2004年に公開されたアメリカ・イギリス合作のドラマ映画『悪女』(原題:Vanity Fair)は、ウィリアム・メイクピース・サッカレーの1848年の小説『虚栄の市』を基にしています。貧しい生まれのベッキー・シャープが、機知と美貌を武器に上流社会へ登り詰めていく野心的な物語を描きます。
監督はミーラ・ナイールで、主演のリース・ウィザースプーンがベッキーを演じ、19世紀のイギリス社会を背景に友情、恋愛、階級闘争を織り交ぜます。上映時間は141分で、視覚的に豪華な作品。
基本情報
- 邦題:悪女
- 原題:VANITY FAIR
- 公開年:2004年
- 製作国・地域:アメリカ、イギリス
- 上映時間:141分
- ジャンル:ドラマ
ヴァニティ・フェア | リース・ウィザースプーン、辛い唐辛子に挑戦
女優の活躍
『悪女』では、リース・ウィザースプーンさんが主人公のベッキー・シャープ役を演じ、物語の中心として活躍します。ベッキーは貧しい出自から上流社会を目指す野心家で、リース・ウィザースプーンさんは彼女の機知に富んだ魅力と計算高さを巧みに表現しています。
レビューでは、彼女の演技が人間味を加え、ベッキーを好感を持てるキャラクターに仕上げていると評価されますが、一方で小説の鋭い風刺が薄れたとの指摘もあります。彼女の存在感が映画の魅力の核心を成し、野心と脆弱性をバランスよく描き出しています。特に、インド風のダンスシーンでは、リース・ウィザースプーンさんのパフォーマンスがエキゾチックで印象的です。
ロモーラ・ガライさんがアメリア・セドリー役を務め、ベッキーの親友として純粋で献身的な女性を演じます。ロモーラ・ガライさんは、夫の死後の悲しみや息子への愛を情感豊かに表現し、ベッキーの野心と対比する役割を果たしています。レビューでは、彼女の演技が安定しており、物語の感情的な支柱となっていると称賛されます。
アイリーン・アトキンスさんがマチルダ・クローリー役で、裕福で気難しい叔母を演じ、ベッキーの人生に影響を与えます。アイリーン・アトキンスさんは、厳格さとユーモアを交えた演技で、脇役ながら存在感を発揮し、ロンドン映画批評家協会賞にノミネートされました。
ジェラルディン・マキューアンさんがサウスダウン伯爵夫人役で、ナターシャ・リトルさんがジェーン・クローリー役を演じます。
これらの女優たちは、19世紀の階級社会を体現し、ベッキーの上昇を支えるキャラクターを活き活きと描いています。
ケリー・ハンターさんがスタイン侯爵夫人役、カミラ・ラザフォードさんがガント夫人役、アレクサンドラ・ステイデンさんがジョージ夫人役で、それぞれ上流階級の女性を演じ、ベッキーの社交界での活躍を彩ります。デボラ・フィンドレイさんがメアリー・セドリー役で、アメリアの母親として家族の苦境を表現します。キャスリン・ドライスデールさんがローダ・スワーツ役で、裕福な混血の女性としてベッキーの野心を刺激します。ルース・シーンさんがピンカートン嬢役で、教育者としてベッキーの出発点を描きます。
全体として、女優たちの活躍は、ミーラ・ナイール監督の女性中心の視点が反映され、階級とジェンダーのテーマを深めています。リース・ウィザースプーンさんの主演は、映画の商業的成功に寄与し、彼女の多様な役柄を示す一作です。レビューでは、女優陣の演技が均等に優れており、特にリース・ウィザースプーンさんのカリスマ性が際立つと指摘されます。このように、女優たちはそれぞれの役を通じて、物語の複雑な人間関係を豊かに表現し、観客に強い印象を与えています。
女優の衣装・化粧・髪型
本作の女優たちの衣装、化粧、髪型は、19世紀初頭のイギリスを反映した豪華で歴史的なスタイルが特徴。
リース・ウィザースプーンさんのベッキー役では、貧困から上流へ移行する衣装の変化が目立ちます。初めは質素なドレスですが、社会的地位が上がるにつれ、絢爛なガウンやボールガウンが登場し、サテンやレースの素材が優雅さを強調します。化粧は自然で、頰の紅とリップがベッキーの美貌を際立たせ、終盤ではより洗練されたメイクが施されます。髪型は、物語の進行で変化し、若い頃のシンプルなアップスタイルから、社交界での巻き髪や飾り付きのヘアに変わります。レビューでは、彼女のヘアスタイルが時代を反映し、胸元を強調したドレスがセクシーさを加えていると評価されます。特に、インド風のダンスシーンでは、エキゾチックなサリー風衣装とメイクが用いられ、髪はゆるやかに流されます。
ロモーラ・ガライさんのアメリア役は、控えめで上品なドレスが中心で、淡い色調のガウンが純粋さを表します。化粧は最小限で、ナチュラルな肌と軽いアイメイクが特徴です。髪型はロングのウェーブヘアが多く、喪服シーンではまとめ髪が悲しみを強調します。
アイリーン・アトキンスさんのマチルダ役では、裕福さを示す重厚なドレスと宝石が用いられ、化粧は年齢相応の濃いめのリップで、髪型は厳格なアップスタイルです。
ジェラルディン・マキューアンさんの伯爵夫人役は、華やかな衣装で、化粧はエレガント、髪型はカールしたヘアです。ナターシャ・リトルさんのジェーン役は、家庭的なドレスが中心で、化粧は穏やか、髪型はシンプルです。
ケリー・ハンターさんの侯爵夫人役は、貴族らしい豪奢なガウンで、化粧は洗練され、髪型は飾り付きです。
キャスリン・ドライスデールさんのローダ役は、混血を反映したエキゾチックな衣装で、化粧は明るく、髪型はボリュームのあるカールです。
全体的に、衣装はビアトリクス・アラナ・パストルによるデザインで、サテライト賞を受賞し、時代考証が徹底されています。化粧と髪型は、キャラクターの社会的地位と感情を視覚的に表現し、映画の視覚美を高めています。
レビューでは、衣装とセットの美しさが映画の価値を上げ、女優たちの外見が物語を豊かにしていると指摘されます。ただし、老化表現が不足し、メイクで十分に歳月を表せなかったとの意見もあります。
このように、女優たちのスタイルは、テーマの階級差を強調し、視覚的な魅力を提供します。
あらすじ
物語は、1802年のイギリスを舞台に、貧しい画家の娘ベッキー・シャープが、友人のアメリア・セドリーの家を訪れるところから始まります。
ベッキーはアメリアの兄ジョスに近づきますが、結婚は阻まれます。ベッキーはクローリー卿の家庭教師となり、息子のロウドンに魅了され、密かに結婚します。一方、アメリアはジョージ・オズボーンと婚約しますが、ジョージの父の策略で破談となり、貧困に陥ります。ベッキーは叔母のマチルダの世話役となり、社交界へ進出しますが、結婚が発覚し追放されます。
ナポレオン戦争が勃発し、夫たちは戦場へ向かいます。ベッキーはアメリアとブリュッセルで待機し、ジョージの死を知ります。
戦後、ベッキーとロウドンは債務に苦しみ、ベッキーはスタイン侯爵の後援で上流社会へ復帰します。ロウドンはベッキーの不倫を疑い、離別します。
12年後、ベッキーはカジノで生計を立て、アメリアと再会します。アメリアはドビン少佐の愛に気づき、ベッキーはジョスとインドへ旅立ちます。
このあらすじは、ベッキーの野心と人間関係の複雑さを描き、階級社会の風刺を込めています。
解説
『悪女』(Vanity Fair)は、2004年にミーラ・ナイール監督が手掛けた作品で、サッカレーの小説を現代的に翻案しています。脚本はジュリアン・フェローズらが担当し、ベッキーをより共感できる人物に改変し、原作の風刺を柔らかくしています。撮影のデクラン・クインは、豪華なセットと風景を捉え、音楽のマイケル・ダンナは時代感を演出します。
本作は、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞にノミネートされ、サテライト賞で衣装デザイン賞を受賞しました。レビューでは、視覚的な美しさとキャストの演技が評価されますが、物語の複雑さとベッキーの好感度が原作の鋭さを失わせたと批判されます。ロッテン・トマトでは51%の支持率、メタクリティックでは53点で、混合評価です。ミーラ・ナイール監督のインド的な視点が加わり、ベッキーのダンスシーンが独自の要素です。
全体として、19世紀の階級社会をテーマに、女性の野心と生存を描いたドラマです。この映画は、文学適応の難しさを示す一作として、映画史的に価値があります。
キャスト
- ベッキー・シャープ:リース・ウィザースプーン
- アメリア・セドリー:ロモーラ・ガライ
- マチルダ・クローリー:アイリーン・アトキンス
- サウスダウン伯爵夫人:ジェラルディン・マキューアン
- ジェーン・クローリー:ナターシャ・リトル
- スタイン侯爵夫人:ケリー・ハンター
- ガント夫人:カミラ・ラザフォード
- ジョージ夫人:アレクサンドラ・ステイデン
- メアリー・セドリー:デボラ・フィンドレイ
- ローダ・スワーツ:キャスリン・ドライスデール
- ピンカートン嬢:ルース・シーン
- ロウドン・クローリー:ジェームズ・ピュアフォイ
- ジョージ・オズボーン:ジョナサン・リース・マイヤーズ
- ウィリアム・ドビン:リース・イファンス
- スタイン侯爵:ガブリエル・バーン
- ピット・クローリー卿:ボブ・ホスキンズ
- ジョス・セドリー:トニー・モーズリー
- オズボーン氏:ジム・ブロードベント
スタッフ
- 監督:ミーラ・ナイール
- 脚本:ジュリアン・フェローズ、マシュー・フォーク、マーク・スキート
- 製作:ジャネット・デイ
- 撮影:デクラン・クイン
- 編集:アリソン・C・ジョンソン、ニシケシュ・メーラ
- 音楽:マイケル・ダンナ
- 美術:マリア・ジュルコビッチ、タチアナ・マクドナルド
- 衣装:ビアトリクス・アラナ・パストル




レビュー 作品の感想や女優への思い