映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』でキャリー・マリガンが着用しているナース服がセクシーすぎて、その歴史を少し調べてみました。
ナース服の歴史は、看護の職業化と医療環境の変化を反映し、機能性、象徴性、社会的認識の進化を辿る興味深いテーマです。以下では、ナース服の起源から現代までの変遷を、時代ごとの特徴や社会的背景を踏まえ、丁寧に解説していきます。
起源:修道女の影響(中世~19世紀初頭)
ナース服の歴史は、中世ヨーロッパの修道会に遡ります。看護は主にキリスト教の修道女によって行われ、彼女たちの服装が初期のナース服の原型となりました。修道女の服装は、黒や灰色のローブに白いヴェールやエプロンが特徴で、謙虚さと清潔さを象徴していました。この時期の看護は宗教的な奉仕活動の一環であり、衣装は医療従事者というより修道女としてのアイデンティティを反映していました。16~17世紀には、聖ビンセント・ド・ポールが設立した「慈善姉妹会」が看護を組織的に行い、白いコルネット(翼のような帽子)が特徴的な衣装が広まりました。この白いヴェールやエプロンは、清潔感と純粋さの象徴として、後のナース服の基盤となりました。
近代看護の始まり:フローレンス・ナイチンゲール時代(19世紀中盤)
ナース服が現代的な形に近づいたのは、19世紀中盤、フローレンス・ナイチンゲールによる看護の職業化がきっかけです。クリミア戦争(1853~1856年)でナイチンゲールは看護師の役割を確立し、統一された制服の重要性を強調しました。この時期のナース服は、白いエプロン、長いスカート、キャップで構成され、清潔感と規律を象徴していました。白い衣装は、病院の衛生環境の改善を重視したナイチンゲールの理念を反映し、患者に信頼感を与える役割を果たしました。キャップは特に重要で、看護学校ごとに異なるデザインが採用され、看護師の所属や地位を示すシンボルとなりました。衣装はゆったりとしたデザインで、動きやすさと実用性を考慮しつつ、女性らしい控えめな印象を保ちました。
20世紀初頭:標準化と象徴性の確立
20世紀初頭には、看護が専門職として確立され、ナース服は標準化が進みました。白いワンピース、ピンのついたキャップ、ストッキングが標準的なスタイルとなり、医療現場の清潔感とプロフェッショナリズムを強調しました。白い衣装は、細菌の可視化を容易にし、衛生管理を徹底するための実用的な選択でもありました。この時期、ナース服は「天使の象徴」として社会的に認識され、看護師の献身的なイメージを強化。第一次・第二次世界大戦中には、軍の看護師がカーキ色やグレーの簡素なユニフォームを着用する例も見られましたが、戦後は再び白いナース服が主流に。1950年代には、タイトなウエストやフレアスカートが加わり、女性らしさを強調したデザインも登場しました。
20世紀後半:実用性と多様性の時代
1960年代以降、医療技術の進歩と女性の社会進出に伴い、ナース服は大きく変化しました。白いワンピースは依然として主流でしたが、動きやすさを重視したショート丈のスカートや、洗濯が簡単な合成繊維の導入が進みました。1970年代には、フェミニズムの影響や実用性の要求から、スカートに加えてパンツスタイルのユニフォームが登場。キャップは衛生上の理由や煩雑さから徐々に廃止される傾向にありました。1980年代以降、スクラブと呼ばれるゆったりとしたトップスとパンツの組み合わせが普及。スクラブは、色付き(青や緑など)や柄物も導入され、従来の白いナース服の厳格なイメージを打破しました。この変化は、看護師のジェンダー中立性や多様な役割を反映し、患者との心理的距離を縮める効果も期待されました。
現代:機能性と個性の融合(21世紀~現在)
現代のナース服は、機能性と快適さを最優先に設計されています。スクラブが主流で、ストレッチ素材や抗菌加工が施されたものが一般的です。色やデザインは病院ごとに異なり、ピンクやパステルカラー、キャラクター柄など、患者に親しみやすさを与える工夫が見られます。キャップはほぼ廃止され、髪をまとめるためのシュシュやヘアバンドが代わりに使用されることも。コロナ禍以降、感染予防のため、防護服やフェイスシールドとの併用も一般的になりました。ナース服は、医療従事者の専門性を示しつつ、患者とのコミュニケーションを円滑にする役割も担っています。また、多様な体型や文化に対応するため、サイズやデザインの選択肢が増え、インクルーシブなアプローチが取り入れられています。
文化的影響と象徴性
ナース服は、医療の現場を超えて、ポップカルチャーやファッションにも影響を与えました。映画やドラマでは、白いナース服が「天使」や「癒し」の象徴として描かれる一方、ホラーやスリラーでは不気味さや二面性を強調する道具として登場(例:『サイレント・ヒル』)。ファッションでは、ナース服の白やキャップがレトロなインスピレーションとして取り入れられることもあります。
結論
ナース服の歴史は、修道女の奉仕から始まり、衛生と専門性の象徴として進化し、現代では機能性と個性を融合させた多様な形に発展しました。社会の変化や医療の進歩を反映しながら、看護師の役割を視覚的に表現する重要なツールであり続けています。これからも、ナース服は医療現場のニーズや文化的背景に応じて進化を続けるでしょう。
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