2025年の第78回カンヌ国際映画祭の見どころをご紹介。映画祭は2025年5月13日から24日までフランスのカンヌで開催され、世界の映画界における最も権威あるイベントの一つとして注目を集めます。以下では、主要な出品作品、注目の監督や俳優、日本映画の活躍、審査員、特別上映、そして映画祭の文化的意義などを中心に解説します。
カンヌ映画祭の概要と2025年の特徴
カンヌ国際映画祭は、1946年の創設以来、映画芸術の最前線を牽引するイベントとして知られています。世界三大映画祭（カンヌ、ベルリン、ヴェネツィア）の中でも特に華やかで、商業映画と芸術映画のバランスが特徴です。
2025年の第78回映画祭は、5月13日から24日まで、パレ・デ・フェスティバルを中心に開催されます。審査員長にはフランスの名女優ジュリエット・ビノシュが就任し、彼女の審美眼がどのような作品を評価するのか注目されます。ビノシュは国際的に高く評価される女優であり、彼女の選ぶパルム・ドール（最高賞）受賞作はアカデミー賞をはじめとする今後の映画賞レースにも影響を与えるでしょう。
また、2025年は新たな才能の発掘とベテラン監督の新作が交錯する年とされており、コンペティション部門や「ある視点」部門、監督週間などで多様な作品が上映されます。特に、若手監督や俳優が監督としてデビューする作品が目立つ点が特徴です。さらに、映画祭の公式セレクションには国際共同製作作品が増加しており、グローバル化が進む映画産業の現状を反映しています。
コンペティション部門の注目作品
カンヌ映画祭の中心となるコンペティション部門では、パルム・ドールを争う約20作品が上映されます。2025年のラインナップは、名だたる監督の新作と新進気鋭の才能が混在し、多様なジャンルとテーマが揃っています。以下は特に注目すべき作品です。
これらの作品は、現代社会の課題や個人の内面を掘り下げるテーマが多く、カンヌの批評家や観客の間で議論を呼ぶことが予想されます。
The Phoenician Scheme（ウェス・アンダーソン監督）
ウェス・アンダーソン監督の新作は、ベニチオ・デル・トロ、トム・ハンクス、ブライアン・クランストン、スカーレット・ヨハンソン、ベネディクト・カンバーバッチら豪華キャストが出演するスパイ・スリラー。独特の色彩美とシンメトリーな映像美で知られるアンダーソンが、カンヌの舞台でどのような新境地を見せるのか期待が高まります。
Eddington（アリ・アスター監督）
『ミッドサマー』で知られるアリ・アスターの新作は、ホアキン・フェニックス、エマ・ストーン、ペドロ・パスカル、オースティン・バトラーらが出演するダーク・ウェスタン・コメディ。A24が製作を担当し、アスターの独特なホラーとユーモアの融合がカンヌで話題となるでしょう。
ルノワール（早川千絵監督）
日本からコンペティション部門に選出された早川千絵監督の『ルノワール』は、11歳の少女のひと夏を描いた作品。主演の鈴木唯、共演の河合優実、坂東龍汰、リリー・フランキーらが織りなす繊細な人間ドラマが評価されており、パルム・ドール候補として期待されています。日本映画の国際的評価が高まる中、早川監督の2作連続カンヌ出品は大きな話題です。
Die my love（リン・ラムジー監督）
ジェニファー・ローレンスとロバート・パティンソンが主演するリン・ラムジーの新作。ラムジーは『少年は残酷な弓を射る』でカンヌを震撼させた監督であり、心理的な緊張感とビジュアルの美しさが特徴。2025年の主演女優賞や監督賞の有力候補です。
A Simple Accident（ジャファール・パナヒ監督）
イラン出身のパナヒ監督は、収監や軟禁状態でも映画製作を続ける不屈の精神で知られています。7年ぶりのカンヌコンペ出品となる本作は、警察内部のクライム映画で、レア・ドリュッケールの演技が主演女優賞候補として注目されています。
日本映画の躍進
2025年のカンヌ映画祭では、日本映画が複数の部門で存在感を示しています。コンペティション部門の『ルノワール』に加え、以下のような作品が選出されています。
日本映画の多様なジャンルと才能がカンヌで紹介されることで、日本映画の国際的地位がさらに高まることが期待されます。
遠い山なみの光（石川慶監督、原作：カズオ・イシグロ）
「ある視点」部門に選出された本作は、広瀬すずと二階堂ふみが主演を務めるヒューマンミステリー。1950年代の長崎と1980年代のイギリスを舞台に、記憶と運命が交錯する物語が描かれます。カズオ・イシグロの原作を石川監督がどのように映像化したのか、国際的な評価が注目されます。
8番出口（川村元気監督）
ミッドナイト・スクリーニング部門で上映される本作は、大ヒットゲームを二宮和也主演で実写化したサスペンス。川村元気はプロデューサーとして知られていますが、監督としてのカンヌデビューは大きな話題です。ゲームファンの期待も高く、商業的成功と芸術性の両立が注目されます。
国宝（李相日監督）
監督週間で上映される本作は、吉沢亮と横浜流星が主演を務め、歌舞伎の世界を舞台にした一代記。芸に人生を捧げた男の壮絶な物語が描かれ、ビジュアルと演技の迫力が評価されています。李相日監督の緻密な演出がカンヌでどう響くか、注目です。
恋愛裁判（深田晃司監督）
追加ラインナップとしてコンペティション部門に選出された深田晃司監督の新作。恋愛禁止のルールを破ったアイドルを描く本作は、齊藤京子が出演し、現代のアイドル文化と個人の自由をテーマにしています。深田監督の社会派アプローチがカンヌで議論を呼ぶでしょう。
「ある視点」部門と俳優の監督デビュー
「ある視点」部門は、新進気鋭の監督や実験的な作品に焦点を当てたセクションで、2025年は俳優の監督デビュー作が特に注目されています。審査員長は英国のモリー・マニング・ウォーカー（『HOW TO HAVE SEX』監督）が務め、若手視点の評価が期待されます。
これらの作品は、俳優が新たなクリエイティブな挑戦をする場としてカンヌが機能していることを示しています。
エレノア・ザ・グレート（スカーレット・ヨハンソン監督）
スカーレット・ヨハンソンの初監督作は、老年期の女性の冒険を描くヒューマンドラマ。ヨハンソンの演技者としての経験が、監督としての視点にどう反映されるのか注目です。
アーチン（ハリス・ディキンソン監督）
ロンドンのホームレス問題をテーマにしたディキンソンの監督デビュー作。社会派ドラマとしての評価が期待されます。
The Chronology of Water（クリステン・スチュワート監督）
クリステン・スチュワートが監督を務める本作は、原作小説を基にした自伝的物語。スチュワートの独特な感性がカンヌでどう評価されるか、注目されます。
これらの作品は、俳優が新たなクリエイティブな挑戦をする場としてカンヌが機能していることを示しています。
特別上映とイベント
カンヌでは、コンペティション外の特別上映やイベントも大きな見どころです。2025年は以下の作品やイベントが話題となっています。
ミッション：インポッシブル／ファイナル・レコニング（クリストファー・マッカリー監督）
トム・クルーズ主演の人気シリーズ最終作が、コンペティション外でワールドプレミア上映されます。5月23日の世界公開に先駆けた上映は、カンヌのレッドカーペットを盛り上げる一大イベントとなるでしょう。クルーズのアクションとカンヌの華やかな雰囲気が融合する瞬間は必見です。
ロバート・デ・ニーロの名誉パルム・ドール授与
開会式では、ロ high-profile 俳優ロバート・デ・ニーロが名誉パルム・ドールを受賞。レオナルド・ディカプリオがサプライズで祝福し、彼のキャリアを振り返る特別上映が行われます。デ・ニーロのスピーチは政治的テーマに触れ、映画の社会的役割を強調する内容が予想されます。
Partir un jour（アメリー・ボナン監督）
ジュリエット・アルマネとバスティアン・ブイヨン主演のコメディドラマが開幕作品として上映されます。セザール賞受賞の短編を基にした本作は、軽快なトーンで映画祭の幕開けを飾ります。
文化的意義とトレンド
カンヌ映画祭は、映画の芸術性だけでなく、文化的・社会的トレンドを反映する場でもあります。2025年は、以下のテーマが注目されています。
ダイバーシティとインクルージョン
女性監督やマイノリティのクリエイターの作品が増加し、映画祭の多様性が拡大しています。早川千絵やスカーレット・ヨハンソンらの活躍は、女性の視点が映画界で重要視されていることを示しています。
国際共同製作の増加
『ルノワール』や『遠い山なみの光』など、国際的なキャストやプロダクションによる作品が増え、映画のグローバル化が進んでいます。
テクノロジーと映画
没入型コンペティション部門では、VRやARを活用した作品が上映され、映画の新たな可能性が探求されています。
まとめ
2025年のカンヌ国際映画祭は、新進気鋭の才能とベテラン監督の競演、日本映画の躍進、豪華なキャストによるプレミア上映、そして文化的議論の場として、多角的な魅力に溢れています。ウェス・アンダーソンやアリ・アスターの新作、早川千絵や石川慶の日本映画、トム・クルーズのアクション大作など、ジャンルやテーマの多様性が映画祭の価値を高めています。ジュリエット・ビノシュの審査員長としての采配や、レッドカーペットの華やかな瞬間も、映画ファンの心を掴むでしょう。
カンヌ2025は、映画の未来を切り開く作品と才能が集結する場として、映画史に新たな一ページを刻むことでしょう。映画ファンにとって、5月13日から24日までの12日間は、スクリーンに映し出される無限の物語に浸る絶好の機会です。
レビュー 作品の感想や女優への思い