『最も普通の恋愛』（原題：가장 보통의 연애、英題：Crazy Romance）は、2019年に韓国で公開されたロマンティック・コメディ映画。監督はキム・ハンギョルが務め、主演にはキム・レウォンとコン・ヒョジンがキャスティングされた。この二人はドラマ『雪だるま ～Snow Love～』（2003年）以来、16年ぶりの共演となり、公開前から大きな話題を呼んだ。映画は、恋愛の破綻を経験した男女が新たな出会いを通じて互いに惹かれ合う過程を、ユーモアとリアリティを交えて描く。韓国では約300万人を動員し、2019年のラブコメ映画としてNo.1のヒットを記録。日本では2020年7月31日に公開された。本作は、恋愛映画にありがちな運命的で劇的な展開を避け、日常的で共感性の高いストーリー展開が特徴である。109分の runtime で、リアルな恋愛の機微と人間関係の複雑さを軽快に描き出した。
- 邦題：最も普通の恋愛
- 原題：가장 보통의 연애
- 英題：Crazy Romance
- 公開年：2019年
- 製作国：韓国
- 上映時間：109分
- ジャンル：ドラマ、コメディ
- 視聴：U-next
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あらすじ
ジェフン（キム・レウォン）は、婚約破棄のショックから立ち直れず、元カノに未練を残しながら酒に溺れる日々を送っている。ある朝、二日酔いの状態で目を覚ますと、携帯電話に知らない番号との2時間もの通話履歴を発見。その相手は、新しく職場にやってきた同僚のソニョン（コン・ヒョジン）だった。ソニョンは元カレの裏切りにより恋愛に幻想を抱かず、別れた恋にはきっぱり見切りをつける現実的な女性だ。彼女は新しい職場の初日、浮気した元カレに罵声を浴びせながら別れる現場を、偶然ジェフンに目撃されてしまう。
出会ったばかりの二人は、お互いの恋愛の傷や弱点をいち早く知ることになり、最初は「情けない男」「あきれた女」と互いを批判し合う。しかし、職場での共同作業や、酒を飲みながらの率直な会話を通じて、次第に相手を意識し始める。恋愛観が正反対の二人が、時にはぶつかり合い、時には共感しながら距離を縮めていく過程は、コミカルでありながらも心の機微を丁寧に描き出している。物語は、恋愛の未練や後悔、そして新たな一歩を踏み出す勇気をテーマに、リアルで等身大なロマンスを展開する。
女優陣の活躍
本作の女性キャストの中心は、韓国で「ラブコメの女王」と称されるコン・ヒョジンである。彼女はソニョン役を通じて、恋愛に傷つきながらも自立心と現実的な視点を持つ女性像を鮮やかに演じた。コン・ヒョジンは、ドラマ『パスタ～恋が出来るまで～』や『椿の花咲く頃』で培った、コミカルかつ感情豊かな演技を本作でも発揮。ソニョンの強気な発言や、酔っ払いながらも愛らしい一面を見せるシーンでは、彼女独特のチャームが光る。特に、元カレとの別れの場面での感情的な爆発や、ジェフンとの掛け合いで見せるユーモアは、観客に強い印象を与えた。彼女のファッションも注目を集め、カジュアルでありながら個性的なスタイルがソニョンのキャラクター性を強調した。
助演女優としては、チャン・ソヨンが職場の同僚役で出演。『愛の不時着』や『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』での活躍で知られる彼女は、本作では脇役ながらも職場のムードメーカーとして存在感を発揮。彼女の自然体な演技は、物語の日常性を支える重要な要素となった。コン・ヒョジンとチャン・ソヨンの女性キャスト陣は、恋愛や職場での女性のリアルな姿を体現し、男性キャストとのバランスを取りながら物語に深みを加えた。
感想
『最も普通の恋愛』は、韓国ラブコメの典型的な枠組みを超えた作品として、多くの観客から好評を得た。まず、タイトルが示す「普通の恋愛」が皮肉を込めたものである点が面白い。物語は、酔っ払った主人公たちの破天荒な行動や、恋愛における情けない一面をコミカルに描きながらも、最終的には普遍的な愛の形に着地する。このギャップが、観客に新鮮さと親しみやすさを提供した。レビューサイト Filmarks では、平均スコア3.4点（5点満点）で、2199件のレビューが寄せられており、幅広い層から支持を受けたことが伺える。
特に、キム・レウォンとコン・ヒョジンのケミストリーが本作の大きな魅力。二人の掛け合いは、時に毒舌で、時に温かく、リアルな恋愛の空気感を再現している。観客からは「韓国らしい酒文化を背景にしたラブコメが新鮮」「恋愛の失敗や傷をリアルに描いた共感性の高さが良い」といった声が上がった。一方で、「泥酔シーンが多すぎる」「展開がやや冗長」と感じる意見もあり、好みが分かれる部分もあった。個人的には、恋愛における「完璧でない自分」を受け入れるテーマが心に響き、笑いと感動のバランスが絶妙だったと感じる。
解説
『最も普通の恋愛』は、恋愛映画における「普通」と「特別」の境界を探る作品だ。英語タイトル「Crazy Romance」と日本語タイトル「最も普通の恋愛」の対比は、恋愛の二面性を象徴している。物語は、恋愛における劇的な運命や理想化されたロマンスを否定し、むしろ失敗や未練、日常の雑多な感情を通じて愛が生まれる過程を描く。このアプローチは、韓国映画界における新たなラブコメの潮流を反映しており、監督キム・ハンギョルの長編デビュー作としての力量が窺える。
本作の特徴の一つは、SNSや現代のコミュニケーション手段を積極的に取り入れた点だ。ジェフンが元カノに既読スルーされるLINEの描写や、ソニョンが職場で直面する人間関係のリアリティは、2010年代後半の社会背景を反映している。また、韓国特有の酒文化が物語の推進力として機能し、酔った状態での本音のぶつかり合いが二人の関係を深める。この点は、日本や他の国の観客にとって新鮮でありつつ、韓国映画らしいユニークな魅力となっている。
監督のキム・ハンギョルは、女性監督としての視点を生かし、恋愛の繊細な感情を丁寧に描いた。彼女は短編映画での評価を背景に本作で長編デビューを果たし、韓国映画界における女性監督の活躍の一例となった。脚本もキム・ハンギョルとオ・ヒョジンPDが共同で手掛け、リアルで等身大なキャラクター造形が実現した。
主要キャスト
- キム・レウォン（ジェフン役）…『江南ブルース』や『ドクターズ～恋する気持ち～』で知られるトップスター。未練たっぷりで情けないジェフンをコミカルかつ人間味豊かに演じ、新たな魅力を開花させた。
- コン・ヒョジン（ソニョン役）…『椿の花咲く頃』で百想芸術大賞を受賞した「ラブコメの女王」。ソニョンの強さと脆さを絶妙に表現し、観客を引き込む。
- カン・ギヨン（ビョンウ役）…『キム秘書はいったい、なぜ？』で人気の助演俳優。職場の変態キャラとしてコメディを牽引。
- チョン・ウンイン（社長役）…『監獄の首領』などで知られるベテラン。職場の社長として重厚な存在感を発揮。
- チャン・ソヨン（同僚役）…『愛の不時着』などで活躍。職場のムードメーカーとして物語を支える。
- ユン・ギョンホ…脇役としてコミカルな演技で貢献。
スタッフ
- 監督・脚本…キム・ハンギョル（長編デビュー作。短編映画での実績を背景に、恋愛の機微を繊細に描く）
- 脚本…オ・ヒョジンPD（キム・ハンギョルと共同執筆。リアルな対話が魅力）
- 製作…NEXT ENTERTAINMENT WORLD & ZIP CINEMA
- 配給…クロックワークス（日本）
- 音楽…キム・テソン（情感豊かなスコアで物語を彩る）
- 撮影…イ・モゲ（日常的なシーンの温かみを捉える）
- 編集…シン・ミンジョン（テンポの良い編集でコメディを引き立てる）
総括
『最も普通の恋愛』は、キム・レウォンとコン・ヒョジンの16年ぶりの共演を軸に、恋愛のリアルな喜びと痛みを描いた傑作ラブコメである。コン・ヒョジンをはじめとする女優陣の活躍は、物語に深みと魅力を加え、観客に共感と笑いを提供した。監督キム・ハンギョルの繊細な演出と、現代社会の恋愛観を反映した脚本は、韓国映画の新たな可能性を示した。恋愛における「普通」の価値を再発見させる本作は、恋愛映画の定番として長く愛されるだろう。
レビュー 作品の感想や女優への思い