仏国のヌーヴェル・ヴァーグ(新しい波)は、1950年代末から1960年代にかけてフランスで起こった映画運動で、従来の映画製作の枠組みを破り、実験的かつ個性的な作品を生み出した監督たちの作品群を指します。ジャン=リュック・ゴダールの『彼女について私が知っている二、三の事柄』(1966年)はその一例ですが、ヌーヴェル・ヴァーグには他にも多くの重要な映画があります。以下に、代表的なヌーヴェル・ヴァーグの映画とその特徴を簡潔に紹介します。
ジャン=リュック・ゴダール
ゴダールはヌーヴェル・ヴァーグの中心人物で、斬新な編集や社会批評的なテーマが特徴です。
勝手にしやがれ(À bout de souffle、1960年)
犯罪に巻き込まれた若者ミシェル(ジャン=ポール・ベルモンド)とアメリカ人女性パトリシア(ジーン・セバーグ)の逃亡劇。ジャンプカットや手持ちカメラ、即興的な対話など、ヌーヴェル・ヴァーグの革新的な技法を確立。パリの街並みと60年代の若者文化が鮮やかに描かれています。パトリシアのストライプTシャツやミシェルのハットとタバコは、クールで反体制的なスタイルの象徴。
気狂いピエロ(Pierrot le Fou、1965年)
退屈な生活を捨てた男(ベルモンド)と恋人(アンナ・カリーナ)の逃避行。ポップアート的な色彩、文学や芸術への言及、物語の断片化。ロマンスと暴力が交錯。アンナ・カリーナのカラフルなドレスやヘッドスカーフは、60年代のモダンな女性像を体現。
フランソワ・トリュフォー
トリュフォーはより人間ドラマに焦点を当て、情感豊かな作品が多いです。
四百の打撃(Les Quatre Cents Coups、1959年)
家庭や学校に馴染めない少年アントワーヌ・ドワネルの反抗と逃走を描く自伝的物語。リアリスティックな演出と子どもの視点が新鮮。ヌーヴェル・ヴァーグの出発点とも言える作品。アントワーヌのシンプルなセーターやジャケットは、1950年代のフランスの少年の日常を反映。
突然炎のごとく(Jules et Jim, 1962年)
二人の男と一人の女(ジャンヌ・モロー)による三角関係の愛の物語。詩的な映像と軽快な音楽、自由な恋愛観。時代を跨ぐストーリーが特徴。ジャンヌ・モローのボヘミアン風のドレスやハットは、自由奔放な女性像を表現。
エリック・ロメール
ロメールは日常の対話や道徳的葛藤を描く「モラル・テイルズ」シリーズで知られます。
モード家の一夜(Ma Nuit chez Maud、1969年)
カトリックの男性が友人宅で魅力的な女性モードと一夜を過ごし、信仰と欲望の間で葛藤。哲学的で会話中心の展開、抑制された演出。ロメールの知的アプローチが際立ちます。モードのシンプルかつエレガントなニットやスカートは、知的な女性の魅力を強調。
クレールの膝(Le Genou de Claire、1970年)
婚約中の男が若い女性の膝に魅了される心理劇。軽やかな夏の風景と微妙な心理描写。ロメールらしい観察眼が光ります。カジュアルなサマードレスやショートパンツが、70年代初頭の若者の気軽さを反映。
アニエス・ヴァルダ
「ヌーヴェル・ヴァーグの母」と呼ばれるヴァルダは、フェミニスト的視点と詩的な映像で独自の地位を築きました。
5時から7時までのクレオ(Cléo de 5 à 7、1962年)
歌手クレオがガンの検査結果を待つ2時間のリアルタイムの物語。実時間進行、パリの街を舞台にしたドキュメンタリータッチ。女性の不安と解放がテーマ。クレオの華やかなドレスやサングラス、ウィッグは、60年代のグラマラスな女性像を象徴。
幸福(Le Bonheur、1965年)
幸せな家庭を持つ男性が別の女性と恋に落ちる物語。鮮やかな色彩と皮肉な幸福観。ヴァルダの視覚的実験が際立ちます。ポップな花柄ドレスやカジュアルなブラウスが、60年代の家庭と自由の対比を表現。
ジャック・リヴェット
リヴェットは長編や即興性を重視した作品で知られます。
パリはわれらのもの(Paris nous appartient、1961年)
演劇グループに巻き込まれた女性が、陰謀めいた出来事に直面します。ミステリーと日常の融合、長い対話シーン。パリの知的雰囲気が漂います。学生やアーティストらしいカジュアルなコートやセーターが登場。
セリーヌとジュリーは舟でゆく(Céline et Julie vont en bateau、1974年)
二人の女性が奇妙な屋敷で繰り広げられる物語に介入するファンタジー。遊び心溢れる構造と即興性。ヌーヴェル・ヴァーグ後期の代表作。70年代のボヘミアンスタイル(ロングスカート、フリルブラウス)が目立ちます。
ヌーヴェル・ヴァーグのファッションの共通点
カジュアルで自由なスタイル
ヌーヴェル・ヴァーグの映画では、従来のハリウッド的なグラマーとは異なり、ストリートファッションや日常着が強調されます。ジーンズ、Tシャツ、トレンチコート、ベレー帽などが頻繁に登場。
パリの都市文化
パリの街角やカフェを背景に、若者や知識人のカジュアルかつ知的なスタイルが描かれ、60年代のフレンチ・シックを象徴。
個性の表現
とくに女性キャラクター(アンナ・カリーナ、ジャンヌ・モロー、ジーン・セバーグなど)のファッションは、自由や反体制の精神を反映し、物語のテーマと密接に結びついています。

まとめ
ヌーヴェル・ヴァーグの映画は、ゴダールやトリュフォーだけでなく、ヴァルダやロメール、リヴェットなど多様な監督による作品で構成されています。それぞれの監督が独自のスタイルを持ちつつ、実験的な手法、パリの都市性、若者の自由な精神を共有しています。ファッションもまた、各作品のキャラクターや時代背景を表現する重要な要素として機能しています。
もし特定の映画のファッションや詳細について深掘りしたい場合、または他のヌーヴェル・ヴァーグ監督の作品について知りたい場合は、ぜひ教えてください!

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