディー・ディーの動機が自己宣伝だと知ったホーキンスは失望しますが、ディー・ディーは元夫のトークショー出演をエマに譲り、母ベラとの和解を果たします。エマはアリッサと破局し、トレントはエマのいじめっ子たちを説得して支援に転じさせます。
俳優たちは資金を出し合い、全員参加型のプロムを開催。ミセス・グリーンが妨害しますが、アリッサがカミングアウトし、母は去ります。二人は和解し、プロムで公のキスを交わします。生徒たちや地元LGBTQ+のティーンが集まり、ミセス・グリーンは謝罪。ディー・ディーとホーキンスは恋に落ち、皆で祝います。ディー・ディーはバリーに、母との平和を報告し、成長を遂げます。
解説
『プロム』は、2016年のブロードウェイ・ミュージカルを基にした作品で、LGBTQ+の権利と受容をテーマに据えています。監督のライアン・マーフィーは、過去の『グリー』や『ポーズ』で社会問題をエンターテイメントに昇華させた手腕を発揮し、コミカルなブロードウェイ・スターたちの視点から、保守的な田舎町の偏見を描きます。ディー・ディー・アレンらの自己中心性が、物語の推進力となり、徐々に共感へ移行する過程が、ユーモアと感動のバランスを生み出しています。この構造は、観客に「他者の痛みを理解する」重要性を優しく伝えます。
特に、プロムの象徴性は秀逸で、アメリカの高校文化における同性愛者の排除をメタファー化。エマとアリッサの関係は、クローゼット内の葛藤を丁寧に描き、家族の和解シーンで希望を与えます。ミュージカル・ナンバーは、チャド・ベグリンとボブ・マーティンの脚本、Matthew Sklarの作曲により、風刺とエモーションを融合。ストリープらの歌唱は、ブロードウェイの伝統を尊重しつつ、映画的なスケール感を加えています。批評では、Rotten Tomatoesで88%の支持を集め、「心温まるが、時には過度に甘い」との声もありますが、ポジティブなメッセージがパンデミック期の視聴者に癒しを提供しました。
さらに、キャスティングの多様性が光ります。新人ジョー・エレン・ペルマンのエマは、初々しい魅力で共感を呼び、アリアナ・デボーズのアリッサはダンスの才能を披露。ケリー・ワシントンのミセス・グリーンは、複雑な母性を体現し、偏見の変容を説得力を持って演じます。この作品は、セレブリティの特権が社会変革に寄与する可能性を探り、観客に「小さな行動の力」を問いかけます。Netflix配信により、世界的に広がり、LGBTQ+コミュニティのエンパワーメントに貢献したと言えます。全体として、華やかさと深みを兼ね備えた、心に残る一作です。
キャスト
- メアリー・ストリープ:ディー・ディー・アレン役
- ジェームズ・コーデン:バリー・グリックマン役
- ニコール・キッドマン:アンジー・ディッキンソン役
- キ―ガン=マイケル・キ―:トム・ホーキンス役
- アンドリュー・ラネルズ:トレント・オリバー役
- ジョー・エレン・ペルマン:エマ・ノーラン役
- アリアナ・デボーズ:アリッサ・グリーン役
- ケリー・ワシントン:ミセス・グリーン役
- トレイシー・ウルマン:ベラ・グリックマン役
- ケビン・チェンバレン:シェルドン・サパースタイン役
- メアリー・ケイ・プレイス:グランマ・ビア役
- ローガン・ライリー・ハッセル:ケイリー役
- ソフィア・デラー:シェルビー役
- ニコ・グリ―サム:ニック役
- ネイサニエル・J・ポトビン:ケビン・シールド役
スタッフ
- 監督: ライアン・マーフィー
- 脚本: ボブ・マーティン、チャド・ベグリン
- 原作: ボブ・マーティン、チャド・ベグリン
- 音楽: マシュー・スカラー
- 製作総指揮: ライアン・マーフィー、アダム・アンダース、ダニエル・ブロマ―
- 製作: ライアン・マーフィー、アダム・ブロス
- 撮影監督: ビル・ポープ
- 美術監督: ジャスティン・クレイン
- 衣装デザイン: ルー・エイリック
- メイクアップ: ヴァネッサ・スミス
- ヘアスタイリスト: クリス・フィッシャー
- 振付: ケイシー・ニコルーズ
- 編集: ヘレン・ジャバロンカ
- 音楽監督: アダム・アンダース
レビュー 作品の感想や女優への思い